「スポーツカーなのにオートマですか?(汗)」 これはアリ?ナシ? MT派の美学vs技術進化、現在地を考える
“楽しさと利便性の共存”こそ現代スポーツカーの答え
現代において、どちらか一方を捨てる時代はとうに過ぎ去った。技術の進化は、従来の利便性と安全性を飛躍的に高め、渋滞や長距離ドライブでもストレスを軽減する。デュアルクラッチやトルコンATは加速やレスポンスの面でMTに迫り、電子制御による最適なトルク配分が日常走行からサーキット走行まで幅広く対応する。 一方で、MTがもたらす自ら操る楽しさの価値も健在だ。ギアを自分で選び、エンジンの回転を体感することで得られる体験は、ドライバーの感情と直結しており、スポーツカー文化の核でもある。技術と文化、このふたつを両立させることこそ、現代スポーツカーの理想形である。 つまり、スポーツカー選びの焦点はATかMTかではなく、どの体験で走りを楽しむかに移りつつある。驚きの声「えっ? スポーツカーでAT?」はもはや過去のものとなり、次に問われるのは 「どのスポーツカーなら、あなたはATでも心が動くのか?」 である。この問いこそ、21世紀のドライバーズカーの本質を映す指標だろう。メーカーも市場も、この多様化する選択肢に応えられる柔軟性が求められている。楽しさと利便性を同時に享受できる車こそ、現代のスポーツカーの答えである。
出島造(フリーライター)