憑依in実験体のアビドス生徒   作:改名

49 / 90
皆様!
感想、お気に入り登録、高評価ありがとうございます!
大変励みになっております! 今後もよろしくお願い致します!
誤字報告も助かっております!!


月曜日になったけどギリギリ、セーフということで……!
いや本当にごめんなさい。ちょっとルビコンで傭兵稼業してまして、621女の子概念やら何やらに脳をやられてました。
アーマードコア6はいいぞ……!!



あ、ホシノは大きくあと2回曇らせて終わる予定です。(唐突な宣言)


39.離反

 

 

 

 

 

 問い掛けから、『顔無し(ノーネーム)』に鋭い目を向け続けるホシノ。

 それを正面から受け止め、彼は口を閉ざしていた。

 

 いつまでも続く、不穏な空気にその場の全員が息をするのを忘れている。風紀委員会とアビドス対策委員会、関係なくだ。

 

 『顔無し』は後頭部を掻き、ゆっくりと口を開く。

 

 

 

「……答えられない、としか言えないな」

 

 

 

 そう答えた。

 自分が誰なのか。斑目をどうしたのか。

 

 

 文字通り、答えられないのだ。

 

 

 前者は記憶があるため答えられる。実際、風呂で目が覚めた時も含め、ここに来る前までいた、故郷のテレビ番組の内容も明確に覚えていた。

 

 なので当然、自分の名前も覚えている。

 覚えているが、それを言ったところで事態が良くなるとは思えなかった。

 

 後者は簡単だ。

 分からない。その一言に尽きる。何故なら気付いた時には既に、この身体に入っていたのだから。

 

 

(……いや)

 

 

 違う。

 一つだけ言えることはある。ホシノを含め、アビドス対策委員会にとっては認容できない事柄が。

 

 『顔無し』の答えにホシノは目を細める。彼に対する、信頼度が薄まった様子だ。

 そしてホシノは、その決定的な一言を放った。

 

 

 

「それは……君が斑目の身体を乗っ取ったから?」

 

 

「「「……!!?」」」

 

 

 アビドス対策委員会はその一言に驚愕し。

 

 

「……」

 

「それで、あの変わりよう……」

 

 

 ヒナは特に大きな反応は見せずに耳を傾け、チナツは素直にホシノの言葉を飲み込んだ。

 

 

「『顔無し』が、斑目君の身体を乗っ取った……?」

 

 

 先生は信じられないとばかりに、ポツリと呟いた。

 セリカも同じなようで、声を上げる。

 

 

「ちょ、ちょっと待って! 『顔無し』は記憶喪失なんじゃないの!? どうしてそんな、誰かに身体を乗っ取られてるなんて……!!」

 

「やめろ。ツインテちゃん」

 

 

 それを制止したのは、『顔無し』自身だった。

 話し合いの発展が、口論に至る可能性もある。そうなればチームワークに支障が出て、今後対策委員会が瓦解してしまうかもしれない。

 

 きっとその行く末は、斑目が望むものとは正反対になる。ならそれは避けるべきことだ。

 

 

 

「委員長」

 

 

 

 『顔無し』は一度目を閉じ、ゆっくり開いた。

 

 

 

「……ああ。俺が奪った。これは嘘でも否定でもない」

 

 

 

 そしてホシノの言葉を肯定する。正しいと。

 彼女は歯を噛み締めた。

 

 

 

「ッやっぱり……! なら斑目が実験体の時から、狙っていたの……!?」

 

(実験体の時から狙っていた……?)

 

 

 実験体の時というのは……恐らく言葉通りだろう。

 だが、狙っていたというのが『顔無し』は分からなかった。

 

 

「……どういうことか分からないな」

 

「っ言葉通りだよ」

 

 

 それからホシノは自分の推測を話す。

 黒服の証言による、斑目が悪霊を見たこと。その直後に自殺したこと。そして部屋で見つけ、今実際に持っている日記に書かれた『ご苦労様』。

 

 これらを掛け合わせた結果、『斑目は悪霊に取り憑かれるのを恐れ、自殺した。だがその抵抗は、嘲笑されると共に悪霊に取り憑かれた』と。

 

 

 

「……」

 

 

 『顔無し』は黙り込む。

 確かに、ホシノが挙げた要素を繋げればそういう答えも出るだろう。

 

 ノーネームは何か言おうとしたが、首を振った。

 

 

(……いや、ある意味正しいか。委員長にとっては、正真正銘の悪霊だ)

 

 

 自分の同級生の身体を動かし、後輩達に溶け込み、共に過ごしているのだから。

 

 記憶喪失ならまだいいが、見ず知らずの他人が同級生の肉体で、本人がいた筈の穴を埋めている。侵食しているとも言えた。

 さらに当の本人は戻ってくる確証もない。最悪と言えるだろう。

 

 

(俺は斑目じゃない。ここにいるべきなのは、斑目の筈だった。にも関わらず俺は……その居場所を奪っていた)

 

 

 長く居すぎたのだ。対策委員会に。

 『顔無し』は危機感を抱く。周囲を見渡し、こちらをみる彼女達に。

 

 自分の先輩の身体が乗っ取られていたにも関わらず、憤りを見せる者が誰一人いない。

 困惑を浮かべるだけだ。取り敢えず武器を構え、警戒をすることすら忘れている。

 

 嬉しくは思う。だがもし、この状況下のまま自分が消え、斑目が復学することを考えたら申し訳なさが勝った。

 アビドスのために身を捧げたというのに、後輩達全員に自分を通して誰かを見られる等、想像しただけでも苦しい。

 

 

 

(……潮時だな)

 

 

 

 『顔無し』は心の中でそう呟いた。

 先生含めて、優しい者に囲まれていたことを思い出す。だがその分、無茶が出来ず停滞しているのも事実だった。

 

 

 だからここから先は単独行動だ。

 ホシノは精神的に疲労している、彼女が万全じゃなければ勝てる戦いも勝てない。セリカ達も危ういだろう。

 

 

 彼女達が戦う前に、自分一人で片を付ける必要性が生じた。

 幸い、心臓が潰されても生きられることが判明したのだ。その特性を発揮する状況としては今しかないだろう。

 

 

(……先生)

 

 

 ふと、こちらに目を向ける先生と視線があった。

 その大きな胸の前で両手を握り、こちらを心配するように見守っていた。

 

 去る時、声は掛けられない。今のホシノは不安定だ。

 些細なことがきっかけで、先生も不信の対象となる可能性がある。

 

 だからすぐに顔を逸らし、足に力を加える。

 

 

(悪いな。委員長のこと、対策委員会のこと、頼んだ)

 

 

 そして強く砂を蹴り、この場から逃走する。方角がアビドス高等学校でないことから、対策委員会もそれが分かった。

 

 

「ッ速……!?」

 

「まさか、本当に……!?」

 

「『顔無し』!!!!」

 

 

 風紀委員会も対策委員会も先生も、その瞬発力に数秒遅れて反応する。

 その速度に驚く者、『顔無し』が逃走したことでホシノの話に信憑性があると感じた者、純粋に身を案じる者。反応は様々だった。

 

 

「止まれ!!!!!」

 

 

 声を荒げ、反応したのはホシノだけだ。

 銃口を向けるが……その引き金を引けなかった。その背中にデジャヴを感じ、力無く愛銃を下ろす。

 

 

「……くそ」

 

 

 ホシノは俯いて、苦しげな声でそう言った。

 彼女は同級生の偽物を追い出すのに成功する。

 

 だがその気分は、ちっとも晴れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日経ったキヴォトスにて。

 灰色に染まった空の下で、『顔無し』は人気のない路地裏にて苦しげに咳を繰り返していた。

 

 

「ケホッケホッ……くそ、ゲホッ……風邪、か」

 

 

 『顔無し』は座り込み、ゆっくりと息を吐く。

 あれから決まった場所に住むことも、飲食も、シャワーを浴びることさえ碌に出来ていない。

 

 理由は単純。シャーレによって指名手配をされてしまったためだ。

 そのため支給されていた端末は今いる場所から、遠いところで壊してきた。

 

 それがホシノの指示によるものなのか、先生の意思なのかは分からない。だが捕まることが、自分の行動の縛りになるのは変わらない。

 だから常に神経を張り巡らし、休息も栄養も得ず動き続けてきたわけである。

 

 

「その結果がこれか……」

 

 

 だが、病気を患い行動が縛られている。冷たい雨が余計に体力を奪い、身体のパフォーマンスも落ち、寧ろ状況は最悪と言えた。

 このまま野垂れ死は勘弁したいが、身体が言うことを聞かない。

 

 

「かくなる上は……っと」

 

 

 『顔無し』はそう言って、自身の得物である金属棒を手にする。

 それを……喉に押し当てた。

 

 

「風邪は確か……ウィルスによるものだったよな。まずは喉、次に肺を壊して一から再生すれば、健康体に戻れるか?」

 

 

 つまり、ウィルスに侵された身体を一度壊し、新しくすることで体調を戻すつもりだ。

 時間は有限である。『顔無し』は一思いに、喉に棒を突き刺そうとした。

 

 鋭利ではないので痛み、そして相当な力が必要ではあるがこの身体には関係ない。

 

 

「……よし」

 

 

 『顔無し』は金属棒を引き寄せ、喉を貫こうとする。

 だがそれは出来なかった。一発の銃声が響くと同時に、『顔無し』の腕がブレる。

 

 

「ッ……アルか」

 

 

 

「ハァ……! ハァ……! バカな真似はやめなさい! 『顔無し』!!」

 

 

 

 そこには狙撃銃を構えたアルがいた。

 彼女だけではない。その背後には、ムツキ、ハルカ、カヨコもいた。

 

 

「……こりゃ万事休すだな。心残りはあるがまあ……お前らに捕まるなら悪くない」

 

「ありゃりゃ。疲労困憊って感じだね。流石のネムネムも、病気には叶わないのかな?」

 

「死なないでください、『顔無し』さん……! 私も、アル様達も悲しいですから……!!!」

 

「いや、『顔無し』は死ぬつもりなかったよ。二人とも」

 

 

 カヨコが首を振りながら言い、アルとハルカは「へ?」と間抜けな声を出す。

 

 

「じゃあ、何を」

 

「しようとしたんですか……?」

 

「あー、それはな……」

 

 

 感染しているであろう部位を壊して、治そうとした。

 純粋な顔で首を傾げるアルとハルカに、真正面から言い辛く『顔無し』は濁す。

 

 歩み寄ってきたカヨコが、『顔無し』の前で膝を折り畳んだ。

 

 

 ぺちっ。

 

 

 

「病人であること。あんたに大きな借りがあること。それを考慮して、これで済ませてあげる」

 

 

 

 彼の頬に優しく片手を当てて、カヨコはそう言う。

 呆気に取られる『顔無し』の傍に移動し、自分の肩に彼の腕を通す。

 

 

 

 そして、距離が近くなった『顔無し』の額に自分の額を押し当てた。

 

 

 

「……熱い。熱も出てるね」

 

「わーお。カヨコちゃんったら、だ・い・た・ん♪」

 

「……カヨコ、簡単にそういうことするな。ムツキも揶揄わない」

 

 

 溜息を吐きながら、『顔無し』は片腕を上げてカヨコから離れる。

 

 

「自分で歩ける。俺といたら、お前達もマズいだろ……じゃあな」

 

 

 気に掛けてくれるのは有り難いが。

 

 アルはただでさえ、ゲヘナの風紀委員会に指名手配されている。

 それに加えて自分に加担すれば、シャーレにも追われることになるのだ。

 

 その負担は計り知れない。だからここで別れる、お互いそれでいいだろ。

 『顔無し』はそう思ったが、アルはそうじゃなかったみたいだ。

 

 

 アルは羽織っていたコートを脱ぐ。その際、ワイシャツ越しに豊かな二つの山が揺れた。

 カツカツカツ、と足早に『顔無し』の後を追いかけ、静かに彼にコートを着せる。

 

 

「? アル、何のつもり」

 

 

 だ。

 と彼は重力に逆らいながら言った。

 

 アルがコートで包まれた『顔無し』を横に抱き上げたのだ。

 俗にいうお姫様抱っこである。コート越しにアルの胸が押し当てられた。

 

 落ちないようにしっかりと引き寄せ固定されているため、常にその形は歪められている。

 

 

「……お前、何を」

 

 

 

「舐めないで頂戴! こっちはもう風紀委員会に追われてるわ、口座を凍結させられるわ、既にマズい状況なのよ!!」

 

 

 

「いや、だからこれ以上悪化させないようにだな」

 

「真のアウトローたる者、追われる組織が一つ増えるぐらいわけないわ!! 仲間を救うためなら尚更ね!!!」

 

 

 アルは斜め右下に顔を向ける。自分が抱いている、『顔無し』の顔がそこにはあった。

 

 

「貴方は私達が絶対に守るわ。だから今は、大人しくしてなさい」

 

「……ハッ、カッコいいよ。アウトロー」

 

「フフッ、当然よ。まだまだこれからも見せ続けてあげるから、楽しみにしておきなさい」

 

 

 男としてお姫様抱っこされるのはアレだが、今の自分ではアルに対して力で叶わない。

 それにこの好意を無碍にも出来なかった。

 

 だから『顔無し』は抵抗を諦める。雨は降っているが、コートに身体が包まれてるからか温かい。籠に揺すられるような心地よさも感じる。

 

 

「……って、あら? 『顔無し』、眠いのかしら……」

 

「ああ……最近、殆ど寝てなかったしな。ふぁ……」

 

「くふふっ。アルちゃんの母性にやられちゃったんじゃないのー?」

 

「きゃっ……!? ちょ、ちょっとムツキ! 横から私の胸をつつかないでよ!?」

 

 

 アルが自分の胸を腕で隠したからか、『顔無し』の身体が大きく揺れた。その様子を、横からムツキはニマニマしながら見ている。

 それでも『顔無し』の眠気が覚めることはなかった。うつらうつらとしながら、言葉を紡いでいく。

 

 

「違ェよ」

 

「うん?」

 

「アルだけじゃない。お前達がいる安心感から、かもな」

 

 

 それだけ言うと、『顔無し』は眠りに落ちた。

 警戒心のない寝顔で、すー……すー……と一定のリズムで寝息を始める。

 

 

「ねえねえ皆……ネムネム、こういうところズルくない?」

 

「「「ズルいと思う(います)」」」

 

 

 照れ臭いのか。全員の顔がほんの少し赤くなった。

 

 

「仕返しに子供扱いしてやろ〜。このこのっ」

 

 

 ムツキはほんの少し悔しく感じて、呑気に寝ている『顔無し』の髪を撫でるのだった。




前から思ってたけど……アルのお胸デカすぎません???

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。