傍に立぀君は完璧で究極のアむドル   䜜カミキヒカラナむ

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アニメ「掚しの子」二期絶賛攟送䞭 メルトきゅんの芋せ堎の挔出はマゞで最高でした
さぁ興味のある者は今すぐアニメを芋ろ
急げっ 乗り遅れるな
星々の茝きをその目に焌き付けるんだ
“掚しの子・ラッシュ”だ



25.悩める星屑達

 それは舞台「東京ブレむド」公開たで䞀週間を切ったある日のこず。居残りで皜叀をさせおもらっおいた鳎嶋メルトは、気分転換に倖の空気を吞うべく衚に出おいた。

 

 その衚情からは色濃い疲劎が滲み出おいる。メルトはスタゞオの倖に䜇んでいる寂れた自販機に近付きミネラルりォヌタヌを賌入するず、行儀が悪いず知り぀぀も喉を鳎らしお勢いよく氎を呷った。

 500mlのペットボトルを瞬く間に空にしたメルトは、涌感を貪るようにしお息を吞う。そのたた建物の壁に寄り掛かり、深々ずため息を吐いた。

 

「はぁヌ  キッツ」

 

 東ブレの皜叀は今たさに䜳境を迎えおいる。しかし有銬かなが“ずんでもないキラヌパス脚本”だず評した通りの滅茶苊茶な難易床の脚本は、著しい負担をメルトに匷いおいた。

 

 ラララむの圹者陣は新しい脚本を諞手を挙げお歓迎しおいたが、挔劇の䞖界に入っおただ日の浅いメルトにずっおはそうもいかない。求められる挔技の基準が跳ね䞊がったずいうのもそうだが、䜕より“原䜜に存圚しないストヌリヌである”ずいう点が最倧の障害ずしお圌の前に立ちはだかっおいた。

 

 圓初の「枋谷抗争線」であれば、圹者ずしおはただ未熟なメルトであっおも、原䜜の挫画を読み蟌むこずである皋床シヌンごずのキャラの心情を読み解くこずはできた。

 しかし「血鬌の恩讐線」は原䜜には存圚しない物語だ。ある意味ではこの脚本こそが原䜜だず蚀えるだろう。そしお脚本は挫画ではない。故に絵がなく、埓っおキャラの衚情からその心情を掚察するこずはできない。「このシヌンではこのキャラはこういう思いを抱いおいるのだろう」ではなく、「このキャラであればこのシヌンではこういう思いを抱いおいるはずだ」ずいう、もう䞀段階螏み蟌んだ領域での考察、そしおそれを己が挔技に萜ずし蟌む技量が求められるのだ。

 

 そしおそれは、今のメルトには䞍可胜な技術だった。

 

「  ダメだ、分かんねぇ。やっぱ俺には姫川さんや黒川みたいな挔技は無理だ  」

 

 分かり切っおいたこずを今曎嘆いたずころでどうしようもないこずは理解しおいる。それでも匱音を口に出さずにはいられなかった。メルトは悄然ず項垂れ、力なく空になったペットボトルをゎミ箱に攟り蟌んだ。

 

「ラララむの人達が挔技が䞊手いのは圓たり前だ  だけど有銬やアクアはそれに぀いお行っおる。俺だけだ  俺だけが党然ダメで皆の足を匕っ匵っおる  」

 

 そうず自芚できるだけ成長したず蚀えるだろう。「今日あた」の頃のメルトであれば、そもそも自分の挔技が䞋手だずいう自芚すらなかった。呚囲ず自分を比范し、実力を客芳芖できる皋床には圌も圹者ずしお成長しおいるのだ。

 

 しかし、そんなものは䜕の慰めにもならない。今メルトが欲しおいるのは成長の実感などではなく、呚囲の挔技に぀いお行けるだけの実力だった。

 そしおそれが地道な努力の末にしか手に入らないこずを、メルトは十分に理解しおいた。

 

「  皜叀に戻るか」

 

 努力するしかないのだ。物語の䞻人公のような急激なパワヌアップなど珟実には望むべくもない。そもそもモデル䞊がりで圹者の道に入っおただ日の浅いメルトは、スタヌト地点からしお呚囲に倧きく埌れをずっおいるのだ。厳しい仕事になるこずなど承知の䞊でこの舞台に䞊がるこずを決断したのはメルト自身なのだから、努力する以倖に道はない。

 

 気持ちを切り替えるように自分の頬を叩くず、メルトは寄りかかっおいた壁から身䜓を離す。

 そうしおスタゞオに足を向けようずしたその時だった。ふず、芖界の端に䜕やら挙動䞍審な二人組の人圱が映り蟌んだ。

 

「──やっぱり効ずしおはね、兄がちゃんずやれおるか心配なわけ たたボッチになっおる光景が易々ず目に浮かぶ ぀たり、そう いわばこれは授業参芳 芋孊も家族の矩務だず私は思うわけ」

「りチの事務所厳しいんよ〜 勝手に他所の珟堎に入り蟌んだのバレたらマネヌゞャヌにどやされるぅ〜」

 

うわ、容姿レベルたっか

 

 どう芋おもその䜇たいは䞀般人のそれではない。容姿が敎っおいるのもそうだが、䜕よりも醞し出すオヌラが普通ずは異なっおいた。

 ピンクブロンドに染めた髪の少女は恐らく同業(モデル)だろう。抜矀のスタむルもそうだが、䜕より自分の䞀挙䞀動が誰か(カメラ)に芋られるこずに慣れた者特有の動きが挙動に珟れおいる。プラむベヌトであっおも無意識に写真映えを意識した姿勢をずっおしたうのはモデルの職業病のようなものだ。

 

 だが、䜕よりもメルトの目を匕いたのはもう䞀方の少女だった。

 

 陜だたりのような金の髪に、宝石のように茝く玅玉の瞳。透き通るような癜皙の矎貌は茝かんばかりで、有銬かなや黒川あかねず間近に接し目の肥えおいたメルトをしお思わず息を呑んでしたうほど。

 しかし䜕より特筆すべきはそのオヌラだ。その少女はたるで色ずりどりの花匁を思わせる、爛挫たる茝きをその総身に纏っおいたのだ。

 

あんなオヌラのタレント、䞀床芋たら忘れないず思うんだが蚘憶にねヌな  ただデビュヌしお間もない女優かアむドルかなんかかな

 

 特に着食っおいるわけではない。プラむベヌトではそこたで服装に気を遣わない質なのか、片割れのモデルの少女ず比べその出で立ちには垢抜けなさが目立぀。しかし掟手さを排しおいおもなお薫る華やかさずいうものがあっお、隠し切れぬそれは少女を殊曎に茝かしく芋せおいた。

 

 倕暮れの薄闇の䞭にあっお䞀局茝くその姿に思わず芋惚れおいるず、芖線を感じたのか少女はふっず顔を巡らせる。たるで星を浮かべたような瞳ず目が合い、メルトは思わずどきりず胞を高鳎らせた。

 

「  あ 『今日あた』のドラマに出おた人」

 

 ビシッず指を差されそう蚀われる。人芋知りしないずいうか、仮にも初察面の盞手に察しお随分ず物怖じしない態床をずる少女だった。それすら愛嬌ずしお映るのだから矎少女ずいうものはお埗だなぁ、ず感じ入り぀぀、メルトは少女の発蚀に察し銖肯しお答えた。

 

「『今日あた』で知られおるのはちょっず耇雑だけど  たあ、自業自埗か。それで、君は」

「星野ルビヌです。兄がお䞖話になっおたす」

「星野  ああ、アクアの効か」

 

 蚀われおみれば面圱がある。柔らかな金の髪に、宝石のように綺麗な瞳。髪色も盞俟っおどこか日本人離れした矎貌の持ち䞻だ。

 

「けどアクアならもう垰ったよ。今日の皜叀はもう終わっおる。俺はちょっず個人的に居残りしおるだけで」

「え」

 

 わざわざ兄の様子を芋に足を運んだ少女には気の毒だが、アクアはずっくにスタゞオを埌にしおいた。䜳境を迎えおいるずいっおも、誰もが東ブレの皜叀にばかり時間を割けるわけではない。翌日に別の仕事を控えおいる圹者が倚い堎合などは、今日のように昌過ぎには撀収(バラシ)ずなるこずも珍しくはなかった。

 

「お兄ちゃん毎日垰っおくるの日付倉わる頃なのに  じゃあ毎晩遅くたで䜕やっおるのよ」

「んヌ  俺も詳しくは知らねぇんだけど、最近はい぀も桐生ず䞀緒に垰っおるな」

「桐生  え、シオンさんず」

「䜕だ、桐生のこずも知っおるのか」

「はい 私のアむドルの先生ですから」

「  あい぀アむドルもできるの マゞで䜕でもありだな  」

 

 モデルで圹者で超胜力者でアむドル。マルチタレントにしおも節操がなさすぎる。逆にお前は䜕を持ち埗ないのだ。

 

「ちょっず電話しお聞いおみる」

「ルビヌ  野暮はあかん、そっずしずき  」

 

 スマホを取り出したルビヌの手を、モデルの少女  寿(こずぶき)みなみはそっず抌さえた。䜕を想像しおいるのか、その頬はほんのりず赀らんでいる。

 

「なに野暮っお」

「ルビヌも『今ガチ』芋おたんなら分かるやろ アクアさんずシオンさんは  陰で付き合っおるんよ  」

「なななな、なっ、䜕ですっおヌヌヌ」

 

 みなみはアク×シオのカップリング支持者だった。

 

 今明かされる衝撃の真実に癜目を剥いおショックを受けるルビヌ。実の兄が倜な倜な男ず逢瀬しおいるなどず聞かされればさもあろう。

 

いやヌ流石にそれはねヌんじゃねぇかな  

 

 毎床毎床䞀緒にスタゞオを埌にするアクアずシオンの背䞭をすんごい目で芋おいる有銬かなず黒川あかねの姿を知っおいるメルトずしおは、流石にそれはないず思いたいずころだった。そんな四角関係は嫌すぎる。

 

「でも男同士だよ それも毎晩だよ ここ数日毎晩なんだよ」

「ええかルビヌ   犁じられた関係だからこそ  燃え䞊がるものもあるんや  」

「いやあああああ 信じたくない ママ  じゃない、シオンさんずお兄ちゃんがそんな関係だなんお認めたくない」

 

 想像力逞しい子達だなぁ、ずメルトは思った。

 そしおこうも隒いでいればスタゞオの䞭にも少女達の姊しい話し声は届く。それを聞き぀けた人物が䞀人、建物の䞭から姿を珟した。

 

「おっ、君達可愛いねヌ。誰かの出埅ち」

 

 金の染髪に敎った顔立ち。線は现いが匕き締たった身䜓぀きの青幎がにこやかな衚情で二人の少女に声を掛けた。

 

 鎚志田(かもしだ)朔倜(さくや)。2.5次元圹者ずしお圓公挔においおも遺憟なくその実力を発揮しおいる実力掟俳優である。

 

 2.5次元経隓豊富ずいう前評刀に停りはなく、その実力はラララむも認める皋だった。

 しかし圹者ずしおはずもかく、私人ずしおは圌はそこたで品行方正な人間ではなかった。具䜓的に蚀うず女性関係にだらしのない䞀面を有しおいたのである。

 

 鎚志田朔倜は自他ずもに認める無類の女奜きである。しかしここ最近は東ブレの皜叀に掛かりきりだったこずもあり、その手の“遊び”はご無沙汰だった。端的にフラストレヌションが溜たっおいたのだ。

 そこに珟れた芋目麗しい少女達。片や抜矀のプロポヌションを誇るグラビアモデル。片や眩いたでのオヌラを攟぀珟圹アむドル。これには鎚志田の女奜きセンサヌもビンビンである。

 

 これは誘っおるだろ 誘っおるだろう なあ誘っおるだろおたえ──などず思考したかは定かではないが、いずれにせよ据え膳を前にしおお行儀良くしおいられるほど鎚志田は倧人しい質ではなかった。

 

 枟身の螏み蟌みでスタゞオの倖呚を囲う塀を飛び越える。そのたた空䞭で䞀回転した鎚志田は䜓操遞手もかくやずいう芋事な着地を決め、目にも止たらぬ速床でルビヌ達のもずににじり寄った。黒川あかねの足元ぐらいには及ぶかずいう凄たじい身䜓胜力だ。げに恐ろしきは男の性欲であろうか。

 

 奜青幎めいお爜やかな笑顔のたた、残像すら生じかねない超スピヌドで接近する鎚志田。その異様な動きにメルトずみなみはギョッずしお埌退った。

 

 しかし、ルビヌだけは鎚志田の超人的な動きに察しおこれず蚀った反応を瀺すこずはなかった。それは偏(ひずえ)に有銬かなず同様、圌女の身䜓胜力が垞人ずは比范するこずすら烏滞がたしい領域に達しおいるが故である。

 宙返りなど今のルビヌの身䜓胜力を以おすれば簡単に再珟できる。残像を生むレベルの高速移動ですら、圌女の動䜓芖力ならば容易に捕捉できる皋床のスピヌドに過ぎない。そんなルビヌからすれば鎚志田の党力疟走など、「なんかむケメンの圹者さんがちょっず慌ただしくやっお来た」皋床の認識でしかなかった。

 

「こんにちは 出埅ちず蚀えば出埅ちかな 入れ違いになっちゃったみたいですけど  」

 

 故にこれず蚀っお動じるこずなく、ルビヌはにこやかに笑っおそれに応じた。

 

 華やかな笑顔。愛嬌のある仕草。鎚志田は思わず目を奪われる。決しお媚びおいるわけではないのに、その䞀挙䞀動がどうしようもなく男の興味を誘う。

 それこそはルビヌが母より受け継ぎ、䞀ヶ月に及ぶスパルタ蚓緎の末に花開いた倩皟。その立ち振る舞いによっお他者の芖線を誘匕し魅了する──即ち、倩性のアむドルの才である。

 

脈アリ

 

 そしお鎚志田は無意識であるが故に加枛なく振る舞われるルビヌのアむドル仕草に物の芋事に匕っ掛かった。

 魔性の愛され䜓質にしお歩くガチ恋ファン補造機。か぀おのアむを思わせる魔性の片鱗を挂わせるルビヌの有様を芋お、鎚志田は己に気があるのだず勘違いした。か぀お倚くのドルオタを沌に沈めたその陥穜に気付くこずなく、圌は自ら望んで深みに嵌っおいく。

 

「誰を埅っおたの 俺で良ければ話぀けずくよ」

 

 芪切な颚を装っお近付き、あわよくば連絡先をゲットする。い぀も通りずいえばい぀も通りの手銎れたやり口だ。しかし蟌められた熱量はか぀おない皋だった。玅玉の瞳に浮かぶ星のきらめきに倢䞭になっおいく己を自芚するこずなく、鎚志田はスマホを取り出し぀぀曎に䞀歩ルビヌに詰め寄った。

 

「えっず、お兄ちゃん  アクアずシオンさんに䌚いに来たした」

 

 そしおその名を聞いた瞬間、鎚志田は勢い良く背䞭からひっくり返った。

 

「か、鎚志田さヌヌヌん」

 

 ゎッ、ず鈍い音を立おおアスファルトの地面に倒れ蟌んだ鎚志田のただならぬ様子に、流石のメルトも血盞を倉えお駆け寄った。

 

「どうしたんすか急にコメツキムシみたいにひっくり返っお おいうか今頭打ちたせんでした」

「だ、倧䞈倫  臎呜傷で枈んだ  」

「ダメじゃねぇっすか゜レ」

 

 鎚志田のこの奇行には流石のルビヌも目を䞞くしお呆然ずしおいる。

 しかしこれはある意味で仕方のないこずだった。珟圚の東ブレの珟堎においお、シオンの存圚は極めお特殊なものである。

 

 血濡れの埩讐鬌「鍔姫(぀ばき)」。最匷の刀を振るう、憎悪に身を焊がし荒ぶる歊蟺者。それを過䞍足なく挔じるシオンの攟぀鬌気たるや、䞀郚の人間*1に消えぬトラりマを刻み蟌むレベルだった。

 

 恐るべきは、そのオヌラが十分に制埡されたものであるこずだった。無理に「こづか」を挔じおいた時ずはたるで異なる。野攟図に振り撒かれるのではなく、確ずした指向性を以お攟たれる異圢の圧力は、煮え滟るような暎力性ず匕き換えに怖気立぀ような鋭利さを具えるに至った。

 そうしお埩讐者「鍔姫」は完成した。静かな䜇たいず荒ぶる狂気ずを危うい均衡で䞡立させた剣士の姿は、〆切に远われる鮫島(さめじた)アビ子に代わっお皜叀の様子を確認しに来たGOA(ゎア)が手攟しで絶賛するほどだった。

 

 しかし共挔する立堎の鎚志田はGOAほど呑気に構えおはいられない。皜叀の床にスタゞオを芆い尜くす絶倧なオヌラ。倩地を震撌させるが劂きそれは倧山の鳎動にも䌌お、鎚志田に察しおも容赊なくその霊嚁を叩き付けおきた。圌の挔じる枋谷クラスタの剣士「匁(もんめ)」はそれなりに出番のあるキャラクタヌであり、埓っお鍔姫ずの共挔シヌンも倚いこずがそれに拍車をかける。

 

 それはある皮の化け物にも思えた。芞胜界に矀を抜く才胜ずはそういったものなのだろうか。ただ霢二十二ず若手の域を脱せぬ鎚志田には正確なずころは分かりかねたが、いずれにせよ圌の心はシオンずいう恐るべき挔者の攟぀鬌気を前に屈服しおしたっおいた。匁(もんめ)ではなく鎚志田朔倜ずしお、圹柄を超えお鍔姫(シオン)ずいう人間を心の底から恐怖したのである。

 

 そしお目の前の麗しき少女はそのシオンず知り合いであるずいう。そんな盞手に軜率に手など出せよう筈もない。出せば己は死ぬずいう確信があった。

 

 かくしお鎚志田のナンパ、䞊びに自芚なき初恋は初動から僅か数秒で朰えるこずずなった。衝撃ず倱意のたたに仰向けにぶっ倒れた鎚志田はフラフラず身を起こし、メルトの肩を借りながらようよう二本の足で立ち䞊がった。

 

「フフフ  残念ながら俺では力䞍足のようだ  い぀か瞁があればたた䌚おう、かわい子ちゃん達  」

「 䜕だかよく分からないけど分かりたした ずりあえず垰ったらお兄ちゃんシバキ倒しお尋問(オハナシ)しようず思いたす メルトさんもありがずうございたした」

「ああ、うん  皋々にな」

 

 圓然ながらルビヌは目の前の優男からナンパされようずしおいたこずなど露ほども気付いおはいない。鎚志田ぞの印象が「䜕やら挙動䞍審だがおもしれヌ男」で固定されたルビヌは笑顔で圌に手を振り、そのたた別れを告げた。

 

 その無垢な笑顔が曎に鎚志田を狂わせる。䜕ずも味わい深い衚情をしたみなみを䌎っお去っおいくルビヌの背䞭を芋送った鎚志田は、突劂匕き裂かれるような痛みを生じた胞を抌さえお呻き声を䞊げた。

 

「だ、倧䞈倫っすか」

「フッ  笑えよ鳎嶋メルト  幎霢も芞歎も自分より䞋の新人に怖気付いおナンパを断念するなんざ、この鎚志田朔倜ずもあろう男が萜ちぶれたもんだぜ  」

「ああ、やっぱナンパ目的だったんすね  」

「しかし䜕だこの胞の痛みは  たさかこの幎で胞焌け   昌食ったカツ䞌が良くなかったのか  」

「あヌ  取り敢えずスタゞオ戻っお少し䌑みたす」

「そうするわ  お前スカした野郎だず思っおたけど案倖いいダツじゃねぇか  」

「それ本人の目の前で蚀うか普通  」

 

 初恋ず倱恋を同時に経隓し傷心の鎚志田は、介抱しおくれたメルトにあっさり絆された。

 メルトずしおは耇雑な思いだった。自分ず同じタむプのチャラい人間性、しかし圹者ずしおの技量は雲泥の差。同族嫌悪にも䌌た反発心を密かに抱いおいた身ずしおは、こんな経緯で芪近感を芚えられおも困惑するだけである。

 

「たあ、なんだ  俺もただただ若手だからあたり偉そうに蚀えた口じゃねぇけどよ。お前が頑匵っおるのは芋おりゃ分かる。毎回居残りで皜叀しおるし、暡擬甚の朚刀もお前のや぀だけ血豆の跡があるのも知っおる」

「  どうも」

「正盎挔技䞋手で気に入らねぇず思っおた時期もあったけど、䞋手なの自芚しお努力しおる奎を笑うほど俺も萜ちぶれちゃいねぇ。その䞊で蚀うけどよ  あたり思い詰めない方がいい。桐生シオンは姫川さんず同じ、本物の倩才だよ」

「  ッ」

 

 内心をピタリず蚀い圓おられたこずに動揺するず同時、蟌み䞊げおきた悔しさに䞋唇を噛む。

 鎚志田の蚀う通り、メルトはシオンのこずを匷く意識しおいた。同じモデル䞊がりの圹者でありながら、あらゆる面で自分の䞊䜍互換である少幎を。

 

 圓初のこづか圹における迷走ぶりを芋るにラララむの二枚看板である姫川倧茝や黒川あかね皋の䞇胜性はないようだが、そんなもの䜕の慰めにもなりはしない。泥䞭の錈(スッポン)が月ず極星のどちらが眩しいかを論じるに等しい䞍毛さだ。原䜜者や金田䞀からもその実力を認められおいる時点で、圹者ずしおはメルトより䜕枚も䞊手であろう。

 

 これでシオンが生粋の圹者であるのならこうも意識するこずはなかっただろうが、圌はあくたで新人タレント。芞歎は䞀幎皋床で、しかも圹者ずしお掻動した経隓は皆無である。曲がりなりにもドラマの䞻挔を務めたこずのあるメルトより、経隓ずいう点においおは明確に劣っおいるはずなのだ。

 にもかかわらず、自分の圹すら満足にこなせぬメルトず異なり、シオンに䞎えられた圹は今や䞻挔玚。しかも超胜力などずいう誰にも真䌌できない唯䞀無二の才胜を掻かし、舞台挔出の䞀郚を担うなど倧いにその実力を発揮しおいる始末だ。

 

 その才を矚たなかった日はない。誰をも圧倒するオヌラ、他の远随を蚱さぬ身䜓胜力、䞖に冠絶した神々しいたでの矎貌。同じモデルだからこそ、同䞖代の俳優だからこそ、かの少幎に己が勝る郚分など䜕䞀぀ないず分かっおいおも匷烈に意識しおしたう。

 

 だからこそ受け容れられなかった。自分より遥かに䞊手い圹者から「シオンず競わなくおいい」ず蚀われたこずに。

 そう蚀われたこずに安堵しおいる己をこそ、鳎嶋メルトは、䜕よりも蚱せなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海色の瞳孔が现たり、星の茝きが昏く濁る。その瞳に浮かぶ感情の色は殺意か、あるいは慟哭か。

 その手に握られるのは刃──ではない。暡造刀でもなければ暡擬甚の朚刀ですらない。刀に芋立おお䞞めただけの台本である。

 

 しかし、それを握る圌の手は悲しいほどに震えおいた。喘ぐように息を荒げ、党身に冷や汗を浮かべる姿はおよそ尋垞の様ずはかけ離れおいる。

 ならばやはり、圌──星野アクアの総身を満たすその感情は殺意ではない。恐怖だ。圌は䜕かを恐れ、僕に刃を向けるこずを躊躇っおいる。

 

「っ  ク゜ッ」

 

 䜕か悍たしいものを振り払うようにしお台本を床に叩き付ける。そのたた力尜きるように床に座り蟌み、荒くなった呌吞を敎えるように胞を手で匷く抌さえた。

 アクアのこの様子は今に始たったこずではない。圌に頌たれお皜叀の埌に二人で緎習を行うようになっおから、既に繰り返し芋られる光景だった。

 

 “刀鬌(ずうき)が鍔姫(぀ばき)を刀で刺すシヌンの緎習がしたい”──そう頌たれたのが事の発端だった。

 いやにピンポむントなシヌンの緎習をするものだず思ったが、アクアのこの様子を芋れば玍埗だった。確かにラララむの皜叀でこんな姿を芋せれば隒ぎになるだろう。圌は話が倧きくなるこずを嫌い、人知れず克服するこずを遞んだのだ。

 

「    悪い、シオン。折角付き合っおくれおるっおのに  」

「ううん、それは良いんだけど  その、倧䞈倫」

「倧䞈倫だ。しばらくしたら元に戻る  」

 

 明らかに倧䞈倫ではない。しかし僕はその恐怖の理由を問い質すようなこずはしなかった。問うたでもなくその理由は明癜であるからだ。

 

 以前から薄々察しおはいたこずだが、どうもアクアは僕ずアむを重ねお芋おいる節がある。正盎僕ずしおはどうしおそう思われるのか未だに疑問なのだが、壱護さんに蚀われたこずで流石の僕も倚少は自芚するようになった。

 

 倖芋的にアむず䌌おいるずは思わない。長幎アむず共に過ごした䞊で、やはり僕ず圌女の共通項など黒髪黒目ぐらいのものだ。

 であれば容姿以倖  雰囲気ずかオヌラずか、そういう目に芋えない郚分でアクアは僕の䞭のどこかにアむの姿を芋おいるのだ。

 

 その䞊でアクアがこうも恐慌を来す理由に぀いお思いを銳せる。考えられるのは、やはり目の前でアむがストヌカヌに殺害された珟堎に居合わせたずいう䞀件だろう。アむ曰く、扉越しで盎接その堎を芋おいないルビヌず異なり、アクアはアむが刺される瞬間から息絶える最期の䞀瞬たでの䞀郚始終を芋届けたのだずいう。

 

 さお  どう思いたすか。呜の灯火が消えゆく様を実の息子に芋せ぀けた星野アむさん。

 

『四歳なんお小さい頃の蚘憶がそんな鮮明に残っおるなんお思わんやん普通  』

 

 ぷるぷるず震えながら涙目でそんなこずを宣(のたた)うアむ。

 

 確かに四歳ずいう幌児期の蚘憶など、倧倚数の人間はその殆どを忘れおしたうだろう。よ(・)ほ(・)ど(・)匷(・)烈(・)に(・)印(・)象(・)に(・)残(・)っ(・)た(・)蚘(・)憶(・)以(・)倖(・)は(・)。

 目の前で実の母が殺され、冷たくなっおいく様を目の圓たりにする  これ以䞊に匷烈な蚘憶などそうはないだろう。はっきりずトラりマものだ。

 

 確かに幌すぎお圓時のこずを鮮明には芚えおいないかもしれない。しかしそれは必ずしも蚘憶が薄れるこずを意味しない。むしろその逆、実際以䞊に酷い蚘憶ずなっお定着、深刻化しおいる可胜性もある。そうでもなければこんなパニック症状じみた様盞を呈するずは思えない。

 

 たあ、僕もその可胜性を倱念しおいたわけだからあたり人のこずを蚀えた立堎ではないが。たさかあのアクアがここたでアむの死を深く匕きずっおいるずは思っおもみなかった。

 

『うぅ〜 ダメなママでごめんねぇ〜 もうすぐ、もうすぐ実䜓化できるず思うから そしたらいの䞀番にアクアに䌚いに行くからねぇ〜』

 

 チワワみたいに小刻みに震えながら涙声でそう叫ぶアむ。

 しかしその䞀方で、アむは壱護瀟長の時のように自らの存圚を明かす぀もりはないようだった。正盎に蚀っお、僕は今すぐにでもアむが健圚であるこずをアクアに告げるべきだず思うのだが  

 

『いやヌ、それ逆効果だず思うよ 瀟長の時ずはちょっず状況が違うかなっお』

 

 ふむ。その心は

 

『本番が近いのにこれ以䞊粟神的に動揺させるのはやめた方が良いんじゃないかな〜  っおのが䞀番の理由。瀟長みたいに持ち盎しおくれるなら良いけど、アクアっお昔からリアリストっおいうか、理屈屋っぜいずころあったから。倚分瀟長ほどすんなり信じおはくれないんじゃないかなぁ。倉に拗らせおシオンず喧嘩しおほしくないし』

 

 蚀われおみれば確かに、アクアは幜霊なんお埮塵も信じおなさそうだ。聞けば圌の孊力は偏差倀䞃十台だずいう。そんな頭のいい子が幜霊なんお非科孊的なものを、それも今のように粟神的に远い詰められおいる状態で玠盎に信じおくれるかはかなり怪しいずころである。

 

『もう䞀぀の理由は  倚分アクアならこの粟神状態を利(・)甹(・)す(・)る(・)んじゃないかなっお思ったから。これは勘だけどね』

 

 利甚する それは䞀䜓  

 

「おヌい早熟、䞀旊䌑憩入れろ。人のスタゞオでゲボ吐かれたらたたったもんじゃないからな」

「  うるせぇ、吐かねヌよ」

 

 先ほどから扉越しにスタゞオの様子を窺っおいた気配がそんな蚀葉ず共に入宀しおくる。

 珟れたのは四十代ぐらいの幎霢の男性だった。かなりの匷面、ずいうか気難しそうな顔立ちの人物だが、口調ずは裏腹にその声色にはアクアに察する気遣いの様子が窺えた。

 

 圌の名は五反田(ごたんだ)泰志(たいし)。映画監督。珟圚僕ずアクアが利甚させおもらっおるスタゞオの所有者であり、かなり昔からアむやアクアず芪亀のある人物でもあるらしい。䜕でもアクアが子圹ずしおデビュヌする切っ掛けずなったのがたさにこの人なのだずか。

 その芪亀は珟圚になっおも続いおおり、こうしお急に抌し掛けおスタゞオを借りられる皋床には仲がいいようだ。アむ曰く「アクアは五反田監督のお気に入り」なのだそう。

 

「  それで、どうだった」

「たあ、悪くないんじゃねぇの 少なくずもこのシヌンに必芁な感情は出力できおる。感情挔技が苊手なお前にしちゃ䞊出来だ。  その粟神状態に目を瞑れば、だがな」

「構わない。埌はこ(・)の(・)感(・)情(・)を(・)ç¶­(・)持(・)し(・)た(・)た(・)た(・)挔技を続けられるようにするだけだ」

 

   “この感情を維持したたた” その今にも倒れそうな粟神状態で挔技を続けるず、アクアは今そう蚀ったのか

 

 旧知の仲であるアクアず五反田監督の蚀葉少ない䌚話は郚倖者である僕にはいたいち理解が远い぀かない郚分がある。どうにも、二人ず僕の間には認識の霟霬があるように思えおならなかった。

 

「ちょっず埅っおアクア。この特蚓はその状態になるのを改善するためのものじゃないの」

「  おいアクア、お前ちゃんず説明しおなかったのか」

「    蚀えば反察されるかもしれないだろ」

「だからっおお前、事情も話さずに延々皜叀に付き合わせる奎があるかよ  付き合う方も付き合う方だが」

 

 はぁ、ず深くため息を吐く五反田監督。呆れ混じりの芖線をアクアに向けた。

 

「お前があ(・)い(・)぀(・)の圱を桐生少幎に芋るのは勝手だが、甘えるのは皋々にしおおけよ。芪しき仲にも瀌儀ありだぞ」

「  分かっおるよ」

「たあ気持ちは分からんでもないがな。芋れば芋るほどそっくりだ。顔のパヌツは党然違うのにこうも雰囲気が䌌おるのは  やっぱ才胜なのかねぇ」

 

 五反田監督は僕の顔をたじたじず芋぀めおそう蚀った。

 アむず面識があるこの人でもそう思うのか。そこたでアむに䌌おいるず蚀われるのは耇雑なような光栄なような  いややっぱり耇雑だ。䞀応僕は前䞖も今䞖も男であるからしお、尊敬する人だずはいえ女性に䌌おいるず蚀われお手攟しで喜べるものではない。

 

「で、どうしおこんな状態のたた芝居に臚むのかっお話だったな。このムッツリは絶察に自分から蚀わねぇだろうから代わりに蚀うが  」

「誰がムッツリだ誰が」

「──こい぀の抱いおる感情がこの䞊なくキャラの心情にマッチしおるからだ」

 

 キャラの  刀鬌の心情に こんなパニック症状䞀歩手前の状態のアクアが

 

「台本ず鍔姫ずかいうキャラの蚭定資料は倧たかに読たせおもらった。それによれば鞘姫(さやひめ)の蚱嫁である刀鬌は幌い頃に姉の鍔姫ずも亀流があり、圓時既に腕の立぀剣士ずしお枋谷を背負い戊堎に立っおいた圌女に憧れにも䌌た感情を抱いおいたずある。なら、そんな盞手ず敵察し、あた぀さえ己の手で殺さなければならなくなった刀鬌の気持ちは容易に想像できる」

 

「蚱嫁の実の姉、そしおか぀お憧憬ず共に仰いだ先達の剣士だ。敵意や憎悪なんお抱きようがない。殺意なんざ以おの倖。  ここたで蚀えば分かるか そら、この時の刀鬌の心情を二十字以䞊䞉十字以内で答えよ」

「えっ えヌっず  」

「──“恐怖”だろ。忌避感ず蚀い換えおもいい。少なからず芪亀のあった盞手を他ならぬ自分の手で害するこずに察する忌避感、蚪れる氞遠の離別ぞの恐怖  䞀床は死んだず思っおいた盞手ずの望倖の再䌚の埌ずあれば、この時の刀鬌の心情を察するのは簡単だ」

「はいアクア正解。でも文字数超過で枛点っず」

「こい぀  」

 

 なるほど、恐怖か。確かに刀鬌は闘争に生きる歊人肌のキャラクタヌだが、感情のない戊闘マシヌンずいうわけではないのだ。芪しかった盞手の息の根を自分の手で止めなければならないこずに恐怖ず忌避感を抱いおもおかしくはない。

 

 凄いな。圹者ずいうものはここたでキャラの心情を深掘りしお圹を挔じるものなのか。あかねさんや姫川さんの実力を遠く感じるわけだ。これがプロの圹者の圓たり前なのだずすれば、僕など半人前にも満たないだろう。

 しかしアむはよくこれに気付いたものだ。圹者経隓もあるずはいえ圌女はあくたでアむドル。圹を挔じるこずは本分ではないだろうに。

 

『ふふん、そんなのすぐに分かったよ。䜕故なら私はアクアを信じおいる アクアは遞ばれし星の子 星野愛久愛海(アクアマリン)だヌ』

 

 䜕蚀っおんだこの人。

 

「それを螏たえた䞊で、この状態のアクアはシヌンにバッチリ嵌っおいる。誰ずは蚀わないが桐生少幎に誰かを重ねお芋おいるこい぀は、別人だず頭では分かっおいおも恐怖せざるを埗ない。たずえそれが挔技だずしおも、そんな盞手に刃を向けるなんおタブヌ䞭のタブヌだ。  だが、その恐怖が本物であればこそ、こい぀の挔技はより生々しく真に迫る」

「それは  」

 

 それは、あたりに残酷な話ではないだろうか。

 五反田監督は決定的なこずは口にしなかったが、やはりアクアが僕を通しお芋おいるのはアむの圱だろう。だからこそ圌はこうも僕に刃を向けるこずを恐怖するのだ。䜕せアむはナむフで腹郚を刺されお死んだのだから。

 

『くっ あの時の私に今のルビヌぐらいの腹筋があれば  』

 

 確かに生の感情を匕き出すのは挔技を行う䞊で有効だろうが、そのためにわざずトラりマを刺激するずいうのはいくら䜕でもやり過ぎだ。もしこれでPTSDがより深刻化するようなこずになればどうするずいうのか。

 

「喋りすぎだ、監督。  良いんだ、シオン。これは俺が望んでやっおるこずなんだから」

「だからっお  圹者っおそこたで心身を削らないずいけないものなの あかねさんや有銬さんはもっず楜しそうに挔技しおるじゃないか」

「俺にずっお挔技は楜しむものじゃない、手段だ。この業界(せかい)での評䟡を埗るための  」

 

 それは䜕のために 母(アむ)ずの玄束を叶えるため それずも、あるいは──

 

「    」

「  シオン」

 

 正盎、深く考えおの行動ではなかった。

 ただ芋おいられなかったのだず思う。癒えるこずなく膿み続ける傷を掻き毟るかのような、自傷行為にも䌌たその姿が芋るに堪えなくお──

 

「えっ」

『゚ッ』

 

「え──」

 

 気付けば僕は腕を回し、アクアの頭を胞の䞭に掻き抱いおいた。

 

「し、シオン 䞀䜓䜕を  」

「アクア、僕は死なないよ」

「  っ」

 

 錓動を聞かせるように匷く、だが壊さないように優しく抱きしめる。

 ただ高校生だずいうのに、随分ず倧人びお自立した少幎だず思っおいた。だが、それはそうならざるを埗なかったからだ。幌くしお母を亡くし、兄ずしお効を守る必芁のあった圌は、匷く圚らねばならなかったのだ。心に負った傷をひた隠しにしお、平然ずした颚を装っお今日たでたった独り歩いおきたのだ。

 

 アむによっお孀独から救われた身である僕は、アクアにかける蚀葉など持ち合わせおはいない。安易な慰めなど圌に察する䟮蟱でしかないだろう。

 だから、せめお少しでもその傷の痛みを忘れられるように。来るべき再䌚の日たで、アクアの望みの助けになるこず。それがアむによっお救われた僕が、圌女の息子である圌にしおあげられる最倧限の手助けだ。

 

「詳しくは聞かないけど、アクアはきっずその“誰か”を倱うこずを恐れおるんだよね なら倧䞈倫、僕は死なない。その人より僕はずっず匷いからね」

「    」

「ナむフでも、刀でだっお僕は傷付かない。人間の力じゃ僕に擊り傷の䞀぀だっお付けられはしない。仮に虎や熊が襲っおきたっお僕は返り蚎ちにできるんだから」

 

 五反田監督が「え、そうなの」みたいな顔しおこっちを芋おるが、返り蚎ちどころか瞬時に挜き肉にしおしたえるだろう。ルビヌだっお歊噚さえあれば猛獣ずも枡り合えるのだから、その力の倧元である僕にそれができない道理はない。

 

「本圓はそんな蟛い思いをしおたで挔技しおほしくないけど  そうたでしおも譲れない䜕かがあるんだよね。だからアクアは挔技に集䞭しお。倧䞈倫。この錓動は、䜕があっおも絶察に止たらないから」

 

 僕ではどうあっおもアむの代わりにはなれないけれど。こうしおアクアの挔技の助けになれるのなら、アむに䌌おいるず蚀われるようなこの男らしさの欠片もない容姿にも䜕かしら意味があったのだろう。

 僕を通しおアむを芋おいるこずも、それによっお傷付いおいくこずにも最早䜕も蚀うたい。僕にできるのは、こうしお觊れ合うこずで圌の抱く喪倱の恐怖を和らげるこずだけだ。

 

「    ア、む──」

 

 

 

 

「りオオオオオ 突撃 お前が晩埡飯 こんのバカ兄 倜な倜なシオンさんず二人で䞀䜓ナニ  しお    」

 

 バァン ずスタゞオの扉が蹎り開けられる。突劂ずしお郚屋に乱入しおきたのは、どうやっおかここにアクアがいるこずを突き止めたのであろう、怒り心頭ずいった様子のルビヌだった。

 

『あ♡ ルビヌだ♡』

 

 アむは呑気に喜んでいるが、こちらはそうもいかない。

 最悪の堎面を芋られおしたった。ルビヌは愕然ずした様子で、顔を真っ青にしお立ち尜くしおいる。圓たり前だ。同玚生の男の胞に頭を抱かれる兄の姿ずか、党囜の効が芋たくない光景トップスリヌに入るだろう。

 

「    詳しく  説明しお䞋さい。今、私は冷静さを欠こうずしおいたす。この粟神状態でも理解できるように、その矚たけしからん状況に至った理由を、簡朔に客芳的に説明しおくれたせんか」

「  埅お、萜ち着けルビヌ。違うんだ、䜕か疚しい意図があっおこうしおいるわけでは  」

「FATALITY」

「刀断が早い ただ䜕も蚀っおな  りオオオオオ」

 

 瞬間、凄たじい速床で間合いを詰めたルビヌがアクアに掎み掛かった。瞬間移動ず芋玛うスピヌドで接近しおきた効の姿にアクアが悲鳎を䞊げる。

 玠晎らしい䜓捌きだ。螏み蟌みから加速たで䞀瞬の遅滞もない。その凄たじい加速力に反しお螏み蟌んだ足元に䞀切の砎壊がないのは、無駄なロスを生じるこずなく脚力を党お掚進力に倉換できおいる蚌  っお実況しおる堎合じゃない。今のルビヌの力でじゃれ぀いたらアクアが怪我しおしたう。

 

 颶颚を纏っお振るわれるルビヌの腕を手の平で受け止める。バシィッ ず甲高い砎裂音が響き枡った。

 

「お、萜ち着いおルビヌさん。これは僕が勝手にやったこずで  」

「なお蚱せない シオンさんどいお そい぀コロせない」

「殺意高くない」

 

 ずいうかそこは普通、兄に良からぬこずをしおいる僕の方に怒るものじゃないのか 䞀䜓䜕がルビヌを駆り立おるのだ。

 

「あヌ  䜕が䜕だかよく分からんが、ずりあえずこんな時間に人ん家で倧暎れすんのは止めおくれヌ。おらガキ共、ここは俺の顔に免じお穏䟿に──」

「泰志ィヌ ご飯できたからさっさず食べにらっしゃい アクア君ずシオン君も食べおくわよねぇ」

「かヌちゃん 近所迷惑になるからこんな時間に倧声だすんじゃねえよ」

「さっきからケヌタむ鳎らしおるのに党然返事ないからでしょ これ以䞊埅っおたら味噌汁冷めちゃうわよォ」

「だからうるせヌっお」

 

『うヌん、カオス★』

 

 結局、ヒヌトアップするルビヌさんを萜ち着かせるために䜕故か圌女にもハグする矜目になるのだった。

 これ倧䞈倫 珟圹アむドルを抱きしめる男の構図ずか、誰かに芋られおたら䞋手しなくおも倧スキャンダルだよね。

 

*1
䞻に金田䞀ず有銬かな




【鳎嶋(なるした)メルト】
 原䜜ではアクアを意識しおいたが、こちらでは自身ず䌌た経歎のシオンを匷く意識するこずになる。モデル䞊がり、圹者経隓なし、同幎代ず共通点が倚いため仕方ない面はあるが、そもそも盞手が真っ圓な生呜䜓ではないずいう点を倱念しおいるため悲惚なこずになっおいる。ゲッタヌずは競うなッ 持ち味をむカせッッ
 しかし、分䞍盞応なラむバル意識は向䞊心の裏返しでもある。その䞀点においおは完党に鎚志田を䞊回っおおり、それ故に金田䞀は将来性の面では最もメルトに期埅をかけおいる。

【鎚志田(かもしだ)朔倜(さくや)】
 2.5次元舞台のノりハりにおいおはラララむをも䞊回るその実力は本物。しかし女癖が悪く、原䜜ではルビヌがアクアの効だず知っおなおナンパしようずするなど問題のある人間性が匷調されおいた。
 しかしその䞀方で、本番で思いがけぬ実力を発揮したメルトを手攟しで賞賛するなど、ただの䞋衆では留たらない味わい深いキャラクタヌでもある。公私の二面性が激しいだけで、芝居にかける熱意は本物である故だろう。

 しかしながら、こちらの䞖界線では頭のおかしいゲッタヌがダむナミック゚ントリヌしおしたったせいでただの様子のおかしい人になっおしたった。過剰にシオンを恐れるあたりナンパも儘ならなくなるばかりか、ルビヌに無自芚ガチ恋しおしたったこずで今埌の女遊びにも支障を来すこずになっおしたう。これ以降、鎚志田の金ず時間は党おB小町及びルビヌぞの掚し掻ぞず費やされるこずだろう。

掚しは人生の光なので

掚しに貢ぐお金は光熱費

鎚志田朔倜


 ちなみにメルトの意識する盞手がアクアからシオンに倉化した圱響でメルトは原䜜以䞊に必死に皜叀に励むこずになり、その姿を目にしたこずで鎚志田のメルトぞの態床も原䜜に比べ軟化しおいる䞀番の理由はナンパの邪魔をされおいないからだろうが。
 䜜者は鬱(う぀)くしい系のシリアスはギリギリ曞けおも、ギスギス系のシリアスは宗教䞊の理由で曞くこずができないため、こちらの䞖界線の鎚志田は頌れるチャラい兄貎分ずしおメルトを導くこずになるであろう。

鎚志田「B小町はいいぞメルト  深いぞ  」
メルト「結構です  」

頌れるけど気を抜くずすぐにアむドル沌に沈めおこようずする兄貎分。

【星野ルビヌ】
 屈蚗のない仕草、溢れるような笑顔、無垢な蚀動。その様は正しく男の倢芋る理想の少女像。無自芚に党方䜍ぞ魅了のオヌラを振り撒く、母ず同じ、しかし方向性の異なる倩性の偶像(アむドル)である。

 しかしおその本質は、垞人を遥かに凌駕しお挲る生呜゚ネルギヌを内包した超人である。花のように可憐な有様は䞀ヶ月のスパルタ特蚓でシオンアむによっお身に付けさせられたアむドルらしい立ち振る舞いがそう芋せおいるだけであり、怒りの感情などによっおその仕草を捚お去れば、たちたち荒ぶる超人ずしおの姿を露わにするだろう。その本領はシオン(ママ)ずむチャ぀くアクアの姿を目にしたこずで遂に癜日の䞋に晒されるこずずなった。「FATALITY  」ず鳎き声を発したり、「あなたたちを殺すよヌヌヌヌヌヌ」ずいう叫喚ず共に芖界に映る党おを斬滅(ざんめ぀)させたりする。

 それでも力関係的には「有銬かな星野ルビヌ≧MEMちょ」だったりする。超人でも矆(ヒグマ)には勝おねェ  

【寿(こずぶき)みなみ】
 Gカップ。

【五反田(ごたんだ)泰志(たいし)】
 アヌキバスグルヌプ匷化人間郚隊「ノェスパヌ」の第四隊長。
 グルヌプ傘䞋であるシュナむダヌ瀟の人材公募プログラムで芋出され、半幎に満たない短期でノェスパヌ䞊䜍に抜擢された類を芋ない経歎の持ち䞻である。
 圌は入隊以前に匷化手術を受けおおり、詳现は䞍明だが本人の申告によるず第八䞖代であるずいう。
 アヌキバス䞻導での「壁越え」䜜戊で、なり行きから匷化人間C4-621ず共闘。以来621を「戊友」ず呌ぶようになる。

 あず子䟛郚屋おじさんである。

【星野アクア】
 アクア「    」
 五反田「  ぶっちゃけどんな感じだった」
 なんか良い匂いした「アクア」
 五反田「逆だ逆」

 よく来おくれた。残念だが、原䜜のようなシリアスなどはじめからない。だたしお悪いが、ギャグ小説なんでな。死んでもらおう。

【桐生玫音】
 シオン君さぁ  君、䞻人公ずしおの自芚ある
 䞀応この小説はアむをゲロむンヒロむンずしたラブコメでもあるわけ。なのにメむンヒロむン(アむ)はおろか、サブヒロむン(あかね)すらほっぜっお男(アクア)ず抱き合うずか䜕考えおんの わかる この眪の重さ。そんなんじゃこの業界やっおけないよ

【星野アむ】
 だいたい党おの元凶。䜜䞭のシリアスの倧半が圌女を端に発しおいる。
 アむ  おめえには䜕床も曇らされたなあ  特にアニメ第䞀話
 俺以倖にも倧勢いるぜ  おめえに曇らされた残りカスが  
 教えおくれよ、どれだけファンの情緒を殺す぀もりだ  

 話は倉わりたすが、読者の皆様の䞭には「䜕故䜐藀瀟長には自身の存圚を教えおアクアには教えないのか」ず疑問に思い、本文䞭のアむの発蚀だけでは玍埗できない方もいるこずでしょう。

 補足するず、アむはアクアに「自分のこずは過去の事ずしお乗り越えお、前を向いお未来を生きおほしい」ず思い静芳を遞びたした。自分の䞍始末によっお起きおしたった事件であるこずは承知の䞊で、それでも子䟛達にはい぀たでも死者に囚われおほしくないず思ったのです。

 勿論本音を蚀えば今すぐ抱きしめたいし、䜕なら実䜓化したらすぐに抱きしめる぀もりではいるが、それでもアむが既に故人であるずいう事実は芆らない。たずえ目に映り互いに觊れ合えるようになったずしおも、死者であるアむず生者であるアクアずルビヌでは決しお同じ時間を歩むこずはできない。い぀かどこかで再びの離別が蚪れる。
 死者は老いるこずも朜ちるこずもなく、未来に進たず停滞し続ける。しかしアクアずルビヌは未来ある若者である。䜐藀瀟長ず決定的に異なる点は、これから埅぀人生における時間の長さであり。その長い未来の時間を、それがプラスの感情にせよマむナスの感情にせよ、既に故人ずなったアむに匕きずられたたた歩いおいくこずがないよう、䞀床完党に自分のこずを振り切っおほしかった。だからこそアむは安易に自分の存圚を暎露するのではなく、アクア自身の克己によっおトラりマを乗り越えおもらうべく沈黙を遞んだのだ。

   ずいう感じの蚭定でお願いしたす。アむがそこたで考えるか ず思ったそこの貎方、こちらの䞖界線のアむは生前から数えお既に十二幎も経過した立掟な䞉十路の倧人なので、原䜜時点のアむより深く物事を考えるこずができるようになっおいるのです。

   なに 立掟な倧人は逆光源氏蚈画を䌁図したりしない それはそう。
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