狩人さんが今度はテラの大地に赴くようです   作:ron3studio

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ロドス編に突入〜!


「所でケルシーよ」

「なんだ」

「ヤーナムステップを教えたのだからモツぬk」

「Mon3tr、やれ」

「ちょ、待ちたまえ!まだすると—ぎゃあぁぁぁぁぁあ!!!」

狩人の扱いが雑になってきたケルシー先生であった。





ロドス編
「いやぁ、まさか私がヤーナムステップを教えるとは……想像もしていなかったな」


 

 

ロドスアイランド製薬。

鉱石病の治療・根絶を掲げているその会社には、新入社員を主として何やら不思議な噂……と言うよりは話が広まっている。

 

常に宿舎の隅で安楽椅子に揺られている男と側に立つ女性が居る。

と言う話から始まり。

やれ常に帽子を被り顔を隠している見たこともない服装の男性がいる。

やれ高身長でかなりの美貌を持つ女性は人間ではなく人形である。

やれ格好の怪しい男性が食事をしている所を一度も見たことが無い。

やれその男がケルシー先生と親しげに話しているところを見た。

やれ男がエリートオペレーターと対等に渡り合っていた。

等々……。

 

それらは全てが狩人と人形の話だった。

さて、そんな話の対象たる狩人と人形は何をしているかと言うと。

 

「……」

 

「……」

 

狩人は木製で少々年季の入った安楽椅子に座り揺られ、人形はその側で静かに立っていた。

 

「お、ハンターか。こんな所で何をしてるんだ?」

 

ゆらりゆらりと揺られていた狩人に話しかけてきたのはバベルから所属しているエリートオペレーターの一人、Aceであった。

 

「見て分からんか、休憩している」

 

「疲れ知らずなアンタがか?」

 

「そうとも、とはいえ本当に疲れたから休憩してる訳ではないのだがなね」

 

「そうか、そういえばブレイズが探していたぞ」

 

「ブレイズがか?はて……特段私を探すような理由が思い当たらんが」

 

「さぁな、とりあえず一回顔出しに行ってやったらどうだ?訓練室に居ると思うぞ」

 

「そうするとしよう。人形ちゃんも自由に何かしてて良いのだぞ?」

 

「では、クロージャ様の所に行ってきます」

 

「うむ、道中気を付けたまえ。では行ってくる」

 

そうして狩人と人形がそれぞれの目的地へと向かい宿舎を後にし、残されたAceは一人ごちる。

 

「アンタがちゃん付けで呼んでるの慣れねぇな……」

 

恐らく関わりのある人物全員が思っている事であった。

そりゃ普段硬めの口調で話す奴が急にちゃん付けしてるの聞いたら耳を疑うのも致し方無し。

 

 

———

 

 

特に急ぎの用事でも無さげ(狩人の判断)なのでバベルの時からは様変わりした艦内の内装を見ながらゆっくりと訓練室へと向かい、扉を開けて入る。

 

「お、やってるやってる」

 

そこには模擬戦闘用に区切られたルームで一人ダミーを相手に回避、攻撃を繰り返すブレイズの姿があった。

 

「うーむ……実に素晴らしい。もう私から教える事も無いな、これは」

 

自身がブレイズに対して教えた獣狩りの狩人が用いる、通称ヤーナムステップ。ブレイズはその教えを殆どと言って良いほどに吸収学習し、自分の物へと昇華させていた。

 

「最初はあんなに下手っぴだったのが……変わるものだ」

 

狩人はじんわりと目頭が熱くなる感覚を覚えながら、ブレイズとの特訓の日々を思い出し始めた。

 

 

———

 

 

「初めまして!ケルシー先生から『ハンターを尋ねると良い、君の力になってくれる』って言われたから来たんだけど、君がハンターって人?」

 

あれは凡そブレイズがロドスへと来てから2年が経った頃のある日、彼女は突然狩人に元気な挨拶をお見舞いした。

理由はケルシー先生から尋ねると良いの一つだけ。

当時狩人は何故私に……?と思っていたが、ブレイズのアーツを考えると理にかなっている人選であった。

ブレイズのアーツは血液を用いる物であり、アーツの使用と敵からの攻撃を受けて血液を流しすぎてアーツが使えません、戦闘継続不可能です。という事態を避ける為にケルシーは狩人を選んだのだろう。

 

「何やら元気溌剌な者が来たな……私がハンターだ。それで、何用だ?」

 

「えーっとね……あ、そうそう!回避の仕方を教えて欲しいの!」

 

「回避ぃ?敵の攻撃を避ける?」

 

「そう、その回避」

 

何も考えずに選び読んでいた本を読む手を止め、ブレイズへと向き合う。狩人は彼女の瞳を見つめ、嘘は言ってないな……と判断し本を閉じて立ち上がる。

 

「ふむ、では貴公の要望通り、私なりの回避の仕方を教えてやろう」

 

「本当!?ありがとう!」

 

「感謝は後に取っておきたまえ。まだ教えておらんのだからな」

 

椅子にどっかりと座り込んでいた狩人が立ち上がり、ブレイズに着いて来いと目配せをしてから宿舎を後にした。

 

 

———

 

 

訓練室

 

「さて、まずは回避がどんな物なのかを教えようではないか」

 

「えっ?敵の攻撃を避ける事じゃないの?」

 

「大雑把に説明すればそうなる。だが何故敵の攻撃を避ける?別に敵の攻撃なんぞ受け止めれば良いではないか?」

 

「受け止めれない攻撃だってあるし……」

 

「そう、そこだ。別に受け止めれるならそうすれば良い。そうしないのにはそれなりの理由があるからだ。例に挙げるなら……自分よりも膂力に優れた相手からの渾身の一撃を貴公はどうする?」

 

「うーん……避けちゃうかなぁ」

 

「何故?」

 

「だって自分よりも力が強いんでしょ?そしたら受け止めても押し切られそうだし、一か八かの賭けをするくらいなら避けるよ」

 

「うむ、その攻撃を受け止めてはい終わりでは無いからな。その後の事も考えねばならん。とまあ今例に挙げたように回避は自分が受けたらマズイ攻撃を避ける物だ。別に受け止めれるなら防御すれば良いがな。あ、私は防御の仕方なんぞ全く分からんからそれについては他の者に聞きたまえ」

 

獣狩りの狩人が回避に重きを置くのも、獣の膂力に対してヤーナム、ひいてはあの世界での文明レベルでは有効な防御手段を用意出来なかった。と言う点が挙げられる。

それと同時に、全ての狩人の始祖たるゲールマン、彼の狩人としての服装も日常生活の服装を改良した物だったのも理由の一つなのだろう。

 

「ふーん……ちょっと気になったから聞いてもいい?」

 

「構わんぞ」

 

「なんでずっと顔隠してるの?」

 

「……落ち着くから?」

 

「なんで疑問系……」

 

「ぶっちゃけ私にもよく分からん。まあ気にせんでくれ」

 

今の今まで狩人装束に身を包んできた狩人からすれば、これがベースなので細かい所なんて気にすることも無く。更には特段外す理由も無いのでずっと不審者スタイルを続けていたのだ。

 

「え〜」

 

「さて、そろそろ実践編と行こうではないか。何、ミッチリ教えてやるとも」

 

 

———

 

 

「回避した後はしっかりと地面を踏みしめろ、回避したせいで体勢を崩しましたなど笑い話にも出来ん」

 

「簡単に言うけどさぁ!」

 

「私は出来るからな。なに、慣れたらすぐだ」

 

 

———

 

 

「時には敵の懐に潜り込むのも有効だ、勇気の前ステップ、覚えておくと良い」

 

「そんな危なっかしい事そうそうしたくないなぁ」

 

「頻繁にしろと言っているわけではない。人間相手に同じことを何度もやれば学習されてしまう、故にここぞと言うときにするのだ」

 

「はーい」

 

 

———

 

 

「まあ、初日にしては中々良い感じではないか」

 

「つっかれた〜!」

 

「今後は通常の訓練に加えて回避の訓練もしたまえ。私が見れる時は見ながらアドバイスをする」

 

「いいの!?」

 

「頼まれたからには最後まで面倒は見るとも」

 

ぜぇぜぇと息を荒げるブレイズを見下ろしながら今後どうするのかを話し、脳内で今後の事をシュミレートしていく狩人。

出た結論としては、「どうせ大体暇だし、まあ最後まで面倒みるか」であった。

 

「ありがと〜!シャワー浴びたら飲みに行こうよ!」

 

「私は遠慮しておく。Aceでも誘いたまえ。ではここら辺で失礼するとしよう」

 

「え〜、まあ良いけどさ。それじゃ、また明日!」

 

「うむ、飲むのも程々にするようにな」

 

「ケルシー先生みたいなこと言わないでよ〜」

 

ブレイズが意気揚々と飲みの誘いをするもすぐさま断り、そのまま訓練室を出ていく狩人。出ていく間際にはブレイズに飲みすぎないようにと釘を刺し、てくてくと通路を歩いていく。

 

「さーて、ケルシーの様子でも見に行くとしよう」

 

どうやら次はワーカーホリックのフェリーンの様子を見に行くようだ。

恐らく、休憩がてら紅茶でも飲ませる算段なのだろう。

 

 

———

 

 

「……ター!ハン……!」

 

「ん?」

 

狩人が過去の出来事をしみじみと思い出すことに集中してあると、何やら自分を呼んでいるような声が聞こえてくる。それに釣られて意識を声の方に向ければ、狩人の目の前でぷーっと頬を膨らませてるブレイズが居た。

 

「なんだ、ブレイズ」

 

「呼んでるのに無視するのはどうかと思うよ!」

 

「それはすまない。で、何用で呼んだのだ?」

 

「ちょっと訓練に付き合って欲しくて、良い?」

 

「良いぞ、ルールは?」

 

「いつも通り。3分の間でどれだけ攻撃を当てれるか」

 

「了」

 

 

———

 

 

「ぷはーっ!訓練終わった後のビールは格別だねぇ!」

 

訓練を終えたブレイズが来ていたのは、もはやここがブレイズの自室なのかと疑うほどに常連な居酒屋であった。

ロドスは移動都市のスケールを小さくし、中はそのまま。のような感じであり、乗員の気分転換にうってつけの居酒屋などもあるのだ。

 

「うら若き女性が言う言葉とは思えんな。貴公はオッサンか?」

 

当然、訓練に付き合っていた狩人の事も引き摺って来ている。が、狩人は別に酒を飲む訳では無く、ただの話し相手として居るのだが……酒飲みからしたら話し相手になってくれるだけでも充分なのだろう。

ちなみに酒を飲まない理由は

「アルコールの味が苦手、あれを飲むくらいなら血の酒を飲むぞ」

との事だった。狩人、意外とお子ちゃま舌なのかもしれない。

 

「酷いな〜!これでも女性ですよ〜だ!!」

 

「……うむ、頻繁に酔っ払った状態でしつこく絡んでくるわゲロぶっ掛けそうになるわ、廊下の途中で寝落ちかましてるわで。それさえなければ頼りになる女性として見れるのかもしれんがな……」

 

ブレイズの酒癖の悪さのせいで散々被害を被っている狩人としては、ブレイズがなんと言おうとその酒癖の悪さがどうにもならない限りは固まった評価が変わる事は無いのだ。

ちなみに、何故狩人が散々被害に遭っているかというと、ブレイズから謎に話し相手として誘われ、他のエリートオペレーターもブレイズの酒飲みを察知すると狩人を餌にして逃げるからである。

 

「え〜、私じゃダメ〜?」

 

「貴様は何を言ってるんだ……ハァ、水を飲め。何かつまめ、酒だけ飲んでいると悪酔い真っしぐらだぞ」

 

狩人、なんだかんだ言いつつ世話を焼くのでブレイズの酒癖の悪さは狩人の世話焼きが無くなるまで治る事は無いかもしれない。

やはり弟子?として教えていた事もあってかブレイズには意外と甘かったりするのである。

 

「はぁ〜い。あ、このおつまみ結構イケる」

 

「そうか」

 

「そういえばさ〜、ふとした時に思ったらするんだけどさ〜、ハンターってなんで毎回話し相手になってくれるの〜?」

 

つまりをひょいひょいと食べながら、酔ってるせいか妙にでろ〜んとした言葉で話しを振るブレイズ。

 

「貴様が何かやらかさないか見張るためだが」

 

「ひど〜い〜」

 

「私の服に向けて何回吐いたか言って貰おうか」

 

「き〜こえ〜な〜い〜」

 

狩人がジトっとした目付きでブレイズを見れば、酔っぱらいのフェリーンは酒をぐびぐび飲みながら聞こえないフリをする。

 

「まあ良いが。そろそろお開きにするぞ、これ以上飲ませたらまた吐かれる」

 

狩人は別にゲロを吐かれても狩人の必須技能*早着替えをすれば良いので対して気にはしないが、吐かれたら普通に後処理が面倒なので一定のラインでブレイズの酒飲みを中断させるようにしている。

ブレイズも狩人の世話焼きのお陰でケルシーからお説教をされるかも減ったので素直に受け入れている。

 

「はぁ〜〜い」

 

「会計を済ませてくる、絶対に、変なことをするなよ」

 

「わかってるって〜、いつもありがと〜」

 

ブレイズに釘を刺してからさっさと会計を済ませに行く狩人。お金はあるのかと思うだろうが、彼、S.W.E.E.Pに所属しているのでしっかりと給料が出ているのだ。

自ら使う事は滅多に無いのでもっぱら奢りなどで消費されている。口座の管理とかを「面倒だ」の一言でケルシーにほっぽり出してるという噂もあったりなかったり。

 

 

———

 

 

「ついたぞ」

 

「ありがと〜」

 

会計を済ませ、酔っ払ったブレイズに肩を貸しながら彼女の部屋まで連れてきた狩人。何回か職員などにその光景を見られたが、最早日常と化しているため全員スルーしていた。

 

「とっとと寝ることだ」

 

「はぁい、おやすみぃ〜」

 

「うむ、良き夢を。ブレイズ」

 

このやり取りも、何回したのか等本人達も覚えてなどいない。

 

 





*早着替え
狩人の皆さんなら分かる。ゲームの仕様上仕方が無いのだが、防具スロットで着脱をすれば一瞬で服を脱いだら着たり着替えたり出来る。
一瞬で狩人装束一式から下着オンリーにすることも出来る脅威の技()

ロドスでも相変わらず変人ポジを確立してる狩人さんでありました。
ちなみに大体分かるかと思いますがブレイズさんはヤーナムステップを伝授して貰ったので強化されております。
ゲーム内のステータスにすると回避50%とかそこら辺。
ブレイズからの好感度は結構高い、けど付き合ったりは無い。主に狩人さんが拒否るから。

あとはケルシー先生に対しての呼び方も変わってますね。
最初はケルシー女史、次にケルシー殿、そしてケルシーと。
それに伴ってケルシー先生の狩人の扱いも段々と雑になってますと。
これが互いの信頼の形とも言うのでしょう。

投稿遅れてゴメンネ、やる気死んでました。
一回死ぬと復帰までに相当時間掛かるので次の話が出るのも当分先です、許せサスケ。

狩人さんのプロファイル、見たい?

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