俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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かなり難産でした
外伝編のエピローグは土日二でもサクッと投げます


FAをまたまた頂きました!

【挿絵表示】

ひふみつかさ様より、ユウキそしてサレンさん!
小説のタイトルカットのような素敵な絵です、ありがとうございます!


四十四話 勝利とは、勝利条件を満たしたものが得られる

 

 

「やっぱり先に苦渋打ったのはあまりよくなかったね」

 

「そこは私の手札3枚ありましたし、2回妨害される前提で出してくるかと思って」

 

「それでも土地0だから安心して出してくるのを叩き落とすほうが丸いと思うんだよね。どっちにしても行動は変わらなかったけど、心理的にはちょっとアドが重なるよ」

 

「心理的……ショックを受けるっていうことですか?」

 

「うん。どうせ防がれるだろうなって出すのと、多分通るよなって思いながら出すカードだと同じカード、順番でも心理的なダメージに差が出る」

 

「あ、わかります。やられて嫌な気持ちになると、こう手が出しにくくなるというか考えるに迷いが出るんですよね」

 

「そうそう、そういうの大事。特にパーミッションなんてうんざりして自暴自棄になってくれると一番楽だから、そういう方面にマナーは守って追い詰めていくんだ」

 

「でも、嫌われません?」

 

「マナーを守って正々堂々と倒してるのに恥じる必要ある? 俺はないね、今回の天儀さんのファイトめっちゃよかった。握手したいぐらい」

 

「ありがとうございます」

 

「全身全霊でぶち殺すって思ったね」

 

「えっ」

 

「ファイト的な意味でだよ?? 多分俺がそっちの土地2枚残ってるのを見て手を怯むって予想してたよね」

 

「はい。それでもやるなら妨害を超えていくかと思って、最初はブラフだと」

 

「コストを誤魔化す例外はそれなりにあるけど、例外を前提で考えないほうがいいよ。一番いいのはユニーク・ルールを覚えることだろうけど、これは経験しないと実感出来ないし。こういうのわけわからん殺され方しないと覚えないんだよなぁ」

 

「ですね。ルールは頭にいれてたはずなんだけど、まさかって思いました」

 

「頭で覚えた知識と体感した経験は違うんだ。肌で覚えるっていうかな、学習してないとバイアスがかかってるし、こう引き出しになる」

 

「引き出しですか?」

 

「うん、スイッチ。ライフに限らないんだけどね、TCGってのはどんだけプレ……ファイターに正しい経験値が蓄積出来たかで、強さの地力が問われると思ってる」

 

「正しい経験値」

 

「例えば、今回ユニークルールで負けちゃったけどさ。もう次からはしないじゃん?」

 

「ですね。次は繰り返さないように気をつけると思います」

 

「でも経験しなかったら気をつけるっていう意識さえなかった。センサーがなくて、スイッチがなかった」

 

「スイッチとセンサーですか」

 

「うん。経験は学習すればこれは気をつけるべきだっていうスイッチをいれるようになる、センサーは経験からのカンだ」

 

「カン。共鳴みたいな?」

 

「あ、そっちはよくわかんないんだけどさ」

 

「えっ」

 

「それとは別。カンってのは超能力とかじゃなくて、経験、無意識の学習経験なんだ。例えば今回のユニークの話からするとね。自分の唯一無二(ユニーク)クリーチャーを見る、そんでコピーとか見ると、これは前にあったケースだ。気をつけようって思うよね」

 

「ですね」

 

「じゃあ同じ奴を出されたらまずいって覚えたわけだから、ミラーデッキ相手だったら?」

 

「あ。同じカードを持っているかもしれない、みたいな?」

 

「うん。で、同じテーマデッキじゃなくても例えばゴブプラの<忌み王>も唯一無二なんだけど。これで相手がデッキから受粉ゴブリン出したら、亜人の王入れてると思う?」

 

「決めつけはよくないけど、ゴブリンサポート系があったらよぎるかも? でも亜人の王ってゴブリンじゃないですよね」

 

「だね。でもよぎる、考えなくてもいいとスイッチは切れるけどセンサーはそういうこともあるかもしれないとは少しだけ感度を高く出来る。心構えが無意識に出来る、これが大事」

 

「無意識に出来るのが大事なんですか?」

 

「心構え出来てたら、ダメージを減らせるんだ。ほら、さっき言ったどうせ防がれるだろうなって出すのと、多分通るよなって思いながら出すカードの話」

 

「あー……なるほど、防御の話なんですね」

 

「攻めにも使えるけどね。まあパーミ使いならこんなの常識だろうけど」

 

「いえ、知らないことばかりでした。そっかぁ、女帝さんとかすごい崩れなかったけどそういう……」

 

「わけのわからない負け慣れていれば痛みに強くなるよ。でも鈍いわけじゃないんだ、痛いことは痛いけどまあそういうもんだよなって慣れる。経験があるから耐えられる、歯を食いしばれる。ボクシングみたいなって、あーボクシングとか見てないよね?」

 

「すみません。あまりそういう痛そうなのって慣れてなくて」

 

「いやいやいや全然大丈夫。ニュアンスだけ通じればいいんだよ、痛くなくちゃ覚えないなんて時代じゃないし、怪我なんて子供の頃に転んだりした時ぐらいで十分さ、自転車でもいいよ」

 

「自転車……昔は好きだったんですけど、今は全然乗ってないですね」

 

「自転車はいいよ。ちゃんと鍵とかチェーンとかいるけど、足に負担低めで運動量と時間稼げるし、移動費も節約出来るしね」

 

「あれ? 茂札さんバイトしてるんじゃないんですか」

 

「お金があることと節約しないことは別だからね。特にパックとか、シングル買うのにはコツコツお金貯めておかないと。そういえば今ってLife部、カードに部費から経費とか出るの?」

 

「え? どうなんでしょう、どうなんですか部長?」

 

「えーと設備代とかは出るし、場所と練習用のデッキとかは寄贈されたカードとかでやってるね。でも部員ごとのデッキ強化には部費は使えない、私物になっちゃうし。ぼくたちも自分のデッキに関しては自腹だし」

 

「混ざらないようにしてる工夫とかルールってちゃんとしてる?」

 

「それはもちろん、造ってあったリストとあと部用のカードスリーブとか、値段が高いやつだけは別の金庫にいれたりしてるかな」

 

「なるほど……一つ提案していいかな?」

 

「なんですか?」

 

「部活用限定、学外に持ち出さないって前提なんだけど。透明なソフトスリーブと100円とかの小さなシールシート組み合わせてなんだけどさ」

 

「ふむ?」

 

「透明スリーブまず被せて、中央一番上辺りにシールを貼る。赤とか黄色とかの小さい丸なやつ、んでその上から部活に使ってる柄のハードスリーブを被せて保護すると管理しやすいかも?」

 

「? ああ! いいアイデアですね。学校のだってわかりやすくするんですね?」

 

「いやでもシールの厚みでカードわかるんじゃないか? いやよほど気をつけないとわからないと思うけど」

 

「ハードスリーブにして貼るのが厚いシールじゃなければそこまで気にしないと思うよ。気になるならソフトスリーブを柄のあるやつにして、ハードとは別の柄にする。引き抜いたときにその色と色の組み合わせじゃないとおかしい、みたいなルール決めておけば管理しやすいだろうし。それなら部費の使い方としてはスリーブと備品代ってことで用途わかりやすいよね」

 

「カードは頑丈とはいっても扱いが乱暴なやつもいるか」

 

「茂札さんは絶対スリーブ使ってますもんね」

 

「スリーブは消耗品だし、カードの寿命延ばすからね。扱い慣れてるやつが傷入りのマーク扱いされたらたまらないし」

 

「なるほどー」

 

 

 

「いや、なんやねんこれ」

 

 

 

 一つのテーブル。

 フリースペースで互いのデッキを広げて、二人と一人が喋っていた。

 茂札普夫と天儀ドロシーの二人に、声をかけられたジグが混ざって。

 

「え? 感想戦だけど?」

 

「んなもん見ればわかるわ!!」

 

 なんか感想戦をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 なんでこうなったのか。

 

「グッドゲーム。俺の勝ちです、対戦ありがとうございました」

 

「ぁ」

 

 その一言と共に決着がついた。

 それで。

 

「ぁ、ぁぁぁああああああああああ……」

 

「ドア……」

 

 ドロシーが顔を覆って膝をついた。

 負けなかったはずの子が負けた。

 

 でもそれ以上に負けてはいけなかった戦いだった。

 

「勝ったね」

 

「モブさんが勝っちゃった」

 

「まさかドアが負けるなんて……」

 

 店員に、腕組み小学生に、ジグが思い思いの感想を言う。

 うちも同じ気持ちだった。

 確かに一回ぼろ負けしたし、ジグと合わせても2タテされた。

 強いのは知っていた。

 

 だけど、ドロシーが負けるなんて思わなかった。

 

 あの子は強い。

 癖のある天界龍の性能もそうだけど、それ以上にカードの使い方、えげつないデッキで強かった。だから夏のエレウシスにだって優勝した。

 あのアンティだって負けないと思ったからうちたちも納得したのだ。

 

 ――ドロシーが負けたら二度と茂札には近づかないし、話しかけない。

 ――ドロシーが勝ったら、茂札が席を立つまで話をさせてほしい。

 

 そんな賭け。

 せめて話だけでもしておきたい、そうねだって、彼女なりの決着を付けたいそんなアンティ。

 けどドロシーが負けた。

 ドロシーが弱かったわけじゃない、それ以上に茂札が強かったんや。

 

「どないする?」

 

「どうするって……励ますしかないさ」

 

「せやな」

 

 それしかない。

 正々堂々と挑んで負けたのだから文句は言えない。

 

 これで全部終わりだ。

 

「ドア」

 

 

 

 

「んじゃ、感想戦しようか」

 

「えっ」

 

 

 うん??

 

 

「あっちのフリースペース、結構テーブル広いからそっちでやろう。デッキもまあ触れない距離で広げればいいし」

 

「……あの」

 

「ん? 感想戦嫌いだったりする? 俺、パーミされても慣れてるから気にしないけど」

 

「あのアンティ、私負けたんですが」

 

「ああ、あったね」

 

「はい。その私勝ってないから話をする資格は「なにいってるんだ」えっ」

 

「それ、俺から話したらいけないって制限ないし」

 

「え」

 

「よかったら話をしないかい。俺が満足するまで」

 

「えっ」

 

「ファイト楽しかったからさ」

 

「ええ……」

 

 うん。

 もしかしなくてもこいつ、ファイト馬鹿か?

 

 

 

 ●

 

 

 ●

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 なんて流れだった。

 流れやったんやけど。

 

「んじゃあ、次は君のターンだ。ごめんね、俺ばっかり話してて」

 

「いえ、大丈夫です。あ、それじゃ検討なんですけど、私デッキ広げていいですか? さっきのファイトなんですけど」

 

「いいよ。俺もデッキ広げるし、あ、ちょっと距離取ってくれる? 触るの怖いんで」

 

「はい、気をつけてますけど。あとこの天界龍、私がもうシメたんで大丈夫ですよ」

 

「そうなの? いや出来るの??」

 

「きちんと上下関係は躾けましたから」

 

「そ、そう……でも怖いから触らないつもりです。あ、これさっきまでの並びね」

 

「私の手札がこれで、あれ? <輝けるライ>は握ってなかったんですか?」

 

「うん。二枚しかデッキにいれてないしね」

 

「騙された、絶対握ってると思ってカウンター構えてたのに」

 

「ふふふ、特殊勝利カード絶対覚えてるだろうなあと思ってルーター1枚あえて左端に握ってたんだよね」

 

「もしかして、見てたのわかってました?」

 

「うん。だからおもむろに手札チェックしてれば引っかかるかなって思って」

 

「ずるいです」

 

「マナー違反ではないよ? 勝手に思い込んだんだからさ」

 

「それでもズルいって思います。なんで引いてないんですか」

 

「理不尽過ぎない? まあ気分で引きよくなるタイプじゃないんだよね。あ、2ターン後に来てたんだ」

 

「2ターン、ああ、次のターンに殴られて<砂の天秤>しておけば間に合ったんだ」

 

「天界龍がいて除去手段なしで、ライフマイナスまで殴る奴はあまりいないと思う」

 

「してもいいんですよ?」

 

「能力知らなければするけど、知ってたら防御固めるんだよなぁ。それでも殴るならまず除去握ってるけど」

 

「大体それでセットで除去飛ばしてくるんですけど、茂札さんなら先に殴りますか?」

 

「手札次第だけど、まずは除去かな。そのほうが丸い」

 

「丸いですか? 除去で手札とコスト消費するから先に攻撃したほうが、メイン2でも間に合うと思いますけど」

 

「リスクの話だよ。同じ手札と同じライフデッキだとして、攻撃してライフデッキが0になってから呪言の例えば<焼畑>とかあったら天界龍が生きてたらライフが3まで回復するだろ? でも先に天界龍を倒しておけば焼畑が飛んでも0になった瞬間に敗北するから間に合わない。あと選択の余裕が、君のほうが少なくなる」

 

「少なく……ああ、選択を迫られますもんね」

 

「うん、先に除去を飛ばした場合打ち消すか見逃すか迷うだろ? これを防がなければ絶対に負けるって盤面ならミスはしない、けどそうじゃない余裕がある時なら手札を惜しむことだってある。例えばメイン1に一枚除去飛ばして打ち消される、それでもバトルでライフを削る、その上でメイン2でもう一回除去を飛ばして吹き飛ばす。なんていうのもやれると思えばやれるわけだし」

 

「それだとライフ3残りますけど」

 

「うん、これだと決めきれてない。でも一枚目が確定除去で、二枚目が不確定の除去だったら? ライフ5払うだけで除去を失敗するみたいなやつだった場合、残りライフからして除去を打ち消せないみたいなケースもある」

 

「苦渋みたいな除去カードありましたっけ?」

 

「いやぱっと思いつかないけど知らないだけでそういうのも探せばあるかもしれないし、いずれ出ることもあるだろう。まあもしもは色々言えるんだけど、そういう複雑なケースもあるって時と場合にはあるんだ。そろそろ特殊勝利引けそうだから、先に打ち消し使い切らせたいなーって動くとかさ」

 

「私が一番嫌な動きですね」

 

「頭使うもんねー。一番嫌なのが確信もってこれで殴り続けたら死ぬだろっていうアグロだけど」

 

「どうしょうもなくないですか??」

 

「天界龍を不沈艦にしておけばいいんじゃないかなー、いやコスト重すぎて駄目だわ」

 

「役立たず」

 

≪クゥン≫

 

 

 

 うーん、和やかな会話や。

 これ本当に不仲だった二人の会話か?

 うちらのこれまでの心労はどこへ??

 

「うーん、濃厚な会話だねえ。いつもこうなのかい?」

 

 呼ばれた時以外は用事がないからとばかりに追い出されたジグが、んなことをぼやく。

 

「大体いつもあんな感じだねえ」

 

「ノート広げなくて良い分、今日は薄めだよね」

 

「ノート広げてるのはユウキちゃんなんだよねえ。今日は学校の宿題ちゃんと終わらせた?」

 

「数学でよくわかんない所あるのでお願いします!」

 

「私は高校、ろくに行ってないので中学ぐらいまでが限界……!」

 

「大丈夫か、ここ!? 大丈夫なんかここ?! 店員さん、華のJKなら働かせてないで学校いかせてやりーや!」

 

「行くべきだと思うんだけど、ボク保護者でもなんでもないから……」

 

「イエーイ」

 

「だめだなんとかしないと」

 

 危険だ。

 危険過ぎる店やで、ここは!

 


 

 

「あーそうだ……この間はなんか申し訳ない。当てつけみたいに、最悪の感想戦とかいっちゃって」

 

「いえ、大丈夫です。こっちこそ本当にそちらの迷惑も考えなくて」

 

「いやこっちこそ悪いから、なんかお詫びしたいんだけど」

 

「いえいえいえいえ!? こちらこそ」

 


 

 

 ちょっと重要イベントやってるだけど!

 あっちだけでなんか大事な話してるで!

 

「リナ、こういう時は口を挟むもんじゃないよ」

 

「なんでうちが注意される立場なん?」

 

 おかしいやろ! 明らかに!

 と思いつつ、二人の話してるフリースペースのテーブルから距離を取る。

 あ、そこの店長さん。

 バイトの茂札が心配なのはわかるけど、離れて離れて。

 

「なんです、なんか親しげですけどモブさんの友達だったんですか?」

 

「コレとか?」

 

「そこの小指立ててる店員はんはやめーや」

 

 多分小学生らしい感想にほっこりしつつ、無表情に小指を立てる店員にべしっとツッコミをいれる。

 

「色々と複雑でね……こんなことなら電話でも貸し出したほうが早かったかな」

 

「そんな単純なもんやないやろ。少なくともファイトぐらいはしないと解消出来なかった壁や」

 

 ファイト。

 Lifeのカードによるゲームはコミュニケーションだ。

 

 互いのデッキ、カードの引き、出すカードの順番、発言には意思が乗る。

 楽しくやれば楽しさが伝わるし、苦しくやれば息苦しさが伝わってくる。

 まあ夕日の河原で殴り合いするようなもんや。

 ドロシーはか弱い女子やからそんなわけにはいかんけど。

 

「あとあれこれ学校で話し合いするにはちぃっと問題あるしな」

 

「……それもそうか」

 

 Life部の連中全部が問題児というわけない。

 元副部長の追い出しと一緒に関係してた連中も居づらくなって辞めた。

 

 だけどドロシーは有名になりすぎた。

 

 今いる部員たちの多くはうちらがエレウシス本戦に入ってからだったり、優勝してから新しく入ってきたのが大半。

 うちらもそこそこ有名にはなった……まあ茂札のやつには認識されておらへんかったけど。

 が、ドロシーには勝てんと思ってる。

 絶対女帝を打ち破った新進気鋭の天災というネームバリューはそんだけ強い。

 そんなドロシーがろくに知られていない、それも事情を知る人間には不仲説がある茂札と学校で会話してるだけも良からぬ噂が勝手に捏造されるやろう。

 ドロシーを泣かしただの、脅しただのっていううちらにチクった先日の一件がいい例や。

 うちらならまあ色々言われてもしょうがないが、茂札に迷惑をかけるのは筋違い過ぎる。

 

 だからこうやって知られてない場所で話し合えているわけやけど。

 

「……まあこれでさよならってのも後味悪い話やな」

 

「しょうがないさ。アンティは絶対さ、少なくとももやもやを残したまま決別するよりはずっといい」

 

「まあそれもそうやけど」

 

 離れたテーブルで感想戦をする二人を見る。

 

 カードを広げて、話をする二人は楽しそうだった。

 

 なんかちょっと早口気味で、でも時々意識的にゆっくり喋ろうとする茂札に。

 ふんふんと、ポシェットから取り出したメモ帳でメモを取るドロシー。

 多分Life部にいた時もあんな感じだったんだろうなと思う。

 だからこそ、その決裂になったあのカード……ドロシーが持っているあの天界龍が恨めしく感じる。

 

 あのカードには不思議な力があるのはうちも知っている。

 

 入院していたジグも、あのカードのおかげで病気が治ったというし。

 エレウシスでもあのカードを目当てに、数千万っていう大金で八百長を持ちかけられた。

 あとはまあどっちかというとドロシー目当てだった気もするが、成り金の馬鹿ボンボンに妾になれってドロシーを誘ってたアホもいた。

 たった一枚のカードで運命が狂うことはあると思う。

 うちはどっちかというと弱さ、自分のデッキを信じきれなかった弱さからすねてたけど、それでもこう思っている。

 

 自分の選択だけはカードじゃなくて、自分の所為であってほしい。

 

 せめて。 

 せめてそれだけの自由が、余地があってほしい。

 そう思うのは贅沢な話なんやろうか。

 

「それはそうと」

 

 遠目に見る。

 特に茂札を見る。

 

 あいつ……

 

「ちょっとちょろすぎやない? ファイト一発で機嫌コロって治ってるやんけ」

 

「あれかなりのファイト馬鹿だから」

 

「ですよねー」

 

「こんなところで働いているのは店長の色香だけじゃないぐらいだし」

 

「あれ? 今ボクの店ディスられた???」

 

 もう最初からファイトさせてれば色々早かったんやないだろうか。

 そんな気がした。

 

「まあアンティあるからそんなわけにはいかないんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。アンティだけどさ」

 

「は、はい……これ終わったらお終いで」

 

「俺が勝ったからあまり気にしなくていいよ」

 

「え」

 

「天儀さんが負けたんじゃなくて、俺が勝ったってことでいいでしょ」

 

「え、え」

 

「色々考えたんだけど。俺が多分一方的に毛嫌いしてる態度見せたのも原因だったからさ、普通に挨拶だけしてくれればなんか中和出来ると思うんだよね、どうかな?」

 

「あー……そう、なのかもしれませんね」

 

「という感じで」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 うちは天井を見上げた。

 

最初からそうしろや!!!

 

 とりあえず一発しばきにいった。

 

 

 

 





 妖鬼管弦楽団のソロパートは、皆が好き勝手に楽器を鳴らすことを指す
 ああ、ダメダメ! それは打楽器じゃないぞ!



                    ――<騒々しいソロパート>
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