傍に立つ君は完璧で究極のアイドル   作:カミキヒカラナイ

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おかしいな……前回の投稿からだいぶ間が空いてしまったぞ……
受験も終わったしこれからは週一……は無理でも隔週投稿だー! と張り切っていた私の姿はお笑いだったぜ。一年生は必修科目も多いしサークル活動も盛んだし受験のために中断してたバイトも再開したし……さては案外余裕ないなキャンパスライフ。

仕方がない……ここは趣味のゲームの時間を少し削って執筆を──


ELDEN RING

NIGHTREIGN


!?

集え、夜を渡る者たちよ──


な……なんてことだ……!
あの世界的コンピュータゲームソフト制作会社FROM SOFTWAREが開発し、現在に至るまでの累計出荷本数3000万本超えの超絶大ヒット作「ELDEN RING」の協力型スピンオフ作品「ELDEN RING NIGHTREIGN」2025年5月30日に発売されるなんて……!

バイトの予定はキャンセルだ! サークル活動も必要最低限に! こうしてはいられん……! すぐ狭間の地に“帰国”せねば……ッ!


……はい、すみません。推しのゲームの宣伝をしたかっただけです。ぶっちゃけ私のライフスタイル的にこれ以上投稿速度が遅くなることはないと思いますのでご安心ください。



36.そして世界が彼を知る

「シオンさん、時間になりましたので準備お願いします!」

「……はい!」

 

 スタッフさんに呼ばれ、待機していた僕はその場から立ち上がる。

 今日は東京国際シンポジウムで行われる一大イベント、イリュージョン・マジックショーの本番当日。そして今まさに僕は自分の番を迎えようとしていた。

 

『いや〜あっという間だったねぇ』

 

 アイの言う通り、本当にあっという間だった。鉄は熱い内に打てと宮田さんは言っていたが、まさに有言実行。今日という日は東ブレの千秋楽から僅か二週間程度しか経っていない。

 これ程の短いスパンで立て続けにこんな規模のイベントに参加していると感覚が狂いそうになるが、これはリーベックプロという事務所の力ありきのパワープレイだ。こんなのはごく一部の一流芸能人でもなければ普通はあり得ない。出たくて出られるような舞台ではないのだ。

 

 その事実を強く自覚し、見たこともないような大舞台に浮き足立ちそうになる自分を戒める。

 断じて、これは僕自身の実力によるものではない。

 

『事務所が強いのは事実だろうけど、それだけじゃこんな舞台には立てないでしょ。謙虚なのは悪いことじゃないけど、それも過ぎると良くないよ?』

 

 そうは言うが、いくら才能と実力があってもそれを後押ししてくれる事務所の力がなければ立ち行かなくなることは有馬さんが証明しているわけで。

 

 まあ、僕とて嬉しくないわけではないのだ。何せ僕はアイという一流のアイドルの背中を見て育ってきた。相応にスターというものへの憧れはある。こうして大きな舞台に立つと、まるでアイと同じ視座に立てたような気がして悪くない気分になる……いや、はっきりと高揚感に沸き立つ自分がいることを強く自覚する。

 

は? 可愛いかよ。抱いてほしいならそう言いな?』

「なんて?」

『なんでもないよ☆ シオンは小悪魔さんだなぁって☆』

 

 ……ともかく、僕が言いたいのは大舞台に浮かれて油断すべきではないということだ。僕に芸能人として才能があるかはさて置いて、経験値が足りていないことだけは明らかなのだから。

 この業界、才能も大事だが同じだけ経験も重要だ。芸歴が重視されるのもその辺りに理由があると聞く。経験は引き出しの多さであり、例えばそれが役者であれば演技の厚みに繋がるだろう。先の舞台であれば、僕の咄嗟のアドリブに瞬時に合わせてきたアクアの対応力がそれに当たるだろうか。

 

『大丈夫だって! 何かあっても私がフォローするから!』

 

 アイはそう言って朗らかに笑う。

 頼もしい限りである。こと経験について語るなら目の前の彼女はまさに大先輩になるわけで、こういった大舞台における安定感は流石の一言だ。

 

「頼りにしてるよ」

『任せなさい☆』

 

 頼れる相棒と言葉を交わしつつ、舞台への扉を開く。

 そう、扉である。今更だがここは舞台袖ではない。重厚な扉を押し開ければ、ざわざわとした騒めきと場に満ちる期待感とでも言うべき熱気が押し寄せてくる。

 

 しかし、こちらに向けられる視線はただの一つとしてない。当たり前だ。何故ならここはステージの上ではなく、()()()()()()()()()()()

 当然ながら観客は全員が舞台の方を向いており、こちらを見る者は一人もいない。時間になっても現れない僕の姿を探して困惑する彼らの後ろ姿が視界いっぱいに映っている。

 

 バン、と音を立ててスポットライトの光条が僕を照らす。そこでようやく僕の存在に気付いた観客が驚きの表情で振り返った。

 そのまま笑顔で歩を進める。二階席の最前列まで行き、未だ事態を飲み込めず騒めいている一階席の人達にも見えるよう手を振った。

 

「……よし、始めようか」

 

 会場の全ての人間が僕のことを認識したのを見計らい、集中力を高めていく。実行するのは、以前東ブレの舞台で三上山の大百足を演じた際に行った生体電流の超加速。それによる高速移動だ。

 あの舞台を通して僕は電流操作のコツを掴んだ。細かな操作はお手のもの。むしろ慣れたことで脚力のみでの移動よりも静かに、素早く移動することが可能になった。

 

 電荷転送、電位差形成……電気を操るのに必要なのは、瞬間的な力を正確かつ迷いなく放てる集中力だ。電流操作の副産物として数万倍にまで加速した神経伝達速度が見せるゆっくりと流れる時空間の中、僕は足裏に生じた電磁加速を推力に二階席から飛び出した。

 

 大百足を演じた時のような派手さは今は必要ないため、発生させる電力は必要最小限。きっと傍目には殆ど何も分からなかっただろう。もしかしたら目の良い人は一瞬だけ僕の身体に走った電光が見えたかもしれないが、いずれにせよその後の加速した僕の動きは認識できなかったはずだ。

 

 故に常人にとって、それは高速移動ではなく瞬間移動に見えたことだろう。一瞬よりもなお早い、須臾(しゅゆ)に等しい刹那の間に舞台上へ飛び移った僕を再びスポットライトが照らし出す。忽然と舞台の上に姿を現し一礼する僕に観客は驚愕の騒めきを発し、続いて盛大な拍手と歓声が会場に溢れた。

 

 掴みは上々。突き刺さる視線に込められた感情は全て期待と興奮によるものだ。そこに得体の知れない無名の手品師に向けられるような怪訝な視線は一つとしてなかった。

 であれば、やはりここにいる観客は少なからず僕のことを知っているのだろう。舞台を目にしたか、そうでなくともその噂を聞いて事前に僕が何者かについてある程度調べた上でこの場にいる。

 

 ならばきっとこの演出は刺さるはずだ。彼らはきっと、あの舞台の続きが観たいだろうから。

 

 手に持っていたボストンバッグをひっくり返す。中から零れ落ちたのは真っ黒に染め上げられた衣装。そして歪に捻くれた大きな飾り角だった。それを手に取り観客にも見えるよう広げてみせると、僅かな騒めきの後にわっと大きな歓声が上がる。

 これは舞台「東京ブレイド」において僕が演じたキャラクター「鍔姫(つばき)」の衣装だ。勿論アビ子先生には事前に許可を貰った上でこの場に持ってきている。

 

「アイ」

『お着替えターイム☆』

 

 衣装と一緒に入っていた大きめの布を手に取ったアイは、それをバサリと勢いよく広げて僕の姿を観客席から遮る。

 その瞬間、僕は大急ぎで着替えを開始した。再び過集中状態に入ったことであらゆる喧騒が遠ざかり、時が止まったように静まり返った世界の中で二週間ぶりの舞台衣装に袖を通す。

 

 現実時間にして一秒にも満たないだろう短時間で着替えを済ませたところで再び世界に喧騒が戻ってくる。アイに布を取り払ってもらい、僕は着替えた姿を観衆に見せつけた。

 

 案の定、観客の反応は一様に驚愕のものだった。マジックにおいて早着替えはメジャーなものだが、それには衣装を層状に重ねて着込み、それを手動、または装置の補助を用いて切り替える必要がある。または衣装そのものに特殊な細工を施し、表と裏をひっくり返すなどして模様を変えるものもあるだろうか。

 

 いずれにせよ、これらの絡繰を用いて早着替えを行うためには相応の用意と一秒以上の時間が必要になる。しかし僕は予め衣装を着用していないことを示し、その上で一秒以下の一瞬で着替えてみせた。しかも直前まで着ていた衣装はしっかり脱衣済みであり、それを証明するように現在進行形でアイに畳んで貰っている最中である。観客の目には今、二次元キャラのコスプレ衣装という複雑な作りの服に一瞬で着替えた僕の姿と、その足下で独りでに折り畳まれていく服が映っているはずだ。

 

 そしてこれだけでは終わらない。僕は意識を集中し頭部の毛細胞の代謝を強化する。すると僅かな体温の上昇と同時に髪の毛が伸び始め、それは瞬時に腰の辺りまで伸び広がった。

 同時に衣装を畳み終えた──お世辞にも上手とは言えないが──アイは念動力を発動し、予め舞台袖に用意してあった模造刀……実際に舞台で使用した僕の身の丈ほどもある大刀を呼び寄せた。

 

 パシッ、と小気味良い音と共に手の平に収まる模造刀……盟刀“神喰(かみは)み”。これまた二週間ぶりに手にしたその柄に指を這わせ、僕は勢い良くそれを大鞘から抜き放つ。

 大刀の刃渡りは広げた僕の両腕よりも長い。そのためこれを抜刀する際には「鞘から刀を引き抜く」というより「刀から鞘を引っこ抜く」動作が必要になる。必然、引っこ抜いた鞘は僕の腕の長さには余るため勢い任せに放り捨てることになるが、それが地面に転がることはない。アイが鼻歌交じりについと指先を振ると、宙を舞った鞘は念動力によってそのまま空中に縫い留められた。公演の間中ずっと繰り返し行ってきたことだけに手慣れたものである。

 

 僕はすっかり手に馴染んだ大刀の柄を握り締め、幾度となく繰り返した動作を再現する。刀持つ右腕を巻き込むように大きく身体を捻り、一歩、観客席に向かって大きく踏み込んだ。くぐもったような破裂音と共に足裏と床面の間にある空気が踏み潰され、その圧力によって地鳴りのような振動が会場を揺らす。

 次瞬、一閃。大きく振りかぶった大刀を横一文字に薙ぎ払う。刀を自壊させないよう慎重に、そして衝撃が観客席まで飛んでいかないよう繊細に。切っ先が通り抜けた空間に真空が生じ、一拍の後、生じた真空の亀裂に周囲の空気がなだれ込み、渦を巻いて破砕音にも似た衝撃波を撒き散らした。

 

 シン、と静まり返る会場。しかし静寂は一瞬だった。直後、まるで爆発するような歓声が巻き起こる。僕はびりびりと肌を叩く歓声と拍手の音に確かな手応えを感じつつ、刀を鞘に納め再び観客席に向かって一礼した。

 

「……初見の方は初めまして。先の舞台をご覧になった方はお久しぶりです。舞台『東京ブレイド』におきまして鍔姫役を務めさせていただきました、シオンと申します」

 

 インカムマイクのスイッチを入れ自己紹介する。

 思えば、こうして僕自身の言葉を観客に届けるのはこれが初めてになる。読者モデル、ネットテレビ「今ガチ」、そして先般の舞台「東京ブレイド」……いずれもそれを見る客と直接的に触れ合うことのないコンテンツばかりだった。

 

 しかしこの舞台は違う。舞台の主役は僕で、演出の内容も全て僕自身の裁量に任せられており、そして僕と観客以外には何者も介在しない。僕が発する言葉とパフォーマンスは全て直接的に観客に届けられ、観客もまたそれを目的としてこの場にいる。少しの緊張とそれ以上の興奮を噛み締めながら、僕は向けられる好奇の視線の集中砲火を真っ向から受け止めつつ言葉を続けた。

 

「あなた方を幻想の世界へとご招待しましょう。……予めお断りしておきますと、今からお見せするものは手品ではありません。種もなければ仕掛けもない怪力乱神……正真正銘の超能力です」

 

「信じるも信じぬもあなた次第。ですが──期待は裏切らないとお約束しましょう」

 

 アイにおんぶに抱っこであることを考えれば、何とも背中が痒くなるような大仰な口上をぶち上げる。

 だが、期待を裏切らないという言葉に嘘はない。役柄の関係でやたらめったら威圧的だった東ブレの舞台と異なり、このステージはイリュージョン・マジックショー……奇術によって観客の目を楽しませる、語源通りのエンターテインメントの場。観客には威圧感に身構えさせることなく、心から超常現象(イリュージョン)を楽しんでもらう心算である。

 

 さあ、始めよう。僕とアイの初ステージだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その少年が登場するのを、誰もが心待ちにしていた。

 本物の超能力者の出現……舞台「東京ブレイド」が公開されてからというもの、世間はシオンというタレントの話題で持ちきりだった。正式なデビューはまだということもありテレビや記事に取り上げられることこそなかったものの、SNS上ではこの二週間近くずっとその話題で盛り上がっていた。

 

 隔絶した美貌、桁違いの存在感。まるで重力など存在しないかのように舞台上を縦横無尽に躍動する超絶アクションに、雷そのものと化すかのような摩訶不思議。

 どれ一つをとっても超越的だった。常人の尺度では、既存の科学では到底説明のつかない演出の数々に魅了された人間は数知れず。故にその情報は瞬く間に拡散した。

 

 日本最大規模のイリュージョン・マジックショーにシオンが出る。それもいち出演者の枠には収まらず、大トリとして主役を務めるのだと。

 

 その情報が明らかになった瞬間、全国のチケット購入を求める者達からのアクセスがイベントサイトに集中した。それは新手のDDos攻撃だった。勿論サーバーは一瞬で落ちた。

 それだけ舞台「東京ブレイド」でシオンが見せたパフォーマンスは衝撃を以て受け止められたのだ。誰もがそれを“本物”であると肌身で感じていた。

 

 そして今、再び彼はその身を衆目に晒していた。二階席に座す観客達は驚愕も露わにその姿を振り仰ぐ。

 華やかに、どこまでも華やかに微笑みながら歩を進める。それだけで舞台演劇の一場面のようだった。一挙手一投足には人目を引く華やぎがあり、一度笑ったならばもうその場の主役とならずにはおかない。目にする誰をも魅了するその様はまるで生ける美人画のようですらあった。

 

 陶然とした周囲の視線を自然体のままに受け止め、衣のように纏いつつ彼は歩く。そのまま二階席の最前列まで進んだところで……まるで幻であったかのように、微風だけをその場に残してその姿が掻き消える。

 次の瞬間、シオンの姿は舞台の上にあった。スポットライトによって照らし出されたその姿には見紛いようもない確かな存在感があり、それは彼が間違いなく直前までこの場にいたこと、そして一瞬にして舞台上に移動してみせたことを物語っていた。

 

 熱気が膨らんだかのようだった。初っ端から出し惜しみなく披露された超常の現出に、誰もが興奮も露わに歓声を上げた。

 

 瞬間移動(テレポーテーション)。小説、映画、漫画、アニメ……様々な媒体で超能力の代名詞のようにして語られるそれは、空想の産物でありながら知らぬ者などいない程に膾炙(かいしゃ)している。事実、超能力者を名乗る奇術師の多くが様々な手段で以てその再現に挑戦してきた歴史がある。だが、現代においてその大部分は既に種が割れており、真実超能力者であったと認められた者は今に至るまでただの一人もいない。

 

 だが、たった今シオンがやって見せたものはそういった奇術とは一線を画すものだった。

 移動に要した時間は文字通り一瞬であり、ほんの僅かの遅滞もなかった。何より彼が移動したのは二階席から舞台の上……つまり階層を跨いでいるのだ。これが一階席であれば床下に作られた通路を使ったのではないかという疑惑も生じようが、そもそも舞台と繋がっていない二階席ではその絡繰は使えない。

 

 誰もがその姿を夢中で見ていた。二階席の最前列に座る観客にとってはそれこそ手の届く距離に彼はいたし、彼は一切その姿を隠していなかった。

 にもかかわらず、誰もシオンが姿を消す瞬間を認識できなかった。それらしい予備動作は全くなく、本当にパッと消えてパッと現れたのだ。

 

 続いて披露された早着替えも凄まじいものだった。

 早着替えの手品もまたありふれたものだが、ありふれている故にトリックの定石といったものが既に広く知れ渡ってしまっている。調べようと思えばその仕組みは容易に知れるだろう。

 

 しかし、シオンのそれは従来のドレスチェンジマジックとは異なっていた。

 着替えの衣装を鞄から取り出し手で持っていたことから、着ていた衣装そのものに仕掛けがないことは明白だった。ならば何らかの手段を用いて衣装を着脱しなければならないわけだが、それに際してシオンが行ったのは“ほんの一秒だけ布で自身を覆い隠す”ことだけだった。

 

 その布も明らかに独りでに動いていたため突っ込みどころ満載だったが、それよりも不可解だったのは僅か一秒で着替えを済ませたことそのものだ。観客の誰もが、それこそ控え室から映像越しにそれを見ていた他の出演者……本職の手品師・奇術師ですらその仕組みが分からなかったのである。

 

 何せ舞台衣装……創作上のキャラクターである鍔姫のコスチュームは普通の衣服とは様々な面において異なる。その最たるものは機能性を度外視していることだろう。着心地や着脱のしやすさといった普通の衣服に求められる機能性の一切を廃し、ただ“元ネタのキャラの外観に可能な限り寄せる”ことのみを目的に作られたそれは、ただひたすらに着にくいし脱ぎにくい。見た目だけは華やかだが、構造が複雑すぎて通常の衣服と同じようには使用できないのだ。なまじコスチュームとしてのクオリティが高いからこそ、それはより顕著だった。

 

 しかしシオンはほんの一瞬……独りでに舞い上がり広がった白布が重力に引かれて床に落ちるまでの、一秒にも満たない刹那の内に着替えを済ませてしまったのだ。しかも直前まで着ていた服はしっかり脱いだ上で、それも独りでに動いて折り畳まれていくおまけ付きである。

 本職ですらその仕組みが分からないのだから、一般人でしかない観客にその種が分かろうはずもない。それこそ、本当に理外の超能力としか解釈できなかった。

 

 だが彼らはすぐに思い知る。この程度の手妻など、これから目の当たりにする超常と比較すればまだまだ序の口に過ぎなかったのだと。

 

 次の瞬間、シオンの髪が伸びた。

 比喩ではない。本当に文字通り、物理的に伸長したのである。ざわざわと、まるで独立した一個の生物であるかのように蠢いたかと思ったその直後、紫紺に濡れ光る黒髪は腰の辺りまで伸び広がったのだ。なまじ目で追える速度だったからこそ異様だった。

 

 これまでの瞬間移動や早着替えといった、原理が不明であること以外は既存の奇術の域を出なかったそれらとは明確に一線を画する演出に誰もが息を呑む中、シオンは構うことなく次の動きに出る。

 

 髪の長さも合わせ、すっかりキャラそのものの姿になったシオンは舞台袖に向かって右腕を差し伸ばす。何かを掴むように開手されたそれ目掛けて、唐突に飛来する影があった。

 それは巨大な刀だった。身の丈ほどもある長大な刀身に、それを覆う重厚な大鞘、刀身に見合う長さの柄。総じてシオンの身長より大きなそれは、紛れもなく舞台において別格の存在感を放った模造刀……盟刀“神喰み”に相違なかった。

 

 大刀はまるで重力など存在しないかのように虚空を滑り、吸い込まれるようにシオンの手に収まる。その不可思議もさることながら、明らかに舞台のワンシーンを意識したであろう演出に観客席は静かな興奮に包まれる。

 直後、涼やかな鍔鳴りが響いた。引っこ抜くようにして大鞘が取り払われ、白銀の刀身がその姿を露わにする。

 

 だが、何より観客の目を引いたのは刀身ではなく鞘の方だった。

 浮いている。それが当然のことであるかのように、乱雑に放り捨てられた大鞘は重力を無視してフワリと浮遊したのだ。

 

 大衆がこの現象を目の当たりにするのはこれが初めてではない。舞台の上においてもそれは常に鍔姫の傍らで浮遊していた。激しく動き回る役者の動きに追従していたことから、天井から糸で吊られていたわけでないことは明白だったものの、その原理までは誰にも分からず議論を呼んでいたのだ。

 しかしそれがこの舞台でも披露されたことにより、これが再現性のある技……ステージアラウンドという演劇のための施設及び設備に依存したものでないことが証明されたのである。

 

 そして──紫電一閃。目にも留まらぬ速度で振るわれた一刀が虚空を切り裂く。

 そのとき観客は確かに目にした。刃が走った後の空間に生じた真空の断層と、そこに殺到した空気が凝縮し、盛大に爆発する様を。

 

 景色を歪ませるほどの爆発と衝撃が会場を揺らし、それは幻ではあり得ない現実感で観客の肌を叩いた。

 物理的に皮膚を刺激するその現実感、圧倒的なリアリティを以て彼らはこれを現実のものと認識した。これは幻想であって幻想ではない。もはや曖昧な遠景として捉えることはできない。直視せざるを得ない。

 

 あれこそは()()だ。紛れもなく。

 それが圧倒的な膂力によるものであれ、この世ならざる神妙不可思議によるものであれ、いずれ同じことだ。それが常人の知覚を超越した力であるのなら、即ちそれこそは“超能力”である。

 

 その確信を新たにした彼ら彼女らは、スタンディングオベーションと共に惜しみない喝采を送った。現代に現れし異能、真なる超能力者へと。

 

「──初見の方は初めまして。先の舞台をご覧になった方はお久しぶりです。舞台『東京ブレイド』におきまして鍔姫役を務めさせていただきました、シオンと申します」

 

 拍手と喝采が弾ける巷にあって、その声は不思議とよく響いた。

 

「あなた方を幻想の世界へとご招待しましょう。……予めお断りしておきますと、今からお見せするものは手品ではありません。種もなければ仕掛けもない怪力乱神……正真正銘の超能力です」

 

「信じるも信じぬもあなた次第。ですが──期待は裏切らないとお約束しましょう」

 

 微笑んでいる。

 何で以て計るべきかも定かでない異能の彼は、今、ひどく嬉しそうにしている。黒髪の下に星の色に煌めく紫紺の瞳をやや細ませて、頬を少し紅潮させて、口元には柔らかな曲線を描かせて……妖しいまでの色気が溶け零れて香を放っているかのようだった。

 もはやその美貌だけで一つの才であり力である。時代が違えば容易く城と国を傾けたであろうと諸人に確信させる、あまりに隔絶した美しさを前に誰もが理性を蕩揺させた。

 

 期待は裏切らないと彼は語る。だが、彼は既に期待以上のものを見せてくれている。よもや、まだこれ以上のものがあるというのか? 否応なく高まる期待感に場に満ちる熱量が増していく中、シオンは合図をするかのように柏手を打つ。

 

 すると、まるで床を滑るようにして舞台袖から何か細長いものが姿を現した。

 それは燭台だった。真鍮色の光沢を放つ高さ一メートル程度の燭台が四つ、スーッと床を滑ってくる。相変わらずすぐ隣で浮遊している大刀といい、この念動力だけで一つの奇跡と言っても通用する不可思議だが、シオンにとってはただ必要な道具を取り出したというだけでしかないらしい。三メートルほどの距離を置いてシオンを中心に四方を囲むように停止した燭台を彼はあくまで無感動に眺めると、取り付けられた蝋燭を指し示した。

 

「今から手で触れずに火を灯してみせます」

 

 言うが早いか、彼は見事なスナップで軽快に指を鳴らす。するとその先にあった燭台の一つに火が点いた。更に立て続けに三つ指を鳴らすと、それに連動し残りの燭台にも火が灯る。

 繰り返しになるが、シオンと燭台との間隔は三メートルはある。決して観客の目を盗んで手で触れられる距離ではない。クロースアップマジック、またはテーブルマジックと呼ばれるものの中には指先に火を灯してみせる類の手品が定番として存在するが、今のように遠隔で火を点けるとなれば話は違う。この場の大多数を占める、マジックショーを好んで観る目の肥えた観客をして思わず唸らされる見事な奇術だった。

 

「ですが、これだけでは物足りないと思われる方もいるでしょう。派手さに欠けると。あるいは燭台に何か仕掛けがあるとお疑いの方もおられるのではないでしょうか?」

 

 確かに、直前に披露された空間そのものを斬断せしめるような大斬撃と比較すれば派手さに乏しいのは確かである。そんなレベルのものをポンポンお出しされてもそれはそれで困るわけだが。

 

「なので、僕自身に火を点けようと思います」

 

 なんて? と観客が思わず耳を疑ったその直後、何の脈絡もなくシオンの全身が燃え上がった。比喩ではない。爆発的と称するよりない轟音と共に火炎が膨れ上がり、物理的に大炎上したのである。

 

 煙はなく、繊維や肉の焼ける異臭もない。しかし確かな熱がその炎にはあり、その熱は現実的な質感を伴って最前列付近の観客の肌を直撃していた。まるで焚き火の照度と熱量とを目の前にしたような感触に、それを目の当たりにした観客は絶句することを余儀なくされる。その炎が紛れもない本物であると理解できてしまったからこそ尚更に。火衣を纏う絶世の美人の姿はまるで宗教画の如く美しかったが、それはそれとして意味不明であり理解を拒む光景だった。

 

 何故この炎は肉も服も燃やさないのか?

 というかどうして自分に火を点けようなんて考えたの?

 そこまでしなくても誰も疑ってないよ。

 

 当の本人は激しく炎上しながら「どうだ?」と言わんばかりにドヤ顔を披露していたが、観客の誰もが困惑する内心を隠せなかった。端的に言ってドン引きだった。

 

「あー……失礼、あまり受けがよろしくなかったようで」

 

 先程までのように歓声が上がらなかったことで滑ったと感じたのか、シオンは気まずげに頬をかく。実際には滑ったのではなく感嘆より困惑が勝っただけなのだが、本人は全く無自覚だった。ちなみに現在進行形でまだ「ゴオオオオ」と音を立てて炎上中である。

 

「では次に行きましょう。今度はきっとお気に召すと思います」

 

 刀の一振りで自分と燭台に灯った火を瞬時に掻き消すと、そのまま何事もなかったかのように次の演出に移る。再び念動力で燭台を動かし舞台袖に引っ込めると、今度は台車に載った大きな水槽を呼び寄せた。

 水槽にはなみなみと水が張られている。シオンはコンコンと水槽を手で叩き、ついで水に手を入れバシャバシャと軽く掻き混ぜてみせた。

 

「今からお見せするのはこの水を使ったイリュージョンです。それでは……ミュージックスタート!」

 

 合図と同時にスピーカーから音楽が流れ出す。そのメロディはあまりにも有名なワルツ「美しく青きドナウ」だった。音楽としての知名度もさることながら、ワルツの名の通り社交ダンスでもよく使用される楽曲である。

 

 ふと気が付くと、またしてもシオンの服装が一変していた。今度は布で覆い隠すという演出すらなく、本当に瞬きした次の瞬間に衣装が変わっていた。

 仕立ての良い燕尾服に着替えたシオンの足元で、脱ぎ捨てられた鍔姫の衣装が折り畳まれていき……だが作りが複雑で畳みにくかったのか、途中で諦めたようにくしゃっと丸められ鞄に放り込まれた。

 

「3、2、1……それ!」

 

 三秒のカウントダウンと共に、ひょいっと何かを持ち上げるような動作をするシオン。すると水槽に満たされていた水が意思を持ったかのように動き出し、ずるりと器から溢れ舞台の床に零れ落ちた。

 否、それだけでは終わらなかった。這い出た水は床を濡らすことなく、そればかりか輪郭を保ったまま球状となり床の上に自立したのだ。

 

 今度こそ感嘆のどよめきに客席が沸く。水としての性質に背反し、直径一メートル程度の水球として形を保ったままその場に留まるその様は実に幻想的だった。今し方の大炎上(物理)などよりよほどイリュージョンらしい演出に、観客は惜しみない拍手を送る。

 

 しかしこれで終わりではない。シオンは着替えた燕尾服の襟元を正すと、畏まった仕草で一礼し、茶目っ気のある笑みと共に水球に向かって手を差し出した。

 

「僕と一曲踊っていただけませんか、お嬢様(レディ)?」

 

 変化はたちまち現れた。水球の表面が波打ったかと思うと、激しい水飛沫と共にその形を変えていく。まず輪郭が形成され、次いで細部が形作られていった。

 現れたのは水でできた人形だった。流石に表情は存在しないが、それでも遠目にも女性を模していると理解できる程度には精巧な出来である。しなやかな身体つきを水のドレスで覆い、長い髪を背中まで伸ばしているのが見て取れる。

 

 水の人形は驚くほど滑らかに動き出し、まるで人間そのものの仕草で差し伸べられた手を取る。シオンはその手を引き、背後で流れるワルツに合わせてステップを踏み始めた。

 

「スロー、スロー、クイック、クイック、スロー……素敵なステップです、レディ」

 

 水のドレスは照明を受けて柔らかく輝き、彼の手は包み込むように彼女の腰に回っている。ワルツに合わせステップを刻み、二人はゆっくりと回転を重ねていく。お互いの動きに合わせ完璧な調和を見せるその様は、まるで長年連れ添った男女のような見事な一体感だった。

 

 会場はまさに爆発的と言うべき大歓声に包まれた。奇術(イリュージョン)……否、正しく語源通りの幻想(イリュージョン)が舞台上を席捲している。水のドレスを纏う不定形の淑女(レディ)と、この世のものとは思えぬ美貌の少年によるワルツは空想世界の神秘が現実に現れたかのようだった。

 果たして、如何なる技術を用いれば同じことができるだろうか? 特殊な凝固剤か、はたまた夢のナノマシンか。いずれにせよ、現在の科学技術では再現は困難……否、はっきりと不可能であることは明白である。

 

 現実には不可能な神妙を舞台に現出することこそ奇術の醍醐味だ。種が分からなければなお良い。その観点からすると、今シオンが見せた水のイリュージョンはその究極というべきものだった。水という器に形を与え、それを人型と成し自在に操るなど尋常の業ではない。“超能力によるもの”以外の理由が観客には思い浮かばなかった。

 

 まあ、尋常ならざるという意味なら火種もなしに己の身体に火を点けるというのも大概だが。そちらはあまりにも脈絡がなさすぎたのと、燃え方が迫真すぎて美しさ云々より壮絶さと異様さが先行してしまったのが良くなかったのである。

 

 何はともあれ、観客からの好感触を得られたシオンはホッと一息ついた。新技火炎属性付与(エンチャント・ファイア)が滑った時はどうしたものかと焦ったが、しかしシオンはそのお陰で一つの確信を得た。

 

 それは「自分一人で考案したネタはウケが悪く、アイと二人で考えたものはウケが良い」というものだった。言うまでもなく火炎属性付与(エンチャント・ファイア)がシオンの独断であり、水人形のワルツがアイとの共同制作である。

 

 そうと理解するが早いか、シオンは己のプライドとイベントの成功を天秤にかけた上で、微塵の躊躇もなく自分のアイディアを切り捨てた。

 (もと)を正せば「アイにばかり負担を掛けるわけにはいかない」という考えの下、半ば意地で考え出したような案ばかりである。“下手の考え休むに似たり”という言葉の通り、その結果は観客の反応が如実に示していた。それを見てなお自分の考えに拘泥するほどシオンは己に自信があるわけではない。そこで彼は予定していた自分考案の演出「瓦割り千枚チャレンジ〜特殊合金仕立て〜」「夢想封印・力」「ドラゴンころし千本ノック」崩界・事象暗黒境界面(コラプサー・イベントホライズン)を中止する旨をアイに伝えた。

 

 アイは安堵に胸を撫で下ろし大きく息を吐いた。下手すりゃ東ブレの二の舞になるとこだった。大袈裟かもしれんが世界は救われたんだ。

 

 気を取り直したシオンは、段取りを変えながらその後も(つつが)なく舞台を盛り上げていった。

 水人形を無数のウサギの形に分裂・変形させ、アイの念動力によって観客席まで飛ばしてみせたり。

 再び鍔姫の衣装に着替えた上で全身に電気を纏い、見事な剣舞を披露してみせたり。

 消失マジックに挑戦したりもした。最初はゴルフボールから始まり、次いでテニスボール、バスケットボール、最後はボウリングの球と、徐々にサイズの大きいものを片手あるいは両手で包み込み白い蒸気に変えてしまうという業を披露する。ちなみに消えたものが再出現することはなかった。失われたものは二度と戻らないのだ。

 

「僕の手にはただの炭をダイヤモンドにする力があります」

 

 他にも様々な演目を消化していき、すっかり様変わりした出で立ちのシオンは唐突にそんなことを言った。ちなみに今の彼はタキシード姿にビカビカとピンク色の光を放つシルクハットを頭に被っている。経緯を知らなければ全く意味不明な姿だった。

 

 唐突にそのような宣言を聞いた観客は一斉にシオンの手に視線を向ける。少し前にボウリングの球をギュッギュッとおにぎりを握るようにして消し去ってしまった、白魚のような指が美しい繊手がひらひらと揺られる。

 

 ショッキングピンクに輝いていたシルクハットの光が収まる。シオンは頭の上にあったそれを手に取ると(おもむ)ろにひっくり返し、中から拳大ほどの大きさの黒い塊を取り出した。

 

「見えますでしょうか。これは炭です。何の変哲もないただの黒鉛ですね……ちなみに帽子から取り出したのは手品でも何でもなくて、最初から仕込んでいただけです」

 

 お陰で少し頭に炭が掛かっちゃいました、と笑って髪を払う動作をするシオン。なお、腰まで伸ばされた彼の髪は今は頭の後ろで一括りにされている。

 

「今からこれを本物のダイヤモンドに変えてみせましょう……まあ、本物と言っても人工ダイヤモンドなので、宝石としての価値は期待できませんが」

 

 行きますよー、などとにこやかに語りつつ、シオンは手の平の上に載った黒鉛をキュッと握り込んだ。軽い動作とは裏腹に「ガキョッ」という硬質な音が鳴り、指の隙間から僅かに光が覗く。

 

「3、2、1……はいっ!」

 

 特に意味のない三秒のカウントと共にパッと握り込んだ手を開く。解放された超高温によって周囲の空気が膨張する異音が響き、音を立てて白煙が上がる。

 噴出する白煙を軽く息を吹きかけて払ってやれば、果たして手の平の上にあったのは黒鉛ではなかった。形はやや歪ながら、そこにはゴルフボール程度のサイズの結晶が乗っている。

 

 光を透過し美しい光沢を放つ無色透明の結晶体──その輝きを認めた観客の幾人かは慌ててオペラグラスを覗き込むが、確かにそれはダイヤモンドのように見えた。

 たとえ人工物であるにせよ、このサイズのダイヤモンドなどそう簡単に調達できるものではない。天然物より安価であるとはいえ、それでも人工ダイヤモンドの相場は1カラット(約0.2グラム)あたり数百〜数千ドル程度。それがゴルフボールサイズともなれば、重量的に数百カラットは下らないだろう。であればその価格は単純計算で数万〜数十万ドル……加えて、その大きさに見合う特殊加工技術にかかるコストも考慮すれば、購入すると仮定した際の価格は更に跳ね上がる可能性がある。

 

 低く見積っても日本円にして数百万〜一千万円である。事前に用意していたものを黒鉛とすり替える手品だとしても、そのためだけに払うコストとしては些か現実的ではない。シオンのバックにいるのが最大手の芸能プロダクションだとしても限度がある。

 しかし、これはあくまでこの人工ダイヤモンドが本物であると仮定した場合の話である。もしこれがよく出来た模造品であった場合はもっと低コストになるだろうし、そうであるならばこのイリュージョンはただのすり替えマジックに成り下がるだろう。

 

 だが件の石がシオンの手にある以上、遠目に見るしかない観客にはそれを確かめる術はない。

 

「では、たまたま目に留まったそこのあなた。そう、最前列の素敵なおじ様です。ショーを見に来てくださったお礼としてこれは差し上げましょう。宝石としての価値はお察しですが、まあ、記念としてね」

 

 ところが、シオンはあっさりとダイヤモンドを手放した。軽やかな電磁加速で舞台から飛び降りた彼は、無作為に選んだ最前列に座る壮年の紳士──誰も知る由もないが実は秘密情報局(SIS)の諜報員である──の前に移動すると、まだほんのりと熱を持つそれをその手に握らせた。

 唖然とする紳士(本名:デイヴィッド・チャップマン、五十二歳)は震える手でずれた眼鏡の位置を直すと、手渡されたダイヤモンドの輝きに目を凝らし、ややあって腰を抜かしながら「本物だ!」と母国語で叫んだ。天然物でないのに本物というのもおかしな話だが、さりとて模造品ではあり得ない質感を有するそれは、人工物であれ紛れもなくダイヤモンドそのものだった。

 

「さあ、それでは最後の演目に移りましょう! この舞台もいよいよ大詰め……これよりお見せするイリュージョンを以て本日の締め括りとさせていただきます!」

 

 息をするように瞬間(高速)移動を使いステージに舞い戻ったシオンは、長いポニーテールを揺らしながら笑顔でそう告げた。

 今宵の幻想はこれにて閉幕。観客の反応は様々だったが、一番多いのは終わりを惜しむ寂寥(せきりょう)感に満ちた表情だった。

 

 まだ終わってほしくない、この不思議に満ちた舞台をもっと楽しんでいたい……多くの人々にそう思ってもらえたことを、シオンは嬉しく思った。決して独力で成し得た舞台ではないが、そんなことは些細な問題だ。彼にとってはアイと二人で作り上げたパフォーマンスを評価してもらえたことが何よりも喜ばしい。先般の舞台「東京ブレイド」も条件は同じだったが、今日のこの舞台においては自分とアイこそが主役。憧れの人と肩を並べてこの歓声と称賛を享受できた幸運を噛み締め、シオンは今日一番の輝くような笑顔を浮かべた。

 

「先ほどは炭からダイヤモンドを作ってみせましたが、あれを行ったのは片手でした……両手を使えばもっと大きなダイヤモンドが作れると思いませんか?」

 

 あまりに無造作に乱用されすぎてもはや誰も何も反応しなくなって久しい念動力を使い舞台袖から黒鉛を呼び寄せる。ただし、その大きさは先ほどのものより更に大きい。一抱えほどもある黒鉛がフワリとシオンの胸の前で浮遊する。

 

「今度はこの両手と、サイコパワーを駆使することでダイヤモンド精製の過程を余すことなく皆様にお見せしましょう!」

 

 実質的に直前の手品の種明かしをするに等しい発言に、多くの観客は喜びの声を上げ、一部の観客は盛大に表情を引き攣らせた。

 

 引き攣ったような表情を浮かべたのは人工ダイヤモンド製造の方法を知識として知る者達だ。

 そもそもダイヤモンドとはマントルの超高温・高圧の環境で生み出される結晶石である。人工ダイヤモンドとはそれを人の手で再現するものであるわけで、その過程で材料となる炭素に加えられる圧力はおおよそ5〜6GPa(ギガパスカル)。これは約5000~6000気圧に相当し、自然環境における標準的な気圧が約1000Paであることを考えると凄まじい高圧力であることが容易に窺える。

 更にこの高圧環境下に生じる温度も凄まじく、その温度は実に1400〜2000℃にも達する。これは地球の下部マントルの温度に等しい超高温であり、通常900~1000℃程度であるマグマをゆうに上回る。

 

 そしてたった今、シオンはそれを超能力で再現できると発言した。過程を余すことなく見せると。手の中に覆い隠されていたそれを、今、白日の下に晒すのだと。

 つまり──シオンは超能力を用いることで、約5GPaの超高圧力と、約2000℃の超高温を発生させることが可能なのだと明言したわけである。そんなもの「私は人間兵器です」と宣言したに等しい。

 

「では行きますよー」

 

 肝を冷やす一部の観客の様子などお構いなしに、シオンは気負った様子もなく浮遊する黒鉛に手をかざす。

 そのまま念じるようにじっと目を凝らし──唐突にカッと目を見開き、万物を圧壊させる眼光を解き放った。

 

 目の良い者ならば気付いただろう。シオンの瞳孔に浮かんでいた星の光が形を変え、超新星残骸の如き白光が同心円状に広がったのを。

 手加減なしに解放すれば超圧縮の末に重力崩壊(ブラックホール)すら引き起こす眼圧である。ダイヤモンド精製の条件を満たす程度の高圧・高熱など、赤子の手をひねるように容易く生み出せる。

 

 観客は見た。一抱えもある大きさの黒鉛が一瞬で圧縮され、直径五十センチほどの球状になったのを。

 同時に紫色のプラズマ光が迸る。そして超高温状態にあることを示すように白熱し、眩いばかりの白光を放った。

 

『えいっ』

 

 そこにアイの念動力が最大出力で加えられる。

 元より浮遊していた黒鉛はアイの念動力が生み出す力場の膜に覆われた状態だった。それはアイの念力によって形を変え、シオンの眼圧と合わさることによって黒鉛に新たな形を与えていく。

 

 これは先ほどの水人形と原理は同じである。アイの念動力の精密操作性はA。その巧みな操作能力よって力場の形を人型に変化……それで包み込むことによって不定形の水に擬似的な形を与え、更に力場ごと操作することでまるで人間そのものの姿と動作を実現していたのだ。

 そして今行っているパフォーマンスはアイの力場操作とシオンの眼圧の合わせ技だ。力場操作によって複雑な形状の()()を作り出し、その形に沿うように圧力を加えていくことによって、思うままの形状のダイヤモンドを生み出すのである。

 

 アイが形を決定し、シオンがその形に圧縮・成型する……二人の力の相乗作用だ。そうして出来上がったのは、花束の形をした高さ四十センチ程もある巨大なダイヤモンドの結晶だった。

 

 神秘の白光が収束し、プラズマの電光が霧散する。白煙が晴れると同時に露わとなったダイヤモンドの花束を目にした観客は、声を上げることすら忘れて息を呑んだ。

 まるで一流の彫刻師の手によって削り出されたかのような精巧緻密さで成型されたそれは、形だけ見れば本物の薔薇の花束のようだった。花弁一枚一枚の造形から、包装紙を飾るリボンとギャザーに至るまで明瞭に見て取れる。それでいてダイヤモンドとしての美しい透明感と光沢は一切損なわれておらず、透過した光の乱反射により眩い白色光(ブリリアンシー)を放っていた。

 

 偽物ではあり得ない輝きと美しさ。だが本物ではあり得ない大きさと造形。まさにこの世ならざる神秘が形を成したような光景に、一拍の間を置いて歓声が爆発した。

 まさに今日という日のトリを飾るに相応しい最大級の幻想の現出に、この場に集った全ての人間が我を忘れたように興奮し喝采を弾けさせる。彼の超能力の真偽の程を疑っていた者、または探りに来た者でさえ、当初抱いていた猜疑の全てを忘却し心からの称賛を拍手と共に送った。

 

『ねーえーシオンー……今からでも考え直さない?』

「どうしたのさこんな時に。せっかくプレゼント用意したのに、渡さなかったら意味ないでしょ」

『うぅ……初めての愛の共同作業なのに……』

「初めてって、何度も練習したじゃない。部屋にいっぱい練習作が転がってるし」

『うーんそういうことじゃないんだよなー。そんなノンデリなこと言う子に育てた覚えはないぞ☆』

「????」

 

 兎にも角にも、シオンは次の行動に移った。既に全ての演目を終えたと思っている観客からの拍手喝采を全身に浴びつつ、ゆっくりと足を前に進める。

 そうしてどんどん前に進み、しかし歩みを止めることなく……そのまま舞台を越えて、()()()()()()()()

 

 興奮に沸き立っていた客席が、その光景を目にしたことで困惑に静まり返る。誰もが一瞬それを見間違いだと思い、目を瞬かせ二度見する。

 だが、その現実は厳然としてそこにある。舞台の端を踏み越えたシオンは、それが当然のことであるかのように重力に逆らい、空中を足場に虚空に佇んでいた。

 

 種明かしをすれば、シオンはアイの力で宙に浮いていた。確かにシオンは独力で空を駆けることができるが、それは人外の脚力によって空気の壁を蹴りつけることによって空を跳躍しているのであり厳密には飛行ではない。

 しかしアイは霊体であるために重力の影響を受けず、シオンの周囲五メートル圏内という条件さえ満たせば空中だろうと水中だろうと関係なく自在に空間を移動することができる。そこで念動力によって基点たるシオンを宙に浮かべてしまえば、アイは彼と共に自由に飛ぶことが可能となる上に、シオンもまた同様に空を舞うことができるというわけだ。まあ、移動速度には天と地の差があるのだが。

 

 しかし何故かアイは念動力ではなく、背中からシオンの腰に腕を回し、抱きすくめるようにして宙に浮かんでいた。

 

「……あの、アイさん?」

『ツーン』

 

 段取りと違う行動にシオンは小声で問いかけるも、アイは拗ねたように無視してギュッと腕に力を込めた。なお肉体強度の差で全く効いてはいないが、今のアイの腕には岩をも粉砕する破壊力A相当のパワーが込められている。全然全く微塵も通用していないが。

 

 だがそんな裏事情を知らない第三者からすれば、今のシオンは何の仕掛けもなく空中浮遊しているようにしか見えなかった。その足は明らかに舞台から飛び出しており、従って透明なワイヤーで天井から吊られているといった疑いの入り込む余地はない。

 では透明な足場が仕掛けてあり、その上に立っているのか? しかしその疑問もシオンが空中に浮かんだまま上昇を始めたことでたちまち消え失せる。二階席に向かってスーッと滑るように虚空を移動するその姿を、誰もが愕然として目で追った。

 

 瞬間移動も凄まじかったが、観客に与えたインパクトとしてはこちらの方が大きかった。何故なら空中浮遊とは……空を飛ぶことは全人類が抱く夢だからだ。

 人は大昔から自由に空を飛ぶことを夢見てきた。その夢はライト兄弟が飛行機を世に生み出したことで実現不可能な夢想ではなくなったが、それでもまだ未到達の夢の一つとして人類の胸に燻っている。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()──それこそが真の人の夢。鋼鉄の翼に搭乗するのとはまた違う、真に重力の(くびき)から解放されることをこそ望んでいるのだ。

 

 そしてその夢が、今、目の前で現実のものとなっていた。ただ浮かぶのとはわけが違う。空に浮かび、意のままに移動する……真に()()するその姿に、この場に集う全ての人間の耳に分厚い壁の崩れる音が聞こえた。それは常識という名の壁が崩れ去る音だった。

 

 そんな全ての観客の脳を破壊したシオンが向かう先にいるのは、目をまん丸に見開いて驚愕する黒川あかねの姿だった。

 あかねはアクアや有馬と一緒に宮崎旅行へ行くことはせず、彼氏の晴れ舞台を見守ることを選んだのだった。当初は正規の手段でチケットを購入するつもりのあかねだったが、悪意なきDDos攻撃によりサーバーダウンしたことでチケット争奪戦に敗北。それを見かねたシオンから関係者用のチケットを譲り受けたことで、彼女は二階席最前列という特等席に座っていた。

 

 そして今、シオンは空を舞いあかねの眼前にまで到達した。唖然とするあかねにクスリと笑いかけ、彼は手にする花束を差し出した。キラキラと輝く、ダイヤモンドの花束を。

 

「そういえば、ちゃんとしたお礼をしてなかったと思ってね」

「え……?」

「東ブレの舞台ではたくさんお世話になったからね。これはほんのお礼。……ついでに、ちょっと最後の演出に付き合ってよ!」

「え? え? シオンく……ひゃあ!」

 

 呆然と花束を受け取ったあかねの手を掴み、シオンはまるで木の枝でも拾い上げるかのように軽々と彼女を持ち上げ、あれよという間にその腕に抱き止めた。一瞬の早業で横抱きに(お姫様抱っこ)されたあかねは、なされるがままシオンの腕の中で目を白黒させ……ややあって認識が現実に追いつくと、想い人との距離を自覚し顔を赤くした。

 

「うわわわわわわ、しっ、シオン君かおっ、顔ちかっ……!」

「こうするのもいつかの夜以来だね。ちょっと懐かしいなぁ」

「〜〜〜〜〜〜ッ!!??」

 

 実は初めてのお忍びデートで手を繋いでからというもの、これといって色気のある恋愛系イベントに恵まれなかったあかねの異性耐性は未だにお察しレベルだった。恋愛のABCで喩えるならAの影すら踏めていないウブなネンネである。

 そんなところに不意打ちのお姫様抱っこ……しかも衆人環視の中で、薔薇の花束(ダイヤモンド製)のプレゼントというオマケ付きだ。初心な少女の(ハート)は既にキャパオーバーである。

 

 瞬間湯沸かし器のように一瞬で赤面したあかねを腕に抱え、シオンは見せつけるように観客席の直上を飛翔する。

 見せつけるようにとは言うが、彼にとっては純粋にファンサービスのつもりだった。この会場は非常に広々としていて席数も多いが、その分だけ後方の席と舞台の距離が開いてしまっている。オペラグラスを持ち込んでいる観客が多いのがその証拠だ。

 だからこうして空を飛んで近くまで寄ったのである。せめて最後の演出はクロースアップマジックのように至近距離で楽しんでもらいたいという、シオンなりの心遣いだった。

 

 ──そして、地鳴りのような歓声が爆発した。

 

 怒号のようにすら感じられる万雷の喝采が会場を……ビルを震撼させる。人々は興奮するに任せて手を叩き、足を踏み鳴らして立ち上がり、万感を込めて快哉を叫んだ。感動のあまり卒倒する者すら散見されるほどだ。会場はまさに熱狂的という言葉ですら生温い興奮の坩堝(るつぼ)と化した。それほどの衝撃だったのだ。

 

 ……見える者にとっては“あかねを抱くシオンを抱くアイ”という名状し難い三人羽織が如き様相を呈しているわけだが、幸いなことにそれを認識しているのはシオンとアイの二人だけなのだった。

 

 


 

桐生(きりゅう)紫音(しおん)

 遂に公衆の面前でやらかしやがった自分のことを室内犬か何かだと思い込んでいる完璧で究極のゲッター。なまじ現実改変能力(無意識)のお陰で外界への影響がさほどでもない(当社比)ことを理解してしまったがために、致命的に自分の力の脅威度を見誤ってしまっている。ただの室内犬が瞬間移動しながら炎上しながら放電しながら視線でブラックホールを生み出しながら空を飛ぶわけないだろいい加減にしろ!

 

〜未使用技解説〜

 

・「瓦割り千枚チャレンジ〜特殊合金仕立て〜」

 その名の通り特殊合金で出来た瓦を千枚重ね、それを割り砕くというもの。イリュージョンの意味を履き違えたような極限のパワーオブドリームにより観客はドン引き間違いなし!

 

・「夢想封印・力」

 某楽園の素敵な巫女の必殺技のような技。割り砕いた特殊合金製の瓦を圧壊眼力で球状に超圧縮、極小の太陽と化したそれを複数生成し自身の周囲を旋回させる。触れたものを問答無用で封印(しょうめつ)させる死の火球をファンネルの如く振り回す最強の戦術兵器。その夢のような輝きと破壊力に観客はドン引き間違いなし!

 

・「ドラゴンころし千本ノック」

 夢想封印・力で振り回していた小太陽を一つにまとめ、腕力で叩いて伸ばし冷やして固めることで伝説のグレートソード「ドラゴンころし」を鍛造。それを秒間百回振り回すことで全世界の男の子の憧れと夢の破壊力をこの世に顕現させる。重厚な鋼の存在感と巻き起こる嵐のような剣圧に観客はドン引き間違いなし!

 

・「崩界・事象暗黒境界面(コラプサー・イベントホライズン)

 どっかの傍迷惑な某鋼の太陽の必殺技のような技。ドラゴンころしを再び眼力で超圧縮し、重力崩壊すら引き起こす凝視で極小のブラックホールを生成。生み出されたブラックホールを中心核とした超高密度の核融合は全ての光を呑み込み塗り潰し、内包する極大のエネルギーは三次元に亀裂を刻む。次元の狭間から覗き見える異次元の光を目の当たりにした観客は1d/100のSAN値チェックです。

 

【星野アイ】

「私と同じ視点に立てて嬉しいってそれもう永遠に君の隣にいるよ♡っていう意味だよねそれもう実質告白だよねああもうカワイイなぁシオンは後でお姉さんといっぱい楽しいことしようね♡」イライライラムラムラムラムラムラ

 

 なおこの後二人の愛(?)の共同作業で作り上げた花束を別の雌猫に掻っ攫われる模様。やはり時代は明け透けな年上系ヒロインより清楚な同年代系ヒロインなのか。画面の前の君もこのヒロインレースに投票してアイを応援しよう!

 

 ちなみに隣にいる奴が化け物すぎて相対的に目立っていないが、アイはアイで純粋な力比べにおいて既に哺乳類最強の域にある。具体的には、

 

 シオン>(越えられない次元の壁)>アイ>>>>>シロナガスクジラ>>アフリカゾウ>有馬かな((ヒグマ))>>星野ルビー(デスルビー)≧MEMちょ(???)>グリズリー(ヒグマ)≧ホッキョクグマ≧シャチ

 

 といったところ。物理攻撃無効や念動力なども加味すればもはやこの地球上にアイに勝てる生物は存在しない。しかも成長性もBランクと某星の白金には一歩劣るが某世界21と同等の高い成長率を誇るため、まだまだ強くなる余地があるしそのうち時も止められるようになる。しかも「シオンから五メートル以上離れられないならシオンごと移動しちゃえばいいじゃんね」とシオンを持ち運ぶことで陸海空どこにでも移動できることが明らかになったため詳細を省くが結論だけ言うとカミキは死ぬ。

 

【黒川あかね】

「〜〜〜〜〜〜ッ!?!?」← 恥ずかしさと嬉しさとが綯い交ぜになった言葉にならない乙女心の発露。可愛い。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」← 唐突に勇次郎に食器洗いを賭けたジャンケンを仕掛けられた時の刃牙。「ッ」を増やすだけでそれっぽくなる。見れる……ッッッ! 親父の食器洗いッッ(見れない)

 

Q.空前絶後のイリュージョンで会場を熱狂させ夢のような幻想(物理)で人々を魅了した人類史上初の真の超能力者にして神が手掛けたような美貌の年下イケメン彼氏がダイヤモンドの薔薇(手作り)とかいう世界に二つと存在しない宝物をプレゼントしてくれた上に皆の見てる前でお姫様抱っこ空中デートに連れ出されたあかねちゃんのこの時の心情を答えよ。

 

A.もう……普通の恋愛できないねぇ……

 

 可哀想に、あかねちゃんの男性観はもはや取り返しのつかないレベルで滅茶苦茶になってしまいました。あーあ。それもこれもこの唐変木の朴念仁がその気もないのに乙女のウィークポイントばかりを刺激するからです。この期に及んで番組への義理は果たしたので別れましょうは通用しねぇぞこのダボカス八兵衛がよぉ。

 

【観客の皆様】

 舞台「東京ブレイド」によって急速にその知名度を増したシオンのファンボーイ・ファンガール達が世界各地から集った。

 しかし一見平和に見えるイリュージョン・マジックショーの裏には、真なる超能力者の出現という歴史を揺るがす事態の真相を確かめるべく暗躍する各国情報機関の存在があった。デイビッド・チャップマン(五十二歳)の所属する秘密情報局(SIS)を始めとし、中央情報局(CIA)対外情報庁(SVR)など名だたる特殊情報機関が刺客を送り込み、シオンと彼の振るう超能力に対する情報収集を図る……はずだったが、夢のような神秘と幻想(と根源的恐怖を喚起する圧倒的強者のオーラ)に屈服・魅了され、イベントに潜入した刺客達は国家の垣根を越えてただのファンボーイと化した。下手に敵対すると碌な目に遭わないのは確定的に明らかなのである意味正解である。

 

【またしても何も知らない疫病神ちゃん】

 エッホエッホ

 アクアに君の復讐はまだ終わってないよって伝えなきゃ(善意100%)(人外の倫理観)

 エッホエッホ

 

 万が一にもシオンに感知されないよう病院裏手の森に結界を張ったり、効率的にアクア達を誘導できるよう観光ルートの予測・分析から手下のカラスの配置と誘導ルートの策定など、せっせと双子を迎え入れる準備を進めている。アクアがカミキの悪行に気付かない限り延々と被害者が増え続けるので大局的に見ると彼女の行動は間違っていないが、それはそれとして純粋に人の心がない。

 しかし本人には毛ほどの悪意もなく、ようやくあの化け物(シオン)に邪魔されることなく双子に会えるとニコニコしている。会うのは構わないが会うための口実のチョイスが致命的に間違っていると思うのだが、どうだろう、見えるだろうか。

 





ELDEN RING

NIGHTREIGN


2025年5月30日、発売


──集え、夜を渡る者たちよ──
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