ナイトレインたのちい!(開き直り) 夜は巡り、そして終わらないものだろう!
……あとは逃亡騎士のスキンさえあればな…それらしき傭兵騎士とか馴染みのあるファーナムとかハベルで夜渡りやってます。出会えた時はよろしくお願いします
あと前回を追筆したので読んでから今回をお読みすることをオヌヌメします
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では──
時は満ちた。
本来ならば彼女は無二の親友の惨たらしい死によって、絶望を知る筈だった。
しかし、イレギュラーの介入があろうと運命は変わりはしないのだ。
「あ……あぁ…っ!」
タルラはこの村に訪れ、食糧庫で
あぁ、お前は聡いな。幼い時からそうだった。何故同胞と呼んでいた者たちがお前が言うような高潔な心を忘れ、お前への復讐に走ったのか分かったのだろう?
そして……ここにいた感染者たちがどうなったのかを
「ど、どうしたんです……お役人さん……?」
そうだ、この村の者たちは彼らを収めるもののない食糧庫に幽閉したのだ。
死を待つしかないことに絶望し、泣きわめく声にも、助けを乞う声にも無関心を通し、“処理”したのだよ
ひとえにこの者たちは……いいや、世にありふれた人間にとって❘お前たち《感染者》は化け物でしかないからだ。
いい加減現実を見るんだ、我が娘よ。これが人間だ。
──人を善良なものだと考えすぎじゃない?
──覚えておけ、人間は決して善良な生き物ではない、信を置きすぎるな
(あぁ……お前のの言うとおりだ。私は人間という生き物を信じすぎていた)
「おいおい……感染者サン! わかった許してくれ、私らは面倒ごとを起こしたくないだけなんだ!」
「……お前たちには反吐が出る。お前たちにほんの僅かでも善意さえあればこんな残酷なことは起きなかった」
お前たちのような下賤な人間が生きているから……!アリーナとアッシュが……皆が安寧を得ることができないんだ…!
(だから──)
「お前たちが──憎い」
龍が蛇へと堕ちる….
アリーナの学校校舎
「ハァ………」
深くため息をつく。あれ以来タルラと疎遠になってしまった。どうやらアリーナもらしい。
私のせいだ。もっと良い言い方があった筈なのに、タルラの心情を慮るべきであったのに……
呼々、愚かな己が憎い。“血狂い”で東の国での犯した罪を清算する儀式らしいセップクをするべきだろうか…?いや、したところで自己満足にしかなるまい。
「では私はどうすれば良いのだ……」
「おい、いつまで項垂れている。それでも、戦士か?」
「タルラ姉さんと喧嘩になって以来ずっとこうだよね、何でそうなったのさ」
「……君たちが“まだ”考える必要のないことだ。気にするな……」
「ごめんなさい、彼らのことをタルラに隠そうとするのは流石に無理があったわ……ごめんなさい。私のせいなのに……」
「……いや、君の意図は分かる。現に彼らが私達を……君を襲った事実を知ったタルラはどこか様子がおかしくなったと感じたからな」
あの顔を私は知っている。どうしようのない絶望に打ちひしがれた時の顔だ。
(……だが──)
きっと乗り越えられる筈だ。如何なる困難や試練、そして絶望を前に片膝を着いたとしても、必ず再び立ち上がり前へと歩みだす。
その不屈の意志こそが人間の力だ。私が“王たちのソウル”で垣間見た薪の王たち──そしてタルラの眼に視た可能性の炎だ。
あぁ、そうだ。そういえば伝え忘れていた……。
確かに人間は善ではない。だが、それと同時に──
「──なんだ?このにおい……」
「どうかしたの?サーシャ」
「……焦げ臭い」
「あの煙じゃない?あそこって協力関係の村がある山でしょアレ。村が火でも起こしてるんでしょ」
独り耽っていたアッシュだったが俄かにざわつき始めた三人に釣られて教室の窓へと目を向ける。
「──っ!?」
背筋に悪寒が走る。
山から黒煙が天へと上っている。それもかなり離れているにも拘わらずその火元の規模が大きいと分かる。
(村……)
──全く…追放されて……その果てに駆け込んだ
「アッシュ!?ど、何処へ行くの!!?」
嫌な予感がする。不死として、そして火のない灰として培ってきた感覚が警鐘をしきりき鳴らし続けている。
「おい!あそこに行く気か?もうすぐ夜だぞ!?」
「サ、サーシャ待って!君も行くの!?」
「ダメよ!二人共言っちゃダメ!!」
悪寒が止まない…無性に落ち着かない。こんなこと今までにあっただろうか?
緊迫感でも、絶望でもないこの感情はきっと不死になってから生じることのなかった感情だ──
──これは……恐れだろう。死に対する恐怖をも喪っていた己が恐れている。
山へと踏み入り、木々の枝の隙間から見える昇る黒煙を道標に村へと突き進む
タルラやフロストノヴァとの稽古、遊撃隊の過酷な訓練を経て“火の時代”で戦っていた頃よりも身体能力は向上している。その甲斐もあってほんの5分程度の疾走で現着することができた。
「こ…れは…!?」
この臭いには慣れている。
嗅ぎ慣れた人が焼ける臭いと目の前に広がる光景がアッシュの記憶を呼び覚ます。
それはタルラとアリーナとあの村で会って間もない頃の記憶だ。
……もう理由は思い出せないが、村に押し入っていた監視官を皆殺しにし、その骸を放置するわけにはいかなかった。
そして……
あの日、タルラが私たちで山とした監視官どもの骸を焼き尽くしたように───
目の前の村があった筈の場所は地獄絵図と化していた
木造、石造りに拘わらず、家屋は燃え盛る炎に呑まれ、面影の無いほどに無残に崩壊していた。
生存者は無く、悉くが火だるまになり真っ黒な骸となって散乱している
───タルラの足元で
「タルラッ!」
剣を手に立ち尽くすタルラに駆け寄るが、タルラは何の反応も返さない
「何があっ……」
彼女の肩に手を置いた時──アッシュは知覚した。
ソウル───魂には色がある。
その事実をアッシュは長い旅路で深くソウルに触れてきたことで知った。
力尽きた者たちの遺体に残されたものは並べて色が抜けきったものばかりだったが、今までに下してきた強者たちは各々の個性や特質を物語る色を有したソウルを内に秘めていた。
そしてこのテラにおいても人間はソウルを有していた。ただ、流石にアッシュの居た世界と勝手が違うらしくソウルを視ることしか敵わなかった。
閑話休題、
タルラの焔の如き緋色のソウルに巻き付き、締め上げ束縛するかのように
闇に溶け込む程に漆黒の鱗、血染めと見紛うほどに真っ赤な眼───
黒蛇がこちらを睨んでいた。
「──ぐぅ…ッ!?」
「───私を視たな?」
蛇に睨まれ、委縮した小動物のように思考と身体が固まってしまったアッシュの首をタルラが掴み、彼の身体を持ち上げる。
意識が現実に戻ったアッシュだったが、先に視た蛇の眼はタルラの眼窩から今も彼を見つめ続けていた。
「貴様は……何だ?タルラではない……彼女に何をした…ッ!?」
「私は何もしてはいない、我が娘は絶望に膝を折ったが再び立ち上がり、私の“意思”を継いだのだ」
「我が、娘……?まさか……貴様は…!」
───その男の名を知っている。
会って一年が経ったときにタルラは自身の生い立ちと過去共に私とアリーナに明かしてくれた。
家族から引き離し、タルラの人生を狂わせた男。その人柄はあのタルラが忌々し気に話していたことからよく理解できた。
そして男は彼女の手によって殺された。だが男の最期はあまりにも不穏が過ぎた。
───お前の終着点は私だ
男はタルラに“呪い”をかけたのだという
その男の名は────
「──コシチェイ…ッ!!」
男の呪いは間違いなく今この瞬間に効力を発動している…!
そう確信したアッシュは己を掴み上げるドラコの細腕を右腕で掴み返し、渾身の蹴りを腹に叩き込む。
油断か、あるいは余裕の現れかドラコ──コシチェイはその一蹴を諸に受け、後方へ吹き飛び解放されたアッシュは“ゲールの大剣”を手にコシチェイに斬りかかる。
ガキィィンッ…!
鍔ぜり合う得物と両者の視線が交差する。
「よもやソウル体となってタルラに取り憑いていたとはな。これ以上その体で悪事をさせん……タルラを返してもらうぞ!!」
「お前は何も分かっていない。タルラはこの村の者たちを──同胞たちを無慈悲に殺処分した人間たちを憎み、弑することを望んだのだよ」
───
(……そういうことか。だから彼等は……)
追放された末にこの村に逃げ込んだのは自業自得だろうが、飢え死んだ友人や同志を置き去りにして命辛々生き延び摩耗した彼等には己らが受けた仕打ちに対する怒りをタルラに向けるしかなかったのだろう。
気がかりが今になって解けたアッシュを置き去りにし、コシチェイは続ける。
「タルラは目を背けていた現実に絶望した。しかし、彼女は再び立ち上がった。前へと進む為に……私の意思を継いでな」
「戯言を…!それ以上タルラの声で喋るなァ!!」
「ふん……丁度いい。まだ身体が馴染んでいないのでな……少し付き合ってもらおうか」
コシチェイがタルラの剣で全力を剣に込めていたはずのアッシュを容易く押し飛ばす
(流石に力押しでは分が悪い……ならば───)
────初見殺しで押し切る…!
アッシュの左腕を二度振るい、6本ククリの群れがコシチェイ目掛けて突き進む。
対するコシチェイが軽く剣を振るうだけでククリが悉く打ち砕かれるが、後続から豪速で投擲された“ガーゴイルの灯火槍”が飛来する。
ヤツの動きを封殺する。タルラの身体に順応する前に!
すかさず跳躍し、“ゲールの大剣”の戦技「捨て身の剣」がコシチェイ目掛け襲い掛かる
「おっと、危ない」
だが、この急襲も横へと飛び退かれ失敗。さらに「捨て身の剣」の二段目の回転斬りで食らいつくがそれすらも軽い身のこなしで流される。
「“ウルサススラング”…!」
「終わりか?、ならば今度は私の番だ」
コシチェイの左の手を中心に蛇の如き暗い焔が蜷局を成し始める
(っ!させん…ッ!)
そうはさせじと、“ゲールの大剣”を顔の横へ水平に構え、でコシチェイへ突進突きを放つ。
それは失策であった。
突きとは素早く防御が困難な攻撃だ。だがその反面前動作を見極められやすくもある。
……確かな実力を持った猛者には通用しないということだ
キィィンッ!
「!?」
優れた動体視力、技量、並外れた身体能力を有するドラコの振るった剣によって大剣が弾かれた。
剣を握る右腕が後ろへと持っていかれ、体勢が崩れ、アッシュは敵前で隙を晒してしまう。
「しま───」
回避もガードも不可能。
「灰燼と帰せ」
解き放たれた龍炎がアッシュを呑み込んだ。
如何に炎への耐性に秀でた逃亡騎士の甲冑を身に着けていようと、今までタルラの理性によるコントロールを失った出力完全解放のアーツの暴威を防げるはずも無く、炎の猛進の後には火達磨となったアッシュが倒れ伏していた。
「……終わりか。やはり人の生とはあまりにも短く、哀れなものだな」
絶望したタルラは村の者たちを今コシチェイがアッシュにそうしたように村の者たちを焼き殺したのだろう。
パリン……
───逃さんぞ、貴様だけは
しかし、アッシュは彼らとは違う。
「さて、この男の死を処理したものか……ほう?」
彼は定命の人間ではなく───不死だ
「これは驚いた。不死だというのは世迷言ではなかったのか」
「貴様を野放しにはしない……
砕いたエスト瓶を投げ捨てアッシュが再起する。彼の戦意はまだ燃えている。
タルラはどうやら手加減してくれていたようだ。稽古の時ですら要注意としていたアーツの真髄がこれほどのものとは。
「だが、真実を知られた以上貴様を野放しにはできん……精神が砕けるまで殺し続けてやろう」
コシチェイが再び炎を起こす。
軽く速い攻撃の妨害はカウンターされる……かといって重い一撃もそれより早くアーツを撃たれるかもしれない……
(……避けるしかないか…!)
兜の中で苦し気に顔を顰めながら、アッシュは回避の態勢を取る────
「───避けて良いのか?」
(何……?)
丁度アッシュは来た道を背にコシチェイと対している。故に最悪の状況になっていることに気づけていなかった。
「おじさん何してるの!?」
「バカ!下がっていろイーノ!!」
「な……!?」
その声に弾かれるように振り向けば教室に置いてきたはずのイーノとサーシャ、そしてアリーナがいた。
(ついて……きていたのか)
全力の速度で移動した筈だった。だが戦士として訓練していたサーシャがアッシュの残した足跡や土地勘で最適なルートでここまで二人を導いてしまった。
神の悪戯とはこのことか、神が憎くて仕方ない
ヤツの言う通りだ。避けて己だけが助かるなど論外の極み。
ならば……
(……前に出るしかないようだなぁッ!!)
新たに“グレートアクス”の「ウォークライ」を轟かせながら、アッシュはコシチェイへと突撃した。
「うぉぉぉおおおおお!!!」
ついにコシチェイの眼前に至り、凄まじい気迫とともにアッシュは大斧を振り下ろし────
───コシチェイの眼前で停止した。そのまま渾身の一撃であればコシチェイの──タルラの脳天をかち割ることなど造作もなかっただろう。
「……何故、避けん……!」
彼は
「やはり人間は脆弱だな」
コシチェイはそう独り言ち、“グレートアクス”を握っていた右腕を斬り飛ばす。
「ぐっ…!」
「もう再生は結構。時間の無駄だ」
コシチェイがエストを飲ませぬようアッシュの首を掴み、締め上げる。いつの間にかアッシュが残された左の手に“銀騎士の剣”を握っていたが虚勢でしかなく、直に震える手から零れ落ちた。
勝敗は決した。
「アッシュ…!」
「タルラ姉さん!こんなことやめてよ……喧嘩したからってここまでしなくたって───」
「先生、イーノ!二人とも俺の後ろにいろ!!」
(あぁ……私は弱くなってしまった。よもや敵を前に躊躇し敗北する程とは……)
逃げろと伝えたくとも首を締め上げる力は強く、思うような声量を出すことが叶わない
「しかし、本当に良いタイミングで来てくれたな、君たちがいなければ戦いは長引いていただろう」
「アリーナ先生、姉さんは何を言ってるんだい……?」
「違う……こいつはタルラ姉さんじゃない!!姉さんをどこにやった!?」
「君たちが知る必要のないことだ、ここで消えてもらおうか」
コシチェイが剣に焔を纏わせ、炎刃をアリーナたちへと向ける。
「止め…ろ…タルラに彼女たちを、傷つけさせるな……ッ!」
「敗北者に指図される道理は無い……いや、待てよ……そうだな。そっちのほうが手間が省けるか」
「ゴホっゴホッ!……何の真似だ…!?」
アリーナたちにアーツを放つ寸でのところでコシチェイは黙考を始め、一人合点すると拘束していたアッシュを地面へと放り投げ、剣を突き付ける。
「私は我が娘の為なら幾年経とうが待てた。だが、それ以外の些事に消費する時間はなるべく減らしたいのだよ。我らの悲願のためにも……取引しよう──アッシュ」
「取引……だと?」
「君にはこれからもレユニオンの戦士として尽力してもらいたい」
最初こそ呆気に取られたが、アッシュはその要求の真の意味を理解した。
「貴様!レユニオンをどうするつもりだ!?何が目的だ!?」
「……この大地の為にお前を含めたレユニオンを
「鬼畜が……ッ!」
「口汚い罵倒ではなく賢明な返答を聞きたいものだ……それとも、お前は自身の一存で彼らの命を捨てるか?」
アッシュは眼だけを動かしてアリーナたちを見やる。三人は今の状況を徐々に理解し始めている。だからこそ、皆が感じていること絶望が表情から嫌でも分かる。彼女らを安心させることすらできない己の無力さに歯を嚙み締める。
「……分かった……だからアリーナたちには手を出すな……!」
私は……初めて絶望に屈した。
────何かが折れる音がした
「交渉成立だ。これからもよろしく頼む、我が同胞よ……契約を違えてくれるなよ、蛇の眼がお前たちを見ているぞ」
剣を納刀し、コシチェイはアッシュから目を離し、アリーナたちの居る方へと歩き始める。
アッシュを下したタルラのカタチをした化け物にイーノとサーシャは萎縮していた。
「二人共私の後ろにいて……!」
「「先生……」」
「……ふん」
気丈に振る舞い二人を庇うアリーナにコシチェイは何も交わすことなくすれ違い、悠然とした歩調でその場を後にしていった。
「アイツ……俺たちが眼中に入ってなかった…クソ!」
「アッシュ!!」
脅威が立ち去ったのとほぼ同時にアリーナたちはアッシュへと駆け寄る。
「……無事か?」
「ごめんなさい!私たちのせいでまた貴方が……」
「…気にするな、すぐに……治す」
斬り飛ばされた腕を断面に固定し、エスト瓶を呷り修復させる。……しかし、身体が完治したはずなのに体に力が入らない───動く気になれない
「……アッシュ…すまない俺たちが足手まといだった」
「良いんだ、どの道私ではヤツに敵いやしなかったさ」
事実だ。仮に勝機を掴めたとしても私はそれを手放していた
「おじさん……アイツは何?タルラ姉さんはどうなったの!?」
「……ヤツのことは口外するな。でなければ皆殺しだ……」
奴が何をしでかすか分かったものではない。我々だけでなくレユニオンそのものを焼き尽くすかもしれない……そうならぬ為にも
「私たちは……これからどうすれば良いの…?」
「………先に、拠点へ戻っていてくれ。そして今後はスノーデビル、あるいは遊撃隊の目が届くところにいることを心掛けろ」
パトリオットとフロストノヴァならば……いや、彼らにあの蛇のことを伝えて信じてもらえるだろうか…?
それにレユニオンはタルラを信じている……一蹴されるのがオチか
「貴方は……?」
「……少し、一人にさせてくれ…」
ひどく疲れた。この場から動こうと思えない……
「……イーノ、サーシャ。行きましょう」
「でもおじさんが「行くぞ、イーノ」……すぐ帰ってきてよ、おじさん……」
三人の足音が遠のき、聞こえなくなったのを確認し、アッシュは力なく地面に大の字となって倒れこむ。
(……これが絶望か……タルラ…お前もコレに押し潰されてしまったんだな)
曇天の空から冷たい雪が舞い落ちアッシュに降り積もっていく。
「……すまない」
それは誰に向けた謝罪だったろうか?そんなことすら考えるのも億劫だ……
──灰の方
「……眠ってしまったか」
帰らねば……あれからどれ程経ったろう…?身体が雪で埋まっている……鬱陶しい
(あぁ、面倒だ──そうだ──死のう)
──“ダークリング”よ
蛇に出会う前の私ならばこの考えに至らなかっただろう
──私を篝火へ還せ
火の円環が強く揺らめき、アッシュの身体が徐々に灰となって霧散してゆき……そして跡形もなく消滅した。
この“死”によってタルラの友だった
次回、火に願いを