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『大きなコンテンツ』を意識したファンタジー小説の書き方と、本格ファンタジーの断片──マクロデザインの話。

はじめに

 AIによるテンプレ小説の一位取得によって、webの小説界隈は大荒れ、かつ、私にとっては壮大なフラグ回収の時期が訪れつつありますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 何年かwebの小説の界隈にいて理解した事は結局、この界隈はとんでもなく遅れてて将来性がないであろう事でした。
 その理由は大小数多く挙げればきりがありませんが、つまるところ今後は正常化や是正フェイズではなく、衰退・縮小局面にしかならないであろう、と見立てましたので、界隈を無視して新たなる取り組みをやっていくしかありません。

 というわけで今回は、私が本格ファンタジー『ダークスレイヤーの帰還』を執筆していくにあたって、なぜ小説の常識を無視して多くの設定や登場人物、そしてその物語を微に入り細に渡って書き出していってるのか? その骨子たる『大きなコンテンツの作り方』について書き出していこうと思っています。

コンテンツ庁の予感と、可視化されるラノベの問題点

 最近、経団連の提案としてコンテンツ庁の設立の機運が高まっています。日本発のアニメやゲーム、漫画の影響力が世界で極めて大きくなりつつあるのと、裏の実情を言えば技術面で世界と渡り合えなくなりつつあるからですね。というわけで、加工貿易だけではやっていけなくなりつつある日本はお金になるものをとにかく海外に出さねばならなくなりつつあります(余談ですが米の高騰の裏で日本産の農作物の輸出額が過去最高を更新しているのも目を放してはいけません)。というわけで勢いのあるコンテンツ産業に経団連が目を付け始めたのでしょうが、一般社会から目を付けられたという事は、界隈の因習や古い構造も必然的に白日の下にさらされ、破壊される事もあるでしょう。このような流れは時代の波として同時多発的に起きる事があり、冒頭のAIによるテンプレ小説的ランキング価値観の事実上の破壊もその因子の一つと見ています。
 つまり、現在は時代の大波が来襲する直前の状態と言えるわけです。さて、この視点で全体を見ますと、まず一般社会の起業家などには『ラノベやweb小説は思ったほど金にならねぇな』という感想を持たれると思います。

 理由としては……。

  1. 逃避的文脈かつ、特定層をターゲットにした大同小異な作品が多く、一般社会への拡散が難しい。

  2. GAFAM等、世界的なプラットフォームに不適切な作品が少なくない(過度な性的/暴力的表現などが多く、グローバル展開に適さない)。

  3. コンテンツの展開性がない構造のため単発のアニメ化やソシャゲ化が限界。

  4. 今後の急激な人口減少により、国内でのボリューム層も消滅していく。

  5. 海外の大型のファンタジーのコンテンツに見られるような壮大な作品が極めて少ない。

 といった慣習的・構造的なマイナス要因が挙げられます。

 これは作品のブランディング化の際に一般社会ではラノベやweb小説である事が足を引っ張りかねない未来も訪れる可能性がある事をも意味していますが、今回はそこまで先のことは触れません。しかしながら、これら挙げた要因は全て、『大きなコンテンツ化』を阻害するものです。

ラノベやwebの構造的限界の理由、ミクロデザイン

 さて、前項で五項目ほど現行のラノベ・web小説の問題点を挙げた。実は、これらの問題は全てラノベやweb小説がその閉鎖的な環境と評価軸により、ミクロデザイン化している事に拠る。これは、“局所の快感”を軸に成立する物語であり、商業主義による競争が強くなればなるほど、それは出来れば可能な限り低コストでランキングを駆けあがって書籍化し、たくさん売れてくれるのが望ましいのだ。これもまたミクロデザイン化を後押しする。
 しかもこれは多くの小説に付随しがちな“弱者性”とも相性が良い。
 最近のファンノべ賞で荒俣博先生が『逃避的文脈ばかりですねぇ』と嘆いたのも、この小説がミクロデザイン化しやすいという傾向と無関係ではないでしょう。

 同時にこれは、「木を描いて森を設計しない創作」とでも言うべきものだ。つまり、オープンワールドのゲームにできないし、例えば多層な世界によるシリーズのエピソードを何作も映画やドラマ、アニメとして展開することもできない。TRPGにおいて様々なキャンペーンを出す事もできない。とても限られた天井と壁のある設計なのだ。
 
これは、パソコンやスマホを開いて文字を打てば作れる――古風に言えば紙とペンだけで壮大な世界を造れる――小説という分野において、あまりに卑小過ぎるし勿体ないなと私は思うのだ。

大型コンテンツとマクロデザイン、本格ファンタジーの今後

 さて、話を本流に戻そうと思う。私が生粋のファンタジー信者である点とも重なるが、本格ファンタジーと呼べる名作のファンタジーは、世界を丁寧に設定・構築して人物を動かすため、結果的に、あるいは意図的にマクロデザインの構造になっている事が多く、これが幅広いマルチメディア化と非常に相性が良い。そして、海外のそれらは既に大型コンテンツとして様々な展開をしている。それはつまり、このような構造の大きなファンタジーが小説界隈の窮屈な枠を超えて訴求し、長く大きな利益をもたらすコンテンツとして理想的なモデルの一つであると既に答えが出ている事を意味している。なのに、日本には小説発のそれがほぼ、ない。そうなった理由については過去の記事で述べたが、今後、過去から現在へと至るこの流れとその結果による大型コンテンツの不在が小説の外の界隈に見つけられ、指摘される可能性がとても高くなってきたと見ている。よって、今回初めて私の物語の設計思想に言及しているわけだ。

私が実際に行っている『マクロデザイン』

 あくまでもこれはファンタジー及び本格ファンタジーの分野として私がやっている事であり、小説に最適解は無い、という基本は忘れないでほしい。その上で列挙していこう。

  1. 一般社会に向け、可能な限りハイコンテクストにしない。必要なら索引も充実させる。オタクコンテンツにしない。

  2. 登場人物の数は展開するコンテンツを見越して、少なくしない。そもそも、世界の行く末と関わる物語を少人数で回しても貧相である。

  3. 大切なキャラクターは物語のスポット外の過去や未来も可能な限り物語にしておく。

  4. 脳内でもいいから地図はほぼ必須。特色ある国や地域、文化を可能なら歴史や様式まで設定する。

  5. その世界の成り立ちと歴史、終末は設定しておく。この年表が幾つかの大きな出来事で充実していると理想的。

  6. プレイアブルな種族は豊かに設定する。一方で、人気種族に関してはラノベ界隈の商業エルフのような直接的な名前の流用は行わず、再解釈した設定と別の名前、そして通称としてよくある呼称を使えるとなおよい。

  7. 魔法や戦闘に絡む概念や力を破綻なく設定しておく。ゲーム的な根源の無い、または浅いものにしない。

  8. 神々や魔族、巨人族、竜族など、強大な力を持つ存在のその由来や、扱う力の性質を概念として明確に性質を特徴づける。

  9. その世界における人間という種族の存在意義や役割を明確に設定する。

  10. 種族や神格などによる異なった美意識や様式をある程度設定しておく。

  11. 『日本人が作るファンタジー』としての思想の特色を明確にし、また表現する。

  12. それらを破綻なくまとめて物語を動かして行く。

 ……いかがだっただろうか? おそらく、webの小説界隈の創作論とは真逆で、ラノベとも異なる非効率的な工程が多く見えたかもしれない。しかし、現在のゲームやラノベはおそらく、このようなマクロデザインから構築されている本格的なファンタジーの名作から形と発想を得ており、私がしている事はそれら先人の作品と同じ手法で創作しているだけなのだ。
 ここ30年ほど、ラノベの台頭等でこんな手間をかける事は馬鹿馬鹿しい、みたいな空気が強かったが、AIの登場で創作の自由度はより上がっていき、大きなコンテンツの経済効果は小説の大ヒットさえ簡単に超え、その利益も長期にわたる事が可視化されやすくなっている。つまり、このような創作をする意義がいよいよ強くなってきたと言えるのだ。

おわりに


 縮小していくラノベやwebの界隈に縛られず、私のようにマクロデザインした作品作りをしていく人が少しでも増えてくれたら幸いだし、それが大きなコンテンツとして世に出たら最高だな、と思うのだ。
 そしてもちろん、私の作品もこのようにして作成されている。だからおいそれと投稿サイトや出版社には託せないのだ。

 以上、私は創作論的なものを放つのにはとても否定的だが、少なくとも私がweb小説やラノベとは全く異なる設計思想で物語を書いている事が伝われば嬉しいし、それが今後『大きなコンテンツ』を表現しようとする創作者の一助になれば幸いだと思って筆をとらせていただいた。

 それでは、良き創作を!


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『大きなコンテンツ』を意識したファンタジー小説の書き方と、本格ファンタジーの断片──マクロデザインの話。|堅洲 斗支夜/名興文庫の相談役
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