米国のトランプ大統領は27、28日と訪日した。27日に天皇陛下に謁見し、28日午前に高市早苗首相と首脳会談を行った。28日午後には、高市首相とともに米大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に乗り、東京・六本木を出発し、米海軍横須賀基地を訪問した。29日には羽田空港をたち、韓国へ向かった。この間、注目されたのが米朝首脳会談が実現するかどうかだった。

 トランプ大統領はアジア外交の直前、「(北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が)私に会いたいのなら、喜んで会う」と述べ、韓国訪問中の会談実現に改めて意欲を示した。だが、実際には実現しなかった。

 米朝首脳会談が開かれれば、2019年6月に北朝鮮と韓国の軍事境界線がある板門店で開催して以来だった。その当時は、大阪にG20サミットで訪日しており、トランプ大統領の会わないかとの呼び掛けで、かなり電撃的に実現した。

 会談はあったものの事前準備もなかったので、とりたてて成果はなかった。そもそも米朝首脳が会ったことに意味があった。

 今回、日米首脳会談やマリーンワンで同乗する機会があったので、高市首相は拉致問題を改めてトランプ大統領に確認しただろう。そして、拉致問題解決のために、高市首相は「訪朝してもいい」と言ったはずだと私はみる。

 トランプ大統領は会談のために韓国滞在を延長する可能性を問われ「考えたことはなかったが、そうしてもいい。とても簡単なことだ」とまで話した。

 こうした情報は、当然北朝鮮の金氏にも伝わっていただろう。だが、金氏は応じなかったといえる。それは19年当時と状況が異なるからだ。つまり、北朝鮮とロシア・中国との距離感が変化したためである。

 19年当時、北朝鮮はロシア・中国と比較的距離があったように思える。このため、北朝鮮は比較的自由に米国と接触できた。しかも、18年6月にシンガポールで史上初のトランプ大統領と金氏との首脳会談が行われた。19年2月にはベトナムのハノイで2回目の米朝首脳会談を行った。その流れで、19年6月に米朝首脳会談が実現したのだ。

 だが、今回はどうだろう。現在、北朝鮮はロシア・中国と近い関係になっている。9月の中国での軍事パレードでは、金氏が中国の習近平国家主席と、ロシアのプーチン大統領と並んだ。今月の北朝鮮の軍事パレードには、中ロの幹部が出席している。案の定、米韓首脳会談の場で、金氏がトランプ大統領のサインを見落としているという発言も出たようだ。現段階での米朝首脳会談は困難だろう。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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