カルビーの調達のヒミツ おいしさを支える裏側
「調達」という言葉でどんな仕事をイメージされるでしょうか?一般的には、必要な資材やサービスを適切なタイミングで届けることです。
カルビーの場合、「ポテトチップス」のじゃがいもや「かっぱえびせん」のえびなどの原料のほか、袋やカップ、段ボールをはじめとした梱包資材など多岐に渡ります。私たちの商品は「調達」という仕事で支えられているのです。
今回は、カルビーの調達を担うグローバル調達本部の役割や、持続可能な調達への取り組み、そして直面する課題について本部長の花牟礼さんにお話を聞きました。
花牟礼 友樹(はなむれ ともき)
カルビー株式会社
グローバル調達本部 本部長
カルビーポテトでフィールドマンを経て2014年カルビーに転籍。じゃがいもなどの原料や工場設備の調達に従事。
2025年4月より現職。
じゃがいもからエネルギー契約まで幅広く行う業務
グローバル調達本部は3つの部から構成されています。1つ目は「馬鈴薯調達部」で、主に輸入じゃがいもや海外から調達するポテトフレーク、冷凍生地などの輸入手配を担当しています。2つ目は「グローバルロジスティクス部」で、日本国内で製造した商品を海外に輸出する業務で、海外グループ会社の調達支援を担当しています。3つ目が「調達部」で、じゃがいも以外の調達品全般を管轄しています。例えば、オーツ麦やとうもろこしなどの農作物やえびなどの海産物、油脂や調味料など食品原料から、商品の袋やカップなどのパッケージ、工場の機械設備、不動産契約や以前noteでも紹介した「清原工業団地スマエネ事業」のエネルギー契約など社外から調達するもの全般を担当しています。
カルビーの調達は、取引先との関係性がフラットであることが特徴の一つです。系列会社などによる取引先の縛りが少なく、品質やコスト、納期などの条件が合えば、どこからでも調達できる柔軟性を持っています。ただし、品質については非常に厳しい基準を設けており、取引先から「カルビーさんの要求は特別ですね」と言われたこともあったそうです。そこで、花牟礼さんは「時にはその規格の妥当性を見直し、一般的な規格で調達することで、トラブル対応の容易さやコスト削減につなげることもあります」と話します。原料だけでなく、工場の作業着や設備でも同様のことがありました。お取引のある会社から工場ごとにそれぞれ仕入れていましたが、本社で管理し集中購買を行うことで、規格を満たしながらコストを抑えることに成功しました。
変わりゆく調達部門の役割
花牟礼さんが調達部門にきた2010年代の前半は価格を抑えることが方針の中心でした。競争環境を作るために取引先を増やしたり、逆に絞り込んで集中購買をすることで価格を下げたりしていたそうです。しかし、近年は環境変化に伴い、原材料価格が上昇傾向にあり、従来の方針では対応が難しくなってきています。
現在、調達部門の役割は大きく分けて4つあると花牟礼さんは話します。「1つ目は取引先の選定と関係管理です。品質・コスト・納期・安定供給力などを評価し、最適な取引先を選定します。また、定期的なコミュニケーションを通じて、良好な関係を維持することが重要です。2つ目は価格交渉です。原材料価格の変動にも対応しながら、適切な価格での調達を目指します。3つ目はリスク管理です。取引先の財務状況や自然災害などのリスクを評価し、必要に応じて代替取引先を確保するなどの対策を講じます。最後に、コンプライアンスの確保です。関連法規の遵守はもちろん、昨今では環境や人権などのサステナビリティ面での配慮も求められています」
実際に、国内はもちろん海外から輸入している原材料に関しても、調達部門の担当者が現地を訪れ、栽培状況や収穫環境を確認しています。衛生面だけでなく環境や人権にも配慮した取引先なのか見極めるようにしているそうです。これまで優先順位が高かった価格や品質に加え、現在では環境問題や人権問題、天災時のリスクヘッジなど考慮すべき要素が増えたので、「業務を進める上で複雑になってきたと実感する」と言います。
また、取引先との付き合い方として、普段のやりとりや気になる点がある場合は記録に残し、慎重に対応するようにしてきたそうです。品質要件はもちろん、社会一般で求められる人権・環境・法規に関する課題の共有と改善に向けた取り組みを取引先と一緒に進めています。ともに取り組むことができない取引先の場合は、長い付き合いがあっても取引を見直すようにしてきました。そうして、カルビーは取引先とフラットな関係を構築しています。そんな関係性を保った結果、時には取引先から直接調達部門に相談が来ることもあるそうです。
「例えば『さやえんどう』の原料であるえんどう豆は、畑が高温になると白くなってしまうことがあります。カルビーの規格では緑色が必須でしたが、天然資源なので、作柄によって柔軟に対応していく必要があると社内を説得し、色の基準を緩和したことがあります」このように取引先とは協力関係を築いています。
持続可能な調達へ
海外では経済の発展に伴い、水産業・水産加工業の従事者減少と高齢化が急速に進行しています。海洋に流出したプラスチック類の影響も顕著で、以前は手作業での選別・除去を強化していました。しかし、手作業での選別に限界を感じた調達部門は、2016年より現地の取引先と協議を開始。水産加工品にも対応可能な選別機の開発を現地機械メーカーと進め2024年度に導入しました。結果、労働負荷軽減につなげ、取引先からの原料調達を継続することができました。もし、この対応を行わなかった場合、取引先は「カルビー向けの原料供給を継続できなかっただろう」と語っていたそうです。花牟礼さんは「お金も時間もかかることですが、取引先と一緒に取り組むことで、持続可能な調達につながった事例だった」と振り返ります。
「これはほんの一例で、長期的な視点で取引先とともに良くなっていくことが重要だと考えています。取引先に対して設備投資を勧めることで、カルビー側のコストアップにつながる可能性もあります。それでも、取引先と一緒に改善方法を考え、課題解決に取り組んでいく姿勢が大切です」と、熱く話します。
これからのグローバル調達本部の目指す姿
最後に、これからの展望についてお聞きしました。「今後も、サステナビリティを重視した調達活動を推進していきます。リスクマネジメントの観点から取引先を分散して選定する必要もあります。さらに、カルビーグループとして海外市場を成長の軸として確立するため、海外への商品輸出量を増やしていかなければなりません。そのためには、海外の取引先のことも意識して学んでいきたいと考えています。もっと力をつけて、現地の調達業務を、日本からどのように支援していくかを検討していく必要があります。現在は海外の会社の調達部門が現地調達しています。日本で管理して調達することを求める声もありますが、日本と海外では求める品質基準が異なります。日本の調達部門の知見を活かしつつ、現地の事情にも柔軟に対応できる体制をこれから整えていくことが重要だと考えています」と、花牟礼さんは話します。
カルビーの調達部門は、単なる「仕入れ」を超えた幅広い業務を担っています。品質やコストだけでなく、環境や人権への配慮、リスク管理など、さまざまな要素を考慮しながら、持続可能な調達を目指していることが分かりました。
私たちが何気なく手に取るカルビーの商品。その裏側には、調達部門の地道な努力と取引先との信頼関係があることを知ると、より一層おいしさを感じられるのではないでしょうか。これからもカルビーは、未来に向けて進化を続けていきます。
文:町田 有希
写真:伊藤 奈美子


