何気に初登場の人物の視点でお送りします。
1:特異現象
深い藍色に染まった空との対色のせいか、夜のミレニアムは昼間以上に明るく感じる。
もちろん人気のない為でもあるけど、そのおかげで私を待つ生徒は一目で見つけられた。
「あっ、先生。来てくれてありがとう。
...急にごめん、大事なことだから誰にも気づかれる訳にはいかなくて。」
そして、今回私がお邪魔することになる...特異現象捜査部の一員だ。
「今はまず、誰かにつけられる前に先生を案内しないと。ついてきて。」
念のために足跡を抑えながら、エイミについていく。
到着点にあった扉を開けると──
「どちらかと言えば、エネルギーよりかは表象に近いらしいな。
手相とか風水とか...アレらも記号の配列と取れねぇか?そういう記号の配列が導く因果が願望力の本質だ。一体何がどうなって運勢に働いてんのかは、関係者しか教えてもらえねぇようだが。」
「なるほど...願望力理論の整合性が証明できれば、占術も科学に基づいた理論足り得ますね。
残雪に独り芽吹く高嶺の一輪たる私が占いに惹かれたのも、偶然ではないという事ですか...ふふふふっ。」
儚げな車椅子の生徒とサイバーチックなロボットの男性が、聞いたこともない理論について語らっていた。
「改めまして...お待ちしておりました、先生。
あなたとは初めてお会いしますね。私の名はヒマリ。このミレニアムサイエンススクールにおける、天才ハッカーです。」
“自分で言っちゃうんだ...。”
自信に満ち満ちた生徒は結構いるけど、ここまで自尊心を前面に押し出す生徒はなかなか見なかったかもしれない。
それより、ハッカーと名乗ったということは...ヒマリはヴェリタスと関係があるのだろうか?
「気にするだけ野暮だよ、先生。俺も長ったらしい肩書きを指摘する度、熱烈なスピーチを聞かされる羽目になったからな...」
「何をおっしゃいますか...私という無二の存在を端的に表現するには、先程の肩書きでも足りないほどですよ、マックス氏。」
「はいはい。指折りの駿才様への修辞など、いくらあってもよろしゅうございますね...。
しれっと名前が出てきたと思うが、マックス・ポロコフだ。普段はミレニアムの端っこで工房を営んでるんだが...つい先日、部の特別顧問として召集されてここに来た。」
慣れるしかないと言わんばかりにヒマリを受け流しつつ、彼は自己紹介へと持っていった。
“まあ...とにかくよろしくね。ヒマリに...マックス。”
今は話の腰を折らないよう、当たり障りない挨拶で流す。
実を言えば、マックスという大人を私は信用していなかった。
カイザーコーポレーションにゲマトリア──拒否する力もない生徒を食い物にしたりしようとする大人の集団は、学園都市の裏にも確かに潜んでいたから。
もちろん、ロボットやら獣やらの姿をした人々は大半が普通の市民だ。
アビドス自治区にいたラーメン屋の大将のように、むしろ気のいい大人だっている。
それでも、遭難者としていきなりミレニアムに現れたという彼を...
例え実際の人柄に触れて後悔することになってでも、“先生”であることを任された立場として、疑りを入れずにはいられなかった。
「そちらの方と同時期に、私も「特異現象捜査部」の部長に任命されました。
本来所属していたヴェリタスのことは一旦、チーちゃんに全て任せています。」
ヒマリの言う「チーちゃん」とは、おそらくヴェリタス副部長、
彼女にもシャーレの任務に参加してもらっているけど、ヒマリのことは幼馴染として度々言及されている。
チヒロの責任感の強さを誰よりも近くで見てきたからこそ、快く部活を任せられているのだろう。それでも、一部活の部長が(後から知ったことではあるけど、それも最高学位の『全知』にあたる重要人物が)所属を移さざるを得なかった理由が気掛かりだ。
その後は、主にエイミによる部の説明を受けた。
「特異現象捜査部」。セミナーの会長が直々に設立した傘下組織で、特異現象...科学的な解明の難しい現象の調査・研究を目的とした部活。
今まではエイミだけが属する、活動内容のないペーパークラブのようなものだった。
そして先日、会長のリオによってヒマリが部長へ、マックスが顧問へと任命された。
「まさかリオが作った怪しい組織に、突然私が部長として任命されるなんて...しかも部員はひとり。」
「ヒマリ部長も入れてふたりだよ。部員ではないけどマックスさんもいる。」
「ええ、そうですね。健康的な路線のエイミと病弱系美少女の私...そして肉体的強度に捉われないマックス氏、調和のとれたメンバーとなりそうです。」
「俺は元々部外者のはずなんだがな...二人でもバランスを取れるように頼むぞ、仮に俺がいなくなった時に困るだろ?」
先日結束したにしては、かなり打ち解けたように見える。特にエイミとヒマリは個性の方向性が別の方向に突き抜けていたけれど、二人とも馴染めているようで何よりだ。
「...ところでここ、ちょっと暑くない?」
そういえば、エイミはかなりの暑がりだった。普段からものすごく薄着で歩き回るものだから、自分の身体をもっと大事にしてほしいと何度注意したことか。
「いえ。私にとっては今も寒気がするほどですので、そのエアコンのリモコンは置いてください、エイミ。
...あの、代わりに服を脱ぐのもやめてください。」
一方のヒマリは、エイミと適温が違うようだ。
どちらでもない私が快適に感じる室温だったから、こちらも結構極端に寒がりなのかもしれない。
「注文が多いな〜...それじゃあファスナー開けるだけで我慢するね。」
「はい?ファスナー...いえ、理解しました。絶対にやめてください。」
この二人、少なくとも空調では揉めるかもしれない。
「おっと...意外な所で新作が役に立ちそうだな。」
見かねたマックスがエイミの方へ向かっていくと...
ペチン
「...?マックスさん、今貼ったの何?」
風変わりな形状の鞄から、湿布のような長方形の何かをエイミの頸へ貼り付けた。
「まぁ付けてなって。...よっと。」
彼が言い終わって間も無く、湿布が虹色の光を発し始めた。
光は万華鏡のように移ろっては、その色を変えていく。
「...すごい。涼しくて気持ち良い。」
「虹漿式冷却シートだ。素材の安全性が課題だったんだが、実用的な範囲に調整できたんでね。
向こう二時間はそれ一枚で快適に過ごせるはずだ。俺は室温なんて関係ねぇし、ヒマリに合わせて上げておけばいい。」
またもや私の知らない技術が出てきた。ミレニアムはキヴォトスでも最先端の技術が集まる学園だけど、生徒の直接携わらない企業までもがハイテクなのか。
「気が利くね。これのためだけに常連になってもいい?」
「水日曜以外ならいつでも来な。
あとは、ヒマリに合わせれば空調問題は解決だな。
先生、あんたも暑かったら貼っとくといい。」
マックスがこうした場面で動くタイプの人間であることが分かり、ひとまず安心した。
特異現象捜査部の顧問を任されたことも納得できる。まだ完全に信頼はできないが、信用くらいはできると判断することにした。
「お気遣いありがとうございます。
お陰様で、麗しくもか細き病弱美少女の身にも快適な空間が保証されましたからね。」
“ありがとう。ところで、私は何を手伝えばいいのかな?”
「ああ、そうですね。そろそろその本題に入りましょうか。
ご存知かもしれませんが......私はミレニアムの生徒会長である「リオ」と、長い間対立してきました。
全てを統制しようとするビッグシスターな彼女と、全ての統制に反対するコピーレフト信者の私は、そもそも水と油といいますか。
同じ水で例えるとすると、リオが下水道に流れる水とするならば、私は澄み切った純正のミネラルウォーター...
それとも、浄化槽に浮かぶ汚い水と言った方がよろしいでしょうか。私は万年雪の結晶、といったあたりで。
いえ、汚水、ドブ水...他にもっと、適切な表現が...」
「会長さんを随分敵視してるな。せめて価値のある水に例えてやれ...」
「...まあ、ビッグシスターとしての彼女の実力は確かですからね。不本意ではありますが、富栄養化して濁った水域あたりで妥協しておきましょうか。」
「部長、本題...マックスさんも乗らないの。」
「失礼しました。とにかく、リオの頼みとあらば「何でも」「絶っ対に」断るつもりでいたのですが...
少々込み合った事情で、断れないお願いをされてしまいまして...そういった経緯で、この『特異現象捜査部』の部長を引き受けることとなったのです。」
「そしてその『お願い』の内容を果たすためには、『イーリス工房』、そして先生の属される『シャーレ』の手助けが必要不可欠でして...そういった事情で今回、先生にお越しいただきました。」
ミレニアム随一の天才、さらには学園外の組織をも巻き込む「お願い」。
“その『お願い』って...?”
「......
「先生も聞き覚えがあるかと。何せ...この未曾有のAIと初めて接触したのは、『シャーレ』ですよね?」
デカグラマトン...それに関係する存在の姿を、今でも覚えている。
アビドス砂漠でも何度か出現を確認し、総力戦にもつれ込んだ大型機械。
「神を研究し、その存在を証明できれば...その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である......
その仮説に基づき設計された、対・絶対者自立型分析システム。
つまるところ、「神性を探し出す人工知能」。
私達の方でも、色々と調べてはみたのですが...まずもってその仮説からして、先生からの報告書以外のどこにも見つけられませんでした。
その報告書に書かれていた『ゲマトリア』という集団も、未だにその実在さえ確認できていません。」
「『ゲマトリア』、ねぇ...。」
目線が不明なせいで詳細な反応は読み取れなかったが、マックスにも心当たりがあるようだ。彼は微かに呟いていた。
「つまり...シャーレの報告だけを元に調査を進めるには、あまりにも不確定要素や不明瞭な要素が多すぎたのです。
これは先生を疑っているという訳ではありません。あくまでも、現状についてのお話です。」
「先生を疑ってたら、そもそもここに連れてきてない。」
「ええ、その通りです。むしろ私達はシャーレの手助けが欲しいのです。」
当事者である私にしてみれば、実体験として目撃したものなのだが...話題に上がったのは、いずれも冗談のような代物ばかり。
それらの情報を掴むのは、雲を掴むのと同義とされても無理はない。
“信頼されてるのは嬉しいけど、私の報告以外に目ぼしい情報は本当になかったの?”
「一件、デカグラマトンとの関連性が疑われる事件があります。
先日、ミレニアムの通信ユニットAIである『
『
それが謎のAIのハッキングによって、たったの0.00000031秒しか耐えられませんでした。」
「俺も調べてみたんだが、その秒数は『ハブ』にとっての96tick...そんぐらい高度な代物ですら、100回行動を取るまでもなく乗っ取られたって意味だ。」
それだけのAIが一瞬にしてハッキングされる。私にはいまいち想像がつかなかったが、瞬きする間に神経毒が全身に回っているようなものだろうか。
「私は...そしてリオは、そのハッキングを行ったAIこそが『デカグラマトン』なのではと考えています。
もちろんただの推測ではなく、きちんとした理由もありまして──
『ハブ』がハッキングされ、AIが消えた後...
ミレニアムのネットワークにこのようなテキストが現れました。」
竟に、摂理へと至る
嗚呼...我が
我が異名は「輝きに証明されし栄光」...
我が名は
聖なる十文字の神を証明し、奇跡を予言する8番目の預言者なり。
「愉快犯のイタズラにしちゃ、きな臭すぎるよな。」
「聖なる十文字...これはつまり、
ここからさらに推測できることが二つあります。
一つ、デカグラマトンはAIと接触してそれらを自分の部下...つまり、『預言者』とする。
リオはこれを一種の人格モジュールに対するハッキングと見ているようですが、
「ヒマリと俺は、コイツを『感化』と捉えてる。
ただコードを上書きして『洗脳』するんじゃねぇ、AI自らの意思でデカグラマトンに与させるって意味だ。」
『感化』...AIに決まった命令以外を聞く意思があるということ?
いまいち理解が及ばなかったが、真剣な声色で解説をしている二人に説明してもらうのが先だろう。
「そして二つ、その結果『預言者』たちは『デカグラマトンそのもの』になるのではなく、独立した個体として活動する。
これは、自身を『聖なる十文字の神を証明する預言者』と宣言していることからも読み取れます。
デカグラマトンは預言者を『統制』してはいません。何かをするにあたって、もし可能なのであれば対象を『自分自身そのもの』あるいは『自身の一部』にして統制してしまうのが、一番簡単なはずです。
にも関わらず『感化』という非効率的な手段を選択した理由──その一つに、預言者に宿る
“ということは...預言者ごとに別々のやり方で神様を分析させたかったってこと?”
「鋭いですね。概ねその認識で間違いないでしょう。
叡智の権化たる私の頭脳をもってしても、一人ではそのように非効率的な手段を取る理由を仮定するには至りませんでした。
『感化』させることの整合性を指摘したのが、そちらのマックス氏です。」
「とはいえ、俺の意見も推測の域を出ねぇ。
結局はこの手で調べ尽くすしかねぇってことさ。」
「そのために...先生、『デカグラマトン』の研究分析...そのために、『特異現象捜査部』に力を貸していただけませんか?」
学園間の条約、廃校の危機、そして廃部の危機──
私は今まで、生徒達だけで乗り越えるにはあまりに非情な苦難を、本人達と共にしてきた。
結局のところ、どんな時でも生徒達自身が歩み出すきっかけが必要だった。私の仕事は、一歩を踏み出せずにいる彼女達の手を取り、後押ししてあげること。
『デカグラマトン』がキヴォトスに何をもたらすのか、今の私には知る由もない。
それでも、事件の過程で呪いに縛り付けられたり、越えられない壁に阻まれたりする生徒が出ないとは言い切れない。
私が動くことで...生徒に降りかかる悲劇から、少しでも多くの希望と未来を守れるように。
私は迷わず
〜おまけ〜
改めて、マックスを観察してみる。
私は子供の頃から、カッコいいロボットが好きだった。そして、彼のデザインはロボットだらけのキヴォトスでも中々お目にかかれない、ものすごくヒロイックなものだったのだ。
主張せず、何食わぬ顔で表面に佇む、金属本来の鼠色と光沢をたたえた外殻。
関節周りでは、剥き出しのシリンダーと管が鉤を描いて反る。
派手な塗装もなければ、機能性のない意匠も施されていない。魅惑的なパーツを、余計にも覆い隠してしまう板もない。その無骨さが、却って硬派なロマンを引き出している。
頭部はキノコ型を角ばらせたような、お茶目でユニークな形状。
顔には虹に光る十字のラインが走り、クールながらに勇ましい西洋の兜を想起させる。
そして...極め付けは腕の武装と思わしき突起。
手と肩、両側へと伸びる噴出口は、まさに匠の鈷杵。
噴射を利用して飛ぶ為か?はたまた飛び道具を発射するためか?
答えは両方。素人目でも分かる、ロマンの欲張りセットがそこにある。
内心、私は童心の隅から隅までをくすぐられていた。もし彼がヒーローショーに出演していたというシチュエーションなら、年甲斐もなく歓声を上げていたと断言できる。
「人のことジロジロ見てどうしたんだ、ジョイントに埃でも挟まってんのか?」
“ごめん。もうちょっと...堪能させてほしいな。別に変な意味じゃないよ。”
「何せ俺の恩師が設計に携わったモデルだ。良さの分かる知り合いが増えるのは歓迎だぜ?」
話の分かる人で助かった。ここで引かれていたら、私もかなり引き摺っていただろう。
...マックスの素性がほとんど不明なことを思い出して、我に返った。
忘れてはならない。彼が大人として信頼に値するかは、これからの任務で判断していかなければならないのだ。
願望力
ざっくり言えば運の良さ。
都市の翼・J社には願望力を形へと閉じ込め、保管する技術が存在する。
今回から先生も本格的に登場させるのですが、
プレイヤーの分身系主人公の宿命として個性が希薄なのが悩み所です。
せめてビジュアルさえ決まればキャラクター同士の絡みが書きやすくなるのですが...
そんな訳で、先生のキャラの芯は本編準拠、それを取り巻くビジュアルはアンケートで決めようと思います。選択肢の7〜8割はストライクゾーンに従って決めました。
分かりやすいよう乙女ゲーやギャルゲーの攻略対象みたいな並べ方にしましたが、この夢小説が恋愛要素を積極的に取り入れる事は...ないかな...
皆様も癖に従って投票して頂ければ幸いです。
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