灰は龍炎に惹かれて   作:ジルバ

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彼が生きていようと死んでいようとタルラは前へ進むでしょう。まぁ救えるなら救ってあげたい。
…救いたくても救うわけにはいかないキャラだっているんですから。





第2話:The ursus rebel

監視隊の奴らがやってきた。おそらくあの監視官が私のことを報告したのだろう。

 

「婆さん、とうとうこの日が来た。これ以上は隠れようがない。」

薄々分かっていたことだ。この日常が終わるのは時間の問題であると。

…そろそろ潮時だ。もう、ここにはいられない。

 

「出てきちゃダメだよ。タルラ!家の後ろに隠れていれば見つかることはないさ。処罰が怖くて逃げたっていうことにしておくから。誰もお前を責めたりしないよ!」

奴らに何をされるか分からないというのに…本当に婆さんには感謝してもしきれないな。

 

──だが、これ以上私の存在で迷惑をかけるわけにはいかない。今まで私のことを世話してくれた恩義に報いる時だ。

 

「大丈夫だよ、婆さん。奴らには二度と復讐の機会など与えない。もう村の人を誰一人として殺させやしないから」

「タルラ……ああタルラ!やめておくれ……そんなこと言わないでおくれよ!」

今にも泣きだしそうな声でそう言う婆さんの姿に胸が締め付けられるような思いだが、

私の決意は揺るがない。

タルラと呼ばれた女が今までの感謝と別れを告げようと口を開いたとき、家の戸を叩く音が家の中に響き渡った。

 

「だ、誰だい!?……監視隊かい!?ここには年寄り以外誰もいやしないよ!」

「おばあさま、私よ!」

「おお、アリーナかい!早く、早くお入り!」

状況が状況なので婆さんも私も監視隊が来たのかと思ったが、聞こえてきたのは私の親友の声だった。

婆さんがアリーナを家の中へと入れるが、彼女の顔はひどく青ざめていた。

 

──どうやら誰かが私のことを密告したようだ。

 

…責めるつもりはない。村の誰もが生活に苦労しているのだから。

二人のやり取りを聞きながらそんなことを考えていた時、私はあることに気づいた。

 

「待てアリーナ、婆さん。爺さんはどうした?」

 

 

 

 

 

 

──村の中央広場

 

監視隊の隊員が家屋の一つ一つを尋問している中、監視隊の隊長は定例調査の結果を神経を苛立たせながら待っていた。

「……まだ、見つからんのか」

(感染者も襲撃犯も見つからないまま、時間ばかり浪費していく……。いっそのこと皆殺しにでもしてやろうか…?)

 

男が短慮な思考を巡らせていた時、一人の老人が話しかけてきた。

「クソジジイ、何のようだ?」

見るからに貧相でろくな物資も奪えそうもない老人だった。どうでもいい。

どうでもいいので監視隊の隊長は適当な理由をつけてその老人を追い払おうとしたが、

その老人が上着を脱ぎ捨て、見せつけた物に目を通して見開いた。

 

──肌から源石が突き出ていたのだ。

 

すぐさまに、そして悟られぬように隊長は村中の監視隊を招集する。

 

「まだ信じられないのなら、これを見ろ!」

それに気づくことなく、老人は持っていた剣で腕を切り付けると流れ出た血が霧のように広がった。

 

「分かった。信じよう」

隊長はマスクの中で邪悪な笑みを浮かべ、帯びていたサーベルに手をのばし──

 

 

「すまない、尋ねたいことがあるのだが……」

 

 

 

 

 

 

 

「急げ!!でないと爺さんが…!」

タルラは炎のアーツで足を奪おうとする雪道を溶かしながら全力で走る。

 

タルラは老婆から二つの事実と一つの想いを知らされた。

自身が隠してきた感染者であることを老夫婦は気づいていたこと、そして老父もまた感染者であり、タルラの身代わりとなろうとしていること。

──二人がタルラのことを心から愛していることを

 

「頼むから、間に合ってくれ…!」

 

 

 

 

 

「……見て、分からんか?私は忙しいんだ」

隊長は老人を睨みつけたまま、背後からかけられた声に苛立たしげに返す。

 

「いやなに…私は旅の者なのだが……迷ってしまってな。…ここがどこか教えてはくれないだろうか?」

何故かくぐもってはいるが、男の声だった。

 

「…この村の周囲には別動隊を巡回させていた。貴様、どうやってこの村に入り込んできた?」

「別動隊…?……あ。…いや、見た覚えは…無いな。うむ……」

隊長は老父から目を離し、振り返った。

 

そこにいた男は見ずぼらしい襤褸布を外套のように羽織り、また、目深に襤褸のフードを被っており顔がよく見えなかったが隊長にとっては些末事であった。

 

──襤褸の外套にべっとりとこびりついていた赤黒い染みに比べれば。

 

 

 

 

 老父は今の状況が飲み込みきれていなかった。

 

「貴様……自分が何をしでかしたのかわかっているのか!?」

「先に襲ってきたのは奴らだ。かかる火の粉を払うのは当然だろう」

 

(な、なんじゃアイツは…?村のもんじゃねぇのは確かだが……)

 

「ッ!我々はウルサス政府の役人なんだぞ!貴様は……!」

「ウルサス?この村の名か?」

 

(いや、そんなこと考えてる場合じゃない…今こうしているうちにもタルラが見つかっちまうかもしれん…!)

 

「……ウルサスを知らないだと?……貴様、ウルサスの外のド田舎からでも来たのか」

「あぁ、まぁ……そうなるな?」

「ほう、そうか。それは良い」

 

(儂が囮になって村中を粗探ししてやがるあいつらを村から引きはがせば……ッ!?)

 

「上から何か言われることはないな。では──」

 

目の前の二人の会話をよそに、老人は現状を打破せんと頭をフル回転させていたが監視官が帯刀していた曲刀の柄に手をかけているのを見逃さなかった。

 

「アンタ、逃げろッ!」

 

「──死ね」

その曲刀が仮に老人へと振るわれていれば彼は避けることも、防御もできず、なすすべなく殺されていただろう。

 

だがらこそ、監視官の隊長が得物を振るう相手が火の無い灰だったのは彼にとって幸いだった。

 

ガァァン…!

 

灰に左手にいつの間にか装備されていた錆びた鉄の円盾によって曲刀が「パリィ」され隊長の手から弾け飛んだ。

 

「……なッ…!?」

「やはり敵だったか。では──貴様が死ね」

今度は灰の右手に“グレートアクス”が現れ、作り出した隙を逃さず、隊長の腹に叩きつける。

 

「ガハッ…!?」

血反吐を吐く監視官だったが容赦なく彼の頭へ鉄塊のごとき大斧が振り下ろされ、その命は無慈悲に刈り取られた。

 

 

「ご老人、怪我は……しているようだな」

「…へ?あ、あぁ、これは儂がつけた傷だから気にすんな。…って──」

何事もなかったかのように襤褸を纏う男は話しかけてきたが、彼の握る大斧に付着した白い骨の欠片が刺さった肉片や、老人の視界の端で純白の雪を染めゆくアカイロが監視官の隊長が彼の手で葬られたことを証明している。

 

「あ、アンタ自分が何したのか分かってんのか!?」

「…またその質問か。正当防衛だ」

男はうんざりだと言わんばかりにため息をつく。旅人だと言っていたが世間知らずにもほどがある。

 

「そんなのこの国のお偉いさんに通用する訳ねぇだろう!?このことが知られたら反逆罪で指名手配されて……捕まったら殺されっちまうぞ!!」

「落ち着きたまえよ。…告罪されたようなものだろう?なんとでもなるさ」

老人の必死な様相を前にしても動じることなく灰は死んだ監視官の隊長の曲刀を拾い上げ、その刀身を悠然と眺めていた。

「っアンタは──」

 

「隊長の言っていた感染者はどこだ」

灰のものでも、老人のものでない低い声が広場に響く。

声のした方を見るとそこには隊長が密かに招集した監視官たちが集まってきていた。

 

「おっ隊長死んでんじゃねぇか!分け前が増えたなァ!」

「どっちが殺した?…どっちも貧相だな、食料は望み薄か」

「まぁ待て、こいつらの家バラして売れば金にはなるだろうさ」

 

(不味い……儂が感染者と奴らに言っても、家を漁られたらタルラが…!)

 

「…儂じゃ……儂がお前たちの探していた感染者じゃッ!」

(やるしかない…儂が囮になってやる!)

 

「そっちの“ウルサススラング”は?」

「この人は関係ない!感染者でもない!この前来たお前たちの仲間を襲ったのもこの死体になってる奴もこの儂の仕業じゃ!!」

「貴公…!?」

何の関係のない彼を巻き込むわけにはいくまいと、老人は決意した。灰の罪まで被ることにした。そして願わくば…

「アンタ、タルラのことを──」

 

「フンッ。そうかよ、お望み通り殺してやるよ。ただし、その前にどこに住んでるか答えろ!」

「ッそ、それは……」

 

「待てよ?確かババアと娘が居残ってた家あったよな。そこの主人じゃないのか?」

「あぁいたいた。……あのエラフィアの娘、ウマそうだったなぁ……」

 

(エラフィアじゃと…!?まさか……)

 

「あの娘も感染者かもしれないんだぞ。やめとけ」

「ジジイだけが感染者の可能性がある。その時は…我々の欲望の捌け口になってもらおうじゃないか」

「そりゃあいい!」

 

 

「「「「「「「「「「 ハハハハハッ!! 」」」」」」」」」」

 

(儂がタルラの為に身を捧げればアリーナが奴らに……儂は…儂はどうすれば…!)

 

広場に下卑た笑い声のコーラスが響きわたり、老父は絶望しかない選択肢を前に涙を流し、蹲るほかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──醜いな、貴様等

しかし、下種どもの雑音も老父の絶望も底冷えするような、身の毛のよだつほどの殺意の込められた灰の一声によって断たれた。

 

「……なんだと?」

 

灰は“鉄の円盾”と“グレートアクス”を老父の目の前に放る。

「貴公、自衛くらいはできるか?」

「あ、アンタ…?」

「見ず知らずの私のやらかしの責を背負おうとしてくれたこと、感謝する。──だが」

 

空いた両手にはいつの間にか一対の双剣が握られていた。

右には暗い銀色に鈍く輝く短剣──“暗銀の残滅”が、左には黄金の曲剣──“黄金の残光”

 

灰はウーラシールにて邂逅した“王の刃”から譲り受けたその二振りの剣を前に逆十字に構える。

 

「飼い犬は主に似るという。奴らを見て私は…ウル…そう、ウルサスだったな。ウルサスの反逆者となっても構わないと思ったよ」

そう締めくくり、老父へと向けていた黒鉄の兜に包まれた顔を正面の監視官たちへと戻す。

 

「貴様…今何と言った…?もう一度言ってみろッ!」

「醜い、と言ったのだ。…あぁ、貴様らのような奴らをいうのだろうなぁ、蛙と見紛うほどの欲に塗れた人間というのは」

 

「ッ貴様ァ!」

激情に駆られた監視官が一斉に灰を嬲り殺さんと得物を手に襲い掛かる。

 

「さぁ──外道狩りの時間だ」

 

 

 

 

 




“感染者監視官の曲刀”

ウルサスの感染者を追う感染者監視官たちの曲刀。
ウルサスを統治する者は代々伝えられてきた一振りの曲刀を有し、
それはヴィクトリアの冠、リターニアの王笏に並ぶ皇帝のレガリアである。
故に、その剣とそれを源流とする近衛兵の得物は皇帝の意志を体現するものだという…。



フロムゲーは対人やストーリー攻略も楽しいですけど、アイテムや装備のテキストを読むのも楽しいですよね。
噂のナイトレインはゲーム性的にテキスト読む暇がなさそうですけど、どうなんでしょうね?
まぁ、ともかくもっとそれらしいテキスト作れるように頑張ります!
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