クレーマーに「申し訳ありません」は絶対NG…怒鳴る客を一発で黙らせた"元ブックオフ店員の切り返し"
■クレーマーがもたらす“深刻な企業リスク” クレーム研修を求める企業が直面している課題は大きく分けて、➀従業員のメンタル不調と離職、②企業イメージの低下と採用活動の失敗、③「謝罪コスト」による業務効率の悪化、の3点にまとめられます。 まず、最も深刻なのは、現場の従業員のメンタルヘルス不調です。クレーム対応による過度なストレスでうつ病や休職、退職が後を絶ちません。特に区役所などの公的機関では、民間と異なり、「税金を払っているんだから自分の言うことを聞いて当然」のような過度な権利意識を持った利用者にハラスメントを受けるリスクがあり、従業員が一方的に耐え忍ぶ構造が常態化しています。 次に問題なのが、採用活動の失敗です。小売業や飲食店に対して「働き始めたら悪質なクレームを受けそう」といった印象を持っている方は少なくありません。そうした印象が広まってしまえば就職希望者は減少してしまいますし、悪質なクレーム対応がSNSなどで晒されることで、企業イメージは悪化する可能性も考えられます。 そして、「謝罪コスト」による業務効率の悪化も非常に深刻です。全面的な謝罪をしてしまうと、「責任を認めた」と解釈され、後から慰謝料請求といった不当要求に発展するリスクが高まります。実際に賠償金などを支払わなかったとしても、適切な対応を取らなければ継続的に嫌がらせ受けるリスクを抱えてしまいます。 クレーム対応によって業務が滞ってしまえば、事業の生産性が低下し、業績にも影響するおそれがあります。 ■「全面的な謝罪」は絶対にNG では、悪質なクレーマーに対してどのように対応するべきなのでしょうか。 旧来は「お客様は神様」という風潮のもと、「謝って場を収めろ」という指導が蔓延しました。また、企業側に過失があるケースであれば、きちんと謝罪する必要があります。ですが、悪質なクレーマーや、客側の誤解によるクレームに対して「申し訳ございませんでした」と全面的な謝罪をすることは、実は絶対にやってはいけないことなのです。 まず、全面的な謝罪は企業が法的な「責任を認めた」と受け止められ、後の金銭要求や訴訟の根拠として利用されてしまうおそれがあります。 ここでいう「責任」には、「感情的な責任」(不快にさせたことへの謝罪)と「事実上の責任」(こちらに落ち度があったことの容認)の2種類があります。悪質なクレーマーは、前者の謝罪を引き出し、それを後者の容認として利用しようとします。つまり、企業側はあくまでも感情に寄り添った謝罪をしたつもりでも、クレーマー側はそれを「企業が過失を認めた」と受け止めて自分の立場を有利にするために利用するのです。 これは私が、90年代にブックオフで働いていたころから心がけてきたことですが、相手の怒りが収まらないうちに謝罪を乱発するのは、もっとも無駄な行為であり、クレーマーの思う壺なのです。