「女の……子?」
「この子、眠ってるのかな」
少女に近づいた二人は小声でそう言った。
少女は一寸も動く気配が無く、ただただ眠っているだけ。
「……この子、眠ってるんじゃなくて……電源が入ってないみたいな感じがしない?」
「それに肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ、ここに何か文字が書かれてる」
「AL - IS……」
「エー、エル、アイ、エス……アリス?」
「いや、これよく見ると全部ローマ字なわけじゃなくて……AL-1Sじゃない?」
AL - 1S、と書かれているその少女はまるで眠り姫のように眠っている。
一体何の為に、何故ここで眠っているのか……それらを意図づける情報は何も無かった。
「とりあえずこのままじゃ可哀想だし服でも着させてあげようか」
と、ミドリはその少女に服を着せると……
「……よし、これでいいかな」
ピピ、ピピ……
少女から何か警告音のような物が聞こえた。
「えっ!?何!?」
「警報音みたいだけど、もしかして近くにロボットが?」
「……ううん、この子から聞こえた気がする」
「え?ま、まさか……」
「状態の変化及び接触許可対象を感知、休眠状態を解除します」
少女は、目を覚ました。
━━━━━
(……AL - 1Sは、人間型のアンドロイドだったのか)
シャーレの人間達がアレに近づき、不思議がっている。
私も驚いている、まさか限りなく人間に近い人間型のアンドロイドがこのキヴォトスに存在するとは思ってもいなかったからだ。
(しかし、やはりアンドロイドはアンドロイド……か)
何故私がアレをアンドロイドだと分かったか。
あまりにも生気がないからだ、生きたいと思う気持ちが感じられないからだ。
呼吸もしていない、ただ目を閉じているだけ。
もしも遺体だったとしても、綺麗に残りすぎている。
(……問題は、シャーレの目を盗んであのアンドロイドを手に入れられるか……)
ここで無理矢理強奪しても黒服から苦言を呈されるだけ。
……困ったな、いや本当に。
目を盗んで盗むしかないか?
…………いやいや、三人相手で隙を作るなんて、あの白猫以外無理だろうに。
(仕方ない、一度撤退して作戦を立て直すか)
そう考えた時だった。
「ウワーッ!?ろ、ロボットがこんな所にまで!?」
突如、ロボットの大群が奥の方からゾロゾロと現れた。
お掃除ロボットは無いくせに、一丁前に戦闘ロボットだけは揃えているんだから。
「逃げよう!お姉ちゃん、先生!」
''モモイ!その子を背負って逃げて!''
「え!?う、うん!!」
ロボットの大群から逃れようと、あの三人は急いでロボットのいない方へと走っていった。
(……追うか)
物陰に身を潜めながら、私はシャーレの三人を追いかけた。
━━━━━
''モモイ、右からロボットが八体!''
「む、無理だよぉ〜!先生!」
''もうちょっとで廃墟から抜け出せるから頑張って!''
工場から抜け出すとロボットの数はさらに増し、まるて津波のようなロボットの大群が私達を追いかけていた。
後ろにも、左にも、右にもロボットは雪崩込んで来ておりまるで脱出ホラーゲームの最後のラストスパートのように私達は廃墟を脱出しようとしていた。
「先生!前にもロボットが!」
しかし、現実はゲームのようにはいかず前方にもロボットが包囲をするように取り囲んだ。
''ミドリ、突破出来そう!?''
「無理です!というか……包囲されてます!」
「うわーーん!もうおしまいだあ!こうなるんだったらゲームガールアドバンスSPを死ぬほど遊んでおけば良かったー!」
「いっつも遊んでるでしょ!?」
「……強い振動を確認、現在の目標を教えて下さい」
冷や汗が垂れた時だった。
前方を塞ごうとしていたロボット達は突如爆発し、出口への道が開いた。
「うわあああっ!?でもチャンス!」
''モモイ!ミドリ!走り抜けて!''
(……アレが、シャーレの先生)
( ''あの子は……?'' )
その時、廃ビルの上で誰かが私達の事を見ているのが一瞬だけ見えた。
白色の髪、灰色のドレス、黒色のリボン、紅色の目。
見た事のない生徒だった。
そうして、私達は廃墟をなんとか抜け出す事に成功した。
廃墟の中で眠っていた少女と、ビルの上に立っていた少女の謎を残して……
━━━━━
「……って事があった、AL - 1Sは明日取り戻しに行く」
不貞腐れつつも、暖かい紅茶を飲みながら私は自分の失敗を黒服に語った。
「ククッ……いえ、AL - 1Sはもう良いでしょう、アレは先生に託します」
まただ、また彼は私ではなくシャーレを頼った。
嫉妬で狂いそうになる、ゲマトリアにいる私ではなく自分の計画の邪魔をしたシャーレを頼ったのだ。
私だって、貴方達の頼りになる人間になりたいのに。
「……悪いけど、私はシャーレの先生が気に食わない」
「おや、嫉妬ですか?」
「かもしれない」
心を見透かされたようにそう言い当てられるが、これもいつもの事だ。
私はまた一口紅茶を飲み、ため息を吐いた。
「珍しいですね、それこそ貴方が持っている力で捩じ伏せれば良いのでは?」
「貴方はそういう事嫌いでしょう?」
「クックック……貴方も私の事が分かってきましたね」
彼はポリシーや契約を重視する。
よって、強引なやり方は好まない、だからシャーレの先生との舌戦に負けてしまった時も強引なやり方をしなかった。
「……本当にシャーレに託すの?」
「はい、彼はいつか我々の協力者となりうる存在……これも一つの実験です」
「世界の滅亡が来るかもしれない」
「おや、その時は貴方の力が役に立つのでは無いのですか?」
「都合の良い時だけ私を頼るんだから」
「貴方の力を信じていますので」
彼の手が、私の頭を撫でる。
「……ふふっ」
高揚感。
━━━━━
''それじゃあ私はそろそろ帰るよ、また明日来るね''
「うん!今日はありがと〜!せんせー!」
''アリスは大丈夫そう……?''
「我は因果を打ち破る戦士、あらゆる苦難を乗り越えるだろう」
とりあえずアリスの事は二人に任せよう、何だか心配だが……多分大丈夫だろう。
━━━━━
「それは失敗に対する当てつけ?」
「いいえ、寧ろこれはチャンスかと」
「チャンス?」
黒服の言っている事がよく分からない。
新たな計画、とやらを私にやらせるつもりのようだがどうにも必要性が感じられない。
「先生はいずれ来る色彩との決戦で必ずキーパーソンになるかと、貴方が彼をゲマトリアに引き込んでくれれば……ええ、きっと貴方の役に立つはずですよ?」
「色彩を来ないようにするのが我々の役目じゃないの?」
「ええ、ですが砂の粒も数十年……数万年かければ見つかってしまう」
保険に保険を重ねる。
……ものは言いようだ、そんな事有り得るはずがないのに。
誰かが砂の粒の場所をリークしない限り、色彩はキヴォトスを観測できないはずだ。
「……分かった、だけど近いうちにアレがある、その日はマダムのご予約よ」
彼は静かに頷いた。
━━━━━
私がキヴォトスに来てから一ヶ月が経った頃。
ブラックマーケットで銀行強盗をしたり、ホシノを助ける為にカイザーコーポレーションを襲ったり……色々と新鮮な体験が出来たと言えるだろう。
ゲーム開発部の子達も、廃部を回避する為色々と手を尽くしているようだしきっと何とかなるはずだ。
……それにしても、あのアリスという子は一体何故あそこで眠っていたのだろうか?
アンドロイドのような口調、記憶喪失、謎のロボットが占領する廃墟……
色々と不明な点が多いが、何か秘密があるのは間違いないはず。
と、シャーレのオフィスでコンビニのおにぎりを頬張りながら今日の事について色々と考えていると窓の外でゴロゴロと雷の音が聞こえる。
( ''雨かな……'' )
間もなく強い風と雨が窓を濡らし、揺らした、恐らくゲリラ豪雨か何かだろう。
私はそれを気にすることも無くコーヒーを一口飲み、パソコンに表示された表をカタカタと作り始めた。
( ''……そういえば、廃墟にいたあの子は……'' )
廃墟にいた白髪の生徒、あの子は一体何者なのだろうか。
あの子がAIが言っていた「西条レイナ」なのだろうか?
もしそうだとするなら何故西条レイナは一人で廃墟にいたのだろうか?
…………今考えても、無駄だろう。
そう、思った時。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
こんな時間に誰かが来るなんて珍しい。
一体誰だろうか?
静かに席を立ち上がり、玄関へ向かう。
そして、ドアノブに手をかけた時。
''…………あれ……?''
「はじめまして」
私は、彼女と初めて出会った。
━━━才羽モモイ&ミドリ
ミレニアムのゲーム開発部所属の一年生。
元気が有り余っており、その元気は全てゲームかゲーム開発に注いでいる。
廃墟にて見つけた少女「アリス」を見つけ、ゲーム開発部に加入させる事を目論む……が、前途多難なようだ。
西条レイナの事について頭からスッカリ抜け落ちている。
良かったら評価や感想などお願いします
レイナに何を食べさせる?
-
甘酒
-
闇鍋
-
オレンジジャムのっけたトースト
-
パンちゃん