最凶のお通し「REDOUT」考察 米津玄師が描く地獄。
ドームライブ開催&完走まことにおめでとうございます!
大阪の京セラドーム二日目に参戦させていただきました。
私にとっては実に9年ぶりとなる久々のライブ参戦となりました。アルバムでもライブでも一曲目に使われたのが、この曲。語らせて欲しい。感想にタイトルをつけるとするなら……
創作の悪魔に心臓を捧げる、戦慄のオーバーチュア。
「REDOUT」が「最凶のお通し」たる所以を紹介させて頂きます。
まず結論:REDOUTとは
REDOUTは米津玄師さんのアルバム「LOSTCORNER」と、初のドームライブ「JUNK」の両方でオープニングを飾りました、サイコーソングです。
パイロットの体に強烈なGがかかることにより、目玉が充血し、視界が赤く染まること。
歌詞の中では、創作という戦いの中で陥っていく「極限状態」のことです。
• 創作へのプレッシャーと情熱
• 締め切りに追われる激しい焦燥感
• なかなか形にならない苛立ち
まさに「アーティストが作品を生み出す苦しみ」を
詩的に!!!!!!情熱的に!!!!そして暴力的に!!!!!真っ赤に!!!!!!描いた傑作でした……
ここから先は、この部分は何を表現しているのか?という自分なりの解釈を書き散らかしていきます。
歌詞は著作権への配慮から詳細には書きませんので、暗記している方向けです。
1.制作現場のリアル
・頭痛
頭が痛み、しかし、その中で新しい春の訪れ、作品の波打つような胎動を感じている。
脈打つような頭痛は、PC作業で起こりがちな緊張性頭痛の特徴でもあります。歌詞に頭痛薬の名称が出てくることは過去にもあり、作業のお供としてコーヒーやアルコールを好んでいるというエピソードもあるので、彼にとって頭痛は殆ど持病のようなものかと。
・破傷風
怪我に適切な処置をしなかった場合に起こる感染症です。普通に暮らしていればまずかからないですが、まるで戦場のような制作現場で傷付き疲れ果て、心身をケアしきれない様子が見て取れます。
・輝く夢
ポジティブな表現なのに、目覚めることで意味が反転します。
「夢の中では、作品が無事に完成していた」でも目覚めたら、それはただの夢であり、現実では何も終わっていなかった。「創作の苦しみから解放されたと思ったのに、実はまだ地獄の中にいた」 。
2.試行錯誤と苛立ち
ハウレディ以降の畳みかけるようなBメロ。
比喩が多いですが、様々な対立が「自分の中で」起こる様子を表していると感じました。
・ 試行錯誤を繰り返し、新鮮なアイデアが次々と燃え尽きる。
・ それでも創作をやめられず、ボロボロになりながら笑い続ける。
・ 純粋さと権力の対比のような、残酷なイメージが浮かび上がってくる。
少年くだりはアーティストにのしかかる商業的圧力の比喩のようにも見えますが、
個人的には、「自分の中で絶えず繰り返されている淘汰と取捨選択」のイメージなのでは?と考えました。つまり「自分が自分を踏みにじる構造」 をイメージ化したものかと。
という風に見ていくと…
消えろ、と憎々しげに繰り返す印象的なリフレインも、「自分自身」 に向いてるのかもしれない。
• 創作が思い通りにいかない苛立ち
• 自分の才能への不信感
• やめられない苦しみ
創作がうまくいかないとき、ネガティブなイメージが次々と現れ、「全部消えろ!」という気持ちになることがある。創作をやめたいわけではない。何を消したいのかさえよく分からない。
そんなジレンマの中で、訳も分からずフラストレーションが爆発する瞬間を捉えているのではないかと思います。
3.創作の痛みと美しさ
・スタインウェイ&サンズ
これは高級ピアノブランドの名称です。
鮮血が滲むほど身を削りながらピアノに向かう姿。苦しみもありますが、その血が煌めく様子は美しさも帯びています。
・砕けた欠片と消える情景
バックビートが砕けている=つまり砕ける前の完成形がある。ということです。
なのに頭の中には欠片ばかり散らばって、情景はコンマ一秒で掻き消え、あるべき姿が捉えられない。己の中の理想を追う、ボロボロの旅路であることが伝わってきます。
・「どうした?」と問いかける相手
視聴している人間へのメッセージのようにも聞こえますが……
ここでサビが終了し一度「ブレイク(転換点)」となります。
次のAメロで視点が変わり「スクリーンに映る自分」という歌詞になる為、あれ?相手は他者?いや、自分?と少し混乱するような仕掛けが施されています。
つまり…
「自分の憔悴しきった地獄みたいな顔を、自分か他人かも分からなくなるほどの極限状態で見つめている」
ということだと推察しました。
• 創作に追い詰められた自分の姿がスクリーンに映っている。
• 自分を客観視する目線が、まるで他人のもののように分裂する。
ここは個人的にREDOUTの核になる部分だと感じました。
なぜかというと、ラストで登場する「悪魔」が「自分」であることを決定付ける前置きだからです。
4.続々と襲い来るタイアップ
ところで最近の米津玄師さんのタイアップ曲の多さ、えげつないですよね。
え?先月も新曲出してたよね?と何度も思いました。月刊米津。
いやでもプラズマの七日後にボウアンドアロウ出てるから週刊。体感では日刊。頼むから寝てくれ。
・ヤドリギの枝
いや完全にタイアップのことじゃん。と思いました。ヤドリギは他の木に寄生するという特殊な方法で成長する植物です。フ〇ギダネの得意技としてもおなじみ。
米津玄師の背中に刺さるタイアップ先のテーマ。自身の感性や体力をヤドリギに吸い取らせるように、彼は曲を作り出しています。スクリーンに映っているのはタイアップ曲のMVと思われます。
・繰り返し夢を見る
意訳:タイアップなんぼ書いても次々仕事来て終わらん。
例の「地球儀」をはじめとするタイアップ曲と向き合う日々には苦しみもありつつ、それでも夢のように幸せな経験には違いないと思います。
「夢のような高揚感と、終わらない苦しみの共存」が表現されているのですね。
5.アーティストの職業病
このあたりもかなり比喩表現が強いです。
・マクガフィンって何?
=物語を作るとき、登場人物の行動に理由付けをする概念のこと。
たとえば胸躍る冒険譚を描きたい!→主人公が冒険に繰り出すための動機が必要。この動機をマクガフィンといいます。魔王を倒す、幼馴染みを救いたいなど、マクガフィン自体はなんでもOKだけど、主人公の芯になるもの、世界観を左右するものでもあります。
ここで語られているのは、楽曲のテーマにぴったりのマクガフィンが見えてこない苦しみですね。
・目尻のラメ
ラメは華やかに自分を飾るものですが、冷えたという表現からは温かみや情熱を失っているかのような印象を受けます。ここまでの流れを踏まえると、マクガフィンが見えていない状況とともに、
・泥臭い努力の末に作品を生み出している。
・それを隠してメディア用にキレイに演出した一面もある。
という意味で「メディア用にラッピングされた自分の姿」を客観視していると解釈できます。最近は特にメディア用のキラキラした米津玄師さんを見ることができますね。その裏には大変な苦労もあったのかと。
・デマゴギーって何?
= 根拠のないウワサを拡散すること。
つまりネットの誹謗中傷や、ゴシップ的な批評への皮肉が込められています。
米津玄師だけではなく、有名人たちが「意図していないことを言ったことにされる」「注目を集めるためだけに炎上を仕掛けられる」なんてことは日常茶飯事です。
それが「わざと行われている」ことに気付いているぞ、という皮肉が込められていると思います。彼はネット出身アーティストを自負しており、そういったネットの負の面にも鋭い洞察を持っています。
・グロインペインって何?
= 股関節痛(スポーツ選手によく見られる職業病)
同じ動きを繰り返して体を傷めることを、アーティストの職業病に例えているのが面白いです。
• 同じ作業を繰り返し、精神的にも肉体的にも疲弊する。
• 創作を繰り返すことで、心が追いつめられる宿命。
実際、気持ちの面だけじゃなくて、座りすぎて股関節が痛いというリアルな苦労もあると思うので、それもグロインペインに含まれてるのでは?!と思うとやっぱり「寝てくれ」と思います。
6.鮮血に塗れたエンド
・痛みを享受する覚悟
米津玄師さんの詩にはたびたびロキソニンやボルタレンといった頭痛薬の名前が出てきます。具体的な曲名でいうと「とまれみよ」と「Moonlight」です。
このエンディングでの 「痛覚を開いて」 は、それを捨てる意思の表れ。
• 「抑えていた痛みを感じることで、いよいよ創作へと耽溺する」
• 「痛みから逃げないことで、作品に魂を叩きつける」
・限界を超え、究極へ
ラスト8小節、と言ったら本当にあと8小節で曲が終わるのがまた鳥肌モノ。
目の前がチカチカするほどの極限状態の中、それでも万感の想いで走っている。
痛覚を開いた状態で心臓を抉り出すのはまさに「痛みをありのまま感じきることで、究極の境地に達する」という、アーティスト 米津玄師の覚悟、そのもの。
最期:悪魔との契約
ここで初めて「地獄」という場所を指していた単語が、「悪魔」に変容します。
「悪魔に魂を売る」いうと、自分の外側にいる悪魔と取引して、対価として才能や富を得ることです。
しかし「REDOUT」 では悪魔=己が変容した姿 として描かれています。
• 「地獄」 → 創作の苦しみによって至る場所。
• 「悪魔」 → 地獄に相応しい存在。自分が地獄に居続けた結果、変容した姿。
• 「創作の地獄に居続けることで、悪魔のような存在になってしまった」
心臓を抉り出してまで求めた創作の極地。そこに至ったとき、鏡の中の変わり果てた自分の顔はまるで悪魔のように見え、手元には渾身の一作がある。
それはまるで、「己の中から現れた悪魔に魂を売り渡し、曲を得たかのような錯覚」をもたらす。
これがREDOUTのクライマックスです。
生みの苦しみというテーマをここまでグロテスクかつスタイリッシュに演出してしまう手腕、もう訳が分からん。とにかく痺れる。
おまけ
最後に吐き捨てられる「そんな目で見んな」。
そんな目=赤い目であることは、特に説明がなくとも、MVのウサギの目とタイトルから自然と浮かび上がってきます。
そんな目で見んなは 「誰かへの言葉」 か?
それとも 「REDOUTの果て、何が現実かも分からなくなった自分自身への言葉」 か? ここにはっきりとした言及はありません。
赤く染まった世界を睨みつけながら、ラスト8小節という宣言通りに曲は終わる。この曲が8月8日に発表されていることからも、ハチを強く意識していることが分かります。
個人的には、ハチと米津玄師との戦いと受け取るのも、ノスタルジックかつロマンチックで良いんじゃないかと思います!
「ハチ」と「赤」が強く押し出されているのは、あの頃からずっと変わらない、己の創作との闘い方が表現されているから、なのかも。
アルバムでも、そしてライブでもこの曲を最初に叩きつけられることによって、以降のすべての曲が「REDOUT」の果てに生まれてきた楽曲であることを無意識下に刷り込まれます。この曲にはそれだけのエネルギーがある。
聴いた者の視界を真っ赤に染めてしまう、「最凶のお通し」。
京セラドームでの体験を素晴らしいものにしてくれました。
ありがとうREDOUT、ありがとう米津玄師。
他にも好きな曲たくさんあるけど、ドームライブ完走にあたってREDOUTだけでも語ってしまいたかったので、初めてnote記事を書くに至りました。
ここまで読んでくださった方も、ありがとうございました。
追記
それにしても、9年間全落ちだったライブがドーム開催と同時に当たったというのはつまりそういうこととしか思えないので、
どうか毎年ドームやってください。よろしくお願いいたします。(我儘)


コメント
2REDOUTが大好き過ぎてライブのオープニングが上がり過ぎました!!記事面白かったです!
うわ〜ありがとう〜ございます〜!!!!ホントいい曲です……🐰♥️👁