狩人さんが今度はテラの大地に赴くようです 作:ron3studio
そう言えばお気に入りの数が500件を超えてました、本作がここまで続いてるのも、皆さんの応援のおかげです!本当にありがとうございます!(もっと感想くれたって良いのよ)
誤字報告もちょいちょいしてくださって本当にありがたい限りで……。
「ケルシーよ」
「どうした」
「貴公、以前にメイドふk」
「Mon3tr、やれ」
「聞いただけではないか!!!ええい何度も同じ轍を踏むと思うな!」
(楽しそうな咆哮)
逃げる狩人、追うMon3tr。
スリル溢れる鬼ごっこが今始まった。
「やはりScoutの隊は来ていないのか」
「どちらにせよ、今の我々に待つ余裕はない。あまり考えたくはないが、切り捨てる覚悟もしておかねばなるまい」
「そうだな……にしても、静かだな。ドクター、罠だと思うか?」
「いや、ただ……」
「どうした」
ドーベルマンの問いに、口籠もるドクター。
それと同時に、PRTSから一つの警告が発せられる。
"後方の熱源に注意してください"
ドクターが持つ端末には、一行の後方に広くCAUTIONと表示されている。
「火災……でしょうか?」
「確かにそこら中で火の手は上がっているが……まさかな」
アーミヤにドーベルマンも端末を覗き込んで見るが、やはりその警告がどれについての物なのかが断定出来ない。
「うーむ……」
それを隊の先頭から聞いていた狩人は、自身の脳裏に一つ、嫌な予想が思い浮かぶ。まさかそんなことはな……と。
「我々が広場を偵察してこよう。もしもの時は援護を頼む」
「了解した、我々は後方を警戒しつつ待機。Ace、お前……ここで何かあったのか?」
「あぁ、いや。なんでもない。昔の話だ、いずれ気が向いたら話す」
ニアール隊が偵察に向かい、何処か遠くを見ているような雰囲気のAceにドーベルマンが声を掛ける傍ら、狩人はドクターに近付いていた。
「……貴様はどう思う?」
「このままだと、危ない……」
狩人がドクターに現状について聞き、それにドクターが答えた時。二人が同時に後方へと視線を向ける。
「広場に、逃げよう」
「……名案だな」
「どうした?」
「逃げよう、今、すぐに」
先ほどよりも強く、PRTSが警告を発する。
"熱源に注意!!"
「退避!退避!」
「舌を噛まないようにしておけ!」
自分が選択を迫った手前、親子を見殺しにするわけにもいかないので片手で親を俵のように、子は空いているもう片方で横抱きのように器用に抱えて走り出す狩人。
ドクターはアーミヤに連れられて無事に退避しているのを確認し、少し安堵する。
「うっわ……恐ろしい火力だな……」
なんとか炎に巻き込まれる前に退避できた狩人は、抱えた親子らを下ろしながら柱に衝突する熱の塊を見て戦慄する。
あれでは炎ではなく、マグマのようではないかと。
「あ、ありがとうございます……」
「気にするでない。助けた手前、見殺しには出来ん」
狩人の悪い予想は当たった。
今一番、彼等が会いたくない人物が、すぐそこまで迫ってきているのだ。
「レユニオンのリーダー、タルラ……いやはや、人の身でここまでの力を行使できるとはな。恐ろしいものだ」
「退路を確保しましょう、ドクター、応戦のし—」
もう一度、熱塊が飛来する。
それは対岸の建物を崩し、更なる衝撃をロドスに与えた。
辺り一帯が、熱に支配される。
「お前たちは、真に我々の側に立つべきだった」
「感染者が何をした」
「無辜な人々が、何をした」
「お前たちに、何ができる」
「口先だけの理想論者に、何ができる」
「ここまでだ」
「想いは誰にも届かない」
「甘い夢は、叶わない」
「私が好む結末を、教えてやろう」
「滅びよ」
「ならば、私の好きな結末も貴公に教えてやろう」
炎の中から狩人が飛び出し、タルラへと斬りかかる。
が、アーツによって発生させた防壁のような物に阻まれ弾き飛ばされてしまう。
「チッ……そう簡単にはいかんとは予想はしていたが。実際そうなると面倒この上ないな。アーミヤ、立てるか?」
「は、はい。大丈夫です」
「ほう……お前が、ハンターか。その類稀な力、我々の為に奮って欲しかったものだ」
「私をコキ使っていいのは
狩人がアーミヤ達の前に立ち、タルラと睨み合いをして時間を稼ぐ。この数秒でも、貴重な物なのだと。
「ハンターさん……!」
『Ace、煙幕はまだ張れるか?』
『いや、公園の時に使い切っちまった』
タルラに気付かれないように通信機越しに聞くが、帰ってきたのは無慈悲な現実。狩人は脳内でここから撤退する手立てを考え出す。
『なら——』
やはりと言うべきか、至った結論は自分自身が囮となる事であった。死んだとしても問題ないのならば、囮には適任過ぎるだろうと。
「逃すとでも?」
「ッ—」
様子見をしていたタルラが、動き始める。
手を翳し、アーツを放つ。それは恐ろしいほどの勢いを持った炎で、狩人を飲み込み、アーミヤたちをも飲み込まんとする。
「ガァッ!!!」
だが、それは月光によりかき消される。
炎が晴れたそこに立っているのは、薄暗く光を纏う聖剣を携える狩人。
「ほう……」
「……今のは、中々効いたぞ。だが、私を殺すには少々足りんな」
全身を焼かれ、死んでないのが不思議な程に命の瀬戸際に立っている狩人は、余裕そうにタルラへと言葉を投げ掛ける。実際の所は死にかけ、ペラさはピカイチである。防具はオシャレなヤーナム出身者に防御力を期待してはいけない。
「タルラへ、一斉射撃。ハンターの援護を」
動きを止めたタルラに、クロスボウが放たれる。狩人が稼いだ時間はほんの少しだったが、だかしかしそれは、確かに意味のあるものであった。
体勢を立て直したオペレーター達による集中攻撃は、狩人が輸血液を使う時間を稼いだ。
「うぉぉぉ!!!」
立て続けにドーベルマンとAceが攻撃を仕掛けるが、どちらも容易く防がれてしまう。
「動きを止めた理由は分からんが……逃げるには千載一遇のチャンスであろう」
「だな、ドクター。指揮を頼む」
『崩れた建物の瓦礫に、一箇所隙間がある。そこを抜けよう。広場を出れば脱出ポイント付近に、身を隠せる場所が—』
全員が、空を見上げる。
人の身では抵抗すらも許されぬ天災が、訪れていた。
「……今か」
源石が降り注ぎ、悲鳴が溢れる。
平静を失い、自分だけはと動いた者が、命を落とす。
『よせ!闇雲に走り回るな!』
「助けて……!死にたくない、死にたくない!」
力無き者は、どうしようもない恐怖に直面した時ただ蹲ることしか出来ない。
「皆さん!私から、離れないでください!」
アーミヤがアーツを展開し、天災から皆を守ろうとする。
だが、それはアーミヤに多大な負荷を掛け、本人の体力を急速に奪い取る。
「私がタルラを止めておく、天災が落ち着いたらすぐ様逃げろ、良いな?」
「ハンターさん!ダメです!」
「この程度では死なんさ」
狩人がアーミヤのアーツの庇護下から飛び出しタルラへと肉薄する。
降り注いでくる天災など無視して、タルラに攻撃を仕掛ける。
月光を纏った聖剣はアーツの防壁を破りはしたが、しかし細長い剣によって防がれてしまう。
「ようやくアーツ以外を使ったな!」
本人の近い所まで届くのならばやりようはあると、狩人はそう思い聖剣を振い続ける。振るう、防がれる、振るう、防がれる。それを何度も繰り返し、ただひたすらに時間を稼ぐ。
タルラがアーツを放つ、それをギリギリで避ける。通信機が焼け落ちる。狩人にとってなんら問題はない。
「ハンター!援護する!」
「は?Ace、な—」
戦闘に集中している狩人が、Aceが通る直前に逃げ道が天災により塞がれてしまったことなど気付ける筈もなく。
"全員"逃げきれたと思っていた狩人は1ミリも考えていなかったAce、その小隊の面々の登場に気を取られてしまう。
だが、それが致命的であった。視線をタルラから外した瞬間に途轍もない速度で飛来してくる槍に反応出来ず、直撃してしまい吹き飛ばされていった。
———
「ぐ……ゲホッ、生きてる、のか」
狩人が次に意識を覚めした時、まあよく生きているものだと思わずにはいられない状態だった。
槍が体の中心から逸れたのか、左腕が丸々消えており、その余波なのか胴体も少し抉れている。いくら血の医療を受けた狩人とて、この状態で生きているのが不思議な状態であった。
「えらく吹き飛ばされたな……早く援護に行かねば。彼らの命は一度死ねば消えてしまう……Aceには、まだ生きてもらわんとな」
兎にも角にも、このままの状態だと死が訪れるのは明白なので、狩人は輸血液を使おうとポーチの中を探り始める。
吹き飛ばされ、建物を勢いよく貫通したせいかポーチの中にあった輸血液は一つを残して他全てが割れていた。
「いやはや……これは厳しいな。フゥー……だが、それがどうした」
最後の輸血液を使い、体を回復させていく。
とは言っても、欠損した腕がにょきにょき生えてくるわけでもなく。ただ傷口が埋まる程度。いくら血の医療とはいえ、そこまでは出来ないのだ。
「さて、とっとと戻らんとな。これ以上はAceが危うくなる」
傷口も埋まった狩人、側に落ちてあった聖剣を拾い立ち上がる。
これまでも敵が死ぬか、自分が死ぬかの2択が訪れるまで戦い続けたのだ、それは今回も変わらない。
———
「ハァ……ハァ……」
左腕は無くなっちまって、盾はもう使い物にならなくなって捨てて、全身傷だらけだ。相手のレユニオンは幹部も勢揃いで、どう足掻いても勝てやしないだろう。
だが……もう少しだけ、もう少しだけ時間を稼ぐ必要がある。まだ、アーミヤたちが無事に撤退できたと確信できない。それに、Guardが逃げる時間もいる。ハンターは生きてるのか分からないが……まあ死んでた所でまた生きて帰ってる、心配は要らないな。
「終わりだ」
タルラのアーツが俺に向けられて放たれる。盾なら受け止めれたが……生憎その盾も数回アーツを受け止めたら使い物にならなくなって捨てた。このご自慢のハンマーで弾いたりは……絶望的だろうが、それで諦める理由にはなりはしない。
エリートオペレーターが諦めたら笑い者にされるからな。
「いいや終わらんさ」
……生きてたのか。
「すまんAce、遅れた」
タルラのアーツをいつも握りしめている大剣で掻き消したハンターが、目の前まで来た。
左腕は無くなって、胴体の左側の服が千切れて無くなっている。あの槍を受けて生きてる方がおかしいと思うんだが。本人はピンピンしてる。
「貴公はこのままアーミヤたちに合流を……と思っていたが、もう撤退した後なのだろうな。ならば、こうするしかあるまいて」
「何を言って……!?なんだ"コイツら"は!ハンター、お前何を!」
ポツリと何かを呟いたと思ったら、俺の体に白い子人のような不気味なヤツらが現れた。ソイツらは俺をどこかに引き摺り込もうとしてくる。
「あぁ、安心したまえ。少しの間夢を見るだけだ、夢から覚めたら、またいつものロドスにいるだろう」
その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。
次に目を覚ましたら場所は、ロドスの甲板の上だった。
———
「フ……いやぁ負けた負けた。だが……時間は稼がせて貰ったぞ」
体の至る所にナイフが突き刺さり、生命線とも言える足は白い術師のアーツで氷漬けにされ、残った右腕もあの恐ろしい威力のクロスボウで吹き飛んだ。
まあ、時間稼ぎとしては充分だろう。だが……悔しいな。再戦の機会があれば次は必ず勝つとしよう。
「レユニオンのリーダー、タルラ……いや、名も分からぬ者よ。貴公、人の体を勝手に奪って使うのは少々人としてどうかと思うぞ」
私の言葉に反応する訳もなく、まぁー熱いアーツで焼かれて終わり。
いつもの感覚だ。狩人の確かな徴を使う手間が省けたと言えばそうだが……血の意志を落とすのがなぁ。作戦前に水盆の使者で買い物をして使ったから落とす量は少ないが……勿体無い。
うむ……ロドスに戻ったらケルシーを誘って紅茶でも飲むとするか。
狩人さん、頑張るの巻。
レユニオンの幹部のヘイトを一身に受けるぅ?(狩人なら)できらぁ!
尚生き残れるとは言っていない。
ちなみに狩人さん、助ける対象は面識のある方々とケルシーに限定されますから、Guard君のようなモブオペは結構切り捨ての対象になります。
本作の輸血液ですが……傷は瞬時に回復できても、欠損部位は生えて来ないんでは……と思いあの表現になりました。正直何が正しいのか分からん。
狩人さんはこの後生き返ったら服も武器も全部元通り、夢オチってスゲー()
狩人さんは今後ケルシーを守れると思う?
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思う
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思わない