どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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いつの間にか四十話超えてた。とても嬉しい。

今回いつにも増してパロディ(パクリ)多め。ていうかそればっかです。

狩人の口調が定まらねえ(絶望)


誤射に気をつけろ。あるいは、背面パリィに気をつけろ。

「アリス! アリス! 止めてくれ!」

 

 叫ぶアキラ。レイピア片手に怒号を上げながら荒ぶるアリス。それを羽交い締めで抑える真斗。凄まじい怒声が入り乱れる中、しかしその数メートル先では異様な沈黙が空間を支配していた。

 

「そんなっ、だってっ……」

 

 掠れるような声を絞り出し、震える腕から傘を落とすのは浮波柚葉。たった今殺人、もとい殺上位者を犯した女子高生である。目の前の脳無し死体から一歩、二歩、と後ろへ下がる。

 

 気付けば、彼女の身体は走り出していた。罪悪感、遵法精神。そんな感情や理屈よりも先に、彼女の本能は「逃走」を選んだのだ。

 

 自分でも何をしているのか、柚葉には分からなかった。何も考えられない。ただ、身体が死体のあるはずの場所と真反対の方向へ駆け出していく。息を切らしていた走ること数分、そのまま角を曲がり──。

 

 顔面から、壁に突っ込んだ。実際には大胸筋なのだが、少なくともその瞬間の彼女にはそう感じられた。鼻から血が垂れる。

 

 口元を血だらけにしながら尻もちをついた柚葉がその血塗れの顔を上へ向ければ、そこには──先程死んだ、否、自らの手で「殺したはずの男」が突っ立っていた。

 

「ああ、ようやく見つけたぞ」

 

 その言葉に、彼女の全身の毛が逆立つ。目の前のそれは幻覚ではない、現実だ。確信が彼女の心を押し潰す。

 

「なんで、なんでっ」

 

 腰を抜かしたまま後ずさる柚葉をゆっくりと歩いて追いかける狩人。当然彼の歩行の方が速いので、みるみる内の距離が縮んでいく。

 

 なんで。幽霊の存在など、彼女は大して信じてはいなかった。所詮は何かを見間違えただけのものだと。そうでなければ、ただのエーテリアスの類だと。

 

 だが実際、目の前には死人が立っている。マスクと帽子に隠れた顔から覗く青い目は、瞬きする間もなく彼女の魂を根の底から凍りつかせた。かひゅ、と小さな息が漏れる。

 

「い、やだっ。やめてっ。こないでっ。ごめ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」

 

 涙ぐみ、震える声での必死の命乞いにも聞く耳を持たず、全てが無駄と気付いた時にはもう距離と言える距離など残ってはいなかった。もう、顔はびしょびしょである。

 

 狩人が、自分が確かに殺したはずの男が、ゆっくりとこちらへ腕を伸ばしてくる。彼女にはそれが、地獄から己を引きずり込もうと伸びる腕そのもののようにすら思えた。

 

「あ……あぁっ……」

 

 もう、何もできはしない。ただ涙を浮かべた目を見開き、顔面へと近づいてくる真っ黒な右手を眺める以外、彼女にはもう何もできはしなかった。

 

 これで、終わりだ。自らはこのまま地獄へと引きずり込まれ、絶え間なく続く永遠の苦痛によってその罪業を償わされるのだ。その確固たる絶望は、どんな怪物の一撃よりも激しく彼女の心を引き裂いた。

 

「血が出ているではないか。お仲間たちはどうしたのだ」

 

「……え?」

 

 きょとん、と目を丸くする柚葉。見れば、差し伸べられた黒い手は握手の形を取っていた。立てるかね、と狩人が問う。

 

 恐る恐る柚葉がその手を掴むと、ぐい、と一瞬にして起こされる。少しよろめくも、狩人の身体を支えにして持ち直す。自身の全身に纏わりついていた血が顔のそれを除いて綺麗さっぱり消えていることに柚葉は気が付いた。

 

「折れてはいないようだが」

 

 直後、黒い左手が顎を頬ごと下から掴みあげる。すかさず人中辺りに押し付けられる真っ白なハンカチ。思わず抵抗する柚葉だったが、血を拭き取っているだけだと気付くと、ただ眩しそうに顔を顰め、瞼を強く閉じるのみとなった。

 

 鼻周りをぐりぐりと刺激されたせいでくしゃみを出した。華麗なローリングで躱されたが。血の混じったさらさらの、少量の鼻水が人中を濡らした。

 

 最後にその鼻水もハンカチで拭き取ると、狩人はそれを畳み、そして自身のポケットに突っ込んでしまった。ぼうっと立ち尽くす柚葉を見て、溜め息をつきながら狩人が言う。

 

「証拠を残すといけないと言ったのは貴公であろう」

 

「なんで……なの?」

 

「ええい、今言った所ではないかっ、証拠が──」

 

「なんで、生きてるの……?」

 

 Majestic! 会って早々侮辱とは! 狩人は一瞬眉間に皺を寄せるも、すぐにああ、と語意を理解し頷いた。お仲間も来たことだ、丁度良い、と続ける。

 

 その言葉に柚葉が振り返ってみれば、目に入ったのは彼女のお仲間達であった。アリスのおまけつきである。

 

「すまない。待たせてしまったかな」

 

 沈黙。ぎょっと目を見開き絶句する真斗とアリス。アキラは息が持たなかったので真斗に抱えられている。死んだはずじゃ、と真斗が呟く。

 

「で……」

 

 永遠にも思える静寂の中、アリスが声を漏らす。顔を青くしかちかちと歯を鳴らしながらである。大丈夫かとアキラや狩人が声をかけようとした時、遂にその言葉の続きが叫ばれた。

 

「『出た』のだわぁぁああぁぁあっっ!!!!」

 

 涙目、パニック状態のまま両手にレイピアを「出力」し狩人へ突っ込むアリス。危ないと真斗が叫ぶも、その手は届かず。彼女はあまりに速いのだ。

 

 自身の心臓目掛けて一直線に突っ込んでくるレイピア二本に脊髄反射で突っ込む狩人。姿勢は限界まで低く。ぴっ、と先端を耳に掠らせながら後ろへ回り込む。

 

「消えっ──!?」

 

 一瞬にして極限まで身を低くする、その地を這うようなステップは、同じく一瞬にして彼女の視界から狩人を”消した”のだ。

 

 敵か、この小女。いや違う、ただの恐慌状態だ。殺すわけにもいかない為一発引っ叩いて正気に戻そうと狩人がノコ鉈をしまい右手を振り下ろす。が。

 

ッドゥーン……

 

 刹那、アリスが背中を向けたまま左手のレイピアを振るう。狩人の右手が空中で火花を散らす。無に弾かれたのだ。体勢を崩され無防備に腹部を曝け出す狩人。

 

「アリスっ!」

 

 アキラが声を上げた時には、既にアリスは狩人と向き合っていた。左手のレイピアを捨て、代わりに右手のそれを両手で握りしめる。

 

「アリス……?」

 

 ちゃきちゃきとレイピアを繰り返し構えなおすアリス。遂に狩人が体勢を整えなおしきろうとしたその時。

 

「アリスっ!?」

 

 また右手のみで持ち直すや否や、狩人の腹に勢い良くレイピアを突き刺すアリス。そのまま地面へ押し倒し、念入りに深々と根元まで押し込んでいく。

 

 やがてゆっくりとその刺剣を引き抜き、上体を反らして「呆れる」ようなジェスチャーを決め込むと、ようやく正気に戻ったのか目にたっぷりと涙を溜めあたふたと慌て始めた。

 

「どどどどうすれば──ミ゙ッ゙」

 

 むくりと上体を起こす狩人を見るなり白目を向きぶくぶくと泡を吹いて倒れるアリス。すぐさま駆け寄り大丈夫かと叫ぶアキラと真斗。呆然と立ち尽くす柚葉。またしても何も知らない狩人。地獄絵図の完成である。

 

「──えっと、つまり……フジミ、ってこと……?」

 

「そうとも。痛みは感じるがね」

 

 数分後、ようやく皆が落ち着きを取り戻した頃、狩人はアキラと共に自身の性質を説明していた。

 

 もう誤射は勘弁いただきたいと狩人が一息笑うと、狩人、とアキラが注意した。なんとも言えない顔になる柚葉を見てのことである。

 

「いきなり頭を吹き飛ばされたのだぞ。このくらいは言っても──」

 

「狩人。もうその辺にしてあげてくれ」

 

 Fine,fine! 面倒くさそうにそう言うと、狩人はまた武器を取り出した。一本のレイピアである。アシンメトリーな形をしたそれに顔をゆがめるアリス。

 

 アリスはポーセルメックス側の人間にも関わらず、道徳を理由にこちらに協力することを決意してくれたそうだ。

 

 彼女はどうにも対称性に強い拘りがあるようで、巨大な五芒星の残像が残る程の素早い突きと斬撃を繰り返してはエーテリアスの死体の位置すら気にしていた。

 

 無からレイピアを取り出す姿を見て「貴公も同じことができるのか」と感心したのを狩人は覚えていた。彼女のそれは腰につけた「3Dプリンター」なるもので出力しているだけだったのだが。

 

 アリスも狩人のそれに興味を示し、物品を取り出す様を眺めたが、すぐさま頭を抱えて苦しみだしたので止めていた。

 

「何か……啓かれた気がするのだわ……」

 

 絞り出されたしゃがれ声を聞き、狩人は思い出したのだ。機械の敵に跡すら残さず戦える「性能控えめ」の仕掛け武器を。

 

 それがレイテルパラッシュであった。使えないわけではない。ただ他にベターがありすぎるのだ。銃を仕込んでいるのは良いが、如何せん銃なので獣相手への火力はたかが知れている。

 

 人殺しの際には大いなる強さを発揮するが、それもあまりに単純な戦法によるもの。楽しみの為に行う殺し合い(辺境対人)に狩人がそれを持ち込むことは無かったのだ。

 

「あれが、騎士……?」

 

 左手にエヴェリンを引っ提げひたすらぱんぱんと両手で弾幕を浴びせる狩人を前に、アキラが軽く笑った。どちらかといえばガンマンではないか。全然跡残りまくってるのも御愛嬌である。

 

 そうこうしている内に、ようやく泅瓏囲へとたどり着いた。漁村を前に発作を起こす狩人をアキラがなだめる。

 

 いつどこから銛や雷撃が飛んでくるのかとびくびく怯える狩人を引き連れて聞き込みをしている内、住民との会話の中、ふと柚葉が孤児であることが判明した。

 

「ああっ、ごめんなさい。貴方の生まれを詮索するつもりなんてなかったのだわ……!」

 

「いいよ、別に。あんなに優しい人に拾ってもらえて、寧ろラッキーって感じだし」

 

 気丈に振る舞うその表情は、しかしアリスも同じく両親を亡くした身であり、病に伏す祖父のみが彼女の家族であることを知ると一瞬翳りを見せた。すぐに、明るく励ます笑顔にかき消されてしまったが。

 

 どうも、ダンテという子供が件の欠片を最初に拾ったそうだ。会いにいくと、なにやら緑髪の女と話している最中であった。黒い花のかんざしを頭に挿した彼女の服装は軍人を彷彿とさせた。

 

「ほうら、これでディニーガンは直ったぞ。試しに撃ってみようか」

 

 おもちゃの銃、殺傷力など皆無のそれを握る女。からん、とディニーが着弾したのは──一行の隠れる壁であった。

 

「中々に肝が据わっているな、君たち。こう言った方が良いかな? 次は『実弾』だ」

 

 冷徹に言い切るが早いか、緑髪の女ことイゾルデの全身を貫く悪寒。咄嗟に横へ跳ぶと同時に、彼女の視界の端で閃く短剣。横に居たのだ。

 

「なんだっ、こいつはっ……!?」

 

 短剣も、それを持つ者も、両方が「透けていた」。半透明なのだ。輪郭のぼやけたそれは、早速彼女へと二撃目を放とうとしている。

 

「駄目だっ、狩人っ!」

 

 アキラが叫ぶのと時を同じくして、イゾルデの軍刀が狩人の腹を貫いた。遅れて飛び出した一行を見たイゾルデが実銃を抜くも、すぐに彼らに敵意が無いことを理解した。

 

 すぐに狩人も彼女が敵意を失ったことを悟り、秘薬の効果が切れるなり突き刺さったままの軍刀を自分で引っこ抜いて返した。イゾルデが凄い顔をしていたのはきっと気のせいだろう。

 

 そんな狩人たちの足元でトラウマタイズされているのはダンテ。お目当ての子供である。軍人を目指しているようで、こんなことでへこたれてられるかとすぐに自分を鼓舞し始めたが。

 

「やだやだ僕は防衛軍に入るんだ!」

 

 丁度帰ってきた母親と喧嘩になるダンテ。どうやら母親は彼が防衛軍に入ることに強く反対しているそうだ。なんでも、軍人だった彼の叔父が旧都陥落の際に死んだのだと。

 

「僕もストロベリーサンデー食べながら悪魔狩りするの!」

 

「それはダンテ違いだろう、落ち着け」

 

「じゃあ神曲作って──」

 

「それもダンテ違いだ。というか戦いすらしないだろうそいつ。落ち着けっ」

 

 額に汗を浮かべ始めたイゾルデの声虚しく、ヤケクソになったダンテは「Jack pot!」と叫びながら浜辺まで走っていってしまった。

 

「はぁ……まったく、あのガキには困らされたよ」

 

 溜め息をつく母親。イゾルデとは旧知の仲のようで、なにやら重たい雰囲気を纏いながら会話していた。彼女たちはお互いに、親しい軍人を亡くしているようだ。

 

 彼らの間での「軍」という言葉があまりに重たいことに狩人は気付いた。まるで、軍人は使い捨てのように大量消費されるもの、といった様子である。

 

 狩人の抱いた違和感は至って真っ当な者である。彼は十九世紀の英国人。彼の中での戦争には、今だきらめきと魔術的な美がつきものだったのだ。

 

「今度、一緒に映画を観ようか……」

 

 違和感をそのままアキラに伝えた際、苦笑と共に返ってきた言葉である。この男、まだ戦争とは騎兵が戦場を駆け回り、名誉と帝国の運命の為に名将が戦士達と危険を分かち合う、そんな荒々しい男の冒険だと思っているのだ。

 

 この数日後、かつて人間族と鬼族との間で起きた巨大な戦争を実際に経験した男の小説を基にした名反戦映画「対鬼戦線異状なし」をアキラと鑑賞した狩人が茫然自失とすることになるのはまた別のお話である。

 

 暫くして母親を除いた一行が浜辺でダンテと再会すると、彼は随分と落ち込んだ様子を見せていた。君の気持ちも分かるさ、と同情の姿勢を見せるイゾルデ。

 

「だが、彼女に怒っていないのなら早く帰った方が良い。彼女も、君を大切に思っている筈だからね」

 

 イゾルデの言葉に「うん」と頷き、顔を明るくするダンテ。ついでに欠片の出処も訪ね、この辺りで流れ着いていたものだということを聞き出した。

 

「この辺りは色んなものが流れ着くからね〜」

 

 柚葉の呟き。彼女もこの海に打ち捨てられていた所を拾われたそうだ。想像の十倍重たい過去に目のやり場を失うアキラ達。いいよ今更、と柚葉は笑っていた。

 

「この前なんか、女の顔と腕の付いたでっかいナメクジみたいなのが流れてきたんだから」

 

 それゴースでは? 顔を青くする狩人。流れ着いた時には既に死んでいたそうで、とりあえず刺身にして食べたそうだ。食った住人が全員死んだので大ニュースになったのだと。

 

「柚葉姉ちゃんも食べるはずだったんだけど、偶然その日は街の外まで買い物に出かけてたんだ!」

 

 彼女の幸運さは凄まじいもののようで、とにかく何をしても上手くいくそうだ。アイスの当たりを十回連続で当てたこともあるという。

 

「ほんとに不思議。誤射どころか、私がもってるときに暴発すらしたことないのに」

 

 他人が持つと話は別なのだが、と付け加える柚葉。まさか目の前に居る男が関わった人間が片っ端から勝手に死ぬか狂うか敵になるかする最悪の厄災ばら撒き装置であることなど知る由もないのだ。

 

 実際、これだけ長い付き合いをしているというのに一向に死ぬ気配を見せないアキラたち、もとい自身の友人たちのことを狩人は不思議に思っていた。

 

 いつの間にかゴースのことを忘れたところで、狩人はイゾルデが元軍人であることを知った。それでもポーセルメックスのパーティーに防衛軍代表として呼ばれるだけの地位はあるそうだが。

 

 彼女はこちらへこれといって干渉するつもりはなく、寧ろ欠片の流れてきた方向を特定する手伝いすらしてくれた。

 

 ホロウからのものであることを突き止め、いざボートで出発という時、「One more moment,hunter!」とイゾルデが声を上げる。

 

「古い軍のしきたりでね。お別れの時には必ず握手をするんだ」

 

 既に狩人はボートに乗り込んでいた。まだ浅瀬だが、今降りれば間違いなく膝までびしょびしょになるだろう。また今度会った時では駄目かねと伝えるも、握手をしてくれと譲らない。

 

 実のところ、いきなり襲われたことを、イゾルデはちょっぴり根に持っていたのだ。とても暴力や暴言など論外だが、少し水に濡れてもらうくらい望んでもバチは当たらないだろう。

 

 さて一行は大いに困った。まさか仮にも防衛軍の代表役を張れる人間に濡れてもらうことなど出来る筈も無い。

 

「You really want me to shake your hand?」

 

 本当に握手しなければ駄目なのか。恐る恐るといった様子で狩人が聞くと、「I insist(強く要求する)」と笑顔を浮かべて右手を差し出すイゾルデ。

 

If you insist(強く要求するのなら)

 

 なら仕方が無い、と肩をすくめ、笑顔を返す狩人。ボートから降り、ブーツをびしょびしょにしながらイゾルデとの距離を詰めていく。一歩、一歩、ゆっくりと。

 

 そして数歩先まで近づいた狩人が遂に差し出した右手には──一本の短銃が握られていた。

 

「なっ」

 

「狩人っ!」

 

 ぱん、と乾いた音が木霊する。彼女の左胸に飾られた白い花に小さな穴が空き、血液が何本かの分かれ道を作りながら流れていく。

 

 花を見つめて数秒後、見開いた目を狩人に向けたまま左胸を押さえ、数歩下がりながら倒れ込む……ことはなく、ただディニーが彼女の胸に弾かれ砂浜に着地するのみであった。

 

「ディニーガン……?」

 

「私も持っていてね。先程のお返しというやつだよ」

 

 「I'm sorry, I couldn't resist(すまない 我慢できなくて……)」と笑ってみせる狩人。後ろではボートに乗った一行が揃って顔を青くしていた。イゾルデも笑うと全員ほっと胸を撫で下ろしたが。

 

「先に襲ってきたのはそっちじゃないか」

 

 左の拳を口に当て、ぷっ、と噴き出し子供のように口を開けて笑うイゾルデ。そのまましっかりと握手をすると、ではなと狩人が腕を振りながらボートへ戻る。

 

 イゾルデは腕も上げず、ただささやかに右手を振るだけだったが、その微笑みからは確かに幸運を祈る優しさが伝わった。

 

「ようし、では行こうか」

 

「防衛軍代表に銃でイタズラって、どういう神経してんの……」

 

 苦々しい顔をする柚葉、苦笑するアキラ、頭を掻く真斗に、新しい友人たちに胸を高鳴らせるアリス。そして海に怯える狩人を揺らしながら、ボートはゆっくりとホロウへ向けてイゾルデの目の中で縮んでいった。

 

お返し(復讐)、か……」

 

 少し傾き始めた陽光に照らされながら、イゾルデは静かに胸花に手を当てていた。

 

 夏の昼だというのに、頬を撫でる海風は随分と冷えていた。



















あの花見たらどうしてもジャンゴネタやりたくなったんだ……すまない……



シーズン2第三章のラストはなんとなく知ってます。
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