ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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毎日更新は終わると言ったな
アレは半分本当で半分嘘だ

エデン条約編の最初の二話だけ投稿して書き溜めます、よろしく


エデンと破局と大人
お茶会気取り


 

 

 

「おはよう、先生」

 

 

午前九時、天気は晴れ。

目が覚め、身支度を終えてオフィスに向かうとパソコンの前で椅子に座って肘をついているレイナがそこにいた。

 

 

''おはようレイナ……あ、今日も寝なかったね?''

 

「誰かさんがミレニアムで生徒会を襲撃したせいで色々と仕事が溜まってるからね」

 

''それはごめんなさい……''

 

 

頭が上がらない、私は汗を垂らしながらレイナに謝罪した。

しかしレイナは私に目もくれず何枚もある書類をぱらぱらと整理していた。

 

 

「それより最近ミレニアムとゲヘナ間の係争地での小競り合いが多いわね、何かあるの?」

 

''トリニティとゲヘナの間で結ぶエデン条約?って言うのが近いらしいよ、私も詳しくは分からないんだけどね''

 

 

レイナは「へえ」と興味のなさそうな一言だけ言って、紅茶を一杯飲む。

 

 

「先生はエデン条約に関わるつもりは無いの?」

 

''私は基本的に要請が無い限りは動かないかな''

 

「そう、じゃあ朗報ね」

 

「……招待状よ、トリニティから」

 

 

レイナの手にはトリニティの紋章がサインされている一枚の紙。

 

 

━━━━━

 

 

 

紅茶。

 

よく勘違いされるのだが私自身、紅茶は別に好物ではない。

だが私が紅茶を飲んでいるのをよく見かけるだろう。

 

実はこれにはちょっとした理由がある。

 

私が幼い頃、マダムにある事を命令された。

 

 

「コーヒーでは無く、紅茶を飲みなさい」

 

 

マダ厶は私をトリニティに潜入させる事を想定してテーブルマナーなどを徹底的に叩き込んだ。

紅茶を飲ませたのもその一環でそのおかげで私は紅茶を飲むのが癖になってしまった……というか、紅茶を飲まなければ落ち着かなくなってしまったのだ。

 

後にある本を読むと「大昔のトリニティの貴族は自分の子供が恥をかかない為にテーブルマナーを徹底的に身につけさせた」という記述があり、私は「まるで貴族の娘ね」と一人で笑った記憶がある。

 

 

…………しかし、結局マダムは私ではなくアリウスの生徒を潜入させることにしたらしく私のテーブルマナーの力は完全に持て余す事となった。

 

結果的に私に残ったのは使い道の無いテーブルマナーと紅茶を飲む癖。

 

正直、私はそういう政治ごっことか舌戦をするよりも圧倒的な『力』で敵を殲滅する方が好きだ。

 

だからこの力は役に立たない。

 

 

…………そう思っていた。

 

しかし人間生きていると思わぬ事が役に立つ時もあるようで、今から話す物語はそういう話だ。

 

 

 

「こんにちは、先生、こうしてお会いするのは初めてですね」

 

「ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します」

 

 

そう丁寧に挨拶をしたのは桐藤ナギサ。

ティーパーティーの現ホストだ。

 

 

(紅茶、高級菓子や高級そうな机椅子、まるで貴族のお茶会ね)

 

 

トリニティのあるテラスで私は高級そうな白い椅子に座る先生の後ろに立っていた。

先生のボディーガード、という役割だから一応この場に立つ事を許されているが本来ならばここに立つ事すら許されないはずだ。

 

無論、会話は禁止されている。

 

 

「そしてこちらは同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」

 

 

そう言って隣に座っているピンク色の長髪の生徒、聖園ミカを紹介する桐藤ナギサ。

聖園ミカはニコニコと先生の方をジロジロと見ながら言った。

 

 

「へー、これが噂の先生かー、あんまり私達と変わらない感じなんだね?」

 

 

すると次は私の方を向き、またニコリと笑う。

 

 

「ボディガードさんも結構可愛いじゃん?名前なんて言うの?」

 

「…………」

 

 

私は苦笑しながらも、沈黙を貫いた。

ティーパーティーのメンバーであるはずなのに礼儀もテーブルマナー欠片も無い人がいるのか、と思うと私は複雑な気持ちになった。

 

 

「ミカさん、初対面でそういった関わり方はあまり礼儀がなっていませんよ」

 

「それに先生がお連れになっている方は会話を禁止されています、あまり無茶振りは良くないかと」

 

 

桐藤ナギサがそう聖園ミカの行動を咎めると聖園ミカは苦い表情をする。

 

 

「うう、それはまあ確かに……先生、ボディーガードちゃん、ごめんね?まあとりあえず、これからよろしくって事で」

 

''こちらこそよろしく''

 

 

と先生もニコニコとしながら挨拶をする。

 

 

「……トリニティの外の方がこのティーパーティーの場に招待されたのは私の記憶では先生が初めてです」

 

「普段はトリニティの一般生徒の方達も簡単には招待されない席でして」

 

「あー、何それナギちゃんちょっといやらしい!恩着せがましい感じー!」

 

 

と、また聖園ミカが茶化すように言うと桐藤ナギサは困惑した表情をしつつ「こほん」と彼女の発言を濁す。

 

 

「失礼しました、先生、そういった意図は無かったのですが……それはさておきミカさん?」

 

「あー、ごめん……大人しくしてるね、できるだけ」

 

 

どうやら彼女達のこういったやり取りはよくある事のようで聖園ミカは苦い表情をしている。

 

 

「……さて、こうして先生をご招待したのは少々お願いしたい事がありまして」

 

''お願い?''

 

「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!?もうちょっとこうアイスブレイクとかいらないの?ちょっとした雑談とかは?」

 

「天気が良いですね、とか昨日何食べたんですか、とかそういうの挟まないの?」

 

「ほらティーパーティーって基本的には社交界なんだし?」

 

 

……また聖園ミカが茶化すと桐藤ナギサは険しい表情をして聖園ミカを睨む。

 

 

「そんな綺麗な目で睨んでもこれはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメー!キチンとしないと!」

 

 

すると桐藤ナギサはニコリと笑いつつも威圧感を出しながら聖園ミカを諭す。

 

 

「ミカさん、そういった事は貴方がホストになった際に追求して下さい、今は一応私がホストですので私の方法に従って下さいな」

 

 

まあ、聖園ミカの言っている事も正しいだろうが桐藤ナギサの言っている事も…………ちょっと待った、一応私がホスト、というのはどういう意味だろうか?

まるでその言い方だと臨時的にホストになったような言い方ではないか……?

 

 

「……」

 

「……まあ、お客様の前でこのような論争をするのはティーパーティーとして望ましい姿ではない事は確かですね……ミカさんの言う通り少し話の方向を変えましょうか」

 

''貴方達がトリニティの生徒会長なんだよね?''

 

 

といつまで経っても本題に入らない事に先生も痺れを切らしたのか先生の方から説明を伺った。

 

 

「おお、先生の方から空気を読んでくれた!これが大人の話術だよ!」

 

 

と聖園ミカが騒ぐも桐藤ナギサは無視して質問に答える。

 

 

「はい、仰る通り私達がトリニティ総合学園の生徒会長達です」

 

「生徒会長達というのは耳慣れない言葉かもしれませんね、ご説明いたしますとトリニティの生徒会長は代々複数人で担っているものなんです」

 

「あれ、ナギちゃん無視?おーい?」

 

「昔、トリニティ総合学園が生まれる前各分派の代表達が紛争を解決する為に━━━」

 

「え、ひど……ぐすん、私ちょっと傷ついた」

 

「パテル、フィリウス、サンクトゥス、それら三つの学園の代表を━━━」

 

「ナギちゃんが本当に無視した……嫌がらせだぁ……酷くない?私達一応十年来の幼馴染だよ?こんな事今までに……結構あったかもだけど……」

 

「その後からトリニティの生徒会はティーパーティーと呼ばれるようになり各派閥の代表達が順番にホストを━━━」

 

「ナギちゃん酷いよ、ただ私はナギちゃんや先生と仲良くしようと……」

 

 

と、めそめそしている聖園ミカをギロリと桐藤ナギサが睨み……

 

 

「ああもううるさいですねッ!?今私が説明しているんですよッ!?」

 

 

「それなのに!さっきからずっと!横でブツブツブツブツと!」

 

 

「どうしても黙れないのでしたらその小さな口にッ!ロールケーキをぶち込みますよッ!?」

 

 

 

と、怒鳴った。

 

…………普段からフラストレーションが溜まっているのがよく分かる声だった。

 

 

「……」

 

「……」

 

''……''

 

 

場が沈黙に包まれる。

先生は苦笑して、桐藤ナギサは聖園ミカを睨み、聖園ミカは冷や汗を垂らして驚いている。

 

 

「……あら、私ったら何という言葉遣いを……」

 

 

我に帰った桐藤ナギサは自分の言動に驚き、ため息を吐く。

 

 

「……失礼しました、先生……ミカさんも」

 

 

ぺこりと一礼する桐藤ナギサを見て聖園ミカは他人事のような反応をした。

 

 

「いやー、怖い怖い……」

 

( ''中々本題に入らないな……'' )

 

 

「こほん」と桐藤ナギサが話に区切りをつけるよう軽い咳をする。

 

 

「そろそろ本題に入りましょうか、私達が先生にお願いしたいのは簡単な事です……補習授業部の顧問になって頂けませんか?」

 

''補習授業部?''

 

「はい、つまり落第の危機に陥っている生徒達を救って頂きたいのです、部という形ではありますが今回は顧問というより担任の先生と言った方がいいかもしれませんね」

 

 

担任の先生、というと昔BDが無かった頃にあった概念だ。

各教室に一人いる勉強を教える先生がおり、テストや授業全てをその先生が指導するというハードワークに他ならない手段だ。

 

 

「トリニティは昔からキヴォトスにおいて文武両道を掲げる歴史と伝統が息づく学園です、それなのにあろう事か、よりにもよってこの時期に成績が振るわない方が四名もいらっしゃいまして……」

 

 

桐藤ナギサが苦い表情をしていると聖園ミカが続けて言った。

 

 

「私達としてはちょっと困ったタイミングでっていうか……エデン条約の件で今はバタバタとしててね、その子達の件も何とか解決しなくちゃいけないんだけど人手も時間も足りなくって」

 

「その時にちょうど見つけたの!新聞に載ってたシャーレの活躍っぷりを!猫探し、街の掃除、宅急便の配達からゴミ出しまで八面六臂の大活躍!」

 

「このシャーレならきっと面倒事を任せられそうだなって!」

 

 

ああハッキリと言っちゃったよ面倒事って、先生も汗を垂らして困ってるよ反応に。

 

 

「……面倒事だなんて言ってはいけませんよ、ミカさん」

 

 

と桐藤ナギサが苦言を呈すると聖園ミカは「あはは……」と苦笑いして言う。

 

 

「とにかく!今はちょっと忙しい事もあって是非先生にこの子達を引き受けて欲しいの!」

 

 

と、聖園ミカが先生に対し満面の笑みでそうお願いをすると桐藤ナギサは「やれやれ」と言った表情で説明する。

 

 

「はあ、もう少々説明いたしますとこの補習授業部は常設されているものではなく、特殊な事態に応じて創設し救済が必要な生徒達を加入させるものです、特殊な形ではありますが急ぎという事もあり、シャーレの権限をお借りしつつ……といった形でですね」

 

「如何でしょう、先生?助けが必要な生徒達に手を差し伸べて頂けませんか?」

 

 

先生は微笑んで言った。

 

 

''私達に出来る事であれば、喜んで''

 

「やったー!ありがとー!先生!」

 

「ありがとうございます、ではこちらを」

 

 

と、桐藤ナギサがある書類を先生へ渡す。

 

 

「そちらの方々が対象です」

 

「つまりトリニティの厄介━━━━」

 

 

と、聖園ミカが言いかけた所を桐藤ナギサが止める。

 

 

「その表現は愛が足りませんよ、ミカさん、こう言いましょうか……愛が必要な生徒達」

 

 

うわあ政治的な言い回し、私は苦手だ。

 

 

「ま、呼び方は何でもいいけどね〜」

 

 

と、先生はそんなドロドロとした政治的発言を無視して名簿をパラパラと捲っていると目を開いて驚いた表情をする。

 

 

「ん?何か気になる子でもいた?先生」

 

 

その質問に先生は「ううん、何でもない」と答え書類を整えてティーパーティーの二人の方を向く。

 

 

「詳しい内容についてはまた追ってご説明いたします、他に気になる点はございませんか?」

 

 

と桐藤ナギサが聞くと先生は一言聞いた。

 

 

''エデン条約……って何?''

 

「……」

 

「……」

 

 

その質問に桐藤ナギサも聖園ミカも呆気に取られた表情を一瞬固まる。

当然だろう、彼女達にとっては毎日うんざりするほど聞いている言葉なのだから今更それについて聞かれるのは意外だろう。

 

 

「……その説明には中々時間がかかってしまいますのでまた後日お話しますね、一応、それなりに内部機密という事もありますし」

 

「それに補習授業部の件とはそれほど関係の無い事ですから」

 

 

と、何だか有耶無耶にするような言い方が気になるが、先生はそれを追求せずにもう一つ質問した。

 

 

''あと、ティーパーティーのもう1人の生徒会長は?''

 

「……それは……」

 

 

そういえばトリニティは三大派閥が交代でホストになっているんだったか、ならばあと一人……あれ、そういえばマダムがトリニティの生徒会に対して何か計画してたみたいな話を聞いた事があるな、なんだったか。

 

 

「……セイアちゃんは今トリニティにいないの、入院中で……」

 

「本来であれば今のホストはセイアさんだったのですがそういった事情で不在の為、私がホストを務めているところです」

 

「元々ティーパーティーのホストは順番でやるものだからね」

 

 

というといつかこの聖園ミカがホストになる時も来るのだろうか、なんだか怖いな。

 

 

''そっか、早く良くなると良いね……今聞きたいのはこれぐらいかな''

 

 

「では準備が整い次第、先生にはトリニティ総合学園に派遣という形で来て頂く事に出来ればと」

 

 

と、話を締めくくろうとする桐藤ナギサに先生は思い出したような表情をして彼女に聞いた。

 

 

''あ、待って、この子も連れて行ってもいいかな?''

 

 

私に対し手を向ける……

………………え、私?

 

 

「…………ボディーガードの方もですか?」

 

''うん、レイナは凄く頼りになるし補習授業部の力になってくれると思うから''

 

 

私の目の前で私の事を褒める先生を見て私は照れとも恥ずかしさとも言える感情になりつつ、冷静を装っていると聖園ミカが私に近づきニコニコと私の目の前で話し始める。

 

 

「レイナちゃんって言うんだ!あの先生のお墨付きって事はやっぱり結構強いの?あ、そのリボン凄く可愛いね!何処で売ってるの?私も欲しーなー」

 

「…………」

 

 

だから会話は禁止されているから話せないってのに、それにこのリボンは売り物では無い、人から貰ったものだ。

 

 

「ミカさん!」

 

 

困惑している私を庇うように桐藤ナギサが一喝すると聖園ミカは「あーそっか」とその事を思い出す。

 

 

「ごめんね?喋っちゃダメなんだっけ」

 

「はあ、あまりそう言った関わり方は良くないと先程から言っていますよね?」

 

「ごめんごめん、また会ったら話そうね」

 

 

いや、私はこういうわんぱくスタイルの人が苦手だから出来るならば話したくないのだが……

 

私は目を瞑りながら静かに頷いた。

 

 

「……お連れの生徒さんも一緒に同行して構いませんよ、お名前を伺っても宜しいですか?」

 

''西条レイナ、だよ''

 

「分かりました、レイナさんですね、他のティーパーティーのメンバーの方々にも伝えておきますね」

 

 

と、メモ帳か何かに私の名前をすらすらと羽根ペンで書く桐藤ナギサ。

 

 

「ではこれからよろしくお願いいたしますね、先生、私もティーパーティーのホストとして先生をエスコートいたしますので」

 

「またね、先生、レイナちゃん」

 

''うん、またね''

 

 

 

 

……憂鬱だ。

 

 

 




Tips!
レイナは幼い頃から色々な紅茶葉を飲んできたので利き茶が出来るよ!

Tips!
レイナが好きな飲み物は緑茶だよ!

Tips!
ミカ「レイナちゃんの反応、結構面白いからまた話したいな」

レイナに何を食べさせる?

  • 甘酒
  • 闇鍋
  • オレンジジャムのっけたトースト
  • パンちゃん
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