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月曜日になったけどギリギリ、セーフということで……!
いや本当にごめんなさい。ちょっとルビコンで傭兵稼業してまして、621女の子概念やら何やらに脳をやられてました。
アーマードコア6はいいぞ……!!
あ、ホシノは大きくあと2回曇らせて終わる予定です。(唐突な宣言)
問い掛けから、『
それを正面から受け止め、彼は口を閉ざしていた。
いつまでも続く、不穏な空気にその場の全員が息をするのを忘れている。風紀委員会とアビドス対策委員会、関係なくだ。
『顔無し』は後頭部を掻き、ゆっくりと口を開く。
「……答えられない、としか言えないな」
そう答えた。
自分が誰なのか。斑目をどうしたのか。
文字通り、答えられないのだ。
前者は記憶があるため答えられる。実際、風呂で目が覚めた時も含め、ここに来る前までいた、故郷のテレビ番組の内容も明確に覚えていた。
なので当然、自分の名前も覚えている。
覚えているが、それを言ったところで事態が良くなるとは思えなかった。
後者は簡単だ。
分からない。その一言に尽きる。何故なら気付いた時には既に、この身体に入っていたのだから。
(……いや)
違う。
一つだけ言えることはある。ホシノを含め、アビドス対策委員会にとっては認容できない事柄が。
『顔無し』の答えにホシノは目を細める。彼に対する、信頼度が薄まった様子だ。
そしてホシノは、その決定的な一言を放った。
「それは……君が斑目の身体を乗っ取ったから?」
「「「……!!?」」」
アビドス対策委員会はその一言に驚愕し。
「……」
「それで、あの変わりよう……」
ヒナは特に大きな反応は見せずに耳を傾け、チナツは素直にホシノの言葉を飲み込んだ。
「『顔無し』が、斑目君の身体を乗っ取った……?」
先生は信じられないとばかりに、ポツリと呟いた。
セリカも同じなようで、声を上げる。
「ちょ、ちょっと待って! 『顔無し』は記憶喪失なんじゃないの!? どうしてそんな、誰かに身体を乗っ取られてるなんて……!!」
「やめろ。ツインテちゃん」
それを制止したのは、『顔無し』自身だった。
話し合いの発展が、口論に至る可能性もある。そうなればチームワークに支障が出て、今後対策委員会が瓦解してしまうかもしれない。
きっとその行く末は、斑目が望むものとは正反対になる。ならそれは避けるべきことだ。
「委員長」
『顔無し』は一度目を閉じ、ゆっくり開いた。
「……ああ。俺が奪った。これは嘘でも否定でもない」
そしてホシノの言葉を肯定する。正しいと。
彼女は歯を噛み締めた。
「ッやっぱり……! なら斑目が実験体の時から、狙っていたの……!?」
(実験体の時から狙っていた……?)
実験体の時というのは……恐らく言葉通りだろう。
だが、狙っていたというのが『顔無し』は分からなかった。
「……どういうことか分からないな」
「っ言葉通りだよ」
それからホシノは自分の推測を話す。
黒服の証言による、斑目が悪霊を見たこと。その直後に自殺したこと。そして部屋で見つけ、今実際に持っている日記に書かれた『ご苦労様』。
これらを掛け合わせた結果、『斑目は悪霊に取り憑かれるのを恐れ、自殺した。だがその抵抗は、嘲笑されると共に悪霊に取り憑かれた』と。
「……」
『顔無し』は黙り込む。
確かに、ホシノが挙げた要素を繋げればそういう答えも出るだろう。
ノーネームは何か言おうとしたが、首を振った。
(……いや、ある意味正しいか。委員長にとっては、正真正銘の悪霊だ)
自分の同級生の身体を動かし、後輩達に溶け込み、共に過ごしているのだから。
記憶喪失ならまだいいが、見ず知らずの他人が同級生の肉体で、本人がいた筈の穴を埋めている。侵食しているとも言えた。
さらに当の本人は戻ってくる確証もない。最悪と言えるだろう。
(俺は斑目じゃない。ここにいるべきなのは、斑目の筈だった。にも関わらず俺は……その居場所を奪っていた)
長く居すぎたのだ。対策委員会に。
『顔無し』は危機感を抱く。周囲を見渡し、こちらをみる彼女達に。
自分の先輩の身体が乗っ取られていたにも関わらず、憤りを見せる者が誰一人いない。
困惑を浮かべるだけだ。取り敢えず武器を構え、警戒をすることすら忘れている。
嬉しくは思う。だがもし、この状況下のまま自分が消え、斑目が復学することを考えたら申し訳なさが勝った。
アビドスのために身を捧げたというのに、後輩達全員に自分を通して誰かを見られる等、想像しただけでも苦しい。
(……潮時だな)
『顔無し』は心の中でそう呟いた。
先生含めて、優しい者に囲まれていたことを思い出す。だがその分、無茶が出来ず停滞しているのも事実だった。
だからここから先は単独行動だ。
ホシノは精神的に疲労している、彼女が万全じゃなければ勝てる戦いも勝てない。セリカ達も危ういだろう。
彼女達が戦う前に、自分一人で片を付ける必要性が生じた。
幸い、心臓が潰されても生きられることが判明したのだ。その特性を発揮する状況としては今しかないだろう。
(……先生)
ふと、こちらに目を向ける先生と視線があった。
その大きな胸の前で両手を握り、こちらを心配するように見守っていた。
去る時、声は掛けられない。今のホシノは不安定だ。
些細なことがきっかけで、先生も不信の対象となる可能性がある。
だからすぐに顔を逸らし、足に力を加える。
(悪いな。委員長のこと、対策委員会のこと、頼んだ)
そして強く砂を蹴り、この場から逃走する。方角がアビドス高等学校でないことから、対策委員会もそれが分かった。
「ッ速……!?」
「まさか、本当に……!?」
「『顔無し』!!!!」
風紀委員会も対策委員会も先生も、その瞬発力に数秒遅れて反応する。
その速度に驚く者、『顔無し』が逃走したことでホシノの話に信憑性があると感じた者、純粋に身を案じる者。反応は様々だった。
「止まれ!!!!!」
声を荒げ、反応したのはホシノだけだ。
銃口を向けるが……その引き金を引けなかった。その背中にデジャヴを感じ、力無く愛銃を下ろす。
「……くそ」
ホシノは俯いて、苦しげな声でそう言った。
彼女は同級生の偽物を追い出すのに成功する。
だがその気分は、ちっとも晴れなかった。
数日経ったキヴォトスにて。
灰色に染まった空の下で、『顔無し』は人気のない路地裏にて苦しげに咳を繰り返していた。
「ケホッケホッ……くそ、ゲホッ……風邪、か」
『顔無し』は座り込み、ゆっくりと息を吐く。
あれから決まった場所に住むことも、飲食も、シャワーを浴びることさえ碌に出来ていない。
理由は単純。シャーレによって指名手配をされてしまったためだ。
そのため支給されていた端末は今いる場所から、遠いところで壊してきた。
それがホシノの指示によるものなのか、先生の意思なのかは分からない。だが捕まることが、自分の行動の縛りになるのは変わらない。
だから常に神経を張り巡らし、休息も栄養も得ず動き続けてきたわけである。
「その結果がこれか……」
だが、病気を患い行動が縛られている。冷たい雨が余計に体力を奪い、身体のパフォーマンスも落ち、寧ろ状況は最悪と言えた。
このまま野垂れ死は勘弁したいが、身体が言うことを聞かない。
「かくなる上は……っと」
『顔無し』はそう言って、自身の得物である金属棒を手にする。
それを……喉に押し当てた。
「風邪は確か……ウィルスによるものだったよな。まずは喉、次に肺を壊して一から再生すれば、健康体に戻れるか?」
つまり、ウィルスに侵された身体を一度壊し、新しくすることで体調を戻すつもりだ。
時間は有限である。『顔無し』は一思いに、喉に棒を突き刺そうとした。
鋭利ではないので痛み、そして相当な力が必要ではあるがこの身体には関係ない。
「……よし」
『顔無し』は金属棒を引き寄せ、喉を貫こうとする。
だがそれは出来なかった。一発の銃声が響くと同時に、『顔無し』の腕がブレる。
「ッ……アルか」
「ハァ……! ハァ……! バカな真似はやめなさい! 『顔無し』!!」
そこには狙撃銃を構えたアルがいた。
彼女だけではない。その背後には、ムツキ、ハルカ、カヨコもいた。
「……こりゃ万事休すだな。心残りはあるがまあ……お前らに捕まるなら悪くない」
「ありゃりゃ。疲労困憊って感じだね。流石のネムネムも、病気には叶わないのかな?」
「死なないでください、『顔無し』さん……! 私も、アル様達も悲しいですから……!!!」
「いや、『顔無し』は死ぬつもりなかったよ。二人とも」
カヨコが首を振りながら言い、アルとハルカは「へ?」と間抜けな声を出す。
「じゃあ、何を」
「しようとしたんですか……?」
「あー、それはな……」
感染しているであろう部位を壊して、治そうとした。
純粋な顔で首を傾げるアルとハルカに、真正面から言い辛く『顔無し』は濁す。
歩み寄ってきたカヨコが、『顔無し』の前で膝を折り畳んだ。
ぺちっ。
「病人であること。あんたに大きな借りがあること。それを考慮して、これで済ませてあげる」
彼の頬に優しく片手を当てて、カヨコはそう言う。
呆気に取られる『顔無し』の傍に移動し、自分の肩に彼の腕を通す。
そして、距離が近くなった『顔無し』の額に自分の額を押し当てた。
「……熱い。熱も出てるね」
「わーお。カヨコちゃんったら、だ・い・た・ん♪」
「……カヨコ、簡単にそういうことするな。ムツキも揶揄わない」
溜息を吐きながら、『顔無し』は片腕を上げてカヨコから離れる。
「自分で歩ける。俺といたら、お前達もマズいだろ……じゃあな」
気に掛けてくれるのは有り難いが。
アルはただでさえ、ゲヘナの風紀委員会に指名手配されている。
それに加えて自分に加担すれば、シャーレにも追われることになるのだ。
その負担は計り知れない。だからここで別れる、お互いそれでいいだろ。
『顔無し』はそう思ったが、アルはそうじゃなかったみたいだ。
アルは羽織っていたコートを脱ぐ。その際、ワイシャツ越しに豊かな二つの山が揺れた。
カツカツカツ、と足早に『顔無し』の後を追いかけ、静かに彼にコートを着せる。
「? アル、何のつもり」
だ。
と彼は重力に逆らいながら言った。
アルがコートで包まれた『顔無し』を横に抱き上げたのだ。
俗にいうお姫様抱っこである。コート越しにアルの胸が押し当てられた。
落ちないようにしっかりと引き寄せ固定されているため、常にその形は歪められている。
「……お前、何を」
「舐めないで頂戴! こっちはもう風紀委員会に追われてるわ、口座を凍結させられるわ、既にマズい状況なのよ!!」
「いや、だからこれ以上悪化させないようにだな」
「真のアウトローたる者、追われる組織が一つ増えるぐらいわけないわ!! 仲間を救うためなら尚更ね!!!」
アルは斜め右下に顔を向ける。自分が抱いている、『顔無し』の顔がそこにはあった。
「貴方は私達が絶対に守るわ。だから今は、大人しくしてなさい」
「……ハッ、カッコいいよ。アウトロー」
「フフッ、当然よ。まだまだこれからも見せ続けてあげるから、楽しみにしておきなさい」
男としてお姫様抱っこされるのはアレだが、今の自分ではアルに対して力で叶わない。
それにこの好意を無碍にも出来なかった。
だから『顔無し』は抵抗を諦める。雨は降っているが、コートに身体が包まれてるからか温かい。籠に揺すられるような心地よさも感じる。
「……って、あら? 『顔無し』、眠いのかしら……」
「ああ……最近、殆ど寝てなかったしな。ふぁ……」
「くふふっ。アルちゃんの母性にやられちゃったんじゃないのー?」
「きゃっ……!? ちょ、ちょっとムツキ! 横から私の胸をつつかないでよ!?」
アルが自分の胸を腕で隠したからか、『顔無し』の身体が大きく揺れた。その様子を、横からムツキはニマニマしながら見ている。
それでも『顔無し』の眠気が覚めることはなかった。うつらうつらとしながら、言葉を紡いでいく。
「違ェよ」
「うん?」
「アルだけじゃない。お前達がいる安心感から、かもな」
それだけ言うと、『顔無し』は眠りに落ちた。
警戒心のない寝顔で、すー……すー……と一定のリズムで寝息を始める。
「ねえねえ皆……ネムネム、こういうところズルくない?」
「「「ズルいと思う(います)」」」
照れ臭いのか。全員の顔がほんの少し赤くなった。
「仕返しに子供扱いしてやろ〜。このこのっ」
ムツキはほんの少し悔しく感じて、呑気に寝ている『顔無し』の髪を撫でるのだった。
前から思ってたけど……アルのお胸デカすぎません???