発売50周年!「カルビーポテトチップス」の歴史をパリッと紐解く ~“おいしさ”と“品質”を追い求めて~
衝撃を受けた、ポテトチップスが山のように積んで売られている光景――
1967年、カルビー創業者の松尾孝さんがアメリカで目にしたものでした。この体験がきっかけとなり、8年後の1975年に「カルビーポテトチップス」を発売。そして今年、誕生50周年を迎えました。
生産拠点の分散、当時異例だった製造年月日の表記、業界初となるアルミ蒸着フィルムの採用……。その道のりは、一貫して「おいしさと品質の追求」と共にありました。一方、ブランドとして変えてはいけないもの、守ってきたものも存在します。
50年の歴史について、ポテトチップスのブランドマネジャーを務める井上真里さんと振り返っていきます。
井上 真里(いのうえ まり)
カルビー株式会社
マーケティング本部 ポテトチップス部 ベーシックポテトチップスチーム ブランドマネジャー
2009年4月入社。営業を経験後、2020年よりマーケティング部門でポテトチップスを担当。2023年より現職。
定番味は、現在も「3年に一度リニューアル」
「カルビーのポテトチップスは、社員みんなが思い入れを持つ“私たちのブランド”だから」
井上さんがブランドマネジャーに就いた時、歴代のブランドマネジャーから掛けられた言葉だといいます。カルビーの代名詞である商品だからこそ、たくさんの社員から意見がでる。それらをきちんと受け取って、より良いポテトチップスを作ってほしい。そんな意味として捉えたと話します。
誕生からの50年間で、カルビーのポテトチップスは進化し続けてきました。かつては毎年改良していた時期もありますし、現在も3年に一度ほどは定番味(「うすしお味」「のりしお」「コンソメパンチ」)のリニューアルを行っています。
たとえば2019年には、おいしさをそのままに「うすしお味」の食塩使用量を5%削減※。200回もの試作を繰り返すことで実現しました。
「時代に合わせてアップデートしながら、バトンをつないできました」と、井上さんは笑顔を見せます。
※味材中の食塩使用量、年間使用量として(カルビー調べ)
お客様においしい商品を届けるための「鮮度政策」
「カルビーポテトチップス」の発売は1975年ですが、この商品の構想はその8年前に生まれていました。1967年、カルビーの創業者・松尾孝さんが「かっぱえびせん」を出品するため、渡米して「国際菓子博覧会」に出席したときのこと。現地のお店に山積みされているポテトチップス商品を見て、日本でも販売しようと考えたのが始まりでした。
ただし、当時はまだじゃがいも原料の商品ノウハウを自社で持っていませんでした。そこでポテトチップスの製造・販売を見据え、準備を進めます。まずじゃがいもの一大産地、北海道・千歳に大規模な工場用地を購入すると、1971年に「仮面ライダースナック」、1972年に「サッポロポテト」を発売。この原料を使った商品の販売体制を構築しました。
そして1975年、いよいよポテトチップスの販売へ。第一弾は「うすしお味」、第二弾は翌年に出した「のりしお」でした。
当初は売れ行きが厳しく、店頭でほこりを被っていることも。この状況を打破するために行ったのが「鮮度政策」です。ポテトチップスが「店頭に長く置かれている」イメージを一新するため、商品鮮度をベースにした売り方へとシフトしました。
そこで展開したのが、印象的なTVコマーシャル。「100円で『カルビーポテトチップス』は買えますが、ポテトチップスで100円は買えません。あしからず」のキャッチコピーが話題となりました。さらに店内プロモーションを組み合わせた販売促進を行い、鮮度が良いうちに商品を売り切ることを目指しました。
「また、消費地に近い工場で商品を作り、なるべく早く商品を店頭に並べられる環境を作っていきました。現在も国内にポテトチップスの製造拠点が7箇所あります。スナックメーカーとしては生産拠点がかなり分散しており、カルビーの特徴になっています」
こうした拠点体制は、「環境負荷の軽減にもプラスに働いています」と井上さん。スナック商品は軽量でかさばるため、配送効率が良くありません。しかし「消費地の近くに工場があれば、そこまで原料で運んでから加工ができます。効率化につながるのです」と説明します。
さらに鮮度政策を後押ししたのが、当時菓子業界では異例だった商品への「製造年月日の表記」でした。流通の混乱を招くとして業界で反対が多い中、カルビーはむしろ消費者に鮮度を把握してもらうことが大切だと考え、積極的に表記を進めました。これが上記の政策と相まって、ポテトチップスの高い品質が人々に理解されていったのです。
苦しい状況を変えた「コンソメパンチ」
発売から3年が経つと、徐々に売れ行きは伸長。しかし、関東地区ではシェア拡大に苦労していました。そこで状況を変えるべく発売したのが、1978年の「コンソメパンチ」です。
「うすしお味」と「のりしお」はすでに世に出ているフレーバーでしたが、こちらはカルビーのオリジナルフレーバーとして開発。当時まだメジャーではなかったコンソメを抜擢しました。これにより関東でのシェア拡大を達成。現在まで続く3つの定番味が出揃ったのでした。
「3つの定番味は、それぞれ“愛され方”に特徴があります。『うすしお味』はみなさんに広く好まれる優等生キャラ、『のりしお』は大人になっても熱烈なファンがいる味、『コンソメパンチ』はお子さまからの人気が高いですね」
1980年代に入っても、ポテトチップスの品質への追求は止みませんでした。1983年には、業界で初めてアルミ蒸着フィルム(プラスチックにアルミを塗布したもの)を採用しました。
その頃のスナック菓子は、透明のフィルムで中身を見せるのが主流。しかしこれらは、気体や水分などを遮断する性能(バリア性)が低く、油の酸化や匂いの移行が起きやすいという問題が。また、当時増えてきたコンビニエンスストアでは、蛍光灯の光に24時間さらされることになり、油の酸化が早まっていました。
「アルミ蒸着フィルムを採用したことにより、パリッとした食感の保持や賞味期限の長期化が実現しました。もし当時の透明なフィルムなら、今のカルビーが求める品質は『数日も持たない』と言われます。大きな決断だったと思いますし、フードロスの削減など環境にも好影響だと感じますね」
当時は「お菓子は中身が見えないと売れない」という反対の声もあったようです。コストも増幅するリスクがありました。それでも採用したのは「お客さまにおいしいものを届けたい」という思いでした。
「製造年月日の表記もそうですが、たとえ業界の常識を破っても、強い反対があっても、品質やおいしさのために新しい仕組みを導入したところにカルビーらしさを感じます。それが後の業界標準になっていますよね。この姿勢は今の私たちにも受け継がれていますし、これからも大切にしたいと思っています」
その姿勢を継承している例として、井上さんが口にするのは「ゴールドスタンダート」というもの。品質に関するカルビーの統一規格です。各工場から毎週商品を集め、品質のばらつきがないか官能評価を実施。ポテトチップスからスタートし、カルビーの多くのブランドで行われています。
ピンチの時も、生産者と「二人三脚」で
たくさんの人に愛される商品となったポテトチップスですが、苦しい経験もありました。たとえば2017年のポテトショックです。
前年8月に3つの台風が上陸するという、異例の事態に見舞われた北海道。これにより、夏以降に始まるじゃがいもの収穫が大きな打撃を受けました。結果、2017年春には、他社を含めた多くのポテトチップス商品が一時休売や終売となったのです。
「これを契機に、カルビーでは商品を安定供給できる販売計画の立案や体制の再構築を進めました。毎月、じゃがいもの供給状況を関連部署で共有する仕組みも設けたのです。現在はAIによる需要予測システムも活用し、商品の不足や在庫が過多にならないように調整しています」
一方で、生産者との「二人三脚」体制も強化してきました。カルビーグループでは、じゃがいもの生産者と契約関係にあるのが特徴です。
さらにポテトチップス商品のパッケージ裏面には「じゃがいも丸ごと!プロフィール」を記載し、産地や生産者を検索できるようにしました。
2020年には、環境に配慮したリニューアルも実施。ポテトチップスのレギュラーサイズ12商品について、パッケージの横幅を20mm短くしました。その分、縦幅は30mm長くなっています。「これにより、商品を輸送する際の段ボールのサイズを縮小でき、積載効率が向上しました」。
変えてはいけない、ポテトチップスの「味の構造」
商品のバリエーションや生地の品質など、ポテトチップスの改良は今も続いています。一例として、近年は「ポテトチップス 超薄切り」と「ポテトチップス ザ厚切り」を展開。厚さや食感の違いを楽しめる点が人気を博しています。
「カルビーポテトチップス」が歩み続けた50年。それは、“品質”と“おいしさ”を追求した道のりとも言えます。そしてその歩みは、今も止まることはありません。
ただし、おいしさのために変えるものもあれば「変えてはいけないものもある」と井上さん。ひとつは、定番味における「味の構造」です。
「定番味のポテトチップスは、噛んだ瞬間にフレーバーの味わいが一気に広がります。そしてその味わいは、あるタイミングでスッと引き、その後はじゃがいもの甘みへと変わります。この素早い味の転換こそが特徴であり、変えてはいけないものだと思っています」
たとえば「のりしお」には唐辛子が、「コンソメパンチ」には梅肉パウダーが入っていますが、これは味の転換を生み出す狙いもあるとのこと。「うすしお味」については、塩の組み合わせで転換を表現していると井上さんは説明します。
そしてもうひとつ、変えてはいけないものがあります。それは「いろいろな人が食べられる」こと。「カルビーのポテトチップスとして世に出すものは、子どもからお年寄りまで、誰もが食べやすい味わいでありたい。そう思って商品と向き合っています」
誰もが愛する存在に、みんなが喜ぶお菓子に――。カルビーポテトチップスは、これからもおいしさと品質を追い求めます。それがこのブランドの歴史であり、姿勢だから。そして最後に、井上さんはこう言います。
「60年、70年を超えて、100年続くブランドにしていきたいですね」
文:有井太郎(外部)
写真:櫛引亮
編集:瀧澤 彩



