なんか久しぶりに会ったけどみんな様子おかしくない? 作:オレ
「う〜む、暇だ」
現在、朝八時三十分。意識を取り戻した日の翌日、入院生活の辛さを味わっている今日この頃。冗談抜きで暇すぎる。
昨日は疲れからか早く寝てしまい、朝も朝、早朝の時間に起きてしまったため、ぼけーっと窓の外を見て時間を浪費していた。自分でも思う。時間の無駄であると。
しかしながら、俺もこうしたくてしている訳ではないのだ。俺だって、できることなら外に出て体を動かしたいし、そのことを鷲見に言ったりもした。
けどなぁ、許してくれなかったんだよなぁ。いやまあ、病み上がりですぐ運動! っていうのが無理なのは分かるんだけど、こう、異様に止められた。
「なぁ鷲見ぃ〜」
「どうかしましたか?」
「いやさぁ、ずっとベッドの上っていうのも暇だし、外で軽く動いちゃだめ?」
「ダメですよ」
「ちょっと! ちょっとだけだか「ダメですよ」……鷲見さん?」
「ダメですよ、先輩。外は危ないんですよ? 先輩は元から体が強くないのに、それに加えて、その腕です。そんな体でもし誰かに襲われでもしたら、なんて考えるだけで私はもう胸が張り裂けそうです。それに、外に出る必要ってありますか? 先輩が色んなところを見て回ることが好きなのは知っています。けど、他の趣味を見つけたら、ここでも楽しいと思いますし、それに、何があっても私が……いえ、何かが起こる前にその可能性は潰しますから、そこは大丈夫ですね。とにかく、先輩はここでゆっくり休んでください。先輩は充分すぎるくらい頑張ったんです。少しくらい、ここで休んでください。やりたいことがあれば、私がなんでも手伝いますから。先輩の望みだったら、それこそなんでも。だから、お願いします。もう、危ないことはしないでくださいね?」
「…………は、はい」
ビビったよね、マジで。これ全部一息で言われたんだもん。それに、言ってることもちょっと怖かったけど、何より顔が怖かった。
いや可愛いんだよ? いつも通り可愛い笑顔ではあったんだけど、目が笑ってなかった。ほんとに、一ミリも笑ってなかった。まさか鷲見の笑顔を見て恐怖心を覚える日がくるとは思わなかったよね。
まあ、そんなこんなで外に出ることもできずにベッドの上で時間を浪費してる訳ですな。マージで何しよう。
……いや、待てよ? 確かに外に出ることは止められたけど、動くこと自体は止められてない……ハズ。うん。多分大丈夫だ。よし、なら少しこの病院の中でも見て回ろうかな。マジで暇すぎるし。
思い立ったが吉日。早速ベッドから立ち上がるために右手を───いや、無いんだった。危ない危ない。
しっかり左手を使い立ち上がれば、多少の違和感を感じるものの、歩くことくらいは問題無さそうだった。まあ、足が無くなった訳でもないし、そんなものだろう。
そのまま病室の扉を開ける。おそらく、トリニティ総合学園近くの病院だろう。一応あそこ所属だし、鷲見居るし。
既に朝日の登っている時間。廊下にも、疎らに人は居る。
なんとなく歩いていれば、知り合いはたまに見つかり、なんとなく声をかける。その場で少し世間話をしてから、また別の場所へふらふらと。やはり人と話すのは楽しい。一番時間が紛れるんじゃないかと勝手に思っている。
そんな風に時間を過ごしていれば、友人を見つけた。しかし、まだこちらには気づいていない様子。これはもう、驚かせるしかあるまいて。
実は特技である忍び足を駆使し、辺りを見回している友人の後ろから、唐突に肩を掴みながら声を掛けてみる。
「なーにしてんだい!」
「きゃあっ!?」
「あいてっ」
驚いた拍子に跳ねた彼女の頭が、ちょうど俺の顔に直撃し、その衝撃で尻もちをついてしまった。うーむ、やはり人を驚かせるのはよくないのか。一瞬でバチが当たってしまった。
「今の声は……やっぱりユウリさん! っ! ご、ごめんなさい! 驚いてしまって! 立てますか? 何処か怪我をしていたり……あっ。す、すみません! 立てますか?」
「いや、そんな焦らんでも。さっきのはこっちが悪いし」
「そういう訳にはいきません! ああ、久しぶりに会えたのにこんな……ほ、本当にごめんなさい」
「いやだから、マジで大丈夫だって。よいしょっと。ふぅ、久しぶり、桐藤」
こちらへ青い顔をしながらも手を差し伸べてきてくれたのは、俺の友人、桐藤ナギサである。
端正な顔立ちをしており、最初に会った時は俺もドキっとさせられた訳なんだが、今その顔は歪められており、端的に言えばめちゃくちゃ泣きそうである。
めちゃくちゃ泣きそうである!?!?!?
「ちょ〜い! 何!? どうした!? 朝なんか変なものでも食べた!? それともなんか拾い食いでもした!?」
「そんなことっ、しませんよぉ」
「そうだよな! 確かに今のは俺が悪かった! だから泣かないで! ちょ、こっちこっち! こんな場面見られたらあらぬ誤解を生む!」
そうして連れてきたのは、一日しか経っていないのに安心感のある、俺の病室だ。歩き回っている内に戻ってきていたようで、なんとか駆け込むことができた。
なんとか椅子の上に座らせ、握っていた手を放す。
「あっ……」
「ん? どうかしたか?」
「い、いえ。その、なんでもないです」
「そう? ってか、なんとか落ち着いてくれたか」
「は、はい。おかげさまで。お見苦しいところを……」
先程まで青かった顔は、今は少し赤く染まっている。カラフルな顔してんなぁ、なんて言ったら怒られるから言わないけども。
「落ち着いたんなら良かったよ。んで、今日は病院まで何しに来たんだ?」
「その、ユウリさんのお見舞いに、と」
「マジで? 嬉しいこと言ってくれるねぇ」
「か、からかわないでください! 本当に、心配していたんです」
「そうか、そりゃすまんかった。けど、嬉しいと思ってるのは本当だぞ?」
結構仲の良い部類だと勝手に思ってるから、こうやって顔が見れたのは素直に嬉しい。それに、桐藤は責任感とかが強いタイプなため、仕事漬けになっているのでは無いかと思っていたが、こうやって外に出ることもしている様で安心している。
「んで、最近どうよ、そっちは。聖園とか、百合園とか。元気にやってるか?」
「ええ。相変わらず言い合いが絶えませんが、それでも、以前よりはずっと」
「……そうか。それなら良かった」
以前、少しのすれ違いにより、仲違いの様な状態になってしまっていた彼女たちだが、最近は上手くいっているらしい。それはマジで安心した。
まあ、聖園は感覚的な部分を大元にして話すのに対して、百合園は理論的な部分を元として放すロジック系。おそらく、そこの辺りが上手く合わなかったんだろう。
まあ、よくある話だ。
「それで、その。……ユウリさんの、方は」
「うん?」
「その、体調だとか、その……。怪我について、だとか」
「ああ! そういうね。全然問題無し! むしろ元気すぎてここに居る時間が無駄に思えてくるくらいだ。まあ、腕が無いっていうのを、たまに忘れちまうのがなぁ」
「そ、そう、ですよ、ね」
「ん、あー、そうだな。あれだ!」
「はい?」
「隻腕ってなんかかっこいいじゃん? 歴戦の戦士みたいで。だからこう、片腕無くなって良かった! みたいな」
「は?????」
「ひえっ」
こっっわ! 急に据わった目でこっちの方見てくるのやめない?? お兄さん驚いちゃうって。
「それは、本気で言っているんですか?」
「まあその、人を助ける為に無くなったのなら、俺の腕も本望かな、と」
「ふざけないでください!!!!」
「は、はい!」
「あなたは昔からそうやって! 人を助ける為にすぐ自分を犠牲にする! こちらの心配もなんでもないように流して!」
「ご、ごめんって」
「いつも何処かから帰ってきた時は傷を付けて帰ってくる! 私たちがどんな気持ちでそれを見ていると思っているんですか!?」
「いやもう、仰る通りです。はい」
「今回に限っては、こんなに大きな怪我を! 本当に、どんな気持ちでこの一ヶ月を過ごしたと……!」
「……」
「……お願いします。もう、危険なことはしないでください。人を助けるな、なんて言うつもりはありません。ですが、もう少し、もう少し、自分を大切にしてほしいんです。もし、またあなたに何かあったら、私は、私は……!」
よく顔を見れば、メイクで隠してはいるが、それでも隠しきれていない隈があった。綺麗な髪も、所々傷んでしまっている。
桐藤は、途中から泣いていた。最後の方なんて、こちらへしがみついてくる様になってまで、俺の事を心配してくれていた。嬉しい、とは思えない。彼女をここまで追い詰めてしまったのは、間違いなく俺なのだ。
「……ごめん、桐藤。お前にそこまで言わせてしまったことの重大さは、よく分かってる」
「なら!」
「ああ、これからは、もう少し自分を大事にするよ」
「っ───!」
「うおっ!?」
俺がそう言うと、桐藤は結構な勢いで俺に抱き着いてきて、なんとそのまま寝てしまった。まあ、ここまでの隈だ、相当疲れていたのだろう。このまま寝かせてあげるのが優しさというものだ。
そう思い、彼女をベッドに寝かせてあげようとしたのだが……放してくれない。とてつもない力だ。両腕であればもしかしたら引き剥がせたかもしれないが、生憎今は片腕しか使えない。引き剥がすのは難しいだろう。
う〜ん、どうしたものか。……まあ良いか! 俺も眠くなってきたし、このまま寝てしまおう。子供の頃は一緒に寝てたし、今更だろ。うん。
抱き着いてきている桐藤を抱え、そのままベッドにIN! そして、おやすみ!
……こいつ細すぎないか?
「───んんっ。ここは……え!? ゆ、ユウリさん!?」
「んあ? ……くっ、あ〜。おお、おはよう桐藤。よく寝れたか?」
「な、ななな、なんで隣に!?」
「いや、お前が抱き着いたまま放してくれないから。眠くなったし、そのまま寝るかって」
「そ、そうですか。それは大変失礼しました……っていや! おかしくありませんか!?」
「いやつか、そんな事よりも。お前ちょっと細くないか? ちゃんと飯食ってる?」
「きゃっ!? き、急に触らないでください!」
「う〜ん、やっぱり細いってお前。お茶ばっか飲んでるんじゃないのか?」
「や、やめっ! んっ! ユウリさん! くすぐったいで、ひゃんっ!? は、話を聞いてください!!!!」
続きました。ちなみに私はナギサ様大好きです。
・月島 ユウリ
実はナギサ様とは小さい時からの友達。成長した今でも、昔と同じ感じで接してしまうことが多く、たまに怒られる