ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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TARGET SPOTTED

 

 

 

○月‪✕‬日(△)

 

ミレニアムで抗争が始まった。

ゲーム開発部、ヴェリタス、エンジニア部とセミナー、C&Cによるちょっとした戦いだ。

 

シャーレはあろう事かセミナー側ではなく、ゲーム開発部側についたようだ、権益や利益を得ろうとしないのだろうか。

私はというと、何もしていない。

 

先生のボディガードを任せれたが偶然か必然か、弾丸は先生の方に飛ばなかった。

 

退屈な一日だった。

 

 

 

━━━━━

 

 

 

「…………結局、騒動に見合わない対価を手に入れれなかったのね」

 

 

満月の夜、私は紅茶を飲みながら先生の話を聞いていた。

 

ゲーム開発部が手に入れた『鏡』

G.Bibleの解読に使用され、そしてゲーム開発部が求めていた答え……それは『ゲームを愛せ』という出来の悪い物語のオチのようなセリフだけだった。

 

 

''そうそう、今は必死にゲーム作りに勤しんでるよ''

 

「まあ、そんな都合の良い物があったら世の中苦労しないわよね」

 

 

紅茶をまた一口飲み込む。

 

 

''そういえば一つ、気になる事があったんだけど……''

 

''レイナの夢が何か聞いてもいいかな''

 

「夢?」

 

 

突然、先生からそんな言葉を聞いて私は困惑する。

 

夢、ゆめ、ユメ。

 

 

''そうそう、将来の夢''

 

 

将来の夢。

ああ、確かに私には夢がある。

 

貴方には言えない夢が。

 

 

「少なくとも、貴方みたいな大人にはなりたくないわね」

 

''ええっ!?酷いなあ''

 

 

くすくすと笑いながら、私は先生を揶揄った。

 

 

「………………そうね」

 

 

一度ため息を吐く。

上を向く。

 

満点の星空だ、それぞれが確かに光っている。

ああ、どうしよう、なんて答えようか。

 

……そうだ、こう言おう。

 

 

「憧れている人達がいるから、その人達みたいになりたい……かしら」

 

 

にひ、と笑ってみせると先生は目を見開いて珍しく大きな声で興奮した。

 

 

''凄く良い夢だね!!''

 

「な、何……?」

 

''レイナなら絶対叶えられる!応援してるよ!''

 

 

目を輝かせたその大人は笑顔で私の手を握ってニコニコと笑っている。

 

 

「急に顔色変わったわね……」

 

''私に出来る事なら何でも手伝うから!''

 

「はいはい」

 

 

やっぱり、この大人は変だ。

 

自分の為ではなく、誰かの為に働く。

何も利益は無いのに、何かがある訳でも無いのに弱い者を救おうとする。

 

そんなの大人らしくない。

 

 

''あ、このお饅頭食べる?''

 

 

にこにこ。

 

 

''このお饅頭、百鬼夜行で貰ったんだけど━━━''

 

 

のほほんとしている。

 

ああ、バカみたい。

 

 

''レイナは━━━''

 

 

どうして、そうやって私の事を気にかけるのか。

 

突然現れた私の事を気にかけて自分の傍に置き、誰かの為に尽くす。

 

理解出来ない。

 

 

''レイナ?''

 

「うるさい」

 

 

彼のでこをぺち、と叩く。

 

 

''あいた''

 

「人が考え事してたのに」

 

 

饅頭を口に一つ頬張り、紅茶をまた飲む。

彼は私の不機嫌そうな感情を気にせずニコニコと笑いながら言った。

 

 

''レイナも段々今の生活に慣れてきたね''

 

「まだ私の戦う所、見た事無いくせに」

 

''やっぱりレイナも戦いたかった?''

 

「別に」

 

 

アレは私が手を出さない方が良いだろう。

下手に手を出すより傍観していた方が………………

 

待て、私は何故ミレニアムの事について考慮している。

そんな事どうでもいいだろう、私にはそんな事関係ない。

 

私はただ、先生の動向を探れば良いだけだ。

 

 

''あ、そうだ、レイナに一つお願いがあるんだけど''

 

「…………何?」

 

''エンジニア部の子達が新しく作った物の試作品のテストをして欲しいんだけど……''

 

 

はあ、馬鹿らしい。

そんな事までシャーレは引き受けるのか?

 

 

「なんで私なの、貴方がすればいいじゃない」

 

''それがキヴォトス人ほどの耐久が無いと使えない物らしくって''

 

「そんな危ない物をテストさせるの?」

 

 

尚更嫌だ、腕がへし折れたらどうする、私は保険に入ってないぞ。

 

 

''それもそうなんだけど、エンジニア部の子達がレイナに会ってみたいって''

 

「…………はあ」

 

''嫌だったら断るけど……''

 

 

 

━━━━━

 

 

 

「君が西条レイナさん……かな?」

 

 

断れずに来てしまった。

 

次の日の朝、私はミレニアムのエンジニア部まで足を運んでいた。

本当に彼の頼み事を断れないのは何とかしたいものだ。

しかもある試作品のテスト……という事しか伝えられていないが何をさせられるのか。

 

 

「シャーレの西条レイナです、何か頼み事があると聞いて来ました」

 

 

と、律儀にお辞儀をする。

まったく、何故私が同年代の生徒に対し頭を下げなければ……はあ、これ以上は虚しいからやめておこう。

 

 

「エンジニア部の豊見コトリですっ!レイナさん、あの日ぶりですね!」

 

 

ああ、あの私について色々と聞いてきた金髪の生徒だったかな、でもその服の着方は流石にどうかと思う。

 

 

「同じくらいエンジニア部一年生の猫塚ヒビキ、よろしくね」

 

 

次に挨拶をしたのは犬耳の生徒。

ゴーグルを……こっちもこっちで露出が……でも私も……

 

……………………まあ、風邪を引かなければいいのかな。

 

 

「部長の白石ウタハだ、今日はよろしく頼むよ」

 

 

最後に紫髪の生徒。

うん、彼女は風邪を引かなさそうだな。

 

 

「えーっと、まず……他の生徒じゃ駄目だったのかしら?」

 

 

これが一番気になる、何故わざわざシャーレに頼んだのか、私に会いたいとしても変だろう。

 

 

「どうにもこれを扱える人間がミレニアムだとC&Cの子以外にはいなさそうでね、でもC&Cはこの前の騒動で頼めない……だから先生の提案でレイナさんに頼んでもらったんだ」

 

 

また余計な事をしたな、後で耳引っ張ってやろう。

 

 

「…………で、何をすればいいの?」

 

「ふふん、レイナさんは空を飛びたいと思った事はあるかな?」

 

「無い、空中を飛びたい時は壁から壁に飛び移れればそれでいいし」

 

「ネル先輩みたいな事言ってる……」

 

 

即答。

うん、やっぱり無い、多分空を飛ぶより走った方が速いから。

 

 

「……あ、でも高所から落下する時ジェットパックみたいな物があれば嬉しいかも」

 

「高所から落下した事あるんですか!?」

 

「うん、壁に爪立てて━━━」

 

「ひいいっ!そこから先の解説は不要ですっ!」

 

 

アレは痛かったなあ、今やると爪の手入れが大変だからなるべくしたくない。

……と、昔の記憶に思いを馳せるのは置いておいて━━━

 

 

「……要するに、空を飛ぶ為の物のテスト?」

 

「察しが早くて助かるよ、レイナさんにテストをして貰いたいのはこの……」

 

 

白石ウタハがごそごそと、何かを取り出すと……

 

 

「JET FURNESS!」

 

 

黒色の一つだけの巨大なブースターと備え付けられた燃焼機構型と同化したリュック、そしてそれに繋がれた操縦桿。

 

 

「……一見するとただのジェットパックね、しかも旧型の」

 

「はい!このジェットパックはジェットパックが発明された時に使用されていた機構である燃焼型ブースト機構を採用されていて空を飛ぶのに多大な燃料を使用しますがその代わり常軌を逸した加速力を手に入れる事が出来てさらに安定力も桁外れでブレーキや減速が自由自在、最高時速は400kmという速度に達しますがこの速度以上の速度も理論上可能であり、推定450km以上の速度で走る事が可能でしょう!しかも!水中でも特殊な装甲を施しているおかげで推進力は地上と変わらない速度で━━━」

 

「……こほん」

 

 

長い長い!そういう細かいのは説明書か何かで説明してくれ!

豊見コトリが話しているのを咳で一旦止めて、彼女が話している事を要約する。

 

 

「……つまるところ安定性、加速性に優れたジェットパック?」

 

「はい!!!!」

 

 

元気が良い。

 

 

「貴方達はテストしないの?」

 

「……お恥ずかしながら、私達体力面はあまり自身が無く……」

 

「ウタハ先輩が使ったら速度の制御出来なくて墜落しちゃってね……」

 

 

まるで自分で使わないのに作った物を私に試作させるゴルゴンダとデカルコマニーだな。

 

 

「……それで、これを背中に背負えばいいの?」

 

「うん、ここのスイッチが電源でこっちが速度制御、燃料はマックスだから気にせず飛んでいいよ」

 

「了解」

 

 

実を言うと、ジェットパックを使うのは二回目だ。

 

昔、白猫の付き合いで━━━

 

 

「うわっ、急に電源が……」

 

 

ジェットパックは突如、音を立てて起動し燃焼機構が燃え盛った。

 

 

「すまない、人が着用したら電源がONになるようになっているんだ」

 

「そういう事は先に言って……もう言う事は無い?」

 

「大丈夫だ、何かあったらジェットパックにある無線で連絡してくれ」

 

「了解」

 

 

操縦桿を握り、息を吸って……吐く。

 

 

「…………」

 

 

凄まじい炎が噴出され、ふわっと……浮く。

 

 

「!」

 

「おお……!」

 

「操作感は……問題無しね、問題は……」

 

「高速で走る時、だね」

 

「……何処まで飛んでもいい?」

 

「何処でもいいよ、今のところミレニアムにジェットパックの航空法は無いからね」

 

「そりゃ良い」

 

 

操縦桿の加速ボタンを押す。

 

 

「うわっ!?」

 

 

一瞬押しただけでかなり広いエンジニア部室の端から端まで一瞬で着いてしまった。

 

 

「……これは、凄いわね」

 

 

加速度は一般的なジェットパックの10倍以上はあるだろう、ミレニアムにジェットパックの航空法があれば間違いなく規制されていたかもしれない。

 

 

「大丈夫かーい!?」

 

 

部室に白石ウタハの叫び声が響く。

 

 

「大丈夫━━━」

 

 

 

そう言いかけた時だった。

 

何処かから爆発音が聞こえ、建物が揺れていた。

 

空を飛んでいても、建物の揺れで地震が起きているというのが分かるのは初めて知った……いや、そんな事はどうでもいいのだが。

 

 

「建物が……上の階かな?」

 

「今の振動、多分ゲーム開発部の……」

 

 

確かゲーム開発部には先生が……

 

…………はあ、面倒だ。

 

 

「……ねえ、少しこれ借りてもいい?」

 

「!……構わないよ、戦闘のデータは必要不可欠だからね」

 

「ありがとう、それじゃまた返しに来るわ」

 

 

ジェットパックを使って、校舎の外から騒動の元まで飛ぶ━━━

 

……あ、髪の毛がバサバサになるから普段使いは絶対に嫌ね。

 

 

「へっくち、なんだか今日寒いわね」

 

 

 

 

 

 

 

「ウタハ先輩、いいの?」

 

「んー……多分、今の彼女にはアレが必要なんじゃないかな?」

 

「空を飛んだ時の彼女の目、凄く輝いてたから……」

 

「……そうだね、まるで飛行船に初めて乗った少年みたいだったよ」

 

 

 

━━━━━

 

 

 

「はあ、はあ……何とか逃げ切れた?」

 

「これからどうする……?」

 

 

ロボットから逃げ切った先は窓が多い廊下。

息を切らしながら私達はこれかどうするべきかを相談していた。

 

 

「ミレニアムプライスの出品は終わってるんだし、とりあえず結果が出るまで逃げ続ければ……」

 

「逃げ切れると思ったか?」

 

「っ!?」

 

 

その時、ミドリが何処かから狙撃された。

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

声の主を見ると、そこには……アリスやモモイ達とあまり変わらない身長のメイド……以前ミドリやハレが怯えていた生徒、美甘ネルがいた。

 

ネルはこちらを見ると「ほーん」と納得したような表情を見せた。

 

 

「……なるほどな、道理で一々良い判断だと思ったぜ」

 

「このチビ達を指揮したのもミレニアムの押収室を襲撃したのも……あんただったか」

 

「先生って呼べばいいのか?アカネが調査した例の先生……噂は大袈裟じゃなかったみてえだな」

 

「…………そういやボディーガードが一人いたっつってたっけ、今日はいねえのか?」

 

''今日は別件でね、そっちはリベンジに来たの?''

 

 

そう聞くと彼女は私の言葉を鼻で笑う。

 

 

「はっ!そんなくだらない理由で来る訳ねぇだろうが

 

「強いて言うなら……そっちのデコ出してるあんた、あん時はよくもあたしを騙してくれたな……?」

 

 

ユズを指さすネルにユズは怯えて叫んだ。

 

 

「ひ、ひぃ!すいません!」

 

「やるじゃねえか、褒めてやるぜ」

 

「え……?」

 

「怯えたフリしてあたしを騙すなんて大した演技力だ」

 

 

ニコニコと褒めるネルに、ユズは呆気に取られたような表情をしていた。

 

 

「ま、それは良いとして……そっちのバカみたいにデケェ武器持ってるあんた」

 

 

キョロキョロと周りを見るアリスに、ネルは叫んだ。

 

 

「あんただよ!あんた!」

 

「アリスですか?」

 

「そうだ、てめえに用がある」

 

「C&Cに一発食らわせてくれたらしいじゃねえか?ちっと面貸せや」

 

 

うーん、見た目といい……言動がヤンキーのそれだ。

しかしそんな脅しにアリスはぱあっ、と笑顔になった。

 

 

「あ、アリスこのパターンは知ってます、告白イベントですね、チビメイド様はアリスに惚れているとスチル獲得です」

 

「ふ、ふっざけんなこの野郎!!ってか誰がチビメイド様だ!?ぶっ殺されてえのか!?」

 

 

と、ネルの怒鳴り声が廊下に響くと流石のアリスやゲーム開発部もビクビクと怯える。

 

 

「ひ……!」

 

「こ、怖っ!」

 

「……中々イラつかせてくれるじゃねえか、まあ良い」

 

「誤解しないよう言っておくが別にウチに一発食らわせた分の復讐って訳じゃねえ」

 

「別にそこに恨みはねえが……興味が湧いてきてな」

 

「白髪のボディーガードが一番気になってたんだが……ま、いないもんはしょうがねえか」

 

「さあ、ちょっくら相手してもらおう━━━━」

 

 

その時だった。

C&Cの生徒達の背後の窓に━━━見覚えのある生徒が、空を飛んでいた。

 

 

「……!?あ、アレって……」

 

「れ、レイナさん!?」

 

 

ジェットパックを装備した彼女はニヤリと笑い━━━バリン!と力強く窓ガラスに突進して叩き割った。

 

破片が飛び散る、炎が床を焦がす、灰が辺りを舞う。

 

 

「な……!?」

 

「窓から飛んで……いや、あのジェットパックは……!」

 

「すごい!もしかしてスーパーマン!?」

 

「……」

 

 

TARGET SPOTTED(目標 捕捉)

 

 

 

 

銃を握った私は、自信満々に、そして不敵に笑う。




Tips!
レイナは三日に一度、夜に先生とのティータイムをしないか誘われているよ!
ただ高級茶葉とかそういうのじゃなくてティーパックの紅茶だからレイナは不満タラタラだよ!近いうちにお菓子とか高級茶葉を要求する予定だよ!

Tips!
レイナは英語は出来るけどペラペラじゃないよ!覚えたての英単語を使っちゃうタイプの人間だよ!

Tips!
レイナ「正直ジェットパックは似合わないからあんまり好きじゃない」

レイナに何を食べさせる?

  • 甘酒
  • 闇鍋
  • オレンジジャムのっけたトースト
  • パンちゃん
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