灰は龍炎に惹かれて   作:ジルバ

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我が師、導きの月光よ……私はやりました、やりましたぞ…!

見てください!読者の方々のおかげで私は成し遂げましたよ!
拙作の黒…?色の評価バーをアカイロのバーに変えてやりましたぞ!!


ヒャハ、ヒャハッ
ヒャハハハハハハァーッ

私はやったんだあーっ!

ヒャハハハハハハァーッ!!

キヒイイイイ───



──ジルバがログアウトしました。





……誤字脱字の報告に“感謝を!”…です
今回はほとんどオリ展開とのこと、よろしくお願いします
スノーデビル小隊はフロストノヴァを想う気の良い人達の集まりで見ていると微笑ましいですよね。そんな彼らが…テラは無慈悲な世界ですね……











第11話:Devil may smile

遠くから激しい爆発音が聞こえてくる。絶えず聞こえてくるその轟音だけでフロストノヴァとタルラの激戦が繰り広げられる光景が想像できる程だ。

 

その轟音をBGMにアッシュは奇襲を仕掛け発見した監視官の小隊を壊滅させていた。

 

「おのれ、どこへ行くッ!?」

「ヒァーッ!!?」

 

そして今、もぬけの殻となった屋敷に逃げ込んだ監視官も──

 

 

「チッ!手こずらせおって……ッ!」

「おぁーっ!?」

二階へ上がり、廊下を駆け、奥にあった一室へと逃げ込もうとする監視官にアッシュは苛立ちの籠った飛び蹴りをかます。

吹っ飛んだ勢いで監視官は派手に扉を破砕しながら部屋に追い込まれた。

 

「まっ…たっ助け──」

手を伸ばし、助命を乞う監視官だったが、無慈悲に振り下ろされた“グレートメイス”によって物言わぬアカイロの肉塊となった。

 

これにて戦闘は終了。……しかしアッシュの顔色は訝し気な様子で“グレートメイス”を掻き消し、黙考し始める。

 

(……おかしい。二人があれだけ派手に暴れているのにこの街に入り込んだのがこの部隊を含めて三部隊だけだと…?奴らの詰所からの増援がこれだけな筈があるか……?)

 

ここに来るまでに注意深く監視隊を捜索を行ったが、彼等がいた痕跡すら見つけられなかった。

……スノーデビル小隊があの見張り塔を襲撃する道中で始末したのだろうか?だがそれなら死体や戦闘の跡が残るはずである。

 

それが……一切ないのだ。

 

(……あれが終わったらタルラに報告しておくか。それにしても…)

考えるのは性に合わないとアッシュは何気なく周囲を見回す。

 

「……ハハ、中々良さげな部屋に逃げ込んでくれたな、監視官よ」

 

改めて見ればその部屋は鍵が掛けられていたのか、ぶちまけられた監視官の血肉で穢されるまでは埃を被ったままであり、そこには部屋の主のコレクションらしき物達がが棚や机の上、そしてショーケースの中にに安置されたままだった。

 

(よし……漁ろうッ!)

 

アッシュは意気揚々と部屋の探索を開始した──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後……

 

「くそッ!どれも使いようのない骨董品(ゴミクズ)ばかりではないか!?」

 

──しかし彼の探索の成果は芳しくないようだ。

 

「序盤の成果ラッシュで出涸らしか……この指輪、まさか源石を使っているのか?……源石病を忌み嫌う癖に、病の元凶そのものの扱いがこれとはな……フンッ!」

 

あれから見つかるのは金箔に包まれたサイコロやら極東のものらしき意匠の施された箱、宝石で作られた小鳥のオブジェといった工芸品ばかりで、食指の動く代物は見つからない。

 

アッシュは源石製の指輪を握り潰し、荒らし切った部屋から出ようとした。

 

 

 

 

「…………」

 

だが、徐にアッシュは出口へと向かう足を止めた。

音だ。誰かが階段を上がってくる音が聞こえてくる。

 

2階に……だな?

僕が感知して……が本当に……の体温なら……

おっしゃ!足跡……中に……んだ、信じるぜ!

 

声の数からして……二人だけだろうか?しかもどうやら位置が割られてしまっているようだ。

 

踵を返し、後ろにあった木製のアンティーク机を飛び越えてその下に潜り込む。

この部屋はそれなりの広さを持ってはいるが、ローリングを使った戦闘をするには狭すぎる。

「ひっ!?ななななんです今のぉ!?」

「おっ!やっぱいるんだな!?」

 

右に“ローガンの杖”を左に“騎士のクロスボウ”を装備し、来たる何者かに備える。

 

(ライトニングボルトで一人、後方に続くもう一人は……“ソウルの大剣”で殺るか)

 

間隔の狭い足音が大きくなっていき、

 

「入るぜ~っとぉ!?」

入ってきたと判断した瞬間アッシュは机から飛び出し、“騎士のクロスボウ”の照準をを扉をくぐった何者かに──

 

 

「タ、タンマだ!待ってくれ、俺たちに攻撃の意思は無い!!」

「貴公は……スノーデビルの……」

そこにいたのは氷の盾を展開したスノーデビルの隊員であった。

アッシュはク一先ずクロスボウの照準を天井に上げる。

 

「お、分かってくれたか?……んじゃ、取り敢えず自己紹介から始めようぜ?俺はアジン!スノーデビルのアジンだ!!」

「……アッシュだ。それで……貴公は…私を探していたのか?タルラと貴公等の隊長の戦いはどうなった?」

「あの姉ちゃんタルラって言うのか。いやあの姉ちゃんすっげぇ強くてよ、全然勝負がつかねぇんだ。認めたくはないが俺たちの姐さんと同じくらい強いんじゃねぇかって皆言ってたぜ。勿論俺もな!」

「……どうやらタルラは貴公等には認められたようだ。…そのままフロストノヴァ隊長殿にも我々の話も聞いてもらいたいんだが?」

 

ニッと笑うスノーデビルの男の姿にアッシュは警戒を解き、構えていた得物を下に下ろす。

 

「……悪いな、姐さん頑固だからさ。俺たちが無理しないように言っても聞きやしない、困ったウサギちゃんだよ……あ!姐さんにこのこと言うなよ!?」

「クク……貴公等も私と同じ苦労をしているようだな…。分かった、墓に納まるまで秘しておこう」

どうやらあのコータスもタルラと似た性質のようだ。もしかすれば終わった後には気の合う友人となっているかもしれない。

 

「待ってくださいよ兄さ──ひぁっ!?」

 

ベシャリッ……

 

スノーデビル隊員の背後から湿った物音と悲鳴が聞こえスノーデビルが振り向き、アッシュは音源へと視線を動かす。

 

(スノーデビルの装束をした……子供?)

新たな声の主は小柄なスノーデビルの隊員だった。

……どうやら監視官の残骸につまづいて転んだようだ。

 

そういえば二人分の声を聞いたんだった……しかし

 

 

──こんな年端のいかぬ子供までもが……戦う羽目になるのか、この世界では……。

 

 

テラはどこまでも無慈悲で、冷酷な地獄なのだ。

アッシュはそれを再認識すると同時に矛先の向けようのない怒りが心底に僅かに沸いたのを感じた。

 

「おいおい。キリル、大丈夫「うっぷ……」じゃねぇな!?」

「す、すまん少年……キリルと言うのか。本当に申し訳ない、私が散らかしすぎたせいだな……」

「だ、大丈夫れす……うっ…」

 

少年のスノーデビル隊員は諸に監視官だった肉塊に顔を突っ込んだようで今にも吐きそうな顔でこびりついた血肉を拭う。

(明らかに大丈夫ではなさそうだが……取り敢えず放置で良いか)

 

「……聞きそびれたが貴公等、私を探していたようだな。…何の用だ?」

「おっとそうだった!アンタら俺たちと手を組みたいって話だったろ?…実の所な、俺たちとしてはあの姉ちゃんの提案に乗ってもいいと思うんだ」

 

「ほう、それはそれは。手を貸した甲斐はあったか」

「それだけじゃ俺たちは動かねぇよ。……姐さん、結構源石病が進んでてな。なのに俺たちのためだとか言っていつも無理ばっかするんだよ」

「僕たちも姉さんの負担を減らそうと頑張ってるんですけど……力及ばずで…」

(……そうか、あのコータスの娘もまた身に余る力を振るっているにすぎぬのか)

 

──源石病は病である以上段階を分けて進行する。

何もせずとも徐々に体が源石に置き換わっていくのだが、その進行は感染者に与えられた恩恵──体内の源石を媒介としたアーツを乱用することで急激に進み、ただでさえ生い先短い生を削られるのだ。

フロストノヴァのアーツが凄まじいものであることは遠方からでも思い知った。

だが……ソレを今までに何度行使してきたのだろうか──彼女の命の灯火はどれほど残されているのだろうか?

 

「……成程、貴公等はタルラの強さを認めていた。つまり──」

「そうだ、姐さんには肩を並べて、背中を預けられるヤツが必要なんだよ!!」

「その点において軽く監視官を蹴散らしていた二人は適任だと思うんです!!」

「お、おう…それは我々としても嬉しいが…」

アッシュはアジンと突然グロッキーな状態から立ち直ったキリルの剣幕に気圧される。

 

彼等の事情はアッシュにとっても他人事ではなかった。

タルラも感染者だ。あの強力な炎のアーツも多用していけば彼女の命を削っていく筈。すっかり失念していたアッシュは自責する。

 

危ないところだった。“あの”タルラのことだ、間違いなく今後もそのことを考慮した戦いなどしないに違いない。

…今までのことを思い返しても、タルラがアーツを使用していない戦闘を一度も見たことがないのだからな……。

 

(タルラの為にも尚更今回の作戦は成功させなければならないな。……それにしても)

 

「……ク、クク……“雪原の悪魔”という噂は眉唾だったな。その正体は仲間想いで…人間らしい奴らの集まりなのだな、スノーデビル小隊は」

「敵を瞬く間に凍てつかせ、通った後には氷像となった敵が残る……そんな悪魔みたいな集団であることが俺達スノーデビル小隊の由縁よ!なぁ?」

「ハ、ハードルを上げすぎですよ…まだまだ僕は相応しくないんだ…」

「ンなわけあるかお前も俺たちの一員だぜ我らが弟分!!」

「ひゃあ!?」

 

(ハハハ…そんな屈託のない笑みを浮かべる悪魔がいるかよ……む?)

 

じゃれつき始めた二人のスノーデビル。その様子からは血の繋がりよりも固い絆のようなものが感じ取れる。

そんな二人を見てアッシュは己が無意識に薄くだが笑みを浮かべていたことに気付いた。

 

(……驚いた。会って1時間も経っていないはずなのに…すっかり心を許したというのか、私は…)

 

タルラとアリーナでさえ半日だった。

私がここまで早く絆されたことは──

 

──太陽は偉大だ。素晴らしい父のようだ。俺もいつか、あんな風にでっかく熱くなりたいんだよ……

 

──貴公の勇気と、我が剣、そして我らの勝利に……太陽あれ!

 

……あぁ、あったな。危うく忘れるところだったようだ……貴公等との出会いの記憶を

 

──ウワッハッハッハハ……

──ガハハハッハハッ……

 

(そうだった、私はこの手合いに弱いんだったな……)

 

「……スノーデビルの者たちは酒はいけるクチかね?」

「あ?なんだよ急に?」

 

「この部屋は屋敷の主の私室かなにかだったようでな」

アッシュは隠れていた机の隣に備えられていたワインセラーの前に近づき硝子の戸をグンダの手甲に覆われた右腕で突き破り、中にあった物を数本取り出した。

 

「戻ってタルラとフロストノヴァの死合を肴にしながら、酒盛りでも如何かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……スノーデビル小隊と協力関係が築けるやも……そう思い、この調子で彼らの上司にあたるらしい遊撃隊も──そう考えていた私は少々甘く見積もりすぎていた。

 

いや、結果的に行動を共にすることにはなったのだが……

 

「おっしゃ急げ急げッ!!お前はこのアルコール無しのヤツ飲むんだぞ!?」

「待ってくださいよ兄さん……に、兄さん前!前!!」

「あん?監視官でも……あ」

 

 

「ふんだくりおって……ん?どうした二人共、何を固ま…って─」

 

「あ、あのこれは……」

 

私は屋敷の前でタルラよりも一足先に遊撃隊と──その男に出会った。

 

 

「──フロストノヴァ達とはぐれたのかは知らんが…新参のキリルを連れまわして何をしているのだ、アジンよ」

 

 

 

漆黒など生ぬるく、深淵などよりも深き……太陽の光を呑みほさんばかりにドス黒い強大なソウルを持った──

 

 

 

 

──“愛国者(パトリオット)”の名を冠したそのサルカズに。

 

 

 

 

……この日からだったか。

 

約4、5年にも渡る……タルラが己が夢をパトリオットに認めさせ、共にその夢の果てを目指す同志として迎えるための長き戦いの日々が始まったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の拾得物

“奇妙なぐるぐるお面”

テラの既知の文明のいづれにも属さぬ由来不明の仮面。
その奇妙な造形は見ていると無意識の内に超越的思考を強いられるような気がする…。

敵からの被ダメージを減少する


“ガリアの銀貨”

かつて繫栄していた亡国「ガリア」の通貨。
割ったところで何の効果も得られない。

何の価値もなく、もはやこれは盛者必衰の理を知らせるのみだ。

“貴族のレイピア”

装飾性の高い貴族達のレイピア。
非常に脆く、実戦に使えたものではない

戦いを知らぬ者達の得物とは所詮そんなものだろう

“樹木の鎧”

張り巡らされた樹木で作られた異形の鎧。
それはウルサスより北にある「サーミ」由来のものである

ウルサスの皇帝はサーミの禁忌の力を秘しているという
この鎧を有していた貴族はその噂にあやかろうとしていたのだろうか……

“ロイヤル・リキュール”
廃墟になり果てた豪邸で見つけた酒。

亡国ガリアの高級酒であるそれは故に製法が失われており
非常に希少であるという
酒を楽しむ心の余裕のできた今の己ならば、味を楽しめる筈だ




あとがきの時間です

今回で登場したアジンとキリルについて、ほぼオリキャラと化してる気がしますが、二人はスノーデビル小隊の中で比較的目立っていたのに名前が無かったスノーデビル1号と気の弱そうな少年兵です。おそらくセーフでしょう(自答

意図的に名前出さなかった可能性がありますが今後呼ぶ名前が必要だから名付けさせてもらった次第とのことです。
アジンはロシア語で1、そのままですね。キリルはロシアでは一般的な男性の名前だそうで
彼らを名前まで付けて出したのは一応理由はありまして……

……あるNo1ヒーローはこのようなニュアンスのことを言いました、
“守るものが多いからこそ私達は負けないんだ”と

二人とアッシュが絡んだのは……そういうことです。フロストノヴァだけでなく、スノーデビル小隊を()()()で終わらせないためにも、アッシュ“達”にはその心意気で頑張ってもらわねばなりませんね

ちなみにアッシュの監視官が集まる読みは当たっていたそうですよ?
しかし、そんな彼等は廃墟街の道中で不幸にも黒塗りのパトリオットと遊撃隊に衝突してしまったのです  
自業自得とはいえ哀れなものですね

次回、幕間:氷は輪舞し灰は紅く燃ゆる

幕間ですが貴重な戦闘回の模様


これからも筆者の作品をよろしくお願いいたします


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