透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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ベアトリーチェが死んだ!いやまだ味がしそうじゃないか?

撥ね飛ばしたベアトリーチェの頭が地面へと転がる。死体のままでありながら、巨大化していた体は徐々に縮み始め、しばらくすると最初に見た時のベアトリーチェの姿に戻った。

なんか気持ち悪いな。

 

――とはいえ、ベアトリーチェもそこそこ頑張った方ではないだろうか。思ったよりも耐えててびっくりした。

 

「――本当に、殺したんだな」

 

「えっ――?マ、マダムの……頭が……」

 

彼女達には少しばかりショッキングだったかもしれない。まぁサオリは私のペットなのでこれくらいは慣れてもらうとして、人質ちゃんは中々かわいそうだな。ヘイローを破壊する爆弾を巻き付けられてあわや死にかけたかと思えば息をつく暇もなく首なし死体を見せられるだなんて。どんまい。

 

「あぁ、もう死んでいる。そんな事より早くアツコを助けるぞ」

 

「そんな事……マダムの頭がそんな事扱い……?」

 

人質ちゃんが何か言っているが気にしない。私は磔にされているアツコに近付く。茨が身体に食い込んでいるのでまずはこれをどうにかする必要があるな。魔力の剣を作り出し、茨だけを切り払う。茨という支えを失ったアツコは十字架から倒れるように落ちてくる。

 

「――っと。意識は失っているだけか。息はある」

 

落ちてきたアツコを支え、ハンモックを用意してそこに寝かせる。とりあえずケガの回復をしなければならない。

 

「――ジュアの癒し」

 

私の持ちうる中で最上級の治癒魔法を唱える。せっかくのサオリの友達なのだ。出血大サービスといこう。ジュアの癒しの魔法書は店で手に入る事は無く、ネフィアなどで落ちているものを拾う事でしか入手手段が無く、複製も出来ない。その分回復量はとんでもないので、キヴォトスの者であればこれを唱えても回復しきれないという事はない。

 

血だらけだったアツコの体はみるみると治癒していき、顔色が良くなったような気がする。まぁこの子もガスマスクをしているので実際には分からないのだが。なんでアリウスの子はガスマスクやら普通のマスクやらしているんだろうか。実はアリウスには有害なガスが蔓延していたりしないだろうな?

 

「――っ」

 

そんな心配をしているとアツコが目を覚ます。

 

「…………?」

 

目を覚ましたアツコと目が合いしばし見つめ合うと、不思議そうに首を傾げる。まぁアツコからすれば生贄にされていた筈が目を覚ましたら知らない大人が側に居るのだ。訳が分からないのも当然だ。

 

「――――」

 

それからアツコは手を使ってなにやらジェスチャーを示す。だが残念な事に私にはそのハンドサインが何を意味しているのかは分からない。次は私が首を傾げてしまった。

――もしやアツコは声を出す事が出来ないのか?ジュアの癒しにより肉体的問題は解決しているはずだが……。いや、アリウスという過酷な環境下に居たのだから、精神的な問題で声を出せなくなってしまっているのかもしれない。

 

サオリがアツコを心配するわけだ。念の為に肉体復活と精神復活の魔法も掛けておく、心理的な問題がこれで解決するのかは分からないが……。

 

「――アツコ!目を覚ましたんだな!」

 

「――――」

 

「見ての通り私は無事だ。ミサキとヒヨリに、それにスバルもな。拷問なども……されてない」

 

「――――」

 

サオリはハンドサインを理解出来るのだな。私のかけた魔法も効果は見られない。心理的ストレスによる問題は魔法でもどうにも出来ないみたいだ。魔法も決して万能ではないという事だな。

 

「それと、マダムは死んだ」

 

「――――!」

 

「あぁ、全部終わった。――笑えるほどあっけないくらいにな。今はシャーレの先生とトリニティもこちらへ来ている」

 

サオリの言葉を聞いてアツコはガスマスクを外す。

 

「――本当に色々あったみたいだね。色々聞かせて?それと、貴方の事も」

 

かと思えば普通に喋り始めた。ハンドサインは何だったの?

 

「あ、あぁ。ところで、さっきまでハンドサインで会話していたはずだが……」

 

「えっとね、マダムに言われてたの」

 

どうやらサオリがベアトリーチェと約束を交わしスクワッドと合流した時に、顔を隠す為にガスマスクの着用を義務付けられ、発声も禁じられていたらしい。――アツコは生贄だから特別な存在だったのは理解出来るが、そこまでして存在を秘匿したかったのか。あるいは顔や声を他人に晒す事で儀式に悪影響があったのか。

 

「なるほどな……。とりあえず一から説明しようか。――そこの人質ちゃんも気になるのであれば聞いておくか?」

 

「は、はい……」

 

そしてサオリはアツコと人質ちゃんに今までの私達の行動を全て共有した。

 

「――サッちゃんはわんちゃんになったの?」

 

「い、いや、犬になったわけでは……確かにペットにはなったが……」

 

サオリはバカ正直に自分たちがペットになった事まで話してしまった。――なんだか気まずいので私は逃げる様にベアトリーチェの方へ向かう事にする。こういう時は関わらないようにして私に矛先が向かないようにしておいた方がいい。アツコに何を言われるか分からん。

 

「ふふ、冗談だよ。最近のサッちゃん顔のしわが凄かったからちょっと心配だったんだ」

 

「しわ……?そんなに老けて見えるだろうか」

 

「そういう意味じゃなくて……。ずっと思いつめたように怖い顔してたから。今は穏やかな顔になってる」

 

「そうか?」

 

この死体はどうするべきか。――というかアツコの安全を優先にして殺してしまったが、結局ベアトリーチェが儀式で何をしようとしていたのか分からず仕舞いだ。色々聞き出そうと思って準備してきたのだが……。

 

「うん。きっとそこに居るゲヘナの人のおかげなんだよね。良かった」

 

「すまない、心配をかけた」

 

「でも――ミサキとヒヨリもペットになったのに私だけ仲間外れなのはずるい」

 

「い、いや……アレを姫に受けさせるわけには……」

 

……うーん、復活の魔法があるし生き返らせて拷問にでもかけるか。

 

「サッちゃんにハブられる日が来るなんて思わなかった」

 

「そ、そんなつもりはない。ただあの人のペットになるだけならアレを受ける必要はないというだけだ」

 

…………実は色々と試したい事があるのだ。変異のポーションでの変異はノースティリス外の生物に有効なのか。エーテル病は発症するのか。他にも――

 

「ねぇねぇ、私もペットになれるかな?」

 

…………アツコがこちらへ近づいてきてそんな事を聞いてくる。ペットが増える分には構わないのだが、この子の興味は別のところにありそうな気がして少し怖い。

 

「――あぁ、問題ないぞ。ただ――最近ペットを増やし過ぎて他のペットに怒られてしまってな。出来れば秘密にしておいてくれると助かる」

 

二人で口裏を合わせておけばバレる事はないだろう。

 

「他の女の子にもえっちな事してるの?」

 

えっちな事では無い。断じてない。ただ卵を産ませて乳を出させているだけだ。――最近気付き始めた事だが、言い訳として苦しすぎるなこれ。

 

「ふふっ。じゃあ今日はこれくらいにしておいて――本当にマダムは死んだんだね」

 

こうして直接見ても実感が湧かないな、と呟くアツコ。まぁアツコ達が支配されていた年月は大分長いはず。その生活が突然終わったのだから、実感を得るにはまだ時間がかかるだろう。サオリもきっと未だに実感というものは得られていないのではないだろうか。

 

「私はこれからやりたい事がある。先生が来るまでもう少し待機しててくれるか?」

 

「うん、分かった。貴方は何をするの?」

 

「ベアトリーチェを生き返らせ実験をする。色々試したい事があるのでな」

 

『え?』

 

アツコだけでなく、こちらの会話を聞いていたサオリと人質ちゃんも声を揃えて反応を示す。まぁ言葉にしただけでは意味不明だよな。とりあえず私は死者蘇生が可能である事を伝える。

 

「貴方は本当になんでもありだな……」

 

ベアトリーチェにはまだまだ使い道がある。生徒に試すにはリスクの高い、あるいはキヴォトスでは倫理的に問題のある実験をやるにはぴったりだ。ベアトリーチェはキヴォトスの生徒という訳ではないので、実験結果をそのまま生徒達に当てはめる事は出来ないが、ノースティリス外の生物という括りにおいては同じだ。参考程度にはなるだろう。

 

「生き返らせるとは言っても一時的だ。私の実験を行った後は再度殺しておくからそこは安心してくれていい」

 

「そこは特に心配していないが……。その、貴方は殺しに抵抗はないのか?」

 

「――ふむ、アズサにも同じ事を聞かれたな。無いぞ」

 

殺人とは私にとっては手段の一つでしかない。快楽殺人鬼という訳ではないので無意味に殺したりする事は――あんまりないが、殺しによって得られるメリットが大きければ私は殺しだろうが盗みだろうがなんだってする。そこに罪悪感はない。

 

だって私が得するんだもん。しょうがないじゃん。

 

「無論キヴォトスではこの考えが異端であり禁忌とされている事は知っている。だからこそ先生とは約束を交わし、生徒には手を出さない様に心掛けている」

 

その代わりに調教という手段を得たおかげでペットが手に入っているのでこの約束も悪い事ばかりではない。むしろメリットが大きいと言える。

 

「そんな私だが、サオリの聞きたい事はなんとなく分かる。君の悩みを払拭するには間違いなく相応しくない人材だが、それでも良ければ聞かせてくれ」

 

「――私達は人殺しとして今までマダムに育てられてきた。人を殺す技術を持ち、人を殺す意思を持った時点で私達は人殺しであると。そう言われ、私もそうだと思っていた」

 

「続けてくれ」

 

「不安なんだ。私達は――私は、人殺しだ。調印式の日に先生や貴方を手に掛ける事に躊躇いが無かったわけではないが、確かに私は調印式の日に人を殺そうとしていた。そんな私がこれから普通の生活を送る事が許されるのだろうか」

 

やはりベアトリーチェの教育はめんどくさい事この上ないな。ばにたすといい、矯正しなければならない問題が多すぎる。実験の際には少しばかりキツいものを加えるとしよう。

 

「君達は殺人者たれと育てられている。そこだけ切り取れば、確かにサオリは人殺しと言えるかもしれない」

 

「――あぁ」

 

「だが、君達はそれしか知らない。サオリ、アリウスとトリニティ以外のキヴォトスの歴史は知っているか?」

 

「いや、知らない」

 

私も知らない。だがここは素知らぬ顔をして話を続ける。

とりあえず今のサオリ達には知識が全くない事を教える必要がある。

 

「そこの人質ちゃんに聞く。キヴォトスの学校での勉強はどんな風に行われているか知っているか?」

 

「えっと、分からない、です。それと人質ちゃんじゃなくて、立木マイア……です」

 

これは知ってる。確かBDと呼ばれるものを使って授業を受けているらしい。一応講師のような者がいるにはいるらしいが、教鞭を取るわけではなく、あくまで授業を円滑に進める為に生徒を統率する役割らしい。

 

「アツコに聞く。このキヴォトスにはこのアリウス自治区を埋め尽くす程のいっぱいの砂に囲まれた地や、アリウスを呑み込むほどの大量の水で埋め尽くされた地が存在している。知っているか?」

 

「いっぱいの水……確か、海だったかな?ヒヨリの拾った雑誌で見た事あるかも。でも、いずれ直接見てみたいなって思ってた」

 

「興味を持つのは良い事だ。そして今君達に聞いた質問は、キヴォトスで暮らしていれば当たり前に得ている知識の一つでしかない」

 

「……」

 

そう。アリウスは教養どころか、常識すら知らない。そんな子達が殺人の技術を持っているからと人殺し呼ばわりするのは流石に残酷すぎる。

 

「あえて定義するなら、人殺しとは――常識を理解した上で行為に及んだ者を指す。と私は考える」

 

アリウスは確かに人を殺す技術を持っているが、それしか手段を持っていない。例えば、食べ物を買うには当然お金が必要になる。だが常識を知らないアリウスの生徒は、お金の存在くらいは知っているかもしれないが、お金の稼ぎ方を知らない。となれば、自分の持ちうる知識を使って食べ物を得ようとした時、少しばかり極端な例えだが、人殺しという手段を取り食べ物を得る可能性がある。それが今のアリウスだ。

 

そして私は常識を、お金の稼ぎ方を知っている。それらを知った上で、殺しで得られるものがあるならその手段を使う事に躊躇いはない。

 

「正に、人殺しとは私の事だ。私とサオリ達では雲泥の差があるとは思わないか?」

 

「肯定しにくい事を言うのはやめてくれないか?」

 

「ちょっとした冗談だ。――ともかく、君達は人殺しと呼ぶには無垢すぎる。そして、これから君達は常識を学んでいく必要がある。その辺りに関しては――先生がなんとかしてくれるだろう」

 

「貴方は教えてくれないの?」

 

今さっき自分が人殺しであると言ったばかりなのにそんな私から学ぼうとするとはアツコは中々に度胸があるな。しかし常識や教養を教えるのは私よりも先生の方が適任だ。

 

「まずは正道を学ぶんだ。もし邪道が知りたくなったら私の元へ来ると良い。――あぁ、先生に怒られたくはないから、内緒でな」

 

「ふふっ、分かった」

 

「少しばかり長くなってしまったがサオリは人殺しではないし、むしろこれから普通の生活を知るべき。というのが結論だ。無論、アツコとマイアも同じだ」

 

「うん」

 

「は、はいっ」

 

「分かった。まずは学びが必要というわけだな」

 

そういう事だ。それに――先ほどベアトリーチェを殺し、ノースティリスでも人を数えきれない程に殺している私が今こうしてキヴォトスで普通に生活出来ている。それは、サオリも普通の生活を送れるという証左でもあると思う。

 

「私自身がサオリの悩みの生き証人だ。そう思い悩む事はない」

 

「あぁ……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁそれはそれとして殺しを手段の一つとして持っておくのは悪い事じゃない」

 

『え?』

 

ちゃぶ台をひっくり返すようで悪いが、今回のベアトリーチェ然り、殺さねばこちらがやられていた可能性がある出来事というのはどうしても発生する。キヴォトスでは稀だろうが、ノースティリスでは特に顕著だ。

 

「私利私欲で殺しをする事は私も推奨はしない。ガードに絡まれるのも面倒だしな。だが、こちらを殺そうとしてくる者を、私達は殺せないというのは不平等だろう」

 

ベアトリーチェは容赦なく巡航ミサイルを撃ちこんできたし、アツコを容赦なく生贄にしようとしていた。そんな奴を生かす必要があるか?いやない。

 

「それは確かにそうだな……」

 

要は殺し自体を忌避するのではなく、殺す相手を選べばいいのだ。

 

「あの先生ですら私がベアトリーチェを始末する事を黙認した。私利私欲で殺さない限りは案外世の中どうとでもなるから安心していいぞ」

 

「なるほど……勉強になるな」

 

「やっぱり、貴方に色々教えてもらうのが良いと思う」

 

「そ、そうですね。参考になりました」

 

うん、アリウスだから受け入れられてるけど、先生が側にいる状態でこんな事を言ったら間違いなく怒られるから今聞いた事は内緒にしてもらおう。これから常識を学ぶ必要があるとはいえ、サオリは私のペットだからあまり殺しに拒否感を持たれても困るからな。

 

 

 

 

「少しばかり話し込んでしまったな。ではそろそろ実験を始めるとしょうか。ベアトリーチェには聞きたい事もあるしな」

 

絞首台を取り出し、実験に使おうと思っていたポーション類や道具を取り出す。そして復活の魔法を唱えようとしたところで――

 

 

 

 

 

 

「その実験、私達も参加させて頂いてもよろしいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティリス民が実験を始めようとしていた頃、先生達は既に制圧を終え、救護騎士団に倒れたアリウスの治療を任せ先生と他の生徒達はミサキ達の案内を受けながら至聖所へ向かっていた。

 

「にしても異世界かぁ。お兄ちゃんもすごいとこへ来ちゃったねぇ」

 

当然イモーロナクも先生と共に同行しており、アリウス自治区の風景を物珍し気に眺めている。

 

「お兄ちゃんってあの頭のおかしな人の事よね?妹さんなの?なんていうか……見た目も何もかも似てないっていうか……」

 

「お兄ちゃんとは生き別れなの。血も繋がってないから似てないのは当然だね!」

 

「へー……生き別れなんて大変――いやおかしくない?血が繋がってないなら義妹よね?というかあの人記憶喪失だって言ってなかった?」

 

セリカが妹を理解しようと試みるがやはり意味が分からないようで困惑している。

 

「え?でもお兄ちゃんは私の事受け入れてくれたよ?いつも可愛がってくれるし!」

 

「あの人の無駄にでかい器はなんなの……?おおらかとかそんなレベルじゃなくない?」

 

「まぁまぁ落ち着いてセリカちゃん。あの人のやる事にツッコんでたらこっちの身が持たないのは分かってた事でしょ~」

 

「それはそうだけど、納得がいかないわよ……!」

 

ホシノは既にティリス民に適応してしまっているが、セリカは未だに理解が及ばない。何をどうしたらこのような巨人のお腹に入り込んでいる女の子を妹として受け入れられるのか全く分からなかった。

 

「ノースティリスでのご主人様は普段どのようにして過ごされているのですか?」

 

トキの質問にペット達が反応して一斉に耳を傾け始める。ティリス民が自分の事を話す事はあまりないのでペット達はティリス民の事を知れるチャンスだと思ったようだ。

 

「お兄ちゃん?ネフィアに潜ったりペットを育成したり拠点作ってお金稼いだり……あ、たまにカジノで壁壊したり王冠盗んだりしてるかなぁ。後は吟遊詩人とかマーメイドをしばき回してたよ。「アル・ウード置いてけ」って何度も呟きながらしばいてた!他にも「ぴちぴちクジラって存在するのか……?」ってぼやきながら一生釣りしてたりとか……」

 

「あの人クジラ釣れるんだ……いいなぁ、私もクジラ釣ってみたいなぁ」

 

「そういう問題じゃないと思うよホシノちゃん。もっと他に言う事があると思うの」

 

「なるほど。ご主人様の奔放さはノースティリスに居る頃から健在なのですね」

 

『どうやらそのようだね。思ったより犯罪行為に走っているのには些か驚きを――いや、そうでもないかな』

 

『そうですね……。むしろ今まで自由にやってこられていた中で、キヴォトスではこういった行為を自粛されている方が驚きでしょうか?』

 

「ナギちゃん、今までどれだけの女の子が卵を産まされたと思ってるの?どう考えても本性隠しきれてないよあの人。ゲヘナに留まってるのも納得の本性だよ」

 

それはそう。しかしここに居る生徒の殆どはティリス民に媚薬漬けにされたり脳を破壊されているのでティリス民の蛮行にそれほど抵抗を見せる事はない。あのティリス民ならやりかねないと今までの行動と言動から察している。実際にやっていたと露見したとして、あぁやっぱりねとしかならないのだ。

 

「やっぱり私達、とんでもない大人の魔の手にかかっちゃいましたね……。きっと姫ちゃんもこれからあの人に手籠めにされちゃうんですね……」

 

「いや、これ以上増えなくていいから」

 

ミサキがアツコのペット入りに反対するが悲しいかな。サオリ達がペットになった事を知ったアツコは仲間外れは嫌という理由で現在進行形でペットになろうとしている。

 

「何というか……呑気ですね。これから今回の事態の元凶とも言える人物の元へ向かっている最中なのですが」

 

ハスミが若干呆れたように言葉を零す。それに反応したのはツルギだった。

 

「……あの、大人」

 

「あぁ、そういえばゲヘナの方が先行してましたね。それだけでこうも余裕が出来るものでしょうか」

 

「いひひひひ……かなり強い……!」

 

「そうなのですか?いえ、そういえばあのゲヘナの方が最初にトリニティに来た時も風紀委員長の護衛として来てましたね……。あれは本当だったのですか」

 

もしかしたら先行したティリス民が既に元凶を片付けてしまっているのかもしれないと当たりをつける。

 

「けひっ!きひゃははははっ!」

 

「ツルギ。手合わせを願うにしてもせめて条約の後にしてくださいね。それと公式の場でゲヘナとトリニティが戦ったという記録を残すわけにもいきませんから、叶うとしても非公式にはなりますが」

 

「きひひひ……ああ」

 

ツルギが願うというならどうにかして非公式の形ではあるがティリス民とツルギの模擬戦の場を用意してあげたいと思うハスミであった。相手がゲヘナである事には思うところはあるが。

 

そんな様子を眺めていた先生もハスミと同じくのんびりとした雰囲気に苦笑していた。ティリス民が先行しているので恐らくベアトリーチェは既に生きてはいないと先生も考えてしまっているが、それでも急がない理由にはならない。無いとは思うが万が一彼が苦戦していたら自分達も加勢しなくてはならない。相手はゲマトリア。未知の技術と知識を持つ者達なのだから何があってもおかしくはない。

 

そう考えた先生は生徒達に声を掛け、急いで至聖所へ向かうように指示を出す。懐にしまってあるシッテムの箱と、自身の奥の手を撫ぜながら、使う場面が来ない事を祈りつつ至聖所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生達が至聖所へ辿り着き最初に目に入ったのは――最早見慣れた絞首台だった。

そこにはベアトリーチェが括り付けられており、サオリと見慣れない生徒二人がベアトリーチェに向かって銃弾を容赦なく撃ち放っている。

 

ベアトリーチェは絞首台の力により無理矢理生かされているようだが「コロシテ……」と懇願している始末だ。一体何をすれば傲岸不遜ともいえる態度だった彼女の心がこうまで折れるのだろうか。

 

そしてティリス民はそれを表情一つ変えぬまま眺めており、何故か隣には――黒服が居る。黒服はベアトリーチェには特に視線を向ける事なくティリス民と会話している。何してるの?

 

更に見慣れない異形の人物が二人いる。一人はタキシードを身に纏った双頭の木の人形。もう一人はコートを羽織った首無し。左手に絵画を持ち、右手はステッキを突いている。

彼等もまたティリス民と会話をしており、やはりベアトリーチェには目もくれない。

 

 

 

 

「――どういう状況?」

 

訳の分からない状況に唖然とする生徒達を代弁するように、先生が疑問の声をあげた。




イルヴァ豆知識
・ジュアの癒し
最上位の治癒魔法。回復量は驚異の1d1+99999999。つまり一億。なおニューゲームで始めた場合のPCの初期HPは種族と職業の組み合わせによるが、大体10~30程度になる事が多い。インフレって凄いね。なお現在のHP上限は十億。

しばらくの間更新頻度が落ちるかもしれんす……。なるべく早めに投稿できるようにするんで許して許して。
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