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honjitu no HIROSE

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NEW 嘘をつかない詐欺師。


最近、「保身 積水ハウス クーデターの深層」という本を読んでいる。

どんな本かといえば、みんな大好き地面師事件の後、地面師に騙された側の社長派閥が、地面師との取引を知らなかった会長&やめろと止めていた派閥を全員追い出して、クーデターに成功したというとんでもない事件についてまとめた本である。

読んだ理由は、積水ハウスが、会社の成り立ちや株価の推移、役員の体制、社員の無能さに至るまで、あまりに弊社と似ているからである。

しょぼい小物達が、無い知恵絞って社内でドッグファイトする浅ましさは、読んでいて大変親近感が湧いて面白い。
清々しささえある。


ちなみに地面師事件のメンバーの名前が、カミンスカス操、内田マイク、ソレイユ横澤など、90年代男性向けエロ同人誌作家のペンネームみたいなしょぼさなのことも、味わい深くて良い。
妙なセンスがある。

喧嘩は、同レベル同士でしか起きないと言うが、うすっぺらさ、しょぼさでは積水ハウスと地面師グループはやはりいい勝負だったんだと、本を読んでひしひしと感じる。
名試合をありがとう。


そして本を読んでいて、気づいてことがある。

実は今いる部署に、詐欺師がいるのだ。

読んでる本は、地面師の話と言うよりも、積水ハウス側にいる姑息な小物がどう社内で暗躍し詐欺師に騙されたかの過程が描かれているのだが、その過程のきな臭さを見てると、どうしても会社のある人物を思い出すのである。


その人がおかしいと気づいた理由はいくつかある。

まず、一つ目。
その人は、ビジネスでかなり上り詰めた功績がある人だそうで、風格からしてもビジネスマンとして只者では無い雰囲気があるのだが、過去何をやっていたかを全く言わないのだ。
普通、それなりに大成した人なら、関係が長くなると、具体的な会社名を踏まえて過去の経歴を匂わせる癖がある。
だが、それがない。

また、断片的に聞く過去やってきた仕事のなかに、謎の空白期間がある。

そして、二つ目。
とにかく人を肯定する。
「いやそうだよね!」「そう思うよ!」「本当に分かるよ!」
話しているとだいたい返答がこれなのだ。
しかも、面白いのは、話を合わせていると言うより、本当に心からそう言っているようなのである。
そのため、意見を求めると賛同理由をきちんと返してくる。
しかし、根拠のある同意にしては、賛同の頻度が高い。
その微妙なギャップが毎回頭の隅でひっかかった。

見ているに、人は、多かれ少なかれ自分が話すことに対しての責任を持っていたり、人の発言を聞いて、自分と相手の距離感を測りながら話すが、それがないように見えるのだ。

私は、人材開発会社社長を長く勤めた人から
「人を採用する時は、継続性、誠実さ、理解力を見ている。この方法で採用すれば間違いない。」
と教えて貰ってから、それを心に留めてるのだが。

その社長いわく、面接の短い間で相手の誠実さ(嘘をつかない)を見抜くには、理解できない文脈の話をした時の反応を見ればいいらしい。
誠実な人は
反応が一拍遅れて
「それはつまり、こういうことですか?違いますかね?こういうこと?」
と相手の思考を探るような動きや、質問をするらしい。
そして、うんうん、とニコニコ同意する人が、誠実さのない人だそうなのだ。

そして三つ目は、会社にいるその人と何十年と懇意にしている人(この人が彼を呼んできた。)が何か微妙な動きをすると、
「いや~、俺は止めたんだよ、それはまずいよって。もう何考えてるんだろうね。」
と笑いながら言うのだ。
二人は役職上、一蓮托生の関係であり、本来ならそういう話は恥ずかしいものとして内々で潰していくのが定石だが、あっさり他人事のポジションを取る動き方に若干の違和感があった。



そしてふと、本を読む合間に、その人の過去について真剣に調べてみたのだ。
世の中便利なもので、ビジネスで目立った動きをする人は、本名を調べればインターネットでいくらでも出てくる。

確かに、過去、ある会社でそれなりの地位にまでのぼりつめた記録がよく出てくる。

そして、その前後にいた関連会社のことを調べると、その会社がとんでもない露骨な背任をしていた事件の話が山ほど出てくるのだ。

そのまま、テンションが上がって、事件の第三者報告書(150Pくらい)を読んだところ、その人が、仮名記載ではあるものの主犯のひとりであることが分かり、深夜にひとりで大爆笑してしまった。

ちなみにこの会社の事件、報告書を読みながら、なんか聞いたことあるな?と思ったのだが、当時、あまりのトンチキ事件ぷりに、有名まとめ 市況かぶ全力二階建でおもちゃになっていて、結構お気に入りの事件だったことを思い出した。
つまり「そういうタイプの犯罪」である。


そんなビジネストンチキ界のスターが、まさに私の会社にいるのだ。
こんな面白いことあるかよ。

ちなみに、報告書の中で、彼の発言で
「こんなこと長くは続かないと思ってた、まずいよって。何考えてるのか分からなかった。」
という言葉を見た時は、
これ、私がいま会社で聞いてるセリフとほぼ同じじゃん!!と感動した。
言葉の選び方、言い回しが全く今と同じなのだ。
報告書が脳内音声付きで読めることなど生まれて初めてであるし、報告書の本人の発言って、本当に言った言葉そのまま書いてるんだなぁ…よくできてるなぁ…と正直、興奮した。


それにしても、それなりに名のある一部上場会社でも、そういう人が入り込める余地があることに、かなり驚いた。
うちの会社の脇の甘さと言うか弱体ぶりが伺える。
落ちぶれた会社のリアルだ。


また、その調査報告書をよく読んでみると、
「あれ?これもしかして、うちの会社でもう1回、報告書と同じことやって旨みしゃぶろうとしてない……?」
という気がするのも興味深い。

というのも、これまで、彼の日々の言動や、これからの会社の展望についての語る内容、受発注した案件のお金の動かし方で、多少引っかかることがあったのだが、それが調査報告書に書いてある彼のやり方と近いのだ。

実は以前、彼が顧客に、かなり不思議な支払い方法(というか会計上は厳密にはグレー)を顧客に提案して
「いや、そんな資金回収の仕方あるかい」
と内心驚いたことがあった。
その時は顧客からも
「我社は出来なくないですが…御社のような信用のある会社が珍しいご提案ですね」
と釘を刺され、その場はサッと引っ込めたことがある。

私は会社に帰ってから、ああいう支払いは会計の無理が現場の負荷になるからやめて欲しいと釘をさしたところ、
「普通にやる案件もある。大丈夫。」
としれっと応えられて不思議だったが、
報告書を読んでみると、確かに、彼のやってきた世界の中ではよくあることなんだろう、と腑に落ちる。

長い背任生活のせいで、会計に関する常識が無意識に狂ってしまってるのか、はたまた、もう一度、成功パターンにはめこもうとするために、色々なやり方を小出しにして、周囲を試してるのか。
不思議な動きだ。




報告書の最後には、こう述べられていた。
「彼は事故調査のインタビューに対して誠実ではなかったため全容解明の精度が落ちた。」
「能動的、自発的に事件に関わっていたにも関わらず、主導権はなかったとの認識を崩さなかった。」

こう書くと、極悪人のように見えるが、不思議なもので、日々目にする彼は、そこまでの大悪党には見えない。
よくいるやり手ビジネスマンといった風貌だ。

ただ、本物の詐欺師は、全く詐欺師に見えないのかもしれない。

詐欺師には自分自身も騙すことによって罪の意識なく犯罪に手を染める人がいると聞いたことがある。
この場合、良心の呵責がないので、本人は朗らかでおおらかな人に見えるのだ。言葉にも淀みがないため、嘘をついてるようにも見えない。
まさに、嘘をつかない詐欺師。



問題は、このことを会社がどれ程気づいているかだ。

既に、役員から目はつけられてるらしいが、こういった細かい動きは見てないのではないかと思う。


このまま静かに、この会社の行く末を見守りたい。
未だかつて無いほど、会社が楽しくなってきた。




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