これからもポテトチップスを食べてもらうために。安定供給を支えるじゃがいも栽培のプロたち
「じゃがいもは土に植えておけば自然に増えてるんじゃないの?」そんなふうに思っている方はいませんか?実は、じゃがいも栽培は奥が深く、種芋を植える位置、肥料を散布する行うタイミング、収穫の方法など、ほんの少しの違いが品質や収穫量に大きな影響を与えるのです。
カルビーグループでは、ポテトチップスなどの商品に適したじゃがいもを安定的に調達するために、日々多くの人が尽力しています。
そこで今回は、じゃがいも栽培のベストを常に追い求め、若手の育成や産地の課題解決に取り組む、カルビーポテト栽培技術課の杉田さんにお話を伺いました。
杉田 旭(すぎた あさひ)
カルビーポテト株式会社
馬鈴薯事業本部 北海道馬鈴薯事業部 栽培技術課 上川馬鈴薯事業所担当
2015年新卒入社。網走事業所 斜里支所にて6年間フィールドマンを経験。2021年から栽培技術を指導する部署に所属し、2025年より現職。
40年以上にわたって受け継がれてきた栽培データ
カルビーポテトには“フィールドマン”と呼ばれる契約生産者さんの栽培をサポートする人が全国で約50名います。そのフィールドマンを裏で支えるのが栽培技術課です。
「若手フィールドマンにとっては、OJT(On The Job Training)みたいなものですね。」
カルビーポテトの社員は、農業分野を専門的に学んできた人ばかりだと思われがちですが、実際は農業とは全く無縁のフィールドで学んできた社員も数多く在籍します。
新入社員も例外ではなく、文系出身者が入社後にフィールドマンとして配属されることもあります。農業を生業としているプロと対等に話すことが求められ、さらには、栽培のアドバイスをする立場になるので、フィールドマンのじゃがいも栽培における知識量は大変重要になります。
そこで頼りになるのが、杉田さんが所属する栽培技術課です。フィールドマンが困った際には、過去のデータや傾向をもとに契約生産者へのアドバイスをどのようにしたら良いかを伝授します。若手フィールドマンにとってはまさに頼れるヒーローのような存在です。
「カルビーポテトには40年以上にわたって脈々と受け継がれ、蓄積してきた、数々の契約生産者さんの栽培データがありますから。全国に約1,600戸(※2024年度実績)いる契約生産者の方々のデータを分析し、『今年は何が良かったのか』、『何が課題だったのか』、『この天候の時にはどういった対策を行うべきか』といった細かいところまで明らかにします。そしてその分析結果をフィールドマンに共有し、そこから契約生産者の方に伝えていくことで、全体の品質向上や収量アップにつなげるようにしています。」
カルビーグループが追い求めるじゃがいもは、商品になったときにおいしいことはもちろん、形がきれいで揃っているか、傷や打撲※1がついていないか、でんぷん含有量は多いかなど多岐にわたります。また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの店舗でいつでもおいしい商品が安定して並んでいる状態にするためには、高品質な原料をより多く確保することが重要になってきます。
近年、気候変動や農業人口の減少が問題視される中、これまでと変わらず安定供給を続けるためには、データに基づいた傾向の分析と対策はより重要になってきています。
※1 打ち傷が時間の経過とともにコルク状に変質することで、人で例えるとアザのような状態
じゃがいも栽培の先生
栽培技術課は契約生産者と一番近い立場にいるフィールドマンの育成にも力を入れています。
「靜間さん、テスト用紙確認しますね。」
今年入社した靜間さんのかばんからは数枚のプリント用紙がでてきました。問題の下には回答欄も設けてあり、まるで学生時代を思い出すかのようなしっかりとした仕上がりです。
「葉っぱの状態を見てこれがなんの病害虫によって被害を受けているのか、どんな環境要因が影響しているか、収穫するときに打撲が多いときはハーベスター※2の設定はどうするのがいいのかなどが問題になっています。完全にカルビーポテトオリジナルです。新入社員やフィールドマン経験がまだ浅い方にはこういうテストを用いて知識を深めてもらえるようにしています。現地に赴く機会の多いフィールドマンが実際に自分の目で判断できるようになれると次の対応策も素早く判断できますからね。」
※2 収穫を行うための機械
杉田さんは現在、北海道の上川・道央・道南エリアを担当し、若手社員2名を含む9名のフィールドマンの指導を行っています。フィールドマンから電話がかかってきたらすぐに対応し、必要であれば現地にも駆けつけます。さらに、若手フィールドマンに対しては年4回の研修も設けています。
そんな、みんなの頼れる先生のような存在の杉田さんでもじゃがいも栽培は一筋縄ではいかないのだとか。
時代によっても変化する悩み
「今抱えている課題としては、全国トップクラスの広い面積を有している生産者の品質改善についてです。面積が広い分、収穫する総量もかなり多いので、収穫に適したタイミングで急いで収穫をしなければならないのです。そうすると、ハーベスターの走行スピードを上げることになり、結果的に打撲の発生に繋がってしまいます。農業人口が減少しているため、1戸当たりの面積が増加している傾向にある近年ならではの悩みかもしれないですね。」
新しい産地の拡大に取り組む中では、契約生産者に栽培ノウハウを丁寧に伝えることも大切だと杉田さんは語ります。
「最近じゃがいもを作り出した新しい産地だと契約生産者も少なく、まだまだじゃがいも栽培に関するノウハウがその土地に十分に蓄積されていません。なので、私たちがハーベスターの操作のコツを直接アドバイスしたり、じゃがいもの一大産地である十勝の契約生産者の元へ招いて産地を見学してもらう機会を設けたり、農薬の種類や散布するタイミングを指導したりしています。
一人ひとりの課題に対し現地のフィールドマンと連携を取り、時には自身も足を運びながら、少しずつ丁寧に改善に向けて取り組むことが未来に繋がっていくのだと思っています。」
海外研修で感じた可能性
世界には日本よりもじゃがいも栽培が進んでいる国がたくさんあります。時には海外のじゃがいも栽培を学ぶことも。
「2019年にオーストラリアのタスマニアで研修を受けた際、日本のじゃがいも栽培はまだまだ遅れているなと感じました。というのも、日本は作物の栽培技術を生産者同士でシェアする機会が少なく、これまでの経験を基に独自でやっている人が多いのです。しかし、タスマニアではファーマーズミーティングを実施し、生産者同士がディスカッションする文化が根付いていました。
また、アグロノミストという土の専門家集団が土に特化したアドバイスを行うなど、農業に携わる人全員でより良くしていこうという想いが感じられましたね。」
農業人口が減少していく中で、カルビーグループとしても“持続的な農業への貢献”を常に掲げています。
「わたしたちも契約生産者同士を繋ぐパイプ役として、良い情報は積極的にシェアして反収や品質の底上げができるようにしていきたいです。そしてそれが農業分野全体の活性化に繋がって生産者の方々が喜んでくれるなら、これ以上うれしいことはありません。」
最後に、杉田さん自身の目指す未来についても聞きました。
「フィールドマンが困ったときに頼れる存在でいたいです。栽培面でのサポートはもちろん、なんでも気軽に相談できる存在になれるといいなと思っています。
過去の先輩方には、この分野のことなら聞けばすぐに教えてくれるプロフェッショナルな人もいました。いつかはそんな先輩方を超えたいです。」
文・写真:倉ヶ市 彩乃


