捨てられない   作:レモン大好き

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ちょっと物語の進行のスピードが遅い気がしますね...きっとこれから上がっていくと信じています。


恩人

「世界の裏側か、異世界にでもきてしまったようだ」

少し、顔を上に上げ、天を仰ぐ。短時間で多くの情報が入ってきたのだ。少し疲れてしまった。

「異世界、ですか?」

アヤネがそう言う。

「...今俺がお前らに聞いた単語は、俺が住んでいたところにとっては知っていて当たり前。お前らにとってのキヴォトスや連邦生徒会と同じくらい、俺にとって当たり前の単語だ」

「そしてさっきの俺の発言には、そんな俺の常識が全く通じない、どこか遠いところに、いつのまにか来てしまったという意味が込められている」

「な、成程...」

アヤネは納得したようで、その言葉を最後に口を閉じる。またもや、沈黙が流れる。

「...とりあえず、話をアビドスの状況の話に戻そう。随分と話が逸れてしまったからな」

まぁ、話が逸れてしまった原因は俺なんだが。

「そうですね、それでは話を戻しますと.....」

 

 

それから、アビドス周りの多くの話を聞いた。

救援要請を受けたシャーレ...先生がすぐにアビドスに向かい、遭難し行き倒れてしまったこと。

倒れていた先生の横に俺が倒れており二人まとめてシロコが発見し、学校まで二人とも運んでくれたこと。

比較的状態が良くなかった俺を、彼女達が応急処置をし、保健室に寝かせてくれていたこと。

彼女らの悩みの種であるヘルメット団を、先生が彼女達の指揮をして撃退したこと。

アビドス高等学校には彼女らしか生徒はおらず、アビドスを蘇らせるためにアビドス対策委員会として活動していることなど様々な話を聞いた。

「まあ、とりあえずお前らの状況は把握した」

「お前らが俺の命も救ってくれたことも」

改めて彼女らの方へと向き直る。

「少し遅くなってしまったが、命を助けてくれたこと、感謝する」

彼女ら方へ、深々と頭を下げて礼を言う。シロコに見つけてもらえず、彼女らの応急処置を受けられなかったらきっと俺は死んでいた。命を助けてもらったのに礼も言わないのは流石に駄目だと思った。

ノノミが口を開く。

「いえいえ、そんなにお気になさらず」

「それに、グリスさんをここまで運んできたのはシロコちゃんだしね〜」

「当然のことをしただけ」

彼女らは皆、当然のことをしたという顔をしている。

「...気にしないわけにはいかない、俺は恩は返す主義だからな」

「命という大きな恩をもらったんだ、戦闘も多少できる。俺にできることなら手伝おう」

この提案には様々な意図がある。彼女らに助けてもらったから、彼女らを助けたいというのも本心だが、俺はキヴォトスについての理解がないに等しいため、彼女らを通じてこのキヴォトスへの理解を深めたいという意図もある。

「それなら、おじさんが練った作戦を手伝ってくれないかな〜」

「え⁉︎ホシノ先輩が⁉︎」

「うそっ......⁉︎」

セリカとアヤネから驚きの声が上がる。たった一つ作戦を練っただけでここまで驚かれるということは、普段の態度がよほど良くないのだろう。

「普段、どれだけサボればここまで驚かれるんだ...?」

「いやぁ〜その態度はいくら私でも、ちょーっと傷つくかな〜。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさ〜」

ホシノは腑抜けた声で後輩達へのリアクションを取る。

「はあ。で、お前が練った作戦というのはどういうものなんだ?」

彼女は実力は確かであるから、練った作戦というものも、まともなものである...と信じたい

「今日、襲撃してきたヘルメット団は数日もすればまた攻撃してくるはず。

ここのところそういうサイクルが続いているからね〜」

「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさ〜」

「い、今からですか?」

アヤネがホシノの作戦に軽い質問をする。

「そう。今なら先生も、お手伝いさんもいるし、補給とか面倒なことも解決できるし」

さっきの後輩達の驚きぶりからは考えられないほど、合理的で悪くない作戦をホシノは提示した。

「なかなか悪くない作戦だな。乗った」

「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」

「良いと思います。あちらも、今から反撃されるなんて、夢にも思ってないでしょうし」

「そ、それはそうですが.....先生はいかがですか?」

シロコやノノミが作戦を飲み込んで知る中、アヤネは先生に確認を取る。

"うん。なかなか良い作戦だと思うな"

「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますか〜」

「善は急げ、ってことだね」

「はい〜それでは、しゅっぱーつ!」

「ちょっと待って!」

椅子から立ち上がり、ずっと壁に立てかけてあった鎌を取ろうとしたとき、セリカの静止の声が部屋に響いた。

「セリカちゃ〜ん、どしたの〜?」

ホシノが静止の声の意図を聞く。

「ヘルメット団を襲撃するのは良いんだけど...」

「先にこの部屋を掃除しない?」

そう言われて部屋を見渡すと、さっきホシノが窓をぶち破った時のガラス片がそこら中に落ちていた。みんな忘れていたという顔をしている。様々な情報が短時間で交換されたのだ、少し忘れ事があってもおかしくはない。

「...その指摘は的を得ているな」

その声を合図に、皆掃除に取り掛かった。




私が真に書きたいものを書くには最終編までいかなければいけないのに、このペースだとあと何年かかるかもわかりませんね。

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