Vol.4|フェルミ推定・ケース面接の攻略法 ― フレームワーク芸人になるな。本質に刺され ―
はじめに:「型」は“頼る”ものじゃなく、“活かす”ものだ。
未経験からコンサルを目指す多くの人が、
フェルミ推定やケース面接に対して“受験の模試”的な対策をしがち。
たしかに「MECE」「3C」「バリューチェーン」…
フレームワークを覚えるのは大事。
でも、現場のコンサルが見ているのはそこじゃない。
──「で、あなたの問いは刺さってる?」
──「その分解、現場で機能する?」
評価されるのは、「型の丸暗記」じゃなく、
「問いの立て方」×「構造のセンス」×「答えへの執着」。
今回は、フェルミ・ケース面接で“本質を突く”ための
リアルな視点と攻略法をまとめていきます。
第1章|フレームワークは“思考補助輪”にすぎない
よくある勘違い:「とにかく3Cで分解しなきゃ」
たしかに、何もないよりはフレームがある方が安心。
でも、コンサルがフレームを使うのは「見える化の手段」であって、「正解のテンプレ」ではない。
たとえば…
典型的なNG例:
「売上が落ちている → 3Cで分解 → 顧客・競合・自社それぞれに施策」
→ これは“分解芸”。問題の構造をえぐれていない。
現場で刺さるのは:
「売上の定義をまず疑う」「収益性ではなく粗利貢献が焦点かも」
→ “問い”そのものを立て直すセンス
第2章|面接官が見ている3つのポイント
問いの立て方が、課題感をえぐっているか
分解の構造が、現場で“使える”か
仮説に対する“粘り強さ”があるか
フェルミ推定・ケース面接は「答えの精度」より、
「構造のセンス」と「答えまでの運び」が見られている。
実際の面接では、以下のようなやりとりがされる:
面接官:「国内のコーヒー市場規模を推定してください」
応募者A:「人口 × コーヒー摂取率 × 1杯の単価で…」
面接官(心の声):「あー、よくあるルートね」
応募者B:「まず“市場”の定義を明確にしたいのですが、コンビニや自販機は含めますか?」
面接官(心の声):「お、この人は問いを“ずらす”視点を持ってるな」
第3章|「イイネを稼ぐ」仮説の構築法
コンサルのプロジェクトで最も求められるのは、
「相手が“なるほど”と腹落ちする仮説」。
これをイイネを稼ぐ、という表現に置き換えてみよう。
「その構造なら、現場でも検証しやすいね」→イイネ
「定義がズレてて現場で揉めるな…」→イイネならず
使うべきは「型」ではなく「構造の意図」
たとえば:
✅ 売上改善のケース
→ 全体の数字を追うのではなく、「ボトルネック」を特定してえぐれるか?
→ 「既存顧客のリピート率」など、構造を削り出す力
✅ 市場規模を求める際
→「切り口」をどう設定するか?
→ なぜその視点を選んだのか?の“仮説ストーリー”がセットで語れるか
第4章|フェルミ推定実践:構造と前提が9割
「フェルミ推定って、計算ゲームでしょ?」
——違います。
実は、“いかにもらしく語れるか”を問う仮説構築ゲームなんです。
コンサル面接におけるフェルミ推定で見られているのは、単なる数字の正確さではなく、
市場をどう分解し、
どんな前提を置き、
それっぽく着地させられるか
という「構造力 × 仮説思考力」。
実際の質問を使って、その“映像”を一緒に描いてみましょう。
フェルミ推定テーマ:
面接官:「国内のコーヒー市場規模を推定してください」
1. 問題定義:どの「コーヒー市場」なのか?
まず最初にやるべきは、「コーヒー市場って何を含むの?」という定義づけ。
☑️家庭で飲むインスタントやレギュラーコーヒー
☑️コンビニやテイクアウト(セブンカフェなど)
☑️自販機・缶コーヒー
☑️カフェ・喫茶店での飲用
つまり、“すべてのチャネルを含む金額ベース”の市場とします。
2. 市場セグメント分解(仮説ベース)
以下のように市場を4セグメントに分解し、シェア仮定を置く。
- 家庭用コーヒー:40%
- コンビニ/テイクアウト:30%
- 自販機・缶コーヒー:15%
- カフェ・喫茶店:15%
ここでは「家庭用が最も多く、コンビニやカフェはそれに続く」と仮定。納得感があり、構造としても自然です。
3. 数字仮置き:人口 × 飲用者率 × 頻度 × 単価
日本の人口:1.2億人
飲用者割合:60%(=7,200万人)
4. セグメント別試算
【家庭用】
2,880万人 × 50円 × 360杯 = 5,184億円
【コンビニ/テイクアウト】
2,160万人 × 150円 × 180杯 = 5,832億円
【自販機・缶コーヒー】
1,080万人 × 150円 × 120杯 = 1,944億円
【カフェ・喫茶店】
1,080万人 × 400円 × 60杯 = 2,592億円
5. 結論
日本のコーヒー市場規模(年間)は、5,184 + 5,832 + 1,944 + 2,592 = 約1兆5,552億円と推定される。
6. 模範解答(面接用90秒トーク例)
日本のコーヒー市場規模は、年間で約1.6兆円と推定します。
構造としては、家庭用・コンビニ/テイクアウト・自販機・カフェの4セグメントに分けて積み上げます。
それぞれの市場シェアは、家庭用が40%、コンビニ30%、自販機とカフェが各15%と仮定しました。
まず、日本の人口1.2億人のうち6割が日常的にコーヒーを飲むとすれば、飲用者数は約7,200万人です。
各チャネルごとに、飲用頻度と単価を置きます。
例えば、家庭用は1日1杯・1杯50円として年360杯、コンビニは年180杯で150円/杯、
自販機は120杯、カフェは年60杯で400円と仮定しました。
これを人数ベースでかけ合わせると、家庭用が約5,200億円、コンビニが約5,800億円、
自販機が約2,000億円、カフェが約2,600億円。
合計すると、およそ1兆5,600億円になります。
第5章|ケース面接実践:解決ではなく“再定義”がカギ
「ビジネスケースって、フレームワークの使い合いでしょ?」
——違います。実は、“どれだけリアルに、その企業の地に足がついた課題を捉えられるか”がすべてなんです。
コンサル面接におけるビジネスケースで見られているのは、抽象的なフレームではなく、
実際の売上構造や業態理解に基づいて、
成長余地やボトルネックを構造的に捉え、
「その会社っぽい戦い方」で語れるか?
という「解像度 × 戦略構築力」。
今回は、実在してもおかしくないケースを題材に、その“映像”を一緒に描いてみましょう。
ケース面接テーマ:
面接官:「年商200億円の北海道の地方スーパーが、EC売上を3年で20億円→50億円まで引き上げたいと考えています。成長戦略を提案してください」
1. 問題定義:このスーパーは何者か?
まず最初にすべきは、「この会社は何者か?」の定義づけ。
☑️ 北海道という広域かつ低密度な地域に展開
☑️ 店舗数は15〜20店舗程度の中堅規模
☑️ 生鮮・惣菜を中心とした“地場密着型”の品揃え
☑️ EC売上はすでに20億円(全体の10%)で、立ち上げは完了済
つまりこのケースは、ゼロイチではなく“1→n”の成長ブースト戦略を描くものです。
2. 競合環境の整理:「勝ち筋」がどこにあるのか?
北海道エリアのスーパーECは、すでに競争が激化している領域です。特に意識すべきは以下の3タイプ:
➤ 競合から見える“勝ち筋”とは?
イオンのような利便性×低価格のEC特化路線では勝てない
コープのような会員制×物流強者とも、正面からはぶつかれない
店舗・惣菜・地場商品という「接点の濃さ」を活かした、“地域共生型EC”がこのスーパーの勝ち筋
3. 課題の洗い出し:なぜ伸び悩んでいるのか?
戦略を描くには、まず“今の詰まり”をほどく必要があります。
✅ ビジネス構造上の課題
EC会員の多くが「試し買い」止まりで、継続購入に結びついていない
惣菜・生鮮中心のため、まとめ買いの導線が弱い
配送コストと商品単価のバランスが悪く、利益が出にくいカテゴリ構成
✅ 地域性由来の課題(北海道ならでは)
人口密度が低く、広域配送が非効率&高コスト
高齢者比率が高く、スマホ非保有・ITリテラシー格差が顕著
冬季の積雪により、物流・配送の安定運用が難しい
✅ 組織・運用面の課題
EC部門と店舗部門が分断し、在庫連動・販促連携が未整備
アプリのUIが弱く、登録→定着のコンバージョンが低い
“LINEや電話での注文”など、アナログ対応は試験導入にとどまる
4. ゴールの因数分解とターゲットの見極め
まずは「EC売上50億円」という目標を、構造で捉えてみましょう:
仮に以下のような構成なら、50億円に到達できます:
利用者数:5万人 → 10万人
年間購入頻度:4回 → 5回
購入単価:1万円(据え置き)
✅ 競合を踏まえたターゲット選定
同じターゲットを狙っても、強者(イオン・コープ)に勝てない領域は避けるべき。
このスーパーならではの「取り切れていないが、奪われてもいない顧客層」を狙うべきです。
5. 具体的な戦略設計|“4つの打ち手”
【① ユーザー数拡大】
店舗会員のEC登録促進(レジ前誘導/クーポン訴求)
高齢者向けの電話注文→店舗受取導線構築
冬季在宅ニーズの訴求(「除雪せずに届く安心」)
【② 購入頻度向上】
惣菜・日用品の定期便モデル展開
購入履歴ベースのレコメンド機能
年間行事に連動した販促施策(おせち・母の日など)
【③ 単価向上】
地産ギフトセット・贈答品のEC限定展開
「おまかせ夕食BOX」などセット商品開発
最低注文金額の引き上げ(送料無料ライン設計)
【④ 配送体制の最適化】
マイクロフルフィルメント型店舗起点配送へ再設計
中心店舗をエリアハブ化し、効率配送モデルを構築
冬季リスク対策(日時指定・品質保証強化)
6. 3カ年の実行ロードマップ
7. 模範解答(面接用90秒トーク例)
年商200億円の北海道の地方スーパーがEC売上を20億円→50億円に引き上げるには、まず“誰にどう届けるか”の再設計が重要です。競合と異なるポジションとして、非デジタル世帯・惣菜中心の単身層・道外ギフト利用者など、自社ならではの顧客層に絞り込みます。初年度は店舗会員のEC化とアナログ注文導線を整え、2年目は定期便や地場セットなどで購入頻度・単価を底上げ。3年目にはマイクロ物流モデルを構築し、広域配送の収益性を改善します。ポイントは、他社と真っ向勝負せず“このスーパーだから実現できるEC”を描くこと。地域密着型の強みを、EC成長の軸に据えます。
第6章|実務直結型フェルミ&ケース練習法
“内定の先”まで見据えた練習をしよう。
▼よくある誤解:「ケース対策 = 模試の解答練習」
多くの候補者が、ケース面接を“受験”と捉えてしまう。
模範解答をストックして、型を覚えて、数をこなす。
……でも、それだけじゃ面接は突破できても、現場では通用しない。
本当に鍛えるべきは、「構造化する力」と「仮説を語る力」。
▼練習すべきは「問い方」と「語り方」
下記のような練習を意識してみてほしい。
✅ フェルミ推定:5つの視点で構造力を鍛える
定義を疑う癖をつける
└「この市場って、どこまで含めるべき?BtoC?BtoB?」どのような枠組みで組み立てるか、仮説から選ぶ
└ 人口ベース?店舗ベース?等、「なぜそう考えたか」を語れるように変数の粒度を使い分ける
└ 年齢層/男女/利用頻度など、自然に“層”を切れるか?仮置き値は“直感ジャンプ”でOKだが、根拠をセットで
└「1日1本くらい」「週1で外食」など、自分や他人の生活感覚を元にする再計算・見直しの癖をつける
└ 出てきた数字が明らかにズレてるなら、「どこかでズレた?」を言えること
✅ ケース練習:3ステップで“自分の型”をつくる
問いの再定義練習
- 「売上低下」→“何の売上”?“何と比べて”?“なぜ下がってる?”
- クライアントの“痛み”を深掘りして捉え直す習慣を構造のアウトラインだけで戦ってみる
- 「数字出さずに、構造・選択肢・優先順位だけ」で思考を見せる練習
- ストーリーの“幹”を意識するだけで、グンと伝わる90秒プレゼンの型を固める
- ケース1問に対して、「冒頭→構造→仮説→打ち手」の一連の流れで話す練習
- 音声収録して振り返ると効果倍増(←地味だけど一番効く)
最後に:「問いを立てる力」で、差がつく。
フェルミ推定もケース面接も、「正解」はない。
あるのは「問いの質」×「構造のセンス」×「納得させる一撃」。
どれだけ「“それっぽい”こと」が言えるかではなく、
どれだけ「本質に向けて粘りきれるか」が問われている。
フレームワークに頼るな。
“刺さる構造”で、面接官を動かすことが“差のつく戦略”となります。
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