【IWJ号外】東京地裁が、厚労省の「新型コロナウイルスワクチン購入契約書」不開示決定を取り消す画期的な判決を下す! 福島雅典教授が率いるLHS研究所の全面勝訴! 2025.10.22

記事公開日:2025.10.22 テキスト

(文・IWJ編集部)

 新型コロナウイルスワクチンをめぐる裁判で、画期的な判決が出ました。

 これまで、ファイザー社などとの間で締結された新型コロナワクチン購入契約書は、厚労省によって「不開示」とされてきました。

 福島雅典教授とLHS研究所は、情報公開法にもとづき、2023年1月31日付で厚生労働大臣に対して新型コロナワクチン購入契約書の開示請求をしました。

 しかし、厚生労働大臣は「新型コロナウイルスワクチン購入契約書」は全面不開示と決定しました。福島雅典教授とLHS研究所は、この不開示決定を取り消すよう求め、同年6月13日訴訟を起こしました。

 東京地方裁判所は、2025年10月9日付で判決言い渡し文をLHS研究所に送付、10月15日に判決を言い渡しました。判決の主文は以下の通りです。

 「主文

 1 厚生労働大臣が原告に対して令和5年3月3日付けでした行政文書不開示決定(厚生労働省発健0303第3号)を取り消す。

 2 訴訟費用は被告(※国)の負担とする」

 福島雅典教授とLHS研究所の全面的な勝訴です。

 主たる争点は、以下の3点です。

1)契約書が「法人等の権利・競争上の地位を害する情報」(情報公開法5条2号イ)に該当するか。

 被告(国)側は、同契約書には「情報公開法5条2号イ」所定の不開示情報が記録されていると判断し、同契約書全部を不開示とする決定をしました。

 「情報公開法5条2号イ」とは、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、情報開示請求があっても、開示対象から除外されるとする条項です。

 被告(国)側は、同契約書の開示によって、厚生労働省が契約した「ファイザー株式会社、モデルナ株式会社、武田製薬株式会社(ノババックス)、アストラゼネカ株式会社等(以下ファイザー等と略す)」が、他国との取引条件の交渉の際に不利な立場に置かれることになる、ファイザー社等の競争上の優位性が失われる可能性がある、正当な利益を害するおそれがある、などと主張しました。

 原告側は(LHS研究所)は、「ファイザー社等は、既にワクチンの特許を取得しており、市場を独占する状態にある」「他国とファイザー社等との間のワクチンの供給に係る合意内容を記載した契約書が公表されている」と指摘し、「ノウハウが流出し競争上の優位性が失われる可能性は、解消されている」と反論しました。

 また、原告側は(LHS研究所)は、情報開示の利益を6つあげ、開示を訴えました。

・ファイザー社等が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、製造物責任法並びに民法にもとづく罰則又は責任を逃れる条項がないかを確認できること。

・他国の契約と比較して、適切な条件・価格の契約なのか判断できること。

・日本国民に不利益な条項がないか確認できること。

・次回の契約の際に、適切な条件・価格で契約を締結することができること。

・第三者によるワクチンの有効性・安全性の検証試験を行う際に阻害する条項がないか確認できること。

・ワクチン接種後の健康被害救済の訴訟を行う際に、誰に何を請求すべきか確認できること。

 いずれも、日本国民にとって、重要な利益です。原告側は「多くの日本国民にとって、本件文書の不開示により保護される利益よりも開示により保護される利益の方が大きいことは明らか」だと指摘しています。

 厚生労働省は、ファイザー社等の利益を守ることばかり考えているようですが、まずは日本国民の利益を考えるべきです。

2)契約書が「国の契約交渉上の利益を害する情報」(情報公開法5条6号ロ)に該当するか。

 「情報公開法5条6号口」とは、「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」があるものは、不開示にしてよいとする条項です。

 被告(国)側は、「本件文書を開示した場合、被告は、ワクチンの供給契約に関し、今後、より有利な取引条件で契約交渉をすることが困難になる」「(開示が密保持義務に抵触し)ファイザー社等やその他の製薬会社とワクチン等の供給に関する交渉を行うことが非常に困難になる」ため、「交渉に係る事務に関し、被告の当事者としての地位を不当に害するおそれがある」などと主張していました。

 これに対し、原告側は(LHS研究所)は、「機密保持義務が定められているとしても、情報公開法所定の手続に従って開示される限り、契約違反の問題が生ずることは通常想定し難い」「内容のごく一部であっても機密保持義務に抵触するというような機密保持契約は、強行法規(当事者の意思にかかわらず強制的に適用される、公の秩序に関する法規)に違反して無効というべき」だと反論しました。

 ワクチンの購入契約に、国民に開示できないような「機密」が含まれていること自体、異常なことです。誰のためのワクチンだったのか、と思わずにはいられません。

3)部分開示(同法6条)を行わなかったことは適法か。

 情報公開法の第6条には、「不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」という件があります。つまり、不開示にすべき内容が部分的にあったとしても、その他の部分は開示しなければならないという条項です。

 被告(国)側は、「本文部分の各条項は、他の条項との間で有機的に結合し、又は連動し、複雑なネットワークを形成している」ため、不可分一体であり、部分的な開示・不開示の区別は困難だとし、「部分開示の要件に該当しない」と主張しました。

 さらに、被告(国)側は、「契約当事者の手の内を広く公開することになって、契約当事者の将来の契約交渉に著しい悪影響を及ぼすことになる」「本件文書の内容をごく一部であっても開示することは、機密保持義務に抵触する」「特定の条項の一部のみを取り出して部分開示したりすることは、無意味であるだけでなく、各条項について誤った理解がされる弊害が生じることになる」などと主張しています。

 これに対し、原告側は(LHS研究所)は、「通常、契約書は、各条項に明確に区分・特定されており、契約書全体を一体として検討することによって初めて特定されるものではない」「本件文書は、それぞれが独立した意味を持つ情報が複数記録されたものであり、情報単位は文、段落等とされるべきである」と、国の主張を否定しました。

 原告側は(LHS研究所)は、他国とファイザー社等との契約書から、本件契約書に含まれる事項を推測しています。

・契約名称
・契約日
・ファイザー社等が収受する金額(ワクチンの単価と供給量、前払金額)
・ワクチンを供給する際の具体的方法(供給までの間に保存する温度や期間などの環境や条件)
・ワクチンの所有権の取扱い(ワクチンを所有する契約当事者、目的外使用・再販売・返品の禁止等)
・公表されていない開発状況を踏まえた対応(ファイザー社等が一切の責任を負わないこと、注文の取消権を与えられないこと、他国固有の要件の免除、例外及び権利放棄の承認又はファイザー社等に代わる取得等)
・免責事項(主権免除の放棄、補償・費用負担義務、ファイザー社等が一切の責任を負わないこと等)
・機密保持契約
・紛争解決時の準拠法・裁判所

 原告側は(LHS研究所)は、「これらの事項は、それぞれが他の事項とは明確に区別できる」と主張しました。全面的な不開示は違法だという主張です。

 東京地裁は、上記の3つの争点を考慮し、本件契約書には、少なくとも一部には不開示に相当する情報が含まれていることは認めたものの、契約書は条項ごとに区分されており、不可分一体ではなく、被告(国)は、部分開示の可否を判断すべきであった、と述べています。

 東京地裁は、厚生労働省の不開示決定は、部分開示の可能性を検討せずに全体を非開示とした点で違法であるとして、不開示決定は取消しとの判決を下しました。

 「不開示決定取消し」の判決によって、ようやく、新型コロナウイルスワクチン購入契約において、日本国民にとって不利益な内容がないか、適正な金額や条件で行われたのか、製薬企業の責任や免責事項はどうなっているのか、ワクチン接種後の健康被害救済を誰に求めたらいいのか、国なのか、製薬会社なのか、といった問題解明への第一歩が開かれたことになります。

 IWJサイトに、この判決言い渡し文の全文を公開しました。ぜひ御覧ください。

※東京地裁が、厚労省の「新型コロナウイルスワクチン購入契約書」不開示決定を取り消す画期的な判決を下す! 福島雅典教授が率いるLHS研究所の全面勝訴!

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