狩人さんが今度はテラの大地に赴くようです   作:ron3studio

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2025 6/2修正
聖杯ダンジョンの9kv8xiyiを9kv8xiviと表記していたバグを修正しました。
その他誤字脱字、本文の表現を修正しました。


バベル編
「ここ何処?人形ちゃんは?水盆の使者は?」


 

[??の大地]

 

「……?」

 

狩人が聖杯から戻って来て一番最初に目に映る光景はいつもの狩人の夢では無く……広々と続く荒地に、所々に見える大きな……結晶。辺りをぐるっと見回してもどこも同じで、ここが自分の居た狩人の夢ではないことを確かに示していた。

 

「????」

 

狩人は困惑した、自分が何故よく分からない場所に居るのかと。そして同時に怒りも湧いてきた。

今日も今日とてノコ鉈に付ける為の物理27.2%スタマイ血晶石を求め3デブマラソンに勤しんでいた所だったのに……どうしてくれようかと。

それが終われば次はoh!majesticクソ野郎(ミコラーシュ)を遠距離から嬲り殺しにする為にシモンの弓剣用の血晶石もマラソンするという使命があるのに、こんな所で油を売っている暇は無いのだ。

故に彼は早くこの訳の分からない場所から狩人の夢に戻らねばならないのだ、が。

はて、どうやって戻るのだろうか?そんな疑問が狩人の頭を過ぎ去る。

いつも使っている方法は……灯火を使う……そもそもその使うための灯火が見当たらん、ダメ。狩人の確かな徴を使う……ちゃんと使えるのか分からん、たぶんダメ。

 

「死ねば良いのでは……?」

 

ただの狩人だった時からそうであるのだが、彼は死んだとしても狩人の夢に戻り、死んだ事を無かった事にしてしまうのだ。

故に獣狩りの夜でも度々死んだし、聖杯に潜っている時にも事故って萎えて人形ちゃんの前に戻って来ることがあった。

 

ならばこそ、ここがどこであれ死ねば狩人の夢に戻れるのではと思い至るのも当然だろう。

彼は既に思考が上位に至っており、死ぬことも厭わないのだ。

 

「……や、後で良いか」

 

だがしかし、ここで思い止まる。

この狩人、初めてヤーナムに来て狩人として活動する時からそうだったのだが、何かと新しい物には惹かれがちである。

カラスに突かれたりfucking犬畜生に齧られたりしながらヤーナム市街をあちこち駆け回ってアイテムを拾い、禁域の森ではあっちこっち行きすぎて迷子になったりと。

要するに、新天地に来たら寄り道をしてしまうのだ。

この現状も、彼が全く知らぬ場所ということで、既に探索したくて脚が動きかけている。

 

「よし、良く分からんこの場所を探索するとしよう」

 

言い切ったー!!!!

優先順位が帰る<<<<<探索なのは上位者としての余裕か、それとも死んでもまあ大丈夫かの精神なのか、果たしてどちらなのだろうか。

 

「とは言え……見回す限りの荒野だな、さてどう——ん?」

 

探索とは言ったものの、広大な大地を徒歩で歩こうものならとんでもない時間を費やす事になるだろう。

そんなうんうんと悩んでいる狩人の耳に、聞いたことのない音が入り込んでくる。

獣の咆哮とは似ても似つかない音。それが複数。狩人は即座に戦闘体勢に入り、月光の聖剣とエヴェリンを装備した。

 

「……なんだ、あれは」

 

音のする方に向き直れば、見たこともない物がこちらに向かって動いて来ていた。

 

「馬車……ではない?」

 

狩人から見た謎の物体は、テラでは一般的に普及している荒野用の車両だった。複数で動いてる所を見るに、傭兵集団か何かなのだろう。

 

その車両から一人、降りてくる。服装はやはり一般人ではなく、狩人装束のように何かをする為のような服装。そしてクロスボウはしっかりと握られ、いつでも撃てるようになっていた。

狩人は周りの空気がピリつくのを肌で感じていた。獣共の、ただ殺しにかかってくるあの空気では無く。人が明確な敵対意識を持ち自身を排除してこようとするあの空気。

 

「*こ**まえ!**もの*!」

 

降りてきた人物は何かを喋っているようだが、絶妙に聞き取れない。喋っているのは英語なのだろうか、ところどころ判別できるものの、訛りが強いせいか途切れ途切れにしか理解できない。

 

「すまないが、貴公は何を言っているのだ?」

 

ここで狩人、余りにも失念していた事があった。

上位者となった彼の言葉は普通の人間が聞き取ろうとすると発狂してしまいそうになる程の激物であるのだ。

 

「****!!!!」

 

彼は自分が上位者となった感覚が薄く、まだ狩人であった頃の名残で声を出した狩人はその事を後悔する。

一番声を聞いたであろう前に出てきた人物が頭を抱えて苦しみ始め、周りの空気が更にピリつく。

 

そうして狩人が後悔しながら、この状況をどうしようかと考えていた所、一人のフードを被った女性が車両から降りてくる。

 

「君は何故こんな荒野の真ん中に居るのか、教えて欲しい。こちらとしても危害を加えるつもりは無い」

 

今度ははっきりと聞き取れた言語、普通に英語であった。そこで悶え苦しんでいる者の言葉が聞き取りづらかったのはやはり訛りが酷かったせいだろうと、狩人は結論付けた。

 

「んっん"っ"……あー、聞こえるだろうか」

 

流石に狩人も目の前であんな事になれば気付く。して、今度こそは同じ轍を踏まないようにと、気合いで発する言葉を人に近付けてから言葉を紡ぐ。

 

「っ……あぁ、聞こえているとも」

 

女性の表情が一瞬苦しげなものになったが、それもすぐに元通りとなり、少し睨みつけてくるような無表情へと戻った。

 

「先程はすまない、人との会話は少々久しぶりでな」

 

どうやら、狩人の試みはしっかりと成功したようだ。彼女が特段発狂しないほどに強い精神を持っているという可能性もあったが、自分の試みが上手くいったとしておく事にしたようだ。

 

「そうか、それは良い。さて、君は何故、こんな荒野のど真ん中にいるのか、答えて貰おう」

 

さて、狩人は悩んだ。聖杯ダンジョンを終えたらここに来ていた。なんて言っても通じないだろう。というかここがヤーナムとは違う、恐らく別世界か何かだとあたりを付けていた。

それをバカ正直に言うわけにはいかないので、狩人は悩む。

この世界の事は何ら知らず下手な事を言えばボロを出して更に状況を悪化させるだろうと。

 

「あー……いやなに、少々物資輸送の護衛を勤めていたのだがね、荒くれ共に襲われるというアクシデントでこの荒野に放り出されてしまっていてな、こうしてほっつき歩いていたのだ」

 

「ふむ……?」

 

狩人の上位者思考により導き出された答えを怪しまれないようにそれっぽく言えば、目の前も女性は少々怪しみながらも納得はして……くれそうである。

 

「一つ聞いてもいいだろうか」

 

「ああ、構わないとも」

 

狩人は極力顔には出さない(狩装束でほぼ隠れているが)ようにしているが、内心相当にヒヤヒヤしている。

ここで集中砲火されよう物なら、さしもの歴戦の狩人と言えるほどに経験を積んだ彼であったとしても死は免れないだろう。だからこそ、穏便に済ませたいのだ。まあ、死んだ所で(恐らく)狩人の夢に戻るだけだが。

 

「では、君は一体何処の出身だ?服装、雰囲気、そしてその武器……このテラの大地にある国々の全てにおいて、そのような服装、武器を排出する国は無かった筈だ」

 

「……」

 

狩人様、これは俗に言うピンチ、と言う場面かもしれませんね。狩人はそんな人形ちゃんの声を聞いた気分に陥っていた。

それもその筈、此処がヤーナム近辺でない事は明らかで、そんな場所にいる人間から詰められる、それ即ち自身が圧倒的不審者として捉えられている、と言う事。

更に狩人の正面にいる女性のフードに覆われた頭部には二対の耳、形状からして猫の耳が頭頂部に生えている。

話が少し逸れるが、彼はヤーナムに訪れた際に記憶喪失となり、その後上位者となった際に記憶の補填として狩人の夢にある書物を片っ端から読んだ。その中で人間に猫や動物の耳が生えるなんてことは何処にも書いてなかった。

 

つまり、ここがヤーナム近辺ではない、動物の耳が生えている人間、この事から、此処が自分の元いた世界では無いと今この瞬間にはっきりと突き付けられたのだ。

狩人は嘆いた。ああ、まだ見ぬ未知を発見出来るかと思えばこうなってしまうのかと。流石にここで狩人の夢に戻されるのは嫌だなー、もっと探索したいなー、けど人形ちゃんを心配させる訳にもいかないよなー。と。

 

「ヤーナムという場所から訪れた」

 

覚悟を決め、いざ運命の時。別に此処で命を落とすのはまぁ……許容出来るが、新天地探索が中断されるのは悲しいなぁと呑気なことを思う狩人である。

ほんの少しだけ、元同じ種であった人間に殺されるのはなんだか悲しいのだ……とか思っていたが、そういえばヤーナムで散々人間ブチ殺し回ったな……となったので悲しさは何処かに消えた。

 

「ヤーナム……?聞いた事がないな」

 

「まぁ……かなりの閉鎖的な場所でな、地図にも載ってないだろうから聞いたことも、見たこともないのは当然だろう」

 

なんだか嘘を押し倒せそうな雰囲気を感じ取った狩人。そのまま嘘に嘘を塗り重ねてさも真実であるかのように喋っていく。

 

「ふむ……?そうか。それなら、君の言うことを信じよう」

 

「おぉ、貴公の寛大さに感謝する」

 

何とか信頼(?)を勝ち取った狩人、これで目下命の危機は去り新天地探索を続けられそうで一安心。

 

「所で、貴公らに突然だが一つ頼み事をしても良いだろうか?」

 

「何だ?程度によるが、引き受けよう」

 

さて、安全を確保したとなればすることはただ一つ。

探索の続きである。狩人的にはとりあえず町か集落の一つでも見てから狩人の夢に戻ろうかと考えているので、ここで同行出来たら目的達成にグンと近付くだろう。

 

「いや何、ここら辺の地理はまるっきり分からず仕舞いでな、一人だとこのまま野垂れ死ぬだろう。故に、もし町に行くのであれば連れて行って欲しいのだ」

 

「……少し待ってくれ、他の者と協議する」

 

要件を伝えれば、会話をしていた女性は難しい顔をしながら傭兵集団らしき者たちの方に寄り、何やら話し始める。

大方、見るからに怪しい狩人を一時的とは言え同行させるかどうかだろう。

 

待つ事数分、狩人は暇な時間を今後の聖杯マラソンの事を考えていた。パイルバンカーの厳選もしてないんだよな……けどあれ沼すぎてな……やる時は妥協するか。なんて事を考えて時間を潰していると、フードを被った女性が戻ってきた。

 

「先ほどの頼まれごとだが……引き受けよう」

 

「!感謝する、一人ではどうしようもなかったからな」

 

「その代わり、条件がある。目的地に着くまで武器をこちらに預けて貰おう」

 

流石に武器は没収されるようだ。とは言え、武器を没収されるだけで済んでるのが凄いだろう。だってテラ基準で言えば見た目は怪しいし、初手のコミュニケーションでは人を発狂させるわで。相手によっては即殺しにかかってきてもおかしく無かったのだから。

例を挙げるならば、仏の顔の3度目ぶち抜くギリギリ手前くらい。

 

「それで貴公たちから一定の信を置いてくれるのならば喜んで差し出そう」

 

「では、一旦はこちらで預かっておこう」

 

「うむ、よろしく頼む」

 

「さてと、私たちもそらそろ移動を再開するから乗っておいた方が良い」

 

「では言葉に甘えさせて貰おう……ふんっ」

 

狩人が荷台によじ登り、フードの女性の隣に座ってから車両は動き出した。狩人はビビった。上位者でもビビる時はビビるのだ。

 

 

———

 

 

そう言えば、貴公の名前は何と言うのだ?恩人の名前は知っておきたくてな。

 

私か?私はケルシーだ。そちらは?

 

むむ、私か……うーむ。実は最近までの記憶しかなくてな、名前が分からないのだ。故に今はこう名乗っている。「Hunter」〈狩人〉と。

 

Hunterか……分かった。

 

では、短い間だがよろしく頼むよ。ケルシー女史。

 

 

———

 

 

そういえば、ケルシー女史の話す言語は何処のなのだ?

 

この言語はヴィクトリア語という。ハンター殿も流暢なヴィクトリア語を話されるな。

 

(ヴィクトリア?……何それ知らん、こわ……)

 

どうかしたのか?

 

いや、もしかしたら故郷がケルシー女史の言うヴィクトリア近辺にあるのかもと考えていてな。

(変な事言わんとこ……)

 

 

———

 

 

「有意義な時間とはあっという間に過ぎ去る物なのだな」

 

「君にとってあの時間がそう思えるのなら、私としても話した甲斐があった」

 

「ケルシー女史には感謝しても仕切れぬよ。そうだ、友好の証としてこれを渡しておこう」

 

「これは?見た所……手持ちサイズの鐘?にしては鈴の部分がないが」

 

「この鐘は私にしか聞こえないようになっていてな。これを鳴らせば、何処に居ようとも私がケルシー女史の近くに駆け付けれる。何か困ったら遠慮なく鳴らしてくれて構わない」

 

「……ふむ、有り難く頂戴しておこう」

 

「うむ。で貴殿の益々の光栄を願っておこう。それでは」

 

「あぁ」

 

 




*oh!majesticクソ野郎
Bloodborneのボスキャラの一人、ミコラーシュの事。
英語音声、日本語音声共に声優さんの演技が凄い、皆も聞こう!
ちなみに、狩人はミコラーシュがブッパしてくる彼方への呼びかけに何度も殺されたので嫌い、故にこの呼び方になった。
三週目の時に一番死んだボスはコイツである(実体験)

*fucking犬畜生
ヤーナム名物、クソ犬。
恐らく事故死の5割はコイツのせい。周回を重ねる毎に動きが速いのに攻撃が痛い厄介な奴になる。やっぱり獣は殺さないと。

*狩人
本作の主人公。Bloodborneではとりあえず立ちはだかる敵をジェノサイドする奴になる。フロムゲーの宿命。
人間より高位の存在である上位者になり、とりあえず3デブマラソンをしていた。別に本人の思考はほぼ人間のまま。故にやらかす。
個人的に9kv8xiyiよりも8ewm2xxxの方が好み。皆は?

*人形ちゃん
Bloodborneにて狩人の夢にいる癒し枠。自キャラをレベルアップさせる際に必ず声を掛ける存在であり、かなりお世話になる。高身長。
故に貴公、人形を大切にしたまえ。

*狩人の夢
Bloodborneにおいての絶対的な安全地帯。武器の強化、アイテムの購入、自キャラの強化などをする場所。ちなみに、安全地帯なので基本死ぬことはないのだが、何故か頻繁に遺影が見えてくる。何故だろうか。
oh!japanese HARAKIRI !!!

*水盆の使者
Bloodborneにおいて何かと見かける。アイテム購入ショップに居る存在。キモ可愛いの部類、多分。とあるアイテムを使えばプレイヤーも水盆の使者に擬態することができる。使った事ある人の方が少なそう。

*狩人の確かな徴
使用すれば直近で使用したセーブポイントに何のデメリットも無しに戻れるお便利アイテム。ストーリーを攻略するだけなら意外と使わないかもしれない。

*灯火
セーブポイント兼ワープポイント。此処から狩人の夢に帰れる。

傭兵集団の皆さん
トンデモ存在の主人公と同席するハメになった哀れな人たち。泣いて良いよ。ちなみに発狂した人は狩人から鎮静剤貰って落ち着いたらしい。

フードの女性(ケルシー)
なんかサルゴン移動してたら狩人に遭遇。上位者漏れ漏れの言語でもケルシーせんせーなら耐えれるでしょという偏見のもと、選出されたキャラ。ちなみにこれから胃薬が手放せなくなる。可哀想。


狩人直々にケルシーに渡した特製の鐘。古狩人呼びの鐘に似たそれは、しかし異様な雰囲気を放っている。認められた者以外が鳴らせば、主は贈った相手が害されたと判断し、その命を絶やしに行くだろう。

読んでる方、ブラボ履修済みであられますか?

  • 3周終わらせてる
  • とりあえず1周だけ終わらせた
  • やってない
  • 動画だけなら見た事ある
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