アサヒのシステム障害から1カ月「空っぽ」のスペースが語る ランサムウェア被害の連鎖 酒店店主「物量が2倍になる年末が最悪」と懸念
空っぽのスペースが物語る深刻な影響
近年、相次ぐサイバー攻撃が企業活動に大きな打撃を与えている。先週は通販大手「アスクル」が攻撃を受けて商品の受注を停止。先月にはビール大手「アサヒグループ」でも同様の被害が発生し、その影響は予想以上に広がっている。 【写真を見る】サイバー攻撃の実態と対策 広がる「ランサムウェア」の影響 富山市にある布一酒店では、アサヒグループのシステム障害から1カ月が経過した今も、その影響を強く感じている。およそ300店の飲食店に酒を販売する同店だが、アサヒ製品の供給不足は深刻だ。 「通常だとこちらにウィルキンソンの炭酸水が20ケースほどある。使っているお客様が十数件ある。それくらい毎日持っていないとダメな状況だが、今は空っぽ」と布一酒店の浦真喜子さんは語る。
連鎖する供給不足の実態
アサヒグループが製造・販売を手掛ける炭酸水をはじめ、ウイスキーやワイン、サワーを作るシロップは発注しても届かない状況が続いている。 「アサヒのレモン(シロップ)の代品としてサントリーのレモンシロップ。こちらを代品として提案している」と浦さん。 しかし、この対応策にも新たな問題が発生している。アサヒ以外のメーカーにも影響が広がっているのだ。「これがサントリーからきた出荷規制の案内です」と浦さんは示す。アサヒの出荷停止によって他のメーカーに注文が殺到し、その結果、出荷が追いつかない事態となっている。 「システム障害が3カ月続いた場合、年末の忘年会に引っかかる。(年末は)物量がこれの2倍以上になる。そうなったときが最悪。どうなってるの、いつ終わるのとすごい(お客様に)聞かれる。うちとしては『すいません』と言うしかない」と浦さんは話す。
ランサムウェアの脅威とは
今回の騒動の発端は「ランサムウェア」と呼ばれる身代金要求型のコンピューターウイルスによるサイバー攻撃だ。 名古屋大学情報基盤センターの嶋田創准教授は次のように説明する。 「コンピューターの中に入って、中のデータを暗号化する。コンピューターの中身を見えないようにしたり動かないようにした上で、コンピューターを動くようにして欲しければ身代金を払え。そうやって脅迫してくる」 ランサムウェアとは、コンピューターを利用できない状態にし、その解除と引き換えに金銭を要求するコンピューターウイルスの一種だ。アサヒグループでもこのランサムウェアによる攻撃でシステムが使えなくなり、受注や出荷に大きな影響が出た。 「(感染したら)基本的に復旧できるものとは思わないほうがいい。お金払っても、持ち逃げされてしまうことが半分ある」と嶋田准教授は警告する。