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押さえておきたい グローバルコミュニケーションの秘訣

今回は、カルビー株式会社 コーポレートコミュニケーション本部のKai Maraunさんに、グローバルコミュニケーションの秘訣を英語でインタビューしました。広報エキスパートならではの視点が、皆さんのヒントになりますように。
聞き手は、THE CALBEE編集長の吉田聡です。

Kai Maraun
カルビー株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 グローバル広報チーム・リーダー
2024年8月入社。広報歴15年以上。

聞き手:吉田 聡
カルビー株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 本部長
2019年入社。Kai Maraunとはグローバル広報チームを組む。

グローバルコミュニケーションの「文化的なニュアンス」

吉田:私たちが最初に会ってから10年以上が経ちますね。改めて読者の皆さんに自己紹介をお願いします。

Kai:はい、Kaiと申します。よろしくお願いします。過去15年ほど、日系企業でコミュニケーション(広報)に携わってきました。経営トップのメッセージや、社内コミュニケーション、メディアリレーション、IRチームのサポートなどを担当してきました。日本だけでなく、アジア・欧米など様々な国や地域の上司・同僚と一緒に仕事をした経験も貴重なものです。その中で、国や地域によって異なる「文化的なニュアンス」を学び、グローバルコミュニケーションの重要性を実感してきました。「文化的なニュアンス」とは、言葉の選び方や表現の仕方、コミュニケーションのスタイルなど、国や地域による微妙な違いです。世界的に様々な摩擦が起きている時代だからこそ、お互いを理解しあうことが大切だと思います。

吉田:日本語でも「含意を読み取る」なんて表現がありますね。ところで、これまで働いてきた業界とは異なる食品企業のカルビーでコミュニケーションの仕事をされていますが、何か違いや共通点はありますか?

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Kai企業や業界によって違いはありますが、共通して言えるのは、企業文化やステークホルダーの期待への深い理解が出発点ということです。カルビーは変革の真っただ中にあります。グローバル市場での成長や国内外での事業拡大が進んでいます。2024年8月に入社してすぐに、各国の海外子会社メンバーと話す機会があり、多くのインプットを得ました。グローバル市場での存在感を築くためには、コーポレートブランドを確立し、企業の価値を社内外に伝える取り組みが重要だと感じています。
私たちが何を目指しているのか、どこに向かっているのか、そして自分たちの仕事がどのように貢献しているのかを実感することが大切です。こうした社内エンゲージメント強化にもコミュニケーション部門は貢献できます。もちろん、社外ステークホルダーと企業との橋渡し役も求められています。

英文ドラフトや英訳のコツ

吉田:仕事をする中で、“Corporate Narrative”や“Corporate Message”といった言葉を聞きますが、どんな違いがあるのでしょうか?

KaiCorporate Narrativeは、企業がパーパスや価値創造を語るストーリーで、コーポレートブランドを築く上でとても大切です。全てのステークホルダーに対して、企業自身の存在意義を示す “北極星” とも言えます。Corporate Message は、受け手や効果を意識した機能的なものです。両者が一貫性を持って練り上げられることで、複層的な構成となり、より深いコミュニケーションが可能になると思います。

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吉田:なるほど。コミュニケーションと一口に言っても、目的によって粒度や強度を使い分けていく整理ですね。少し実務面ですが、日本語の企業メッセージを英訳する難しさや工夫があれば教えてください。英文のインパクトを高める技術などはありますか?

Kai:メッセージの英文ドラフト、日本語を英訳する際には、いくつかのポイントがあります。例えばCEO letterの場合、言語や文化的な違いだけでなく、顔の見えるトーンにします。パーソナリティをブランディングするようなイメージです。そうすると受け手の共感が高まります。文章の特徴で言うと、日本語は間接的な言い回しが多いのに対し、英語では明確さや直截さ、より自信に満ちた表現が好まれます。もっとも、企業の個性による違いもありますね。
 
また日本語の場合、複数の節を持つ長い文章で徐々に結論に至りますが、英語では短い文章にするとアイデアがより明確に伝わり、読み手の理解が深まります。特に、ノンネイティブの読者にとっては助けになります。さらに、複雑な内容であっても、パンチが効いていてdigestible(消化しやすい)な単位に分けると読みやすくなりますね。それだけでは単調になってしまうので、文章展開のスピードやリズムを意識しています。メッセージ構造とパラグラフのつながりを工夫すると、理解のペースが改善され、インパクトが出せると思います。また、結論を先に述べてサポートする根拠を示すと全体がロジカルになり、引き締まります。文意を尊重しながらも、伝わりやすいトーンに変えたり、言い換えたりして、英文を磨いていくのです。

英文の視覚化

吉田:今の「消化しやすい」という表現もそうですが、Kaiさんはライティングで比喩表現を効果的に使いますよね。例えば、business strategy(戦略)ではなく、strategic roadmap(道程)と表現したり、strategic framework(枠組み)ではなく、strategic architecture(構築物)と言い換えるなど、ワード選択によって文章が視覚化されると思いますが、意図的なテクニックなのでしょうか?

Kai:日本語でも比喩表現はあると思います。特に意識せずに、自然に選択しています。コーポレートメッセージを際立たせ、記憶に残りやすくするためには、visualization(視覚化)は有効ですね。例えば、事業戦略の “Introduction” を“Navigation”と言い換えたりします。読み手は、チャレンジがあっても道案内を受けていると感じ、メッセージ発信者の寄り添いを察します。

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editor(編集者)へのシフト

吉田:それでは、グローバルコミュニケーションに携わる皆さんへのメッセージをお願いします。
 
Kai:この2年ほどで、AIは既に優秀な仕事仲間になっています。これまでは執筆や翻訳に時間をかけましたが、AIの力を上手く活かす事で、その過程が大幅にスピードアップしています。特に表現のオプションを探索する際に力を発揮します。地政学や国際政治の文脈と照らしたワーディングの適切さなど、微妙なニュアンスについて有益なアドバイスが得られます。ただ、コミュニケーション担当者として、自らがライティングする重要性が低下したとは考えていません。

例えるなら、私たちの役割がeditor(編集者)へとシフトしていく感じですね。これからはもっと、最終的なニュアンスやトーンを磨き、メッセージの正当性を高めることで、読み手の共感を得るプロセスに力を注ぐ事になります。企業を取り巻く事業環境が大きく変化するのと同様、コミュニケーションの仕事も変わっていきますが、その役割は、ますます重要になっていくはずです。
 
吉田:今回は、従来の「海外広報」の範疇を超えた「グローバルコミュニケーション」の秘訣を聞くことができました。英文ライティングや翻訳テクニックだけでなく、「何を伝えるのか」が一番重要であることを再認識しました。コミュニケーション担当者だけでなく、英語を学んでいる方々にも参考になるお話だったと思います。ありがとうございました。

文:吉田聡
写真:櫛引亮

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