「爺さんッ!!」
タルラは息が絶え絶えになりながらも、その場所に辿り着いた。
広場には身に着けている衣服のいたるところが赤黒く染めた老父がの姿があった。
(ッ!血だらけだ……。私は…間に合わなかったのか…!?)
「タ、タルラ!?何故ここにいるんじゃ!?」
「そんなの今はどうだっていい!早く手当てしないと…!」
「だ、大丈夫じゃから体を揺らすな揺らすな……。……少し腕を切っただけだ。服のこれは全部こいつらの血だから心配するな!」
そう言ってニィっと笑ってくる老父にあきれながらもタルラは心底から安堵し、息をついた
。
「こいつら全員……あの人が殺したのか…?」
タルラは自分達の周囲に広がっている惨状に目を向ける。
そこには監視隊の隊員達の骸が転がっていた。
いずれも脳天に深々と短剣を突き立てられ、四方に異形の頭が象られた大鎚に叩き潰され、そして四肢の内のどれか一つと首を斬り飛ばされたりと凄惨な最期を迎えたものばかりだった。
(…いくら相手が監視官とはいえ容赦ない殺し方だな。アイツは一体何者だ…?)
「…ああ、あの人が儂を庇ってくれたんだ」
タルラと老父は視線を今もなお二振りの剣を振るい、監視官を殺しまわる灰へと向けた。
「や、やめ──」
「く、来るなァーッ!」
火の無い灰が振るう“黄金の残光”と“暗銀の残滅”が空に黄金と蒼の軌跡を描きながら、監視官の命を刈り取ってゆく。
かつて四騎士の一人──キアランが“王の刃”として王の敵を狩ってきたように
「死ねやァー!!」
大仰な前動作で斬りかかってくる監視官の胴を右の残滅で貫き、串刺したその体を反対にいたもう一人に向かって投擲。
「ヒィーガッ…!?」
怯んでいる隙に懐に入り込み二刀を首に突き刺し、切り開き、抉り飛ばす。
(やれやれ、“モーンの大鎚”で5人ほど消し飛ばしてから露骨に弱腰になるもんだから罠かと思って警戒していたが……無駄だったな。これならあの犬どもの方がよっぽど手ごわかったぞ……と、こいつを殺せば後は…)
尻もちを搗き、後退ろうとする監視官を額への残光の
一刺しで以て絶命させ、灰は一固まりになってから動こうとしなかった監視官を睨む。
「くっ…何をしているお前たちも行け!!」
「……クソッ行くぞォー!!」
指示を飛ばした一人を残して向かってくる監視官達に対し、灰は傍らに双剣を突き立て、右腕を前へと突き出す。
すると右の掌から蒼白い粒子が漏れ出で、黄金の剣槍──“竜狩りの剣槍”を形成した。
現れた剣槍をつかみ取り肩に担いだ灰は敵の集団へと突貫する。
「「「「オォォーッ!!」」」」
「綺麗に横並びになりおって……」
剣槍の間合いに相手を入れた瞬間、灰はその場で地面を踏みしめ、両手で持った剣槍による渾身のフルスイングを放ち迫りくる監視官たちをまとめて撫で斬った。
「……纏めて殺してくれと言っているようなものだぞ」
滴る血を軽く払い、剣槍の切っ先を最後の一人となった監視官へ向ける。
「さぁ、これで残るは…貴様だけだな」
「っ!く、来るな…!」
最後の一人を始末するため、己の足に力を込めた──その瞬間。
「ギャアアァァーッ!?」
「──ッ!?」
背後から聞こえた耳をつんざくような悲鳴と炎が燃え上がる音に咄嗟に振り向く。
どうやら殺し損ねていた監視官が背後に迫っていたようだ。しかし、何者かが放った炎で炭と化したことで私は背撃を受けずに済んだのだ。
「この炎は……」
辺りを見回してはじめて老父の横にいたその女に気づいた。
陽の光に照り映える純銀の髪、この場にいる者の中でも異彩を放つ漆黒の双角と尻尾、そしてその端正な顔立ち。
だがそのどれとも違うものに私は釘付けになっていた。
彼女の瞳……その奥深くで静かに燃ゆる
「“ウルサススラング”! どいつもこいつもッ!」
監視官のあげた怒号で引き寄せられかけていた意識が帰り、我に返る。
見れば殺し損ねた最後の生き残りである監視官が逃亡を始めていた。
「あ、アイツ逃げるぞ!?」
「ッ不味い…!」
前回は監視官を襲撃はしたが、命までは取らなかった。……その結果が今回の奴らの定例調査だ。しかし、今回は…死人が出ている。
あの監視官が逃げ帰り、村へ派遣した監視隊が壊滅したなんてことを政府が知れば何をしでかすか分からない。
「あいつを逃がしては駄目だッ……!」
タルラは手の内に炎を滾らせ、監視官へ放たんと、狙いを定める──
「当然だ。逃がしはしない」
しかし冷静に、タルラに聞こえるように灰はそう返し、“竜狩りの剣槍”の刀身に左手を這わせると、剣槍が太陽の雷を帯び始める。
灰が雷を迸らせる剣槍を天へと掲げると同時に、
「ギィヤァアァァ!!?」
一目散に逃げゆく監視官の頭上から落雷が落ち、彼の命を奪って見せた。
「…ふぅ、良かった……」
(ここに来るまでに見た村の人達自体に被害はなかったようだし、何よりも爺さんが無事で本当に…本当に良かった……)
「…先の炎による援護は君のものか?」
つい気が緩み、座り込んでいると、いつの間にか監視官を蹂躙した人物──声からして男だろうか…が私たちを見下ろしていた。
「あぁ。……余計なお世話だったかな?」
「いや、あのままだったら私はバックスタブで死んでいただろう。君に感謝を」
「貴方は爺さんを助けてくれたんだ。感謝するのは私の方さ」
立ち上がって彼に頭を下げる。
こうして間近で彼を見て気づいたが、彼は外套の下に黒い騎士甲冑を身に着けていた。声がくぐもって聞こえたのはそのせいか。
至る所に傷と金彫の意匠が刻まれたソレはカジミエーシュの競技騎士の現代の技術の結晶である装備とは程遠く、昔話や伝説に出てくる騎士のモノに近いように感じる。
そして、鎧に身を包んだ全身に纏う襤褸の外套。
(爺さんは彼を旅人だと言っていたが、肌の露出が一切ないこの装備は旅の装いとしては些か過剰すぎる気がする。……感染者か?それなら説明がつくが……)
「儂からも助けてくれてありがとうな……そういや名前聞いてなかったな。なぁアンタ、なんていうんだ?」
「私の……名か」
彼は己が名を“ダークリング”がその身に現れた時から不死院に囚われていた私を名の知れぬあの騎士に助けられるまでに人間性とともに喪っていた。
しかし、彼は新たな自分だけの名を与えてもらったのだ。──あの冷たい絵画で出会った小さな画家に。
「私の名は──
……はい、ようやく主要人物登場&主人公の名前公開です。遅れてしまい申し訳ナスです。
主人公の名前の由来も独自解釈です。よろしくお願いします。
あ、そうだ(唐突
私のご友人☆が感想書けなくなってるよと言ってたので設定しなおしました。
正直今度こそ本当にちゃんと設定できてるのかすらも分からんとですよ。無知って怖いネ