「じゃがりこ」製造現場の挑戦と誇り。20年以上おいしさを守る下妻工場の”職人魂”
商品づくりの現場を支えるプロフェッショナルな従業員にスポットを当て、仕事に対する想いや、商品づくりにかける情熱に迫る、「職人魂-THE CALBEE」。
第8回は、20年以上おいしさを守る下妻工場「じゃがりこ」製造のスペシャリスト、早瀬 美津博さんにお話をお聞きしました。
早瀬 美津博 (はやせ みつひろ)
カルビー株式会社 カルビージャパンリージョン 東日本事業本部 下妻工場 品質保証課 課長
2000年カルビー入社。入社時から「じゃがりこ」の製造部門に配属。2016年「じゃがビー」製造ラインの立ち上げに携わる。その後は「じゃがりこ」製造に尽力。2020年から「じゃがりこ」の製造課 課長。2025年4月より現職。
入社当時の奮闘
早瀬さんがカルビーに入社したのは2000年。当時は「じゃがりこ」の需要が急拡大しており、工場の稼働を増やすために多くの同期が採用されました。早瀬さんは入社直後から「じゃがりこ」の製造に携わり、忙しい日々を過ごしていたそうです。
入社2、3年目は、包装設備の保全を担当していた早瀬さん。当時、駅構内の売店で販売している「じゃがりこ」はカップ型ではなく箱型でした。箱の中にアルミの袋があり、そこに「じゃがりこ」が入っています。アルミの袋を箱に入れる工程や、完成した商品を出荷用の段ボールに入れる工程でトラブルが多かったと言います。
「機械が正常に動かず、箱がつぶれてしまったりしてうまくいかない。そういったトラブル対応のためいつでも連絡が取れるようにしておく必要があり、私の連絡先が誰でもわかるように貼ってありました。昼でも夜でもいつ呼ばれるかわからないのは大変でしたね。もちろん今ではそういったことはなくなりました。」
やりがいがある一方、プレッシャーも大きい業務だったと早瀬さんは振り返ります。気が抜けない日々の中、周囲とのコミュニケーションはどうだったのでしょうか。
「入社して数年した頃、休刊日ならぬ休機日という取り組みができました。毎月決まった日に集まってメンテナンスを行うというものです。本当に忙しい毎日でしたけど、この日は機械こそ動いていませんがみんないるので、帰りに食事に行ったりしてリフレッシュできる日になりました。メンテナンスを終えた人たちが順に少しずつ集まってきて、楽しかったですね。」
「じゃがりこ」製造の礎を築いた場所
下妻工場では、当初はポテトチップスの製造を行っていましたが、1995年に「じゃがりこ」が誕生し、当時は小規模で生産していたそうです。
しかし、翌1996年には「じゃがりこ」の製造ラインが拡大され、全国発売に向けて本格生産が始まりました。その後生産工場は増えていきますが、下妻工場は「じゃがりこ」の製造を支える礎を築いた場所と言える、製造拠点として重要な役割を果たしてきました。
また、下妻工場では「じゃがりこ」の姉妹品である「さつまりこ」も生産しています。
「『さつまりこ』は海外のさつまいもを原料として使用していますが、2000年当時は国内原料を使ったこともあり、工場の外に出て青空の下、大勢で延々とさつまいものヘタを切っていたこともありました。」
そんな微笑ましいエピソードがある一方で、「じゃがりこ」とは原料の違いもあり、作っても廃棄がたくさん出てしまった苦い思い出もあるそうです。
「じゃがりこ」製造の舞台裏:清掃に〇時間?!
「じゃがりこ」の製造工程は非常に複雑なうえ、生のじゃがいもを使用するので技術の習得には他の商品より時間がかかります。製造工程の条件設定が全体に影響するため、各工程での職人技も求められます。何が一番大変でしょうか。
「『じゃがりこ』の製法は非公開の部分が多く詳細をお伝えすることはできないのですが、製造工程でいうと、形や『じゃがりこ』特有の食感に影響する製品中の水分や油分の数値を均一にすることがとても難しいです。製造課の品質オペレーターが日々細かい調整を行っています。
原料となるじゃがいもも品種や産地によって扱いが変わりますし、個体差にも対応していかなくてはいけません。しかし一番時間がかかって大変なのは清掃です。
ポテトチップスはスライスしたじゃがいもをフライしてから味付けの工程になりますが、『じゃがりこ』は生地に味付けをしてある状態でフライするので、フライ油にその味や匂いが移ってしまうんです。そのため、次に生産する商品に味や匂いが移らないよう、設備を清掃して油を入れ替える必要があります。フライヤーの洗い方だけで何通りもあります。」
下妻工場ではお土産用の「じゃがりこ」も生産していて、各地域のさまざまな味があり、その生産切り替えのためのフライヤーの清掃に2時間半から4時間かかるといいます。
「『じゃがりこ』は製造工程が長いので、終わった工程の部分(設備)から、切り替え清掃もスタートします。極端に言うと、3時間生産して、3時間清掃する感じですね。」
設備を分解して清掃する部分もあり、清掃の仕方を覚えるだけでも相当時間がかかるのだそう。すべては安全でおいしい商品をつくるための重要な工程ではありますが、この時間の長さには驚きました。
製造工程が複雑なため、早瀬さんは「『じゃがりこ』の製造は、他の商品と比べて一番手間が要るかもしれない」と語り、その背景には職人たちの技術と努力があることを強調しました。
お客様への想い
入社以来、20年以上を「じゃがりこ」製造に尽力されている早瀬さんに、ファンへの想いを伺います。
「食品会社で働く者として、安全で安心できる商品を提供することが何よりも大切だと考えています。さらに、工場で日々行われていることすべては、おいしさを維持するための仕事でもあります。
例えば、商品中の水分や油分の数値に問題がなかったとしても、現場事務所のサンプリング検査で実際に食べてみた時、食感に違和感があれば主任が私のところへ報告に来ます。それを品質保証課と製造課が連携して確認し、次の工程をストップすることもあります。
『じゃがりこ』の食感は、原料じゃがいもの品種や産地によってまったく変わってしまうので何十年携わっていても難しいと感じますが、「いつものおいしさ」を届けるための努力を、これからも続けていきます。」
製造現場には、製造ラインに従事するメンバーをはじめ、班長や主任といった心強い仲間たちが数多くいます。「私はいつも人に恵まれているんです」と語る早瀬さん。その言葉数は少ないものの、胸の内には「じゃがりこ」製造にかける“職人魂”がしっかりと息づいています。
その情熱が次世代へと受け継がれていくことを期待せずにはいられません。
【カルビー下妻工場について】
下妻工場は、水と緑に恵まれた茨城県南西部の下妻市にあります。1975年に操業を開始した、カルビー工場の中では3番目に歴史のある工場で、「じゃがりこ」を最初に生産した工場です。
文・写真:石川 清美


