2025-10-31

2年前くらい、精神限界だった夜の話

ラストコール

 

 

 助けてほしかった。散らかった1Kにひとりで、頭の中で言葉が渦巻いていた。どんどん狂気に吞まれていく自分を、理性的自分が止められずに見ている。

午前2時だ。友達留年した私以外はみんな社会人だ。彼氏夜勤だ。母親母親とは半絶縁中だ。祖母?老体に鞭を打つな。

気が付けばTwitterタイムラインは随分鈍行になっていて、インターネットすら私を見捨てるのかと引き攣った笑みが浮かんだ。

 

 ふと思い立って、キッチンに向かう。包丁入れのある扉を開けて、三徳包丁果物ナイフ収納されているのをただ眺めた。手に取ることはできなかった。ただ、眺めながら泣いた。私に自傷癖はない。手も足も綺麗そのもの。痛いのがイヤなワガママ人間なのだ

前にも後ろにも進めなくて、果物ナイフを手に取ってしまった。咄嗟に理性が働いて、キッチンのクッションフロアにそれを突き立てた。死んでしまう。今夜を超えられなかったら。

滲んだ視界でいのちの電話の番号を検索する。国のもの市区町村のもの民間のもの。とにかく誰かに助けてほしかった。

番号をタップする。機械的な呼び出し音が続く。

「ただいま電話が込み合っております

女性ナレーションと共に、電話が切れた。わかった、つながればどこでもいい。

別の番号をタップする。呼び出し音が続く。

「ただいま電話が込み合っております

お願い、頼むから助けてくれ。せめて、ひとこと電話に出てくれれば。

「ただいま電話が込み合っております

「ただいま電話が込み合っております

「ただいま電話が込み合っております

何度コールしても同じだった。どこに電話しても同じだった。

救われなかった。最後の理性を、誰も受け取ってくれなかった。さっきより孤独感覚が脳を支配した。

泣いていた。泣いている自分が嫌でもっと泣いた。情けない自分が嫌でずっと泣いた。

検索エンジンを彷徨い続けて、どうしても耐えられなかったら119番してもいいという書き込みを見た。本当に病気の人のリソースを裂きたいわけじゃなかった。だけど、私だって死にたくなくて、生きたかった。

火事ですか、救急ですか」

 

 

 白い床に、果物ナイフが突き立ててある。

 

 

――――

作者注と蛇足

これは約1~2年前の日記サルベージした際に思い出した、人生最悪の夜の話である

私は躁鬱、正式名称双極性障害というやつと4年くらい付き合っている。

めっちゃハイな時と、ほぼうつ病状態の時が交互にやってくるなかなか厄介な精神病だ。

今はさすがにここまでひどくない。この文章アウトプットできているのが何よりの証拠だ。書いていて胸は痛めつけられたが、涙は出てこなかった。

安心してほしい。

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