貴重な休日が全て勉強に潰えました。
そういえばグリスくんの身体的特徴を書く隙を逃したのでここに書いておきます。
身長:170㎝ くらい
年齢:27歳
髪色:黒
目の色:灰色
大雑把にしか決めていませんが、このくらいの方が想像の余地があるので良いのです。
五分もかからず床に撒かれたガラス片を掃除し終える。
「それじゃあ気を取り直して、しゅっぱーつ!」
ノノミのその声を合図に皆、各々の荷物を持ち学校を出る。
「.....やはり慣れないな、この光景は」
砂に塗れた廃墟が、見渡す限り広がっている。もちろん人気はなく、目に見える静かさからは、一種の神々しささえ感じてしまう。都市にいては中々お目にかかれない光景である。そこらに銃痕を確認する。さっきまでアビドスがここで戦闘していたのだろう。
ふと、違和感に気づく。
「綺麗だな」
そう、綺麗すぎるのだ。さっきまでここで銃撃戦が行われていたのにも関わらず、少し血が垂れた程度の血痕しかなく、死体どころか、血溜まりのようなものも見当たらない。ここで戦いが起こったようには見えない。しかしそこら中に銃痕があり、確かにここで銃撃戦が行われていたのは明確だった。ある意味不釣り合いな光景に違和感を覚える。
(そういえば、あいつらの服装もいやに綺麗だな...血も付いていない)
彼女らが戦闘をしていたのを見ていた時から、窓を破り俺と会うまでの時間に清掃をする時間も、着替える時間もなかったように思える。
(聞くか)
とりあえず、常に前で戦っていそうなホシノに聞いてみる。
「なあ、さっきまでお前らが戦闘をしていたにしては、ここら辺、やけに綺麗じゃないか?」
「うん〜?おじさんは普通の光景だと思うけどな〜」
「そうか?普通、戦闘があったならもう少し血が飛び散って"あの"
"少しこちらに来てくれませんか"
ホシノとの会話を遮るようにして、先生からの呼び出しの声がかかる。
「ん?どうした?」
"まあ、少し"
"ごめんね、ホシノ。会話を遮っちゃって"
「いいよ。あんまり気にしないで〜」
俺は先生の方へと歩いていく。彼女らからは少し離れたところで、少し話すくらいなら彼女らには会話の内容は聞こえないだろう。
「で、何の用だ?」
"少し説明が足りていないところがありまして..."
「...敬語はいらん、話しやすい話し方で話してくれ」
"じゃあ、お言葉に甘えて"
先生は咳払いをし、改めて話を切り出す。
"...その、この世界について、まだ説明が足りていないところがあって"
「.....まだ情報が増えるのか」
ただでさえ後頭部をバットで殴られるような衝撃を伴う情報が次々と出ているのに、さらに情報が増えるのは俺の脳のことを思ってなさすぎなのではないかと思う。
"この世界の倫理観についてなんだけど"
"この世界は銃撃戦が日常的に行われているし"
"それによって人が死ぬことはないんだ"
「.....は?」
そこから先生に聞いた話は、これまで聞いたどんな話よりも正気を疑うような話であった。
キヴォトスでは日常の口喧嘩のレベルで銃撃戦が起きるし、銃や銃弾は安いし、キヴォトスに生きる者たちは銃撃どころか、目の前で爆発が起きても悪くて骨折程度で済むし、死人は出ないし、骨折したとしても自然回復だけで数日、極端なやつは数時間で治るらしい。
「...思ってたより魔境だな、キヴォトスって」
まさか人生で魔境なんて言葉を使う日が来るなんて。
はあ。とため息をつく。というか、ため息しか出せない。あまりにも価値観が違いすぎる。銃や銃弾が安いのはまあ、理解できる。都市において銃や銃弾が高い理由は頭が馬鹿みたいな税金をかけているからで、頭が存在しないキヴォトスにおいてそういったものが入手しやすいのは筋が通っているから。
しかし、銃撃戦が日常的に起きているのに、死人が出ないというところは納得がいかない。銃というのは人を殺すために存在しているのであって、それが人を殺せないとなるとそれは銃が存在している意味がないのではないかと思う。
まあ、人を殺さずとも生きていけそうなところは好感が持てるが。
"それで、なんでこの話をしたのかというと"
"さっき、あなたは戦闘ができるって言ってたよね"
さっきまでの発言を思い出す。
「ああ、言ったな」
"あなたがやる戦闘を外の世界の戦闘ではなく、キヴォトスの戦闘に合わせて欲しいんだ"
「成程...」
この世界では死人が滅多に出ないらしい。そうなると彼女らも死体を見たことがないということになる。きっと先生は彼女らにそんな残酷なものを見せたくないのだろう。
「ああ、わかった」
俺はそう返事を返す。
"わかってくれてありがとう"
それからしばらく、先生からキヴォトスの倫理観についての授業を歩きながら受けて、彼女達に合流した。
「そういえば、グリスさんはどうやってアビドスに来たのよ」
セリカがそう聞いてくる。
「どう来た。って言われてもな」
「キヴォトスのことを何も知らないで、銃もなしにどうやってきたのよ!」
どうやらセリカは、彼女らの中でも特段、俺のことを警戒しているみたいだ。
とは言っても彼女が抱いている疑問は当然のものである。
砂漠に放り出される前のことを思い返してみる。
血に塗れた部屋と、何かの儀式のように並べられた死体。部屋の真ん中にはあいつが立っていて.....
「........」
「部屋の中にいて、気づいたら光に包まれていて、上下もわからないまましばらくその光に包まれていたら、気づいたら砂漠の真ん中に立っていた」
「何よそれ⁉︎めちゃくちゃ怪しいじゃない⁉︎」
セリカはとても俺を怪しむ。
「実は私たちを騙して、何かするためにここにいるんじゃないでしょうね!」
口に出して我ながらにして思ったが、俺はすごい怪しいことを言っている。
しかし全て事実である。
「まあ。俺が怪しいという気持ちもわかる」
アヤネの声が通信機器越しに聞こえる。
「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました!」
「半径15km圏内に、敵のシグナルを多数確認!」
その声が聞こえ、皆すぐに戦闘体制に入る。
「そういう時は言葉ではなく、行動で信じてもらうだけだ」
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