灰は龍炎に惹かれて   作:ジルバ

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今回は番外編です。アッシュのアークナイツのキャラたちとの馴れ初めとか日常みたいな?

しかし容易ではないな、連続投稿というものは……

ですので投稿ペースをそろそろ一週間おきにシフトしようと思っています。よろしくお願いします






幕間:邂逅

ウルサスの雪原に感染者の戦士たちの鬨の声が響き渡る。

タルラの存在は確かにこの冷たく、無慈悲なウルサスの大地に生きる感染者たちの“火種”となった。

先頭に立つ彼女の後に続く感染者たちと交戦する感染者監視官とウルサスの兵士は悟るのだ。

 

自分たちを蹂躙していく目の前の感染者たちは虐げられ、掠め取られる立場に甘んじていることを辞めたのだと。

 

 

そして、戦場となったその雪原の近くにある森の中でも熾烈な戦いが繰り広げられていた。

 

「感染者風情が!俺が!貴様らごときに──」

一人のウルサスの青年が振るった大刀が喚くウルサスコマンドーの胴を両断する。

彼の足元には同じように体を二つに断ち切られた兵士たちの亡骸が転がり屍山血河を成していた。

 

孤立したのか、周囲に仲間の感染者の姿は無く、全て彼が築き上げたものである。

 

「ッ…!」

 

しかし彼自身も無傷では済んでおらず、その左腕は力なく垂れており、全身のいたる箇所に負った裂傷もひどい。

満身創痍であるのは一目瞭然だ。彼の命が風前の灯火であることを示すかのように彼の得物に宿る炎が今にも消えようとしている。

 

「たかが一人にここまで手こずらされるとはな…!だがこれで終わりだ!」

 

ウルサスコマンドー隊長と追従するウルサスコマンドーがにじり寄り、ついに青年は崖元へ追い詰められてしまう。

彼らの四本の突撃槍が青年に向けられる。

 

「……お、俺はまだ──」

 

──終われない……!

矛先が青年の身を貫かんと引き絞られ──

 

 

「──いいや、終わるのは貴様らだ」

「!?ぎあ…ッ!?」

 

突然背後から聞こえた声にいち早く反応したウルサスコマンドー隊長だったが、膝裏に蹴りつけられたかのような衝撃が走り、体勢を崩したコマンドー隊長の頭を“ファランの大剣”が兜諸共かち割った。

その下手人は──

 

(誰かが……援軍が来たのか?孤立した俺のために…?)

「た、隊長!?」

ウルサスコマンドー隊長の身体が崩れ落ち、青年の目がその向こうに外套を纏い、さらにその下に漆黒の鎧を身にまとった人物を捉えた。

 

(アイツはたしかタルラの隣にいた──)

 

──アッシュ。

 

彼もまた感染者たちの戦いにその身を投じていた。

 

そして今、アッシュの手で次にその命を散らすことになったのは骸となった隊長の右隣にいたウルサスコマンドーだ。

 

「ガ…ッ!?」

アッシュが身を翻し勢いをつけた“ファランの大剣”で斬り上げ、ウルサスコマンドーを逆袈裟に斬りつける、言うまでもなく致命傷である。

そしてそのまま剣を振り切った勢いを利用しアッシュは後ろへと飛び退く。

 

「よ、よくもやってくれたな貴様ァ……!」

「貴様もこいつの仲間だな!?」

「さぁ、どうだろう?私はただ……そう、貴様らがあまりにも隙だらけな背中を見せつけてきていたものでな……クク、つい殺してしまったよ。このザマではお前たちも現役引退を考えたほうがいいんじゃないか?」

 

「随分と舐められたものだな……良いだろう、鉱山送りで済むと思うなよ!」

 

()()()()()()()()()()ウルサスコマンドー達は青年を人質にすることなく彼へとその槍を構え突撃した。

 

彼はただタルラ達の監視官達の拠点への襲撃などに付き合ってきただけではない。タルラから彼女の話術を盗み、自分なりの使い方を講じた。

要は挑発することを覚えたのだ。自我なき亡者の跋扈していた彼の世界ではなく、感情を有し、左右されやすい人間たちの生きるテラで通用する技能を。

 

閑話休題、アッシュは顔が地面に触れそうになるほどの低姿勢で疾駆。向かってくるウルサスコマンドーの内の先行する方の足元へ潜り込み“ファランの大剣”の切り上げでかちあげ、身体が拉げたウルサスコマンドーが空中で己の血をまき散らす。

 

「な……」

「そら、どうした?まさか怖気づいたか?」

「お、おのれぇぇー!!」

 

単騎に仲間を殺されたことへの恐怖と驚愕を怒りで押し殺しウルサスコマンドーは突貫せんと槍で突撃する。

 

しかし、それは悪手だった。

 

アッシュは火の無い灰として「突撃」を繰り出し、繰り出されてきた。故にその致命的な弱点を二つ知っている。

そのうちの一つが後ろを取られたら最後、隙だらけになること。

 

 

アッシュは右斜め前にローリングしウルサスコマンドーの背後に回る。

「ウルサスへの忠義ご苦労様、だ」

「感染者……め」

左手に握られた鈎短剣に肩を抉られ、固定された体にバックスタブを決められたコマンドーは絶命し、戦況が終了した。

 

(戦い慣れた動きだった……戦場で目立った活躍を聞いていなかったが……圧倒的なアーツ使いのタルラとは違ったベクトルの実力者だな、この男……)

 

「これで終いだ……まずいな…!貴公、よくぞ耐えた!まだ死ぬなよ!?すぐに医療チームが来るからな!!」

「ぐっ…待て、致命傷は負っていない!ゆ、揺らすな…!」

 

 

彼がレイドの窮地に参じたのは偶然だった。

 

タルラの指示を受け、アッシュは高台から帝国砲撃誘導機を“ゴーの大弓”による一射で破壊し終え、帰投しようとしていた。その際にふと視界の端に単身でウルサスコマンドー隊長の部隊に斬りかかる青年がいたので、援護に赴いたまでのこと。

 

 

この偶然こそがウルサスの青年──レイドとアッシュの出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 









はい、記念すべき一回目の幕間は……レイドでした!

危機契約のモリモリ契約で多くのドクターを震え上がらせたヴェンデッタも今は良きおもひでですよ。

彼とアッシュが本編で関わることは少ないですが、全てが終わった後に出会うことになるやも……?







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