NPBの「選手ID」について

「選手ID」は私の造語です。

 

 

序章 URLの数字

幼いころ、元巨人ファンの父とプロ野球中継をよく観ていました。当時お気に入りだったのは抑えの速球派右腕マーク・クルーン選手。

  クルーン選手の個人年度別成績: https://npb.jp/bis/players/21625110.html

昔から数が好きだった私は、160 km/h以上の球速表示*1が出るたびに喜んでいたのを覚えています。

 

そんな思い出に耽りながらNPBのサイトを見ていると、未だに数が好きな私はあることに気づきました。

 

  https://npb.jp/bis/players/21625110.html

 

「個人成績ページのURLにある8桁の数は何だ……?」

 

一見すると意味の無い数字の羅列に見えますが、他の選手のURLをたくさん見ていく中で、これがNPBが全選手*2に規則的に割り振った「選手ID」と呼ぶべきものに変換できる数であることが分かりました。

この記事ではその「選手ID」の確かめ方や割り振り方について説明します。

 

第1章 選手IDの確かめ方

個人成績ページのURLにある8桁の数(以下、「URLの数」)を特定の手順で①並び替え、②置換することで全選手に規則的に割り振られる7桁の「選手ID」に変換することができます。

 

ここから、①並び替えと②置換の手順をそれぞれ説明します。

第1節 並び替え

URLの数を次図のように並べ替える操作です。

例:マーク・クルーン選手

URLの数の下4桁(赤線部)を左に、上4桁の下3桁(青線部)を右に並べます。

このとき、左から1番目の数字が除かれますが、URLの数の左から1番目の数字は左から4番目の数字と必ず同じになるので(黄部分)、並べ替えで情報が失われることはありません。

 

第2節 置換

並び替え後の各桁の数字を次の表に従ってそれぞれ置換します。

置換前   置換後
0 5
1 0
2 6
3 1
4 7
5 2
6 8
7 3
8 9
9 4

 

例えばクルーン選手の場合、次図のようになります。

 

 

このようにして、クルーン選手のURLの数「21625110」を選手ID「2005086」に変換することができました。

一つの図にまとめると次のとおりです。

 

 

第2章 選手IDの意味

7桁の選手IDは上4桁下3桁に分けてその意味を見出すことができます。

クルーン選手の選手ID「2005086」について考えてみましょう。

 

上4桁はその選手がNPB球団に初めて在籍した年です。クルーン選手は2005年に横浜ベイスターズに入団しました。

実際には初在籍年以外を表すケースがありますが、それについては後述します。

ちなみに、この方法で確認できる最古の年は1936年になります。

 

下3桁は2005年に初めてNPBに在籍した選手を一定の順序で並べたときにその選手が何番目に来るかを表します。

2005年に初めてNPBに在籍した選手は117人*3おり、それらの選手には一定の順序で20050012005117の選手IDが割り振られています。

クルーン選手はその順序で86番目の選手だということです。

 

 

これらのことから、比喩的な表現を使えば「NPBは各年ごとに選手リストを作っている」と言えるかもしれません。

その場合、クルーン選手は2005年のリストに86番目に収録された選手だと言うことができます。

 

第3章 各年の選手リスト

下記ページにて、各年の選手リストを掲載しています。次章からは、このリストを見ながら読むと内容が分かりやすいかもしれません。

fujimoto-green2.hatenablog.com

 

 

第4章 リストの収録選手と収録順序

各年のリストに①どのような選手を②どのような順序で収録したかは、その年によって異なります。

以下では、各年ごとの①収録選手と②収録順序を説明します。

 

第1節 1936年〜1987年

①収録選手

その年に初めて一軍の試合に出場した選手を収録しています。

なお、球団に在籍した経験があっても、一軍試合未出場のまま1988年までに退団した選手は個人年度別成績ページが作られず、選手IDは割り振られていません。

 

②収録順序

全選手が「漢字の五十音順」で並べられています。(「漢字の五十音順」は次章で説明します。)

 

第2節 1988年

①収録選手

その年に初めて一軍の試合に出場した選手を収録しています。(前節と同じ)

 

②収録順序

  1. 所属球団順
  2. 「漢字の五十音順」

で並べられています。

 

球団の順番は次のとおりです。(括弧内は選手ID)

  1. 中日ドラゴンズ(1988001〜1988006)
  2. 阪神タイガース(1988007〜1988013)
  3. ヤクルトスワローズ(1988014〜1988019)
  4. 横浜大洋ホエールズ(1988020〜1988027)
  5. 広島東洋カープ(1988028〜1988033)
  6. 読売ジャイアンツ(1988034〜1988040)
  7. 西武ライオンズ(1988041〜1988043)
  8. 阪急ブレーブス(1988044〜1988051)
  9. 日本ハム・ファイターズ(1988052〜1988058)
  10. 南海ホークス(1988059〜1988065)
  11. ロッテ・オリオンズ(1988066〜1988069)
  12. 近鉄バファローズ(1988070〜1988074)

この順序になった理由は謎です。

 

第3節 1989年

①収録選手

1989年のNPB球団在籍選手のうち、過去のリストに収録されたことがない選手全員が収録されています。

すなわち、

  • 1989年シーズン開始時点でNPB球団に在籍しており同年まで一軍試合出場経験が無い選手
  • 1989年にNPB球団に初めて入団した選手

がリストに収録されています。

 

②収録順序

  1. 球団順
  2. ポジション順(投→捕→内→外)
  3. 背番号順

で並べられています。

ただし、途中入団選手は入団日順にリストの末尾に収録されます。(途中入団選手の定義については第7節を参照してください。)

 

球団の順番は次のとおりです。

  1. 中日ドラゴンズ(1989001〜1989028*4
  2. 日本ハム・ファイターズ(1989032〜1989053)
  3. 読売ジャイアンツ(1989064〜1989096)
  4. 阪神タイガース(1989101〜1989129)
  5. 福岡ダイエーホークス(1989131〜1989144)
  6. 広島東洋カープ(1989146〜1989176)
  7. ロッテ・オリオンズ(1989178〜1989197)
  8. 西武ライオンズ(1989199〜1989220)
  9. 横浜大洋ホエールズ(1989222〜1989243)
  10. ヤクルトスワローズ(1989246〜1989266)
  11. 近鉄バファローズ(1989269〜1989291)
  12. オリックス・ブレーブス(1989291〜1989303)

この順序になった理由は謎です。

 

第4節 1991年

※1990年は第5節に記載します。

 

①収録選手

1991年に初めてNPB球団に入団した選手が収録されています。

 

②収録順序

  1. 球団順
  2. ポジション順(投→捕→内→外)
  3. 背番号順

で並べられています。

ただし、途中入団選手は入団日順にリストの末尾に収録されます。(1989年と同じ)(「途中入団選手」の定義については第7節を参照してください。)

 

球団の順番は次のとおりです。

  1. 読売ジャイアンツ(1991001〜1991008*5
  2. 中日ドラゴンズ(1991010〜1991019)
  3. ヤクルトスワローズ(1991020〜1991028)
  4. 阪神タイガース(1991030〜1991037)
  5. オリックス・ブルーウェーブ(1991038〜1991042)
  6. 西武ライオンズ(1991043〜1991049)
  7. ロッテ・オリオンズ(1991050〜1991056)
  8. 日本ハム・ファイターズ(1991057〜1991067)
  9. 福岡ダイエーホークス(1991068〜1991080)
  10. 近鉄バファローズ(1991081〜1991087)
  11. 広島東洋カープ(1991093〜1991098)
  12. 横浜大洋ホエールズ(1991099〜1991106)

この順序になった理由はやっぱり謎です。

 

第5節 1990年、1992年〜1997年

①収録選手

その年に初めてNPB球団に入団した選手が収録されています。

 

②収録順序

  1. 日本人選手
  2. 外国人選手
  3. 途中入団選手

で並べられています。

「1. 日本人選手」は名前の五十音順で並べられています。

「2. 外国人選手」は球団順→ポジション順→背番号順で並べられています。球団順は例によって謎の順番で、しかも各年によって異なります。

「3. 途中入団選手」は入団日順で並べられています。

(「途中入団選手」の定義については第7節を参照してください。)

 

第6節 1998年〜

①収録選手

その年に初めてNPB球団に入団した選手が収録されています。

 

②収録順序

  1. 日本人選手
  2. 外国人選手
  3. 途中入団選手

で並べられています。

「1. 日本人選手」は名前の五十音順で並べられています。

「2. 外国人選手」も名前の五十音順で並べられています。姓で登録されている場合は名のイニシャルは省きます。

「3. 途中入団選手」は入団日順で並べられています。

(「途中入団選手」の定義については第7節を参照してください。)

 

第7節 「途中入団選手」の扱い

1989年以降のリストの収録順序でリストの末尾に収録される「途中入団選手」は一般に言うそれとはやや異なります。

ここで言う「途中入団選手」とは前年の契約保留選手を一斉に支配下登録した日より後の日に支配下登録した選手のことを言います。

 

[例4-1]

途中入団選手の例として元巨人のM. シューメーカー投手のケースを考えてみましょう。

 

2022年の巨人は、2022年1月28日に前年の契約保留選手を一斉に支配下登録しました。(公示

シューメーカー投手は2022年の開幕前に入団しましたが、支配下登録を受けたのが2022年2月28日であったため、途中入団選手として扱われリストの末尾に収録されました。

 

(参考)2022年のリスト

    2022001〜2022128 日本人選手

    2022129〜2022163 外国人選手

    2022164〜2022174 途中入団選手

    ※シューメーカー選手の選手IDは2022164

 

第8節 空き番

一軍試合未出場のまま引退した選手の個人年度別成績のページは、引退後削除されます。(削除された個人年度成績のページの例

そのため、全在籍選手に選手IDが割り振られる1989年以降のリストでは、一軍試合出場実績がなく個人年度別成績のページが削除された選手の選手IDが存在することになります。

選手IDから逆算したURLに順にアクセスして各年のリストを作成する作業をするとき、このような選手IDの選手名は空欄になってしまうので、このIDを「空き番」と言うことにします。

 

[例4-2]

下表は2019年のリストの一部です。2019056が空き番になっています。

選手ID 氏名 読み URL
2019055 土居 豪人 どい・ひでと

https://npb.jp/bis/players/01005138.html

2019056    

https://npb.jp/bis/players/21025138.html

2019057 戸郷 翔征 とごう・しょうせい

https://npb.jp/bis/players/41045138.html

 

なお、リストの収録規則から空き番を割り当てられていた選手を推定することができる場合があります。

2019年のリストは、前年ドラフトで指名され入団した選手を五十音順で並べているので(20190012019104)、選手ID2019056が割り当てられていたのは西武の育成選手だった東野葵(とうの・あおい)投手であると推定されます。

 

ちなみに、一軍試合出場実績のない選手の情報*6は「プロ野球在籍者名簿」の方で確認することができます。

npb.jp

 

 

第5章 漢字の五十音順

1988年以前のリストはおおよそ五十音順で選手が並べられていますが、一部五十音順に従わない部分があります。

これは、通常の五十音順ではなく「漢字の五十音順」と呼ぶべき順番で並べられているからです。

この章では「漢字の五十音順」の規則を説明します。

 

第1則 順序の決め方

① ある2選手の順序を決めるとき、まず名前の1文字目どうしを比較する。

② ①で順序を決めることができない場合は、次の文字どうしを比較する。これを2選手の順序が決まるまで繰り返す。

 

第2則 異なる漢字どうしの順序

異なる漢字どうしは一定の順序(以下、「文字順」)に従って並べられる。文字順とは、おおまかにその漢字の読みの五十音順で漢字・カタカナを並べた順序である。

ただし、同じ漢字どうしでもその読み方が大きく異なる場合は、それらは異なる漢字であるものとみなす。

 

[例5-1]

下表は1940年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1940009 小野寺 洋 おのでら・ひろし
1940010 大橋 智干 おおはし・ともひさ
1940011 岡田 福吉 おかだ・ふくよし

(お)→(おお)→(おか)」の文字順に従って並んでいます。

 

[例5-2]

下表は1937年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1937001 安藤 之制 あんどう・ゆきのり
1937002 阿部 重四郎 あべ・じゅうしろう
1937003 青木 正一 あおき・しょういち

(あ)→(あ)→(あお)」の文字順に従って並んでいます。

安藤の「安」は「あん」と読みますが、文字順では「あ」相当の位置にあります。

 

[例5-3]

下表は1986年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1986011 大塚 義樹 おおつか・よしき
1986012 岡島 厚 おかじま・あつし
(中略)
1986033 園川 一美 そのかわ・かずみ
1986034 大門 和彦 だいもん・かずひこ

(おお)→(おか)→……→(その)→(だい)」の文字順に従って並んでいます。

大塚の「(おお)」と大門の「(だい)」は読みが大きく異なるので、文字順では別の漢字として扱います

 

[例5-4]

下表は1954年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1954015 小野 拓 おの・ひろし
1954016 大石 正彦 おおいし・まさひこ
(中略)
1954023 大矢根 博臣 おおやね・ひろおみ
1954024 太田 武 おおた・たけし
1954025 仰木 彬 おおぎ・あきら
1954026 岡崎 恒人 おかざき・つねと

(お)→(おお)→(おお)→(おお)→(おか)」の文字順に従って並んでいます。

「おお」相当の漢字が3種登場しますが、どの年のリストでも「」の文字順が入れ替わることはありません。

 

第3則 同じ漢字どうしの順序

同じ漢字どうしは、その読み方の順で並べられる。読み方が同じ場合は、順序を決められないものとみなし、第1則②を適用する。

 

[例5-5]

下表は1964年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1964001 アスプロ KEN ASPROMONTE
1964002 安仁屋 宗八 あにや・そうはち
1964003 安東 功 あんどう・いさお
1964004 相沢 勝 あいざわ・まさる

(あ)→(あ)→(あい)」の文字順に従って並んでいます。

安仁屋と安藤は「安」の読み方の順(「あ」→「あん」)に従って並びます。

 

[例5-6]

下表は1983年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1983004 井辺 康二 いべ・やすじ
1983005 井上 卓也 いのうえ・たくや

井辺と井上は「井」の読み方の順(「い」→「いの」)に従って並んでいます。

ただし、これには逆の順序で並べられている類例(→例5-8)があり、本当にこの基準で並べられているかには議論の余地があります。

 

[例5-7]

下表は1980年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1980007 大石 友好 おおいし・ともよし
1980008 大久保 弘司 おおくぼ・ひろし
1980009 大久保 美智男 おおくぼ・みちお
1980010 大町 定生 おおまち・さだお

2文字目の「(いし)→(く)→(まち)」の文字順に従って並んでいます。

大久保姓が2人いますが、4文字目を比較して「(ひろ)→(み)」の文字順に従って並べられています。

 

補足:「漢字の五十音順」に従わない例

実際のリストでは、上記の「漢字の五十音順」の規則に従わない例が多数存在します。

これらの例に対応した規則をどのように作るかが今後の課題です。

 

[例5-8]

下表は1936年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1936034 木下 博喜 きのした・ひろき
1936035 木全 竹雄 きまた・たけお

第3則に従えば、「木」の読み方の順で「木全→木下」(「き」→「きの」)になるはずです。

 

[例5-9]

下表は1962年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1962041 佐々木 宏一郎 ささき・こういちろう
1962042 佐々木 幸男 ささき・ゆきお
1962043 佐々木 吉郎 ささき・きちろう

3人とも佐々木姓なので4文字目を比較することになりますが、「(こう)→(ゆき)→(きち)」と順番がバラバラです。

改名の可能性も考えましたが、そういった情報は見つかりませんでした。

類例に「金田正一(かねだ・まさいち)→金子和三郎(かねこ・かずさぶろう)」(1950年)があります。

 

ちなみに、「々」は直前の字と同じ字として扱います。(つまり「佐佐木」とみなして順序を決めます。)

 

[例5-10]

下表は1938年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1938008 内海 五十雄 うつみ・いそお
1938009 楠本 政夫 くすもと・まさお
1938010 小田野 柏 おだの・かしわ
(中略)
1938018 岸本 正治 きしもと・しょうじ
1938019 楠 拡応 くすのき・やすお

楠本の「楠」が「(うち)→(?)→(お)」の位置に並べられています。また、楠(くすのき)とも別の字の扱いをされています。

こちらも改名の可能性も考えましたが、そういった情報は見つかりませんでした。

 

[例5-11]

下表は1964年のリストの一部です。

選手ID 氏名 読み
1964016 小野坂 清 おのさか・きよし
1964017    
1964018 大熊 忠義 おおくま・ただよし

1936年〜1987年のリストで1964017だけが空き番になっています。

永久追放処分を受けた選手の個人成績ページも削除されずに残っているので、不祥事等で削除されたわけじゃないと思うのですが……謎です。

 

 

 

 

 

 

*1:当時のテレビ中継では160km/h以上の数字が赤字で表示されていたので、特に印象的でした。

*2:一部選手を除く

*3:筆者が把握している範囲で

*4:一軍出場実績の無い選手のページは削除されるため、1989029〜1898031の選手が中日、日本ハムのどちらに在籍していたかは未確認。以下についても同様。

*5:一軍出場実績の無い選手のページは削除されるため、1991009の選手が巨人、中日のどちらに在籍していたかは未確認です。以下についても同様。

*6:登録名、在籍年数、在籍球団