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メモ:安倍元首相銃撃事件初公判傍聴記(2025/10/28)

2022年7月8日に奈良市の近鉄大和西大寺駅前で発生した安倍元首相銃撃事件の裁判は、ようやく公判がはじまった。2025年10月28日の初日を傍聴することができた。

傍聴券を得る

当日あさ、奈良地裁から1kmほど東の、奈良公園春日野園地の南側(奈良春日野国際フォーラム甍〜I・RA・KA〜、旧称奈良県新公会堂付近)の屋外に、傍聴券抽選券の交付の特設会場が設置された。

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春日野園地の特設会場(9:30) 奥に東大寺大仏殿がみえている

自転車で、「正倉院展」開催中の奈良国立博物館の敷地を通過して会場へむかった。(よそからきた人が、正倉院展の入場待ちの列をみて裁判の傍聴抽選券の行列だとおもったらしく、「ここは正倉院展の行列で……」と説明をうけていたのをみた)
特設会場で、番号00616のリストバンドを装着された。とりはずすと無効なので、むかしあった傍聴券確保のアルバイトというのは成立しないしくみ。最終的には727人が応募したとのことで、一般傍聴者の定員は32席だったので抽選倍率は22.7倍だった。昼前にウェブサイトで発表があり、当選していた。

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抽選券リストバンド
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抽選結果と注意書き

入庁・入廷

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奈良地裁前(13:00) 敷地内・庁舎内での撮影はできない

傍聴券交付は13:15から。
抽選券リストバンドにくわえて、傍聴券リストバンドが装着された。8番。この裁判の期間中だけ設置されるセキュリティゲートをとおり、無料ロッカーに私物をすべて投入。さらにボディチェックをうけて101法廷へ。法廷にもちこめるのはノート類のみ。筆記具は裁判所からシャープペンシルとボールペンが希望者に貸与される。
傍聴席のうち半分は記者席にわりふられていた。それでも記者は各社1人とかのわりあてだったそうだ。鈴木エイト氏や西村カリン氏などの顔もみえた。各社の法廷画家は5人以上いた。おおきなスケッチブックと画材をもちこんでおり、はやい人は開廷30分前から制作をはじめていた。

開廷

みなが着席したあと、腰縄と手錠という屈辱的なすがたで被告がはいってきて、着席後に「解錠」された。14時に開廷。被告は証人席にでて氏名や生年月日(1980年生れ)、住所(不定)、職業(無職)などを確認された。ふだんはない透明のついたてが法廷の端から端まで設置されており、マイクのぐあいもよくないのか、よくききとれない。

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証人席の被告(14:20、松永画)

裁判長は、背後にいる裁判員にもつたわりやすいように、つねにていねいに、誤解の生じないようないいまわしを徹底していた。これは感心した。
検察による起訴状のよみあげと、罪状認否。被告は、殺人罪についてはあらそわないが、あらそうところもあるとの説明。
検察の冒頭陳述。安倍晋三元首相の死因は、計2回発砲された手製散弾銃の、2回目の発砲のうちの、2発の命中弾のうち、左上腕部から進入した弾が左右の鎖骨下にある動脈を損傷したことによる失血。銃撃直後に適用されたAEDは作動しなかったので、つまり「即死」だったとわかる。(法的な死亡確認は、搬送先の奈良県立医科大学附属病院への昭恵夫人の到着後=事件発生から5時間半後)
弁護側の冒頭陳述は、なんというか、圧倒的だった。古川主任弁護人が、スライドをつかいながら、法的な争点の説明と、被告(古川氏の表現では「徹也さん」)がなぜこの席にいるのか?という背景の物語。統一協会の長年にわたる邪悪なふるまいが家族の不幸を極大化し家庭を破壊したという、うごかしがたい事実が、心にズシンときた。傍聴席で泣いている人もいた。わかる。実行犯でこそないが、背景の中心にあるのは統一協会であり、それを無視しての審理はゆるされない、という印象をもった。
徹也さんの母親は、統一協会に入信した年に2千万円、翌年に3千万円、その後も計1億円を家族の同意なく「寄進」しており、それが家庭崩壊の原因となった。

休廷

15:30から15:45まで休廷。おおぜいがロッカーからスマートフォンをだして、通信していた。入廷にはふたたびボディチェックをうける。

証拠調べ

検察側による証拠調べの説明。棒読みながら、なかみはすごかった。
事件当日に被告の拠点から多数の手製銃が押収されていたが、その全貌が説明された。手製パイプ銃の種類は、銃身の数で1・2・3・4・5・9がある。のべ10丁製作され、再製作などで現存(押収)は7丁。初公判では、うち3丁が法廷にもちこまれ、裁判官と裁判員の前にかかげられた(5・1・9銃身。事件に使用された2銃身ではなかった)。
物品購入履歴から判明した、製作に使用された可能性のある800点以上・計60万円分の部材の履歴をたどり、押収した部材と照合したとのこと。おおかたは奈良市内のホームセンター(コーナン、ロイヤルホームセンター)で調達。あとネット通販(楽天、アマゾン、モノタロウなど)。パソコンにのこされていた詳細な製作メモもよみあげられた。
水道管などの既製品と12番の散弾薬莢をくみあわせたDIYなので、現場での再装填は現実的でない(火縄銃よりおそいという自己分析)。それで多銃身化をこころみた。しかし運搬・使用には秘匿性が重要なので、寸法(銃身数×銃身長)が問題になる。事件前日の未明に、現場近隣の統一協会施設が銃撃されているが、このときは4銃身が使用された。そこから事件の実行までに、銃身を2つ削除したのだという。
(統一協会施設への事前の銃撃は、安倍元首相への襲撃が政治テロではなく統一協会への復讐であるというメッセージとしての行為。なぜか警察に通報がなかった。通報されていたら悲劇はおきなかった?)
9銃身のみカーボンパイプ製。重量の問題だろう。電気着火の制御は、電子回路によるきりかえではなく、トグルスイッチを操作して通電先の銃身を選択する方式(安全装置としても機能するだろう)。トリガーもトグルスイッチ。電源はラジコン用の7.2Vのバッテリーパック。
手製銃の、重量と、形状のぶかっこう、そして限定的な威力は、裁判上の重要な争点となる。当日使用された「手製2銃身パイプ銃」が、検察のいう「拳銃」または「砲」に該当するかということ。片手で保持して照準をあわせて射撃できるものが「拳銃」とされていたということなので、拳銃ではなさそう。口径は20mmをこえているが、実包は黒色火薬の散弾であって、スラッグ弾や、機関砲の20mm弾とは、威力がぜんぜんちがう。これを砲ときめたら、おかしなことになる。
奈良市東部山間の資材置場でのためしうちを記録した、みじかい動画8本の上映もあった。事件前年の12月と翌1月、それから事件前月の6月のもので、いずれも日中だった。発砲のようすが実感できた。ためしうちの現場からは、事件後の捜索で、ワッズ(散弾銃をうつと弾とともに銃口からとびだす部品)が8つみつかっている。
製作メモでは、火薬の量もよく検討して増減させている。ぜんたいとして、銃と実包を個人で製作し、実用的な性能をだすのはたいへんであることがわかった。よく事故もなくここまでたどりついたなあ、という感慨がわきあがってしまった。元首相の死亡という陰鬱な結果をまねいた事例なのに、設計→試作→検証という、DIY経験者からみると、おもわず感情移入してしまいそうな製作過程の紹介になっていたとおもう。

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裁判をきく「徹也さん」(15:00、松永画)

閉廷

予定時刻を超過して17:15に閉廷。抽選券と傍聴券のリストバンドは切断して回収された。
外へでると、もう暗くなっていた。でてきた人に、メディア各社が声をかけている。自分も2社の人に話をした(朝日と読売のそれぞれ10/29の奈良版の記事にでていた)。

感想

傍聴してよかった。これまで断片的だった話題が、一本にまとまったかんじ。とにかく統一協会の邪悪さがすごい。その巨大な歯車の周辺に、さまざまな歯車が、奇跡のようにかみあって、事件がおきてしまったのだった。たとえば応援演説の日程のくみかたにむりがなければ、それだけで事件はおきなかったのではないか。
結果は重大である。この事件のせいで、安倍元首相が適切な法の裁きをうけて罪をつぐなう、という可能性は消えてしまった。地獄ではなく刑務所へいってほしかった。
被告側は、殺人罪についてはみとめているので、そんなにむつかしい裁判ではないようにおもう。それでも裁判員には過酷だろう。しっかり審理してほしい。市民がどんどん傍聴にいって、おおぜいに見守られながら進行してほしい。
(開催日程と傍聴券の扱いは奈良地裁の「裁判員裁判開廷期日情報」に掲載)

安倍元首相銃撃事件についてのTwitter(X)での松永の関連投稿は、2022/7/8 12:07のツイートが起点。


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メモ:安倍元首相銃撃事件初公判傍聴記(2025/10/28)|松永洋介
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