がんで受刑者が死亡「著しく不適切な医療」 国に150万円賠償命令
川越少年刑務所さいたま拘置支所で受刑中に精巣がんで亡くなった男性(当時23)に対し、刑務所の医師が必要な検査を怠ったなどとして、遺族らが国に計約7700万円の賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁(森健二裁判長)であった。判決は「医師の医療行為は著しく不適切だった」と認め、国に150万円の賠償を命じた。一方で、これらの医療行為と男性の死亡との因果関係は認めなかった。
男性は強盗致傷罪などで服役していた2020年1月、施設内の医師に陰囊(いんのう)の腫れを訴えた。医師はがんの可能性を疑ったが、検査に適した超音波の装置が施設になかったことなどから、簡易な細胞検査のみを行い、がんは陰性と判断。男性は3月に外部の病院でがんが判明し、手術を受けたが、7月に亡くなった。
判決はまず、刑事施設にいる患者であっても、「適切な医療を受ける権利」が侵害されれば医師側は賠償責任を負う、とする前提を示した。
そのうえで、医師は精巣がんの一般的な診断方法である超音波検査を速やかに行うべきだった、と指摘。超音波検査を外部の専門医に依頼しなかったのは「当時の医療水準とかけ離れていた」と認めた。さらに、簡易な検査にとどめた医師の対応を「施設の物的人的体制に配慮した」と批判し、著しく不適切だと結論づけた。
【30周年キャンペーン】今なら2カ月間無料で有料記事が読み放題!詳しくはこちら