三重県志摩市公認キャラクター「碧志摩メグ」公認撤回の署名提出後の明日少女隊の見解

 
明日少女隊は、志摩市在住の方から、9月30日に急遽志摩市が海女さんを集めて話し合いをすることになったとの連絡をうけました。

志摩市は、当初11月かと思われていた話し合いの予定を変更し、9月24日付けで、海女さんに通知したとのことです。

それに伴い、私たちも、署名提出後の考えをお伝えしたいと思います。


1:市の海女さんへの対応の問題点

私たちは、「碧志摩メグ」について、まず第一に、特定の職業に対して、性的なイメージとして描いたキャラクターを作成し、市が公認を与えて、広報に利用したこと、またその性的なイメージを公共の場で公開したことは、行政機関として不適切だと考えています。

第二に、志摩市の現役・元海女さんが、自分たちの尊厳ある職業に、間違った性的イメージを押し付けないでほしいと署名活動を通して政治的に声をあげました。しかし、市は「『女性蔑視』はあくまで個人的な感じ方」だ、と問題を小さく見せました(矮小化・わいしょうか)。

私たちは、これらの問題にはセクシュアルハラスメントの要件も含まれていると考えています。

そもそも、このキャラクターは海女文化の後継者不足を解消することを目的の一つに作られたとされています。しかし、選考過程には海女さんへのヒアリングもなく、議会も通していません。結果的に、キャラクターの見た目もプロフィール設定も、若い女性が海女文化に興味をもつようなものになっているかは疑問であり、海女さんからも、海女文化を正しく伝えていないと苦情があがっています。

9月9日の伊勢新聞の報道によれば、志摩市はデザイン変更のために、公的施設から一時的にパネルやポスターを撤去したということです。

今回の問題は、ジェンダー(男らしさ・女らしさなどの、社会的・文化的に形成された、性別によって異なり、差のあるイメージや扱い)、公共性表現の問題が複雑に絡み合っており、ジェンダーを専門に勉強した人でも言葉にするのは容易ではありません。そのため、私たちは志摩市に、キャラクターの変更の前に、ジェンダーの専門家を招き、市民も自由に参加できる勉強会を開くことを提案したいと思います。

現在の日本で、ジェンダーの問題について学ベる場所はとても少なく、多くの人はその機会に恵まれていません。そのため、このような勉強会はとても意義のあるものになると思います。

志摩市には、これ以上問題を軽くすませようとせず、もう一度、解決に向けて正面から取り組むよう期待します。



2:当事者が声を上げることの難しさ

私たちは、「碧志摩メグ」について海女さんが声を上げなかったとしても問題であったと考えています。

なぜなら、現実的には、今回のように女性蔑視に関する問題において、直接の当事者が声を上げることのできるケースは極めて稀です。だからこそ、周囲の監視とサポートが大切であると考えています。



3:碧志摩メグの表現とプロフィール設定と、それによって影響を受ける海女さん以外の人々について


その一方で、今回の「碧志摩メグ」問題の被害者は、本当に海女さんだけだったのかという疑問も残ります。

碧志摩メグは、17歳という未成年の設定でありながら、胸や太ももなどの表現に顕著な性的誇張表現がなされており、「ボーイフレンド募集中」と性的に手に入る可能性のある存在として描かれています。 これらのキャラクターの表現と設定は、女性の性的モノ化(sexual objectification: 人格が尊重されず、性的なモノ(道具)のように表現されたり扱われること)であり、これを行政が公認し、利用することは問題ではないでしょうか。

また、彼女のプロフィールには、身長158cm、体重46kgと書かれています。この身長と体重のバランスでBMI(体格指数:Body Mass Index)を計算すると、BMI18.4であり、健康を維持するために理想とされる体重を下回る「低体重」の状態と示されています。BMIは22がもっとも病気にかかりにくい適正体重とされており、彼女の身長の適正体重は54.9kgです。近年、女性の痩せと栄養失調が深刻な社会問題として背景にあるなかで、そのような女性像を行政が支持するのはいかがなものでしょうか。

このように、性的モノ化された女性のイメージを日常的に見せることによって、それを見た一般の人々に、女性が性的な存在としてだけ描かれることを受け入れ、普通のことだと思わせてしまう内面化・ないめんか)恐れもあり、公的機関がそれを後押しすることはあってはならないことだと考えます。


<参考>

三重県志摩市公認萌えキャラクター「碧志摩メグ」の公認撤回を求める署名運動 まとめ

「碧志摩メグ:志摩市公認キャラ撤回問題 デザイン変更 サミットPR使用せず」

毎日新聞 2015年08月27日 三重版

http://mainichi.jp/area/mie/news/20150827ddlk24040274000c.html

「志摩市議会 海女キャラ、一時撤去 指摘受けデザイン変更へ 」

伊勢新聞 2015年9月9日

http://www.isenp.co.jp/news/20150909/news07.htm