コーナーでの膝すりは、公道の
場合、サーキットよりも遥かに
接地時間が短く、ザッという短
時間での路面接触になる。
これはロードのRの違いによる
ものではなく走行距離の違いか
らくるものだ。
公道よりも高速で走るコースの
ほうが接触時間が長いという事
は、コースは遥かにロード自体
のカーブの距離が長いという事
を示す。同じ数値のR=回転半
径(単位はメートル)であっても、
距離はロードのレイアウトによ
り異なる。ロードのコーナーの
区間距離はRとは関係がない。
私は今は走行旋回においては路
面に膝を接触させないようにし
ている。
そもそもがイン膝出しは膝を路
面に接触させるのが目的ではな
いので、それは一つの物理的な
方式でもあろう。
コースなどではフルバンク時に
はイン膝はカウルに着ける程に
畳まないと曲がれない。膝を開
くのは最大バンク角のかなり手
前部分で開く。
イン膝を開くのは、コーナーの
中の特定区間で腰をインに入れ
た体勢のバランス取りのためで
あり、路面と膝の接触を得よう
としてではない。
そして、コーナー脱出時に車体
を起こしていく過程ではイン膝
は完全に車体に密着させ、全面
投影面積を減らす。加速に抵抗
物の突起は阻害要因になるから
だ。
ハンドル位置やマシン構造の
差異から来る乗車姿勢の違い
があっても物理的な原理は同
じ。旋回エイペックス以降は
イン膝は閉じる方向に動かす。
腰をずらしてイン側に膝を出す
ハングフォーム自体は1960年代
初期のお椀ヘルメットの時代に
確立された技法だ。
なお、「タイヤの性能が高くな
ったからハングオフが可能に
なった」とする巷間説は嘘だ。
旋回時の車体傾斜角よりももっ
とバンクさせた時と同じ効果を
得る為にインに重心を入れる。
逆に言えば、できるだけ車体を
立てて、旋回可能限度近い深い
バンク角と同じ速度で旋回し、
かつタイヤの中央部寄りを路面
に接地させる事で後輪にパワー
を効率よく伝達できるようにす
るのが目的だ。
ハングフォームは、実は半世
紀以上前から存在している。
二輪独自の二輪車の旋回特性
(これは不変)を考察して、二
輪に実際に乗る人間本人が考
案したフォームなのだ。
そこには情念や感情は無く、
あるのは物理特性をいかに有
効的に活用するかという理知
だけだ。
(1960年代の世界グランプリ)
ま、そんな感じだと思うよ。