Blue Mirror Archive ~ぶるぅみらーあぁかいぶ~ 作:ZIPMA
長くなったので初投稿です。
イサンがいなくなってから少しして。
ファウストが言うには、どうやらイサンは裏口を通じて別の可能性の世界に引きずり込まれてしまったらしい。
イサンにだけ聞こえた声というのは、黄金の枝による自我心道*1の発生のように、イサンの持つ何かしらがその世界と共鳴したことが原因と考えられるようだ。
<う~ん、せめて今のイサンの状況を確認できればいいんだけど...。>
「ダンテ、ファウストはそれを解決する方法を知っています。」
<ファウスト!最高!>
ファウストが私のPDAを操作し...工具を使って何か改造すれば、PDAの画面に映像が映し出された。
<...この椅子に座ってるのがイサン?>
「間抜けな寝顔ですね...。」
とりあえず、イサンの状況を逐一確認しつつ...イサンが帰ってこれる手段をどうにかして探そうか。
――――――――――――――
(映像を見ているダンテ視点で進めます)
「先生...」
「ううむ...。」
「先生...!」
「先生!」
「!」
突然の大声に驚いたイサンは、椅子から転げ落ち、尻もちをつく。
「痛し...。」
「も、申し訳ありません、そんなに驚かれるとは...。」
「いや、安穏なれば、
「...古語?あ、私は七神リン、学園都市”キヴォトス”連邦生徒会所属の幹部です。」
「ふぅむ...リン嬢。キヴォトゥスとは何なりや?」
「嬢...。ごほん。キヴォトスとは、数千の学園からなる巨大な学園都市です。」
学園都市。”翼”*2を学園に置き換えた”都市”*3と考えれば多少は理解できるけど。映像の景色は都市と比べても遜色ない...いや、都市よりも美しい。イサンは何か感づいたようで、少し思案するような表情を見せてから、ふと手鏡をポケットから取り出す。
(もしや...鏡の世界*4にならむや?)
悩むイサンを見て、リンは怪訝な顔をしながら続ける。
「貴方は私たちがここに呼び出した先生...のようですが。」
「先生?私はリィンバゥスカンパニィ*5所属、イサンなり。」
「りんばす...”外”の会社でしょうか?」
イサンのことを先生と呼んでいるってことは、イサンは”先生”としてこの世界に呼ばれたんだろうね。確かにイサンには教職の適性がある。話し方は難しいけど。
「...いや、
「良かったです。先生には...この都市の命運を賭けた仕事をしてもらう必要があるようですから。」
「命運...。私には重すぐと思へど。」
「いえ、先生はあの”連邦生徒会長”が選んだ方ですから。そう気負わなくても大丈夫だと思います。」
「うぅむ...。」
ついてきてください、とリンが言う。イサンは取り敢えず彼女についていく事にしたようだ。
エレベーターに乗り、下に降りていく。ガラス張りの窓から見える景色は、自らが都市と異なる世界に迷い込んだ、という実感をイサンに刻み込む。
(されど、不思議と恐怖は感ぜず。かの時、私を包み込みし光のごとく...鏡に乱反射する色のごとく、この天下は麗しき。)
「先生はキヴォトスの外からいらっしゃったと聞きました。先生がいらっしゃった所とは、多くのことが違っていると思います。」
「私が故郷...都市は、とかくよろづなる建造物が雑多に積み重なりて、風情の欠片もあらざらむかたなりき。キヴォトゥスは...すずろに奇麗なり。」
「良かったです。」
そのまま他愛ない会話を繰り返していると、エレベータ―が目的地に到着したようで、愉快な音と共に扉が開く。
...何やらざわついているみたいだね?
「ちょっと待って!代行!見つけたわよ、連邦生徒会長を呼んできて!」
連邦生徒会長。イサンを呼んだ(とされている)人物。おそらくあの扉と光に関係しているはずの。
「主席行政官、お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況についての納得のいく回答を要求しています。」
「リン嬢、我も気になれば。」
「「「「...誰ですか?」」」」
「なぜ先生まで...。」
リンと他の生徒たちが話したのは、どうやらこの世界は現在混乱状態にあるということだ。そして、その発端は連邦生徒会長の失踪。それによって”サンクトゥムタワー”の管理者がいなくなったことで、連邦生徒会(都市でいう”頭”*6のようだ。)が行政管理権を失ってしまったらしい。
システムは強固で、認証を回避する方法は発見されていなかったが...
「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
「!?」
「ふぅむ。私は既にフィクサァなれど。」
「???」
この世界では”フィクサー”の意味が異なる*7らしい。おかげでイサンは変な目で見られている。
「ええっと、この先生はいったいどなた?」
「キヴォトスではないところから来た人のようですが。」
「イサンという。」
「ええっと、それで終わりですか?」
「うむ。
「ダジャレ...。」
「ごほん、こちらのイサン先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「うむ。」
「なんでちょっと得意げなんですか...。」
「みなも自己紹介をやらず?」
「わ、私は――」
そして、会話は進む。どうやら、イサンは”連邦捜査部「シャーレ」”の担当顧問としてここに呼ばれたらしい。そして、その部室は30km離れた場所にあり...。
(ドカァン!!)(ドパパパ!!!)
「痛たたたたた!なんで私が不良と戦わなきゃいけないのよ!」
「シャーレの部室を不良から取り返さないといけないですから....。」
現在、不良に占拠されている状態にあるらしい。
「さしも銃を使ひて...破産すまじや*9?」
「外がどうかは分かりませんが、キヴォトスでは銃や弾は安価ですよ。」
「うぅむ...。」
「伏せてください、先生。」
「おお、ハスミ嬢。」
「ユウカは当たっても平気そうにしていますが、あれは玩具ではありません。外の世界の人間――、先生にとっては、一発でも致命傷になり得ます。」
「心配せずとも。最後の血球が一つさえ残りたらば、命はなんとかも保存さるれば。」
「保存...?」
「う...。」(
そうだ、今までは私が常に近くにいて...囚人の誰かが死んだときは、時計を回して復活させていたけど。今は私は近くにいないし、ここで時計を回したときに別の世界にいるイサンが生き返るかはわからないし。
今は生徒に戦闘を任せて、安全に移動してほしいんだけど...。
「なれど、安穏ぞ。これにも、多少は戦の心得があり、施術*11も受けたれば。」
「せ、先生――!」
ハスミと呼ばれた生徒は驚いた様子で、すぐにイサンを止めようとするけど――
弾く
(キィン!)
「うむ。
それは杞憂だったみたいだね。イサンは太もものホルスターからナイフを取り出すと、銃弾をナイフで弾きながら走り出した。
「外の人って...こういう感じの人ばかりなんでしょうか?」
「おそらく違うと思いますけど...。」
「と、とりあえず先生に続いて行くわよ!」
注釈が本当に多い。すみません。
以上。