ホシノに殺された俺。どうやら先生の弟だったようなので、とりあえず黒服とお茶会してみた   作:ラトソル

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爆弾直撃で怪我で済むのマジバケモンだろ

「カイくんは……さ」

 

 それは、少女にとっての特別な会話。

 

 間接的にだとしても、大切な友達を死なせてしまったミカは既に壊れている精神状態の中で、その男と対話を試みた。

 

 アリウスに向かう度にその男を探した。その男と会話を求めた。

 

 遠くから一度だけ見た彼の姿を忘れられなかったから。

 

『好き』だと何度も口にしたけれど、これが恋心なのかは定かではない。それは少女自身わかっていた。

 けれど、壊れた心を結びつける為の楔として、ソレを恋心なのだと思い込むようにしていた。

 

 会う度に名前を忘れたような仕草をしてくる男、カイ。

 何度も交流を重ねる中で、ミカは何となく、その男のことが分かってきていた。

 

 ああ、この人は、他人に興味が無いんだ……と。

 

 決して、人見知りという訳では無いのだ。むしろ話しやすい部類に入っているだろう。

 けれど、言葉の節々から少しずつ伝わってくる、一定の境界線。

 

 だって、彼から話しかけに行っている姿を見たことが無かったから。

 

「取り返しのつかない事をした人のこと、どう思う?」

 

 曖昧な質問。それは何を示しているのか、カイはきっと分からないのだろう。

 禁忌を犯したミカは、それでも罪から逃れるような表現をしたことを自嘲しつつも、それを隠す。

 

 いつも通りの抑揚で、表情で、普段の会話の延長であるかのように。

 

「それが、友達だったとしたら」

 

 そこに条件を付け加えて。

 そして、ミカは答えを待つ。

 

 求める答えは無く、なにかに縋ろうと無意識的に飛び出した質問。もはや自分自身、何が言いたくて何を言って欲しいのかは分かっていない。

 

 ペットボトルのお茶を飲むカイは、お茶が喉を通り過ぎるまでの数秒間その質問について考え、飲み込むと同時に答えを出す。

 

「知らん。そいつ次第だな」

 

 そう語った彼の瞳は、ミカを見てはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 アリウスに来て何ヶ月が経っただろうか。そろそろ帰りてぇなと思い始めた今日この頃。

 

 はいどうも、■■廻です。

 

 今俺がいるのは当然の如くアリウス……ではない。

 

「阿鼻叫喚ってこういうこと言うんだな〜」

 

 呑気にそんなことを言う俺とは対照的に、そこは地獄絵図と言えた。

 

『エデン条約』。

 怪しい壺でも売られそうなネーミングな催し。ゲヘナとトリニティの両校で執り行われるなんかよくわからんやつらしい。学校間で条約結ぶって何? 戦争なの? 

 

 トリニティといえばヒフミが通っている学校だ。ゲヘナには知り合いが居ないけど……いや、居たっけか? まあいいや、忘れた。

 今までにも何度か生まれていた休日。1ヶ月に一度程度の頻度でアリウス全員が何処かへと遠足のように出ていくものだから、俺は暇な時間を散歩して過ごしている。それが今日だった。

 

 黒服さんに教えられたっていうのもあるけど。内容は1ミリも分かってません。とりあえず拍手とかは合わせればいいだろって感じ。

 ヒフミと同じ制服を着た生徒とそうでない子たちとの二極感。真っ二つに分かれているそれは遠目から見ればなにかの模様になるのではないかと訝しんだ程である。

 

 参列者や見物人達の一番外側からチラッと見る程度だったけど。ん〜、めっちゃ女の子しかいないねぇ。兄さんここに来たらキャッキャウフフだろ、ギャルゲーか何かですかね? 

 

 宣言が始まり、賑わいはピークに。もっとお祭り模様を黒服さんから伝えられていたからそれよりも厳かな雰囲気に普通に帰ろうかなと思っていた時である。

 

 ミサイルが飛んできました。

 

「あ……ありがとう、ございますっ」

 

「いいよ。近くに居ただけだし。とりあえず避難しなよ」

 

「っ、はい!」

 

 いや〜、普通にドカーンだったよね。

 学校の催しにテロ組織が乱入してきたというやばめの字面だが、内容はもっとグロい。ほんとこの世界やばいね。兵器を平気でポンポン使うんだもの。

 

 人が密集していた中心地へと向かっていたミサイル。俺はそれに気付いたが特に避難誘導とかはせず、近くにいた赤の他人でしかない生徒の身体を抱えて後ろへと飛び退いた。

 想定していたよりも大きな爆発。やはりこの世界は見た目で判断してはいけないのだろう。まあ想定以上に距離を取ろうとはしていたから怪我をすることは無かったが。強いて言えば、着地した時に足が痛かったぐらい。

 

 爆風で目を開け続けるのが難しい中、抱えていた少女を下ろし、声を掛ける。制服を見るに、トリニティの子なのだろう。まじで見たことがないが。

 俺にお礼を言った彼女は、爆風と砂埃が収まってきてクリアになった視界に映る光景に言葉を失いながら、しかし迷うことなく歩を進めた。

 

 俺はといえば、悲鳴が響く地獄となった広場で周りを眺める。ここで真っ先に人助けに行かない所、あの兄の弟なのか自分でも不思議に思うなと漠然と考えた。

 

 腰に携えている刀の柄に手を置き、手頃な瓦礫に腰掛ける。この辺りは中心地からは遠く離れていたからそこまでの被害は……いや、普通にやばいか。瓦礫がある時点でやばいもんな。それでも、マシな方なのだろう。

 兄さんはどうしてるのだろうか。エデン条約は一大イベントなのだと黒服さんは言っていたし、先生赴任後数ヶ月での出来事だ。メタ的に考えれば、参加しているのだろう。それも、最前列で。

 

 しかし、兄さんの心配はあんまりしてない。どうせ無事だろう。あの人の運命力はバグってるからな。まあ、本当にやばくなったとしても■.■.■.■.■が何とかするだろ。

 

 ヒフミに関しては、今日エデン条約の催しに参加する予定はないことは昨日の電話で確認済みだ。友達と遊ぶらしい。仮に巻き込まれていたとしても、声が聞こえないから無事ではあるのだろう。まあ、少し心配だから軽く探索はするが。

 

「にしても……青春の物語(ブルーアーカイブ)とか嘘だろ、マジで」

 

 この世界ほんとにカスだわ。阿鼻叫喚すぎる。どこにそこら中から女子の悲鳴が聞こえて銃声が響きまくってる青春があるんだよ。青春じゃねぇよ、アオハルじゃないよ。

 

 青春っていうのはさ、もっとこう……ね? 学園で生徒のキャッキャウフフだったり、部活動で大会に出るために汗流したり、その背中を見て女生徒が惚れたり、文化祭とか体育祭とかでキャーキャー言ったりするもんじゃん? もちろん青空の下でね? 

 

 今の天気? 曇り。

 景色? 瓦礫の山。

 声? 聞こえるよ。キャーキャー言ってるよ。劈くような悲鳴だよ。

 

 んで、銃声が響いてるよ。

 

 首を左に傾ける。サラリと靡いた俺の髪の先をジュッ、と掠めて行った流れ弾。かなり遠くの方からのものだろうけど、ここも余裕で危険地帯なんだよね。

 

「どうするかねぇ」

 

 あまりの地獄絵図加減に、顔に着けている仮面を手で撫でる。

 これは以前、カイザーの所へ黒服さんと行った時に着けていたものとは別のもの。

 つい前日、黒服さんからの支給品の中にこれが入っていた。黒服さん曰く、ゴルコンダさんの発明らしい。

 

 なにやら機能が付いているらしく、顔の認識阻害、声帯変化、などなど。

 つまりは、仮面をつけるだけで髪や顔の輪郭を捉えにくくなり俺を知っている人からも俺だと分かりにくくなり、話す声は中性的なものに変化するらしい。鏡見ても何も分からんし、声も自分のものにしか聞こえないから効果が分からないけれど、第三者からはそう見えるし聞こえるとのこと。

 

 着け心地もいいし、愛用していこうかな。多分着けるの面倒になってたまにしか使わなくなるんだろうけど。

 

 そして今着ている服も黒服さんに送られてきたもの。生活必需品全て黒服さんセレクトなのまじでオカンでは? まあ使い勝手がいいから重宝してるんですけどね。

 

 カイザーのロゴがついてるのは目を瞑っておこう。

 

 さて。

 逃げ惑う、または立ち向かう生徒達の姿を遠目から見ていた俺はやっと瓦礫から立ち上がると前へと進む。不安定な足場をひと息に飛び越え、周りを観察しながら歩く。

 

 ……これやってんのアリウスの奴らじゃね? 

 

 だよな。あの制服絶対そうだわ。なに、またベアトリーチェさんが指令出したの? 今度はなんだろうか。トリニティのお嬢様オーラを見て、生徒会長とか自称してる自分の年齢に絶望しちゃったのか? 嫉妬100%じゃねぇか。

 

(どうしたもんかねぇ)

 

 別にだからどうしたという話だが。

 この世界は、『死』という概念が薄い……というか、縁遠いのだ。生命力云々もあるし、肉体強度の話もあるし。銃の携帯が当たり前とされている中で死亡ニュースが無いのはいい例だろう。死んだの俺だけじゃね? やったぜ、少数派だ。謎の特別感があるよね。

 

 だから、という訳では無いが。

 このテロのような行いにおいても、死者が出る心配は無い。兄さんにはアレが着いてるし。

 

 だから、俺は眼前の地獄絵図とは対照的に、楽観的に歩く。いつもの散歩のように。助けに行くこともなく。

 

 ただ、何故だか。

 

「……」

 

 頭から血を流し、フラフラと脚を動かす少女。

 血の赤が目立つのは白い肌と白い長髪だからだろうか。

 

 小さな少女。

 

(あの時の)

 

 以前、ヒフミがSOSを発したメグルンルン事件。その時にいた、なんかすごい覇気を放っていた女の子だ。

 流石に数ヶ月前の出来事だったため顔を覚えていた。ごめん、嘘。顔を見て思い出した。

 

 息も絶え絶えで、ほとんど意識も無く、何かに取り憑かれたかのように歩を進める彼女の姿。

 

 その背後から迫ってきた、幽霊のような妖しい光を纏う奴らを俺は鞘を付けたまま刀で振り払う。

 見た目に反して実体があるそいつらは容易く吹き飛び、瓦礫へと突っ込んでいく。刀を振るった風圧でふらついたその少女の身体を咄嗟に片腕で抱き抱える。

 

「────────────ぁ」

 

 浅く、何度も息を吐く少女は顔を動かす気力も無いのか、突然知らない奴に抱えられたこの状況においても何か抵抗をする素振りもない。

 もはや意地で握っていたであろう銃を地面へと落とし、重く鈍い音がする中で、その子は俺の服を震える手で掴む。

 

「────────────ぁ、ぃ」

 

 銃声が響き続ける中で、その子の毛量がヤバすぎることから腕に髪が当たって若干のこそばゆさを感じつつ、掠れた声で何かを言う彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「ぁい────たぃ、よぉ────」

 

 瞬間、ふっと力が無くなったかのように崩れ落ちる彼女の身体を今度は両腕で抱き抱える。ちゃんと見えていなかった顔が露になる。血や土埃で少し汚れた顔は、それでもとても整っている。この世界やはり顔採用だな、と再認識。

 

 前に気絶させた時とは違って、クマも少ないから寝れているのだろうか。いや、比べて薄いだけで十分濃い枠組みだわ。けど、前よりは寝顔が穏やかに見える。誰目線で語ってるんだという話だが。

 

「失せろ」

 

 さっき、この子へと襲いかかっていたよく分からない奴ら。

 気がつけば、俺の背後でその三人が直立で待っており、攻撃をしてくる素振りもない。

 

 殺意も敵意も感じられないけれど、不穏分子であることに変わりはないために言葉での撤退を要求すれば、そいつらは実体があったとは思えないほどに、霧状へと姿を変えて消えていった。

 

 思わぬ結果に目を丸くするも、この子を安全な場所に運ぶか知り合いの元へ届けないとなと、その子を抱えたまま高所へと飛び上がり全体を俯瞰。そして、目星を着けた場所へと飛び降りた。




先生→生徒みんな『平等』に大切

廻→『特別』が無事ならそれ以外はどうでもいい(目の前にいたら助けるかも)


現在の『特別』リスト
・ユメ(恩人その1。ブッチギリの1位)
・ヒフミ(突然湧いて出たのにホシノをぶち抜いた女の子。狂人)
・先生(兄)
・ホシノ(同級生)
・黒服(恩人その2。正確には少し違う)
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