「かっぱえびせん」が店頭から消える?!きっかけはピンチから お酒に合う「絶品かっぱえびせん」の誕生に迫る
「かっぱえびせん」は、カルビーの代表的な商品です。幅広い世代に愛されているロングセラーですが、お客様の関心が薄れている時期がありました。
そんなピンチをチャンスに変えて誕生したのが「絶品かっぱえびせん」でした。
「何か策を考えて欲しい」と当時、カルビーに入社して間もない小垰さんにミッションが課せられました。どうにかして「かっぱえびせん」ブランドを活性化させなければと、商品の開発に取り組んだ小垰さんに当時のお話を聞きました。
小垰 勇人(おだわ ゆうと)
カルビー株式会社
新規事業推進本部 新規事業推進部 新規商品企画推進課
飲料メーカーでの勤務を経て2019年中途入社。「かっぱえびせん」ブランドの企画、ファンコミュニティ運営、マーケティングに従事。
2025年4月より現職。
「かっぱえびせん」のおいしさを再認識してもらう素材の組み合わせ
商品担当になった小垰さんは、すぐに営業から「かっぱえびせん」のお客様の購入頻度が減少しているので、どうにかしてほしいと依頼を受けました。
「カルビーを代表するロングセラー商品『かっぱえびせん』が店頭からなくなるかもしれないと聞き、とても衝撃を受けました。まさに危機でした」と小垰さんは当時を振り返ります。特定の商品を開発するというよりも、「かっぱえびせん」ブランドをどうにか活性化させる策を考えようと、まずは現状把握を行いました。
「『かっぱえびせん』は認知率が高い商品で、ほとんどのお店に並んでいました。しかし、指名買いが足りていないという課題が見えていました」
「かっぱえびせん」を買う理由が曖昧なのではと考えた小垰さんは、「かっぱえびせん」を食べるシーンを調べました。すると、お酒のおつまみとしてお酒と一緒に購入されている方が、特にコンビニエンスストアで多いことが分かりました。それでも売上が芳しくないということは、購入くださっているお客様は、今の「かっぱえびせん」に満足していないのかもしれない。そんなお客様をもっと喜ばせることができないのか?と考え、行き着いたのがおつまみ系の「かっぱえびせん」でした。
メインターゲットを、お酒が大好きなイケオジ(お酒のために日々仕事を頑張る愛らしい方)とし、単なる〇〇味の「かっぱえびせん」ではなく、この商品を食べていただくことで「かっぱえびせん」本来のおいしさを再認識してもらえるような商品の開発に着手します。
まずは、おつまみとして満足感を出すために、堅めで幅広く、通常の「かっぱえびせん」よりもえびを多く含んだ味わい深い生地を採用。そして、えびの濃い味わいを引き立てる他の素材との組み合わせを考えていきました。素材を選択する上で、守った独自のルールがあったそうです。
「どんなにおいしくても、えびの濃い味わいを消してしまうような味つけは避けました。『かっぱえびせん』のおいしさを活かせる素材かどうかを大切に、塩の選定にも取り組みました」と小垰さんは話します。
実際、お客様にお酒と一緒に試していただいたところ、素材の組み合わせに対して高い評価を得ました。例えば、“わさび味”はお客様から、「えびの旨みを引き立てる塩加減とわさびの風味が際立っておいしい」や「わさびの辛さが最初にきて、えびの味わいが後からしっかり感じられ、まさに絶品」(一部抜粋)というお声をいただき、いままでの「かっぱえびせん」とは違う価値を感じていただける商品ができたと確信したそうです。他にも、“揚げにんにく”や“炙り明太子”、“燻製唐辛子”も濃いえびの味わいとの相性が良いことが分かり、いずれも、素材の味を最初に感じ、最後に「かっぱえびせん」のおいしさが味わえるところが良いポイントだと、開発チームとも意気投合したそうです。
そうして、2020年4月に「絶品かっぱえびせん 塩とわさび味」を発売しました。
その後も、「五島灘の塩と揚げにんにく味」「石垣の塩と炙り明太子味」「花藻塩と燻製唐辛子味」を期間限定で次々と発売しました。小垰さんは「“①こだわりの塩、➁えびの濃い味わい、➂塩で引き立つ素材”この3つの組み合わせが無かったら、今は残っていなかったかもしれない」と振り返ります。
発売後の反響で確信
コンビニエンスストアで全国発売すると、お客様相談室にたくさんお声が寄せられるように。「お店にある商品を全部買ってきた」「30店舗ぐらい探し回った」「近所にないから電車とバスを乗り継いで買いに行った」(一部抜粋)というとんでもなく熱量の高いファンの声に、仰天し「この商品は凄いぞ!」と小垰さんは思ったそうです。
「お客様は自分の立てた商品コンセプト通り喜んでいただいているのか」。気になった小垰さんは、通常の調査で集めるテキストデータに加え、お客様がお酒と一緒に食べている写真データも集めました。すると、イケオジたちの満面の笑みの写真が想像以上に集まり、「商品コンセプトは間違っていなかった!喜んでいただいているんだ!」と確信したのです。
喜んで食べているファンの方々の写真や調査した結果から、一時的に売上を伸ばすことでなく、「かっぱえびせん」ブランド全体も活性化することができて、新商品自体も売れる商品ができたと実感したのです。
ファンコミュニティ絶品部「やめられない、とまらない」課の誕生
もともとファンコミュニティを作ろうという考えを持っていた小垰さんは、とある方と話をしていた時に「ファンの人たちに直接会いましたか?ファンに会うのは百利あって一害なしだよ」という一言が突き刺さったそうです。直接イケオジたちとコミュニケーションをして応援されたいと考えたのが「絶品部」誕生のきっかけでした。
熱狂的ファンと顔を突き合わせて直接対話をしたい。カルビーとお客様の深いキャッチボールができる「場」を作りたい。という思いで、2022年6月に絶品部「やめられない、とまらない」課を立ち上げました。「あくまで同じ立場で、お互いに利益のある場を作りたかった」と話します。
ファンコミュニティを始めて良かったことが主に3つあったそうです。1つ目は、教えてもらえること。お客様から商品についての細かいご意見や改善点、味の希望など、具体的なフィードバックをいただけます。2つ目は、お客様に商品の詳細な情報を直接お伝えできること。SNSでは商品概要程度しか伝えられませんが、コミュニティでは細かいところまで説明できます。3つ目は、お客様の熱狂的な反応が、商品開発担当者など商品に関わる社内関係者のモチベーションアップにつながること。「オンライン飲み会で、直接お客様からありがたい言葉をたくさんいただき、担当者はうるっとするほど嬉しかった」と話します。
ファンの皆さまとコミュニケーションをとり、一緒に商品を共創しました。第一弾として「絶品かっぱえびせん 瀬戸の塩と帆立貝柱味」を、第二弾として「絶品かっぱえびせん 五島灘の塩と甘酢しょうが味」を発売。「お客様の声を反映しなければ、このユニークな味にはたどり着けなかった」と小垰さんは言います。
正確なターゲティングが奏功
「最初はピンチからスタートしましたが、大きな屋台骨の『かっぱえびせん』ブランドから新しいシリーズを残せたことが一番大きな成果です」と小垰さんは自信をもって話します。イケオジたちに食べてもらいたい。喜んでもらいたい。という強い想いからブレることなく商品設計をしたため、素材の組み合わせにたどり着けました。
5年経った今でも存在し続けているのは、「ファンの皆さまに愛され続けている商品だから」と分析します。「10年、20年と長く愛され続ける商品になってほしい」と小垰さんは言います。
発売から半世紀以上たった「かっぱえびせん」のピンチをチャンスに変え、誕生した「絶品かっぱえびせん」シリーズの物語は始まったばかりです。これからもおいしさだけでなく、熱狂と幸福を生み出していくことでしょう。
文・写真:町田 有希





