狩人さんが今度はテラの大地に赴くようです   作:ron3studio

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「所でケルシーよ」

「なんだ」

「何故そんなスケスケの……布面積の少なさに対して疑問を覚えるような服を?」

「……知りたいか?」

「もちろん」

「Mon3tr、やれ」

(楽しそうな唸り声)

「なんでぇぇぇぇぇぇえ!!!!」

Mon3trにズタボロにされた狩人であった。



「自信満々で突っ込んだのは私だが……あの感覚には流石に肝が冷えた。テラにもアメンドーズが居るのかと思ったぞ」

 

 

「ふーむ」

 

ギィ……ギィ……と木の軋む音を立てながら、安楽椅子に揺られるは狩人。彼はその膝に抱えたものを落とさぬように腕で支え、何やら考え込んでいる。

 

「ソレは、色々と根深く、そして貴公を守る物でもある故になぁ……現状、対策手段としては記録を取って備える……が最適解か」

 

ゆらり、ゆらりと、心地よい揺れを感じながら、大切に抱えたものを撫でる。

 

「ロスモンティス、貴公がいつの日か、普通の少女として生きれることを……一人の人間として祈ろう」

 

狩人は一人、自身の膝の上で眠る小さいフェリーンを抱えながら祈りを捧げる。彼が神に祈りを捧げる聖職者でなくとも、この大地に神など居なくとも、彼は人として、彼女の幸福を祈る。

 

「ん……んにゃ……ふぁ」

 

「おっと、すまない。起こしてしまったかな?」

 

「いや、違うよ……おはよう、ハンター」

 

「ならば良いのだが……おはよう、ロスモンティス」

 

狩人の膝の上で午睡を取っていたのは、ロスモンティスと呼ばれる少女であった。

彼女は未だ眠気が取れきっていないのか、目を軽く擦り、手櫛で髪の毛を梳いたりしている。

 

「さて、午後の予定は何があるのだ?」

 

「んにゃ……えーっとね……アーツの訓練があるよ」

 

ロスモンティスは記録装置を取り出し、今日の分の予定をもう一度見返す。その事を忘れた訳ではないが、眠気覚ましと忘れたくない、という気持ちが織り混ざっているのだろう。

 

「そうか、最近はどうだ?制御出来るようになったか?」

 

「うん。前みたいに、ハンターを傷付けることは無いと思う」

 

「そうか……私としては過去のことだから忘れても良いと思ってるが……うむ、偉いぞ、ロスモンティスよ」

 

「にゃ……ありがとう」

 

雑談を交わしながら、狩人はロスモンティスを撫で。ロスモンティスはされるがままに。文字の説明だけ見れば心温まる場面だが……狩人の服装がドクターにも負けず劣らずな不審者スタイルな為、二人の仲の良さを知らない者が見たら事案かと疑ってしまうだろう。

人は見た目で判断しがちなのだ、悲しいことに。

 

「さあ、そろそろ時間だろう?気を付けて励むようにな」

 

「うん、行ってきます。また今度アーツを教えてね」

 

「うむ」

 

そうしてゆったりとした時間は終わり、ロスモンティスを見送った狩人は一人ごちる。

 

「いや、私はアーツを教えれんがな……あのアーツが少々似通った点がある故にもしかしたら行けるのでは?と思ってちょっと教えただけなのだが……まあ、本人の為になっているから良い……のか?」

 

「にしても、子供の成長とは早いものだな。初めはあれだけ荒れていたアーツも、今や殆ど制御出来るようになって……嬉しいのか悲しいのかよく分からんな……」

 

今ではロスモンティスもエリートオペレーターの一員としてこのロドスにおり、頻度こそ高くはないものの必要な場合は作戦に参加しその力を振るうのだ。

彼女の武器として扱われるユニットは、アーツによって思うがままに動き、そして恐ろしい破壊力を知らしめる。

大質量の塊がかなりの速度で飛んでくるという一点のみだが、だがそれだけで恐ろしい兵器と化す。その破壊力は敵の陣地を容易く破壊し、余波ですら気を抜けば致命傷になり得るだろう。

 

「ハァ……この大地は分け隔てなく優しくないな」

 

そうして狩人は立ち上がり、過去の出来事を思い出しながら何処かへと歩みを進めた。

 

 

———

 

 

過去 ロドス本艦

 

 

「ここが例の?」

 

「あぁ、精神が不安定な状況でアーツも制御が効いていない。どうにか落ち着かせたいが……今は対処出来るオペレーターが居ない」

 

「それで私を呼んだのだろう?任せたまえ、しぶとさには自信がある故な。一撃で死なん限りはなんとでもしてやろう」

 

「すまない……」

 

「謝るでない。友を助けるのは当然のことだろう?なぁに子供の相手なぞチョチョイのちょいよ。では、吉報を待っておけ」

 

長くはない会話を交わし、ケルシーの心配気な視線を背中に受けながら狩人は一目見て分かる明らかに"何か"を隔離するための扉を開けた。

 

「ここは実験室か何かか?さて……おじょ—ぐぅっ!!!」

 

壁一面白一色の部屋の中に入り、その中心で蹲る子供に声を掛けようとした時、狩人は見えない"何か"に掴まれる。

 

「アメンドーズではッ、ない……!?なる、ほど……!これはッ……中々……!」

 

自身の啓蒙ならば、アメンドーズは必ず見える。だが見えないのならば、いま自身の肉体を掴み握りつぶそうとしてくるのはアメンドーズではない"何か"だと判断する狩人。

どうにか見えない"何か"を振り払い、蹲る少女へと近付く。

 

「……あなたは、だれ?」

 

「自己紹介は後にしよう、ここでは邪魔が入るのでな」

 

少女の額に手を翳し、意識を夢へと落とす。狩人の夢の中ならば、"何か"の邪魔なく会話が出来るだろうと踏んでの行為だった。

 

「あー、ボロボロの監視カメラだが……まあまだ機能が生きてると祈って見えている前提で話す。そこまで長くはないが夢に戻る。この少女と話さねばならんのでな。では、また後で」

 

「……この部屋はベッドも無かったな……ええい、寝心地は悪いだろうがこれで勘弁してくれたまえよ……!」

 

狩人は意識が夢に移った少女の体を横たえようとし、ベッドでもないかと無意識に視線を走らせていたが……そんな物はなかった。部屋に入った時点でそんな物はないと分かってはいたのだが、なんちゃってアメンドーズ体験のせいで頭の中から抜け落ちていたのだ。

狩人は仕方なく、自身のコートを床に敷き、その上に少女を横たわらせてから、狩人の夢へと戻った。狩人が居なくなったその部屋には、少女の穏やかな寝息のみが響いていた。

 

 

 

———

 

 

[狩人の夢]

 

 

「あれ……ここ、どこ?」

 

少女——いずれロスモンティスというコードネーム……いや、名前が与えられる彼女——が目覚め、周りを見回す。そこは先ほどでいたあの狭い部屋ではなく。凄く明るい訳ではないが、しっかりと物が見える程度には明るさがある少し大きめの小屋のような建物の中に居た。

自身が座っている椅子に、小さめのテーブル。棚に収納されてあるカップ類……その空間は妙に、ロスモンティスに安心感を与えた。

 

「お目覚めかな?おはよう、お嬢さん。ここは狩人の夢、ただ一時とて貴公を悩ませるものから逃れられる場だ」

 

「……あなたは?」

 

ぐるりと室内を見渡して棚の中のカップ類に視線を向けていた時、誰かから声を掛けられ、ロスモンティスは声のした方向を向く。大きく開いた入り口に人が立っているのが見えた。

 

「おっと、そういえば自己紹介がまだであったな。私はの名前は狩人(ハンター)だ、仲良くしていこうではないか。して、貴公の名前は?」

 

ハンター=狩人と名乗った人は少女に近付き、やがて隣にあった椅子を少しずらしてから座った。帽子を深く被り、顔を隠し、素肌を一切見せないような服装をした彼はどう見ても怪しいが、ロスモンティスはどうしてか、狩人に対して警戒心を持たなかった。

 

「わたし……私のなまえ、わからない……」

 

「おや、記憶喪失か。なるほど、同じ仲間だった訳だ」

 

「……あなたも?」

 

「うむ、このハンターという名前を使うのも、本当の名前を忘れてしまったからだ」

 

「そうなんだ……」

 

「さて……落ち着いたか?」

 

「うん、ここは……怖くないんだね」

 

「ふむ?まあ先ほどの真っ白な部屋に比べたらまぁ……マシな方ではあろうな。ここには貴公が嫌と思うものはないぞ、安心したまえ」

 

「よく分からない機械に、私を閉じ込める狭い部屋も……?」

 

「無いとも。あっ、花畑ならあるぞ?私が管理してる訳ではないが……見に行くか?」

 

「……行ってみたい」

 

「では行こうか。あぁ、足元に気をつけたま……待て、靴を履いてないじゃないか」

 

「このままでも、別にいいよ?」

 

「いーや私が良くない、一応舗装はされているが石ころとかがそこらに落ちているし、足に傷がつく可能性がある……とは言え、今の貴公の足のサイズに合う靴も無いだろうし。どうしたものか……あっ」

 

「?」

 

「貴公次第ではあるが、今の状況を打開する方法を思い付いた」

 

「なに?教えて」

 

「私が貴公を抱えていけば良いのだ。それなら靴がなくても貴公の足を傷付けずに花畑を見に行けるぞ」

 

「いいと思うよ」

 

「そうか、なら……えっ?良いのか?」

 

「うん」

 

「初対面でこんな格好の奴だが?本当に良いのか?」

 

「?……あなたは嫌な感じがしないから、良いよ」

 

「まあ、そういうならそうするが……では、失礼するぞ」

 

「うん、いつでもいいよ」

 

「ふんっ……何か不満などがあれば、すぐに言って欲しい。私では気付けないだろうからな」

 

「わかった」

 

「では、行こうか」

 

ロスモンティスを抱えた狩人は、万が一転んで怪我をさせてしまう。なんて事が無いように細心の注意を払いながら、花畑へと向かった。

そうして狩人に抱えられ、普段よりも高い視点で動く景色を眺めていると、階段の終わり際に何やら高身長の人?がロスモンティスの視界に入った。

 

「狩人様、その方は……」

 

「新しい客人だ。何やら記憶が無いらしくな、名前は分からん。今は花畑を見に行こうとしておる」

 

高身長な人?はよく見れば手の関節部分が人にはない球体関節で、ロスモンティスに彼女?は人ではないのだと教えてくる。

 

「この人は……?」

 

「彼女の名前は人形だ、人ではないが……まあ殆ど人間と変わらぬ」

 

「ふぅん……よろしくね、人形さん」

 

「何かあれば、お申し付けください」

 

短いやり取りを交わし、再び視界が揺れだす。

外周を回っていくようなルートで、ロスモンティスは遠くを見る。何かよく分からない柱のような物があって、けどそれ以外は何も見えない。

自分を抱えている人が夢と言うだけあって、ここは変な場所だとロスモンティスは思っていた。

 

「ここだ。今扉を開ける故な、少しの間だが降りてくれ」

 

「わかったよ」

 

狩人はロスモンティスを降ろし、花畑へと繋がる鉄柵の扉を開く。

入り口から見えた景色は、ロスモンティスを夢中にさせた。

 

「わぁ……きれい」

 

「ここでは良く見えんだろう、じっくり鑑賞するのは中に入ってからにしたまえ。さ、もう一度抱えるぞ」

 

「うん」

 

もう一度ロスモンティスを抱え、花畑の中へと進んでいく狩人。

その場所は、狩人にとっては色々と思い入れのある場所であり。ロスモンティスにとっては心の安らぎが得られるような場所だった。

 

「ねぇ、自分で歩きたい」

 

「だが足が……」

 

「気にしないから、お願い」

 

「むぅ……分かった。だが、足元には気を付けるようにな」

 

ロスモンティスに頼み込まれ、狩人は彼女を降ろす。

地に足をつけた彼女はゆっくりと、花を避けながら歩いていく。あの冷たくて無機質な床じゃなく、土の感触を足で踏みしめながら。狭い部屋じゃなくて、広々とした空間を。

 

「私ね、記憶を失うのが怖いの。忘れたくないって思っても、忘れて……今も、何も覚えてないの」

 

歩いていたロスモンティスが歩みを止めてぽつりぽつりと話し始める。彼女の後ろを邪魔にならない距離で後ろを歩いていたら狩人も止まり、聞き始める。

 

「ねぇ、どうすれば良いの?忘れたくないのに……忘れちゃうの」

 

「そうだな……個人的な考えだが。人の記憶とはいずれ消えるものだ。嫌なことでも、嬉しかったことでも変わらずだ。それ以外でも、何かしらの意味がある。ならば、貴公のそれも理由があってのことだろう」

 

「……」

 

「なに、忘れてしまうのが嫌なら、どうにかして覚えておけば良いのだ。自分の力では無理なら、他の人や物を頼る。そうしたら自分が忘れたとしても、他の人や物が記憶してくれているだろう?」

 

「そう……かな」

 

「それに、頭が忘れたとしても存外体が覚えているものだ。だからまあそこまで悲観せずとも良いのではないか」

 

「……あなたは、私のこと覚えていてくれるの?」

 

「頼まれずとも、覚えておくとも」

 

「そっか……なら、良いのかな……うん、少しだけ、気持ちが楽になった気がする。ありがとう」

 

「子供を助けるは大人の役目ゆえな……さて、ここに長居するのも余り良くない。そろそろ戻るか?」

 

「あの部屋に……?怖いよ……」

 

「なに、貴公一人であの部屋に戻る訳ではない。私もおるからな」

 

「ほんとう……?」

 

「あぁ」

 

「なら……戻るよ」

 

「そうか。なら、目を閉じて深呼吸をするんだ。そうしたら、いつの間にか戻っている」

 

「うん……」

 

ロスモンティスを安心させるために手を握り、彼女が夢から覚めるまで待つ。少しすれば、彼女の意識がこの夢から離れ出したのか段々と体が消えていく。

 

「さぁ、次は現実で顔合わせをしよう」

 

そうして、狩人は一人花畑に佇む。

ゲールマンと戦い、月の魔物もここで狩った。あの時白い花を染め上げた血は一つも残っておらず、ただ狩人の記憶のみが、その出来事を事実として肯定する。

 

「戻るか」

 

そうして、花畑には誰一人として居なくなった。

人形が二人とも夢からいなくなったのを確認し、花畑に繋がる鉄柵の扉を閉める。またここが開かれる時は、そう遠くない内に来るだろう。

 

 

———

 

 

現在 ロドス本艦

 

「ふは……懐かしいな」

 

狩人はロスモンティスとの初対面の頃の事を思い出し、笑う。

あの真っ白な部屋も、彼女が嫌いと言っていた医療機械も、今では形を変えて。彼女は怖がらないようになった。

 

夢から覚めた後は、精神も安定し始め、いつの間にかアーミヤと仲良くなっていたし、記録装置も持つようになっていた。

オペレーター訓練も受けてより一層の安定を示すようになり、あのなんちゃってアメンドース体験は一回きりだった。

 

「ロスモンティス……やはり良い名前だな」

 

ある日、自分の元を訪れた少女はこう言った。

「名前、貰ったよ。ロスモンティスっていう名前」

恐らくは貰ったばかりであろう名前を記録したのか、記録装置を大事そうに抱えながら、ロスモンティスはそう伝えてきたのだ。

 

「やはり人とは素晴らしいものだ」

 

 

 





ちなみに狩人はロスモンティスからしたらよく分からないけど安心するおじさんorお爺ちゃんポジの人。


大変お待たせしました。
やる気 is deadしてました。ごめんちゃい。
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