ビジネス

2018.07.18 08:00

福祉を「エンタメ化」したい 知的障がい者と社会の接点を生む27歳の双子

ブランド「MUKU」を展開する双子の兄弟、兄の松田文登(まつだ・ふみと)と弟の崇弥(たかや)(撮影協力:100BANCH)

ブランド「MUKU」を展開する双子の兄弟、兄の松田文登(まつだ・ふみと)と弟の崇弥(たかや)(撮影協力:100BANCH)

ある日、ツイッターを眺めていたら素敵なデザインの「傘」が目に留まった。

あまりにも素敵だったので思わずWebサイトをクリックすると、そこには「MUKU」というブランド名が表示されていた。サイトには、傘以外にもネクタイやブックカバー、レザーボールペンなど、色彩豊かで個性的で斬新なデザインのプロダクトが並んでいる。



「MUKU」。なんて格好いいプロダクトを作るブランドなんだろう──。

調べているうちに、これらのプロダクトは「知的障がい」を持つアーティストが描くアートをもとに作られていることを知り、誤解を恐れずにいえば驚いた。「こんなにも繊細で綺麗な表現をする人たちがいるのか」と。

筆者はこれまで、知的障がいのある方との接点がまったくない人生を歩んできた。だからその傘との出会いは、いち「生産者」と「消費者」という関係で、はじめて筆者が知的障がいのある方と社会的につながった瞬間だった。

「知的障がいのある人と社会の“接点”を作りたい」

そう語り、ブランド「MUKU」の事業を行う27歳の双子がいる。2人に、事業にかける思いや今後の展望について取材した。

福祉への興味と、るんびにい美術館との出会い

知的障がいのあるアーティストが描くアート作品をプロダクトに落とし込み、社会に提案するブランド「MUKU」。展開する松田文登(まつだ・ふみと)と崇弥(たかや)は双子の兄弟だ。2人の上にはもうひとり、先天性の自閉症のある兄がいる。


左が弟の崇弥、右が兄の文登。

「兄が自閉症だったこともあり、小学生の頃から福祉業界への興味は強くありました。土日になるたびに、母親と一緒にいろんな福祉関係者が集まるセミナー、合宿に行ったりして。将来は漠然と福祉の世界で生きていくんだと思っていましたね」(崇弥)

福祉業界への思いはありながらも、2人は大学卒業後、それぞれ別の業界へ就職。兄の文登は建築会社の営業として、弟の崇弥は広告代理店のプランナーとして社会人生活をスタートさせた。

転機は社会人2年目の冬に訪れた。崇弥が母親から、岩手県にある「るんびにい美術館」の存在を教えてもらったという。そこは、知的障がいのある人たちが描いたアート作品が展示されている美術館だった。
次ページ > 「これはやるべきだ」と感じた

文=明石 悠佳 写真=なかむら しんたろう

タグ:

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事

ビジネス

2018.06.02 12:30

発達障害の子どもを支える「株式会社」の挑戦

発達障害サポータースクール

発達障害サポータースクール

大阪市・大阪メトロ南森町駅から徒歩で3分。銀行や飲食店などが並ぶ商店街の賑わいを抜けた一角に、いま注目を集める学習塾がある。
 
発達障害や不登校、引きこもりの子どもたちを専門に預かり個別で指導する「あすはな先生」の教室だ。子どもたちを指導するのは、臨床心理士の資格を持つ専門家を中心に、大学や大学院などで心理学、福祉学、教育学などを学ぶ学生たち。

子どもたち一人一人に対して事前に臨床心理士がヒアリングを行い、発達上の特性や、障害、認知の特性を把握した上で個別の学習プログラムを組んでいくのが強みだ。
 
注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)など発達障害と診断され公的支援の対象になる子どもたちだけではなく、グレーゾーンと呼ばれる「やや不器用な子」や「集団生活が困難な子」など、公的支援の枠組みからこぼれ落ちてしまう子どもたちも入塾が可能で、我が子の生育に不安を抱える親たちの「駆け込み寺」的な存在として注目を集めるようになった。これまでに小・中学生を中心に約560人の子どもたちがここで学んだ。

塾を運営するのはクリップオン・リレーションズ。「あすに花咲くたねを育てる」をモットーに、大学で臨床心理学を学んだ上木誠吾さん(40)が12年前に起業した株式会社だ。仲間の臨床心理士たちとビルの一室で始めた学習塾も、今では大阪、兵庫の3教室に加え、東京での家庭教師サービスの提供や臨床心理士による相談室も開所し規模は拡大している。

膨らむニーズに対応するためには人材育成も欠かせないと、一昨年には「発達障害サポーター’sスクール」を開講。臨床心理士が一般の受講生に対して、発達障害などに関する基礎知識から専門的なノウハウまでを教育する仕組みを大阪や東京でスタートさせた。そこでは、「発達障害学習支援サポーター」という民間の資格を取得できる制度も整えている。

保育園で働く保育士から発達障害の子を持つ親まで様々なバックグラウンドを持つ人々が、知識と資格を求めこの講座に参加している。中には、沖縄の離島からわざわざ受講にきたという小学校の教諭もいた。有料の講座は毎回ほぼ満席で、これまでにのべ3000人以上が受講している。


「発達障害サポーター’sスクール」の講座は毎回満席だ

的確に捉えた潜在的ニーズ

上木さんが「あすはな先生」を立ち上げたのには2つ理由がある。1つ目は「グレーゾーン」の子どもたちへのサポートが不足していることに気がついたからだ。

そもそも、発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と法律で規定されている。

政府の資料によると、特別支援学級在籍者数は、平成16年の9万851人から、平成26年には18万7100人へと増加。通級による指導を受けている児童生徒数も、平成16年の3万5757人から、平成26年の8万3750人へと増加傾向にあるというデータがある。いずれも、発達障害を持つ子どものニーズが増えているからだとされている。
次ページ > 6.5%の子どもたちに支援を

文=堀潤

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事