国立大学長の53%「国立大は今後減る」 交付金減や物価高で危機感
少子化が進んだ2040年、国立大の学長の53%が現在より「国立大は減る」と考えていることが、朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」でわかった。少子化や財務状況の悪化などから、存続への危機感が国立大で広がっている。
回答した国立大75校のうち40校が予想した。外部資金を獲得しにくい教育大学や文系学部中心の大学のほか、多くが赤字となっている付属病院を持つ九州大や名古屋大、広島大、金沢大などの有力大もあった。
国立大が危機感を強めるのには、いくつか理由がある。
国から受け取る運営費交付金は、2004年の法人化時より13%減少する一方、人件費や物価の高騰で支出が増えている。多くを外部資金で確保する仕組みとなっている研究費も、十分に獲得できている大学や分野に偏りがある。
付属病院の赤字も国立大を苦しめる。国立大学病院長会議によると、25年度は42校の8割近い33病院が赤字で、総額は330億円になる見込みだ。医薬品の高額化や人件費の上昇で、診療すればするほど赤字が膨らむ状況になっている。
こうした厳しい財務状況を改善するために、東京大をはじめ授業料を値上げする国立大が相次ぐ。全国立大が一斉に値上げしやすいように、文科省が年間53万5800円と定める授業料の標準額の引き上げを求める声も以前からある。
共同調査で「引き上げ」が妥当かを尋ねると、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と答えた国立大は計59%と、現状維持の計25%の2倍を超えた。運営費交付金の増額による標準額の「引き下げ」の計47%より多かった。
大学の活性化策として国に求めたいことを尋ねたところ、「とてもそう思う」が最多(87%)だったのが「運営費交付金など基盤的研究費の拡充」。文部科学省にとどまらず「厚生労働省や総務省なども含めた政府全体での支援強化」も73%と多かった。
香川大は「運営費交付金の減少が教員数の削減につながっている。大学教育の質の維持・向上にとって深刻な問題だ」と訴える。
共同調査は6~8月、全国777大学を対象に実施。79%に当たる612大学から回答があった。
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- 【視点】
全国に配置され、国全体としての人材育成を支えてきた国立大学が、どれほど厳しい状況に追い込まれているかを調査結果は示している。 人材育成を支えるということには、出身家庭の経済状況に左右されないということも含まれていたはずだが、授業料の引き上げ
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