METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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処刑

 側面に髑髏のマークを入れたヘリコプターが一機、洋上の高い位置を飛行している。

 強力な機銃とロケットを積み、完全武装の歩兵を載せることもできるMi-24(ハインド)には今、パイロット以外には二人だけが搭乗している。

 一人は葉巻をくわえじっとその場に佇むスネーク、もう一人は窓の外を楽しそうに眺めているスコーピオンだ。

 

 二人はマザーベースから数十キロ先の陸地にある、今は誰もいなくなった街とその近くにある廃墟と化した陸軍基地の調査任務のためにマザーベースを発っていた。

 

『スネーク、諜報班の話しでは古い基地に数人の人影を確認したそうだ。この世界において前哨基地となる場所の確保をしておきたい我々としては、廃墟とはいえある程度設備の整った基地は魅力的だ。そこの調査と、できることなら基地の確保を頼む』

 

 スネークの持つ携行用の無線にマザーベースよりカズの声が届く。

 今回のスネークの任務はカズの言った通り、古い陸軍基地の調査と確保だ。

 マザーベースの諜報班は司令官であるスネークの捜索以外にも、マザーベース周辺の目ぼしい拠点の調査を行ってきた。その諜報の最中で見つけたのが、近海の石油プラットフォームであったり今回の陸軍基地なのだ。

 

『スネーク、任務についてだが、基地内にいる人間は極力殺害せず回収を頼む。ここでは前以上に人材の確保が難しくなるだろう、積極的に兵士の確保を頼む。フルトンは持っているな?』

 

「ああ、しっかり持ってきている」

 

『それと、今回はあんたのバディとしてスコーピオンを同行させている。彼女の実力については、まああんたの方が分かるだろう。あんたなら心配いらんだろうが、彼女には無理をさせるなよ。頼んだぞ、ボス』

 

 無線越しのカズの声色はいくらかかたい。

 マザーベースにいるとはいえ、この見知らぬ世界にボスであるスネークを初めて向かわせるのだから、ある程度は緊張感を持っているのかもしれない。

 スネークとしてはそれくらいの緊張感を持っていてもらった方が、任務に集中できてよりよい成果を出せるのだが。

 

 やがてヘリは高度を徐々に下げていき、目標の場所からは数キロ離れた荒れ地に降り立った。

 スネークがドアを開けると、舞い上げられた砂ぼこりが容赦なく吹き付けてくる……そんな中をスネークが下り、次いでスコーピオンが下りた。

 

「ボス、健闘を祈ります!」

 

 パイロットのその言葉にスネークは親指を立てて応えると、パイロットも同じように親指を立てて返し、機体を上昇させその場を離脱していった。

 

「目標地点は北東に2km、ついてこいスコーピオン」

 

「了解、ボス」

 

 にっこりと笑いながら頷くスコーピオンであったが、今回彼女を任務に連れていくうえで気掛かりなことがあった。

 

「もう、スネーク……服装の問題ならもう解決したでしょう?」

 

 スネークの心情を察してか、スコーピオンは頬を膨らませて抗議する。

 

 そう、スネークが気にしていたのは彼女の服装だった。

 隠密作戦(スニーキングミッション)をするうえで服装というのはとても重要な要素だ、周囲の環境に溶け込める色合いの迷彩(カモフラージュ)をすれば敵に発見されるリスクを抑えられる。逆に目立つ服装をしていれば敵に発見されるリスクは高まり、危険な目にあうだろう。

 そんな理由でスコーピオンの同行に難色を示したスネークだったが、ここでMSFのスタッフが持ってきた秘密兵器が全てを解決した。

 

「これがあればカモフラージュ率を維持できるんでしょ? だったらいいじゃない」

 

 そう言ってスコーピオンが見せてきたのは、独特な形状をした小さな拳銃だ。

 

 その名もEZ GUN(イージー・ガン)

 

 開発班曰く、この銃を持っているだけでカモフラージュ率を高い値で維持できてなおかつスタミナの消耗も抑えられるという凄まじい効力を持ったものなのだとか。

 MSFの開発班がこれの設計をどうやったのかは定かではないが、そんな便利なものならばとスネークも一丁もらおうとしたが何故か拒否される。

 開発班の強い推薦もあって、この銃を所持したスコーピオンがほぼごり押しでこの任務に参加してきたのだ。

 

「原理はよく分からんが、それでも目立つ行動は避けるんだ」

 

「勿論だよスネーク。足は引っ張らないよ。それにさ、あたしスネークの力になりたいんだ」

 

 じっと見つめてくるスコーピオンにそれ以上は何も言わず、スネークは目的地まで移動を始める。

 

 やがて目的地となる古い陸軍基地の手前の小さな町に到着する。

 この町も戦争の影響を受けてか人の姿は無く、もぬけの殻となった家が並ぶゴーストタウンとなっていた。

 そこでスネークとスコーピオンは二手に分かれて町を探索し他に誰もいないことを確認した。

 

「スコーピオン、そっちはどうだ?」

 

「誰もいないみたいだね。でも、つい最近まで人がいたような痕跡があるよ。もしかしたら基地の方に誰か人がいるかもね」

 

 諜報班が見つけたというのは、実は人間なのか鉄血の人形だったのかは定かではない。

 諜報班の情報はあくまで人影を見たという報告のみで、それが人間なのか戦術人形だったのかまでは分からない。

 人間なら回収できるが、鉄血人形はどうなのか?

 この問題に、スコーピオンは破壊すべきだと即答するのであった。

 

「鉄血の戦術人形はキミらのように話しが通じる相手ではないのか?」

 

「通じないよ、あいつらは人間を見つけ次第殺してる。あたしらのようなグリフィンの戦術人形も積極的に攻撃して来るんだ」

 

「グリフィン、君らの本当の所属組織だったな。そこには君みたいな戦術人形が多くいるのか?」

 

「うん、というか戦力は全部戦術人形だよ。クルーガーって元軍人がグリフィンのボスなんだけど、人類の損失を減らすために戦術人形を積極的に買って民間軍事会社を立ち上げたんだ。まあ大ざっぱに言うとね」

 

「なるほどな……基地が見えたぞ」

 

 町の外れに出た時、目標の基地を見つけることができた。

 物陰に身をひそめ、双眼鏡を手にスネークは基地を観察する。

 

 基地は周囲をフェンスでぐるりと囲まれ監視塔がいくつも建てられているが、フェンスはところどころ壊れているようで侵入路には困らない。

 敷地内には倉庫が立ち並び壊れた軍用車と思われる車両が連なっている。

 他にも敷地内を見回してみるが目ぼしいものと言えば4階建ての建物があるくらいで、人影は全く見当たらない。

 

「人がいる気配はないが、警戒を怠るな」

 

「了解スネーク」

 

 スコーピオンを伴い壊れたフェンスの隙間から基地に侵入する。

 今まで何度か軍事基地に潜入する任務をこなしてきたが、ここまで人の気配のない基地に潜入するのはスネークにとって初めてかもしれない。

 だがこの静けさはあまりにも不気味であり、スネークは片時も気を抜かず周囲に目を光らせていた。

 

 倉庫、監視塔などを確認し4階建ての建物に入ろうとした時だった。

 建物の扉を開けたスコーピオンは、その扉にべっとりとついた血を見て一瞬悲鳴をあげそうになる。

 

「スネーク……!」

 

 スネークは頷き、先に建物へと入って行く。

 建物の窓はほぼ全て内側から木が打ちつけられていることもあり、昼間だというのに内部は薄暗かった。床にはガラスの破片やコンクリート片が散らばっており、歩くたびにそれらが軋む音を響かせる。

 建物の暗さに目が慣れたスネークは床に残る血痕を見つけ、それを辿っていく。

 それは資料室にまで続いており、ゆっくりと資料室の扉を開けた時、そこでスネークは数人の兵士が死んでいるのを発見した。

 

「まだ死んで間もない」

 

 傷口から流れ出た血はまだ乾ききっていない。

 見たところ人間の兵士に見えるようだが、戦術人形であるかどうかスコーピオンに確認をとったところやはり人間の兵士だったようだ。

 気掛かりなのはその傷口だ。

 まるで何かで斬りつけられたように胸元がぱっくりと割れていたり、肩から斜めに切断された兵士もいる。

 

「鉄血の戦術人形以外に、こんな事できる奴はいないよ」

 

「気をつけろスコーピオン、まだ建物の中にいるかもしれない」

 

 その警告にスコーピオンは頷く。

 彼女はある危機感を抱いていた、ここに居るのはもしやただの鉄血の戦術人形ではなくより上位の存在がいるのではと。その危機感に、彼女は冷や汗を流し心臓の鼓動が高まっているのを感じていた。

 

 不気味なほど静かなその建物を調べ続け、やがて二人は司令室にたどり着いた。

 その扉の前で二人は言いようのない空気を感じ取る、その扉を開かなくとも中で待ち受けている存在がとてつもなく危険なものであると本能的に理解していた。

 スネークは一度息を深く吸い込み吐き出す。

 それからスコーピオンに目で合図をし、扉を蹴り開け銃を構える。

 

 司令室の長テーブルの上に何者かが片膝を立てて座っている。

 窓からの逆光によってその姿ははっきり見えない。

 

「おいおい、ドアはノックしてから開けるもんだろう?」

 

 気の強そうな女性の声だった。

 逆光の光に慣れたスネークの目に映ったのは、全身黒ずくめの格好をした同じく黒い髪を長くのばした女性の姿だった。整った顔立ちに笑みをはりつけ、二人を見つめていた。

 

「誰だ、お前は…」

 

「お前こそ誰だよ。この辺りには人間はいないはずだった、人形連れてる人間なんてなおさらだ」

 

「気をつけてスネーク! こいつ知ってる、あたしの……あたしの仲間を襲った奴だ!」

 

「へぇ、オレから生き延びたクソ人形かよ。まあ覚えてないけどな」

 

 その戦術人形が机から降りると、ぐしゃっと何かを踏んだ音が鳴る。

 床をよく見て見ると、細切れにされた人間の残骸が散らばっている……気付かなかったが、その戦術人形の右手は鉤爪のようなガントレットをつけ巨大な剣を握っていた。

 

「ふぅん……」

 

 近付いて来たその戦術人形は、目を細めてスネークを観察する。

 

「お前そこのポンコツ人形と違ってそこそこやりそうだな。人間なんてみんなカスだと思ってたけどな、お前は初めて見るタイプの人間だ。やることやって後は帰るだけだったけど……死んどくか?」

 

 

 咄嗟にスネークはその場を飛びのいた。

 次の瞬間、スネークがいた場所めがけ巨大な剣が振り下ろされ、床に大きな亀裂が入る。

 

「スネークに手を出すなッ!」

 

「はっ! ザコは引っ込んでな!」

 

 至近距離で放ったスコーピオンの銃撃をその戦術人形はかがんで躱し、凄まじい踏み込みで一気に懐に入り込むと、スコーピオンの喉を鷲掴みし勢いよく床に叩き付けた。

 

「スコーピオン!」

 

 とどめを刺そうと逆手に剣を持ち変えた人形に向けてスネークが撃つが、彼女は巨大な剣を盾代わりに銃弾をはじいて見せた。悶えるスコーピオンを一瞥し、彼女は獰猛な笑みを浮かべスネークに狙いを定める。

 彼女は素早く腰から拳銃を抜きスネークに向けて撃つ。

 それを横に転がって避け、牽制に弾を撃ちこむ。

 

「どうした! かかってこいよ!」

 

 彼女はまるで避けようともしない、まるで人間の銃弾なんて当たりはしないとでも思っているかのように。

 彼女の拳銃が弾切れを起こした時、遮蔽物から身をだし撃とうとしたがスネークの拳銃も弾切れだった……それを見た彼女はにやりと笑い、剣を手に一気に接近戦を仕掛ける。

 振り下ろされた剣は遮蔽物にしていた机を容易く両断してしまう。

 笑う彼女は先ほどスコーピオンを捕まえた時のように、スネークの胸倉を掴もうと手を伸ばしたその時……スネークはその腕を逆につかみ取ると、彼女の懐に潜り込み、一本背負いの要領で彼女の身体を投げ飛ばす。

 

「くっ…! テメェ…!」

 

 予想していなかった攻撃に激高し、彼女は素早く起き上がるや否や拳を振り上げ殴りかかる。

 それをスネークは冷静に見極め、がら空きの腹部に膝蹴りを入れ、そのまま彼女の体勢を崩して後頭部から床に叩き付ける。

 

「クソ……なんだお前、人間かよ!?」

 

 よろよろと起き上がった彼女は血走った眼でスネークを睨みつけ、息を荒げている。

 そのままにらみ合いが続く……すると、彼女は小さく舌打ちをして冷めたようにため息をこぼした。

 

「お堅い上司のせいでお楽しみの時間はお預けみたいだ、オレはもう帰る。なぁ……名前聞かせろよ」

 

「……スネークだ」

 

(スネーク)か、覚えた。また会おうぜ、今度はぶっ殺してやる」

 

 そう言うと、笑みを浮かべたままゆっくりとした動作で司令室を出ていった。

 

 基地から立ち去っていく彼女を窓から眺めていると、どこに隠れていたのか他の鉄血人形たちが彼女の後をついて行く。ふと、目が合ったスネークに向けて彼女は中指を立てていくのであった。

 

 

「スコーピオン、大丈夫か?」

 

「うーん……頭が割れる…」

 

 外傷の有無を確認し、ひとまずスコーピオンをソファに寝かせ安静にさせた。

 

「カズ、こちらスネーク。鉄血の戦術人形の攻撃を受けてスコーピオンが負傷した。至急ヘリを寄越してくれ」

 

『なんだって!? それで、大丈夫なのか?』

 

「ああ、なんとかな。それから基地の人間はみんな殺されていた、残りの部屋を探して他に生存者がいないか確かめてみる」

 

『ああ頼んだ。注意してくれスネーク』

 

 無線を切り、スネークは周囲の安全を確保した上で基地に生存者がいないかを確認して回る。

 しかし見つけたのは鉄血の戦術人形に殺された犠牲者だけだった……調査を終えてスコーピオンの元へ戻ろうとした時、まだ調べていない場所を見つける。

 そこは鍵がかかっており、それを強引に破壊し中に入り込む。

 

 薄暗い部屋の中で、一人の少女が倒れていた。

 その少女は腕に手錠をかけられ窓枠に拘束されていた。

 全身を痛めつけられたのか傷だらけであったが、まだ息はあり弱々しい呼吸を繰り返していた。

 

「しっかりしろ、もう大丈夫だ」

 

 かけられた手錠を破壊し、衰弱していた少女をスネークは抱きかかえる。

 腕の中で少女はうっすらと目を開けてスネークを見つめる。

 

「指揮官……すみません、私……」

 

「オレは指揮官じゃないが、助けに来た。もう大丈夫だ」

 

「でも……指揮官が助けに来てくれるって……信じてました。ありがとうございます……指揮官はこんな……9A91を…」

 

 どうやらこの少女……おそらく戦術人形は見知らぬスネークを指揮官だと思い込んでいるようであった。

 身体的な損傷以外にも極度のストレスから心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っている可能性も外せず、ひとまずスネークは話しを合せて置くこととした。

 

 負傷した二人の戦術人形をそっとソファーに寝かせたところ、二人ともスネークの服の裾を掴んだまま眠りについてしまう。

 仕方なく、スネークは二人の傍に座ったまま迎えのヘリを待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『処刑人、任務です。あなたの管轄下に目標が入り込みました、部隊を展開し捕らえなさい』

 

「了解……」

 

『どうしたんですか?』

 

「いや、面白い人間に会ってね。任務がなかったらそいつをまた捜しに行こうと思ってたんだ」

 

『人間など放っておきなさい。M4A1、彼女を見つけ捕まえなさい。これが貴方の最優先事項です、処刑人』

 

「分かってるさ代理人、でも片手間で捜す分にはいいだろ?」

 

『ダメです、任務に集中しなさい』

 

「チッ……つまんねぇ奴」

 

『聞こえていますよ処刑人』

 

「分かった分かった、任務をやるよ」

 

 

 

 




UMP45「立ったまま死ねッ!!」

ラオウ「わが生涯に一片の悔いなし!」
ウォーズマン「コーホー……コーホー……」
白ひげ「おれァ白ひげだァア!!!」

ぱっと思い浮かんだだけでこれだけ立ったまま死んだ方がいますね、主にジャンプで。


こんなくだらないネタが浮かぶからドルフロは素晴らしい(錯乱)
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