透き通る青の仮面(ペルソナ) 作:仮面をつけた一般キヴォトス人
そして水無月むにさん評価9ありがとうございます!
現状と再会
(……夢じゃない。かぁ……うーむ、どうしたものか)
鏡を見たあと崩れ落ちながらに思考する。ベットに行けばいいと言えばそうなのだが、言っても、立ち上がるにはスタンドを再び杖にする必要があるし、そもそも足に力が入らないのだ。
(何日か寝込んだ後の力の入らなさを強くして再現した奴みたいな……にしても)
琥暁は今の自身の身体を見る。点滴のを刺しているので顔色や肌色が悪いということは無いが、些か小柄という印象を受けた。
(この体が何歳の身体かは知らないけど、社会人が憑依するのは罪悪感あるわ……)
立ち上がることが出来ず、とりあえずは這って近くのソファーに移動し、ソファーに身体を預ける。それだけでも体力を使ったのか息を切らす。
(虚弱体質か何かか!?いや、普通に考えたら匍匐前進は疲れるか)
苦笑いを浮かべてソファーから天井を見上げて、
(あー、ベルベットルームのことは本当の意味で夢だと思ったけど、それ自体は夢じゃなかった。ここが何処で、今の自分がどうなってるか知らないけど、何かは頑張らないと行けないんだよなぁ。まぁ、それ以前に喉が乾いたけど……)
はぁ、とため息をついたところで、異変に気がついたのかドアが勢い良く開けられる。普通に考えれば、心電図の表記や音が変化すれば看護婦などが駆けつける。
「大丈夫ですか!有馬さん!」
勢い良く扉が開かれて入ってくるのは青を基調とした制服にエプロンとナースキャップ姿の少女達だ。
(え?子ども?大人の看護婦じゃないんだ?え?どゆこと?)
琥暁が困惑しながらその光景を見る。そして琥暁を見つけた少女達が
「有馬さんが意識を取り戻されソファーに!」
「私は部長呼んできます!」
「有馬さん!ベットへ行きますよ!」
「長い間眠っていたから声が、喉が乾いているんですね!」
「水ならここにあります!」
凄まじい連携でそそくさとベットに連れ戻され拘束される。そして、琥暁の異変に何かに気づいたのか顔を真っ青にしながら
「ね、ねぇ…、あの人意識あるんだよね?こ、これ……風紀委員会にも連絡するべきじゃない?」
「お、落ち着きな……さいよ!こ、コレは部長が来てからでいいじゃない?」
自分を見ながらヒソヒソと話す様子を見ながら琥暁は首を傾げながらに考える。
(風紀委員会?部長?話を聞く限り部活か何か?それに、あの制服なんか見たことがある気が……気の所為では無いな。なんか見たことがあるのは確定なんだけどな。と言うか名前に変化は無いのは幸いか)
そんな風に考えている間に
「有馬さん水です。ゆっくり飲んで下さい」
ナース服の少女の一人が水を飲ませてくれた。そのお陰もあり、喉が潤い声が多少なりとも出せるようになる。
「あ、ありがとう、助かっ……た……?」
そこで琥暁も気づく。いや、本来であればナース服の少女達が入ってきた段階で気づくべきだった。何故なら、少女達の頭には天使の輪っかのようなものがあったのだ。
(も、もしかして……もしかしなくてもヘイローか?って、ことは……そういう事か!?この世界は……!)
答えにたどり着こうとした瞬間。その人物は入ってくる。
「意識が戻られましたか、ここが何処で私の事分かりますか?"有馬 コトネ"さん」
白髪に黄色の瞳に黒い少し見える角のようなもの、ほかの少女同様にナース服と帽子を被っていて、ヘイローがある堂々とした少女が声をかけてきた。その人物は覚えがある。
「氷室…セナ…」
「覚えているようですね。意識もはっきりしているようで良かったです。ですが、私達はある問題に直面しています。いえ、問題と言う状況では済まされません」
「そ、その前に!」
セナはそう言う。しかし、琥暁はその問題より、気になった事を言う。いや、確認しないと成らない。
「"有馬 コトネ"って俺の名前で良いの?」
その質問を投げ落とした時。その場は静寂に包まれた。表情は一切変わらないがセナも内心は動揺していた。だが、直ぐに理解し
「なるほど、そういう事ですか。それでは、今の貴女の事を端的に言います。貴方の名前は有馬 コトネ。進級していればゲヘナ学園の3年生で、風紀委員会に所属しています。現・風紀委員長、空崎ヒナとは旧知の仲。そして、貴女は1年半前に風紀委員会の仕事の際に同じ風紀委員を庇い、ヘイローが破壊される手前までの重症を負い今まで眠っていました」
それを聞き驚く。琥暁は知っている。ヘイローが破壊される程の重症。それが安易に殺される、死ぬ直前だったという事を示唆されている。つまり、それだけの攻撃をもらい何とか一命を取り留めたということだ。だが、
「その弊害かは不明ですが、今の貴女自身の記憶の欠如とヘイローの消失です。このような事例は今まで聞いたことも、見たこともありません」
前者も厳しい話だが、後者は死活問題とも言える。ヘイローが無いキヴォトス人。神秘が失われてしまった例外の存在として今ここにいると言われているのだ。
「しかし、貴女はヘイローを無くそうともこうして生きているし、話をすることが出来ている。ここから先は専門外です申し訳ありません」
表情に変化はあまり見られないが、何処と無く悔しさを滲ませているように感じた。
「あ、謝ることなんて無い。自分の事を、自分と関わってきた事を覚えていないのは自分のせいだ。でも、名前を覚えているわけだから、そこからやり直そうと思うよ。まぁ、自分の名前を忘れていたのは参ったけど」
そう言って笑って誤魔化す。だが、本当は知らない。この体の記憶は無い。あるのは知識だけ、それも人物と朧気な所属だけ。予想以上に困惑する状況に投げ出されたものだ。
「では、改めて自己紹介しましょう。私はゲヘナ学園3年生、救急医学部 部長 氷室セナです」
「ええと、有馬コトネでいいのかな。とりあえずよろしくなセナ!」
「改めて、よろしくお願いします。とりあえず、貴女が目を覚ましたので風紀委員会に連絡します。見舞いに来て、記憶喪失とヘイロー喪失は同僚は受け入れ難いでしょう」
そういいセナは病室を出る。残された琥暁ことコトネは仰向けになり天井を見る。
(変わった定め。そりゃ、こうなれば変わった運命って言うわな)
ため息をつきながら、枕元の近くの台を見る。そこには契約者の鍵と
(召喚機だよな……。多分、俺に合わせてのサプライズ的なもんだとは思うけど)
そう思いながらも、疲れたのか眠気が襲ってくる。
「一人称も私……にした方が……良いのか?郷に入っては郷に従えってか?本当になんか疲れた」
そのまま微睡みに身を委ねようとすると再び扉が勢い良く開かれる
「コトネ!」
驚き急いで上半身を起こす。そこには、ゲヘナ学園・風紀委員会の委員長にして、キヴォトス最強格の一人。空崎ヒナが立っていた。急いで来たのか、少し髪が乱れており、汗もかいていた。そして、彼女はコトネを見ると目に涙を浮かべた。その姿を見ると、心が痛んだ。
「ヒナ……!」
気がつけば自然と名前が口から出ていた。ヒナは涙を零し、コトネの傍に行く。そして
「ごめん……なさい!泣くつもりなんてなかったのに……!名前だけしか覚えていないって聞いていたけど!貴女の顔を見たら…コトネ…!」
その時、思った。
(ヒナとの思い出があるとしたら、それはゲームで先生……プレイヤーの自分とゲームのキャラクターとしての思い出だけ。この、有馬コトネ視点の空崎ヒナに関する記憶はない。俺の記憶に一切無い。だけど)
そっと頭を撫でる。ヒナは驚いた表情でコトネを見る。コトネは優し表情と少し涙を浮かべで。
「ヒナ、泣かないで。私は
真っ直ぐに見て言う。ヒナは涙を拭い
「う、うん!」
頷いた。ヒナを見た時に泣いて欲しくないという気持ちがでた。それは心の底から思った事だった。
「またね、コトネ」
「うん、怪我はもう無いし、近々、執務室まで行くよ」
そう言って見送る。そしてその後に来たセナに
「怪我は良くなりましたが、気をつけてください。今の貴女にはヘイローはありません。出る時には私が護衛に着きますからご安心を」
そう言われて一日が終わる。
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アビドスとゲヘナの風紀委員会と迷い、ゲヘナにしました!
アビドスならホシノがさらに曇ってしまわれる。
作者はホシノとヒナ、ミカも好きです笑