見出し画像

ギリシャ神話から見るオンパロス 〜太陽神と13の英雄〜

 本noteは「惑星オンパロスにおけるキャラ・物語はギリシャ神話をモチーフにしているのではないか?」という個人の疑問を基にモチーフについて、考察・想像したものです。
 なお、本noteはオンパロスが実装されていない状態(3.0生放送前)で、名前とPVというわずかな情報から、モチーフやボスを当てようとすると言う明らかなお遊びであり、一プレイヤーの解釈を基に考察したものに過ぎないこと、はご留意ください。
 また、2.7までに実装されたメインスト―リー、サブイベントやアチーブメントなどのネタバレ、及び独自考察を多々含みます。
 加えて崩壊3rdの「古の楽園」に軽く触れています。(※作者は未プレイであるため深くは掘り下げていません)
 ネタバレが嫌な方や苦手な方はブラウザバック推奨です。
 以上のことが問題ないという方のみ、お進みください。


【序章】惑星オンパロスとは?

 Ver3.0から星穹列車の面々(丹恒と開拓者とサンデー?)が向かうことになる特殊な星系。
 名前の初出は「開拓伝説〜星間旅行スゴロク〜」だが、明確にその存在が説明されたのはVer2.3「さよなら、ピノコニー」より。ピノコニーの次の星系へ向かおうとするも燃料問題に悩む列車の面々の前に現れたメモキーパー・ブラックスワンの口から語られる。

画像

「一个宇宙中绝大多数人都不知道其存在的世界……
 一个难以从外部被观测到,只能被忆庭之镜照映出来的世界…
 一个被三重命途缠裹绑缚,命运未卜的世界…… 【永恒之地,翁法羅斯】」

「さよなら、ピノコニー」本国版

 この惑星の名を、サンデーは勿論の如く、かの天才クラブのスクリューガムも耳にしたことがない。

画像
ver2.7「八日目の旅立ち」にて

 現在の情報から察するにオンパロスに絡む運命は「記憶」「知恵」と考えられる。そんなオンパロスの成り立ちは以下のPVで確認できる。

画像
画像
画像
画像


 このあらすじで語られているタイタンとはギリシャ神話に登場する神々の一族・ティターン(Τιτάν)のことをいう。大抵は、天空神ウラノスと地母神ガイアの十二柱の子供たちのことを言い、オリュンポス十二神の親世代、前世代にあたる。
 なおこのティターン族には、記憶を司る神・ムネーモシュネー、冥府の地下を流れる大河の神・ステュクスが含まれている。
 このティターン族とゼウスたち次世代の戦いを「ティタノマキアー」と呼ぶ。

 また最新PVの最後やあらすじ冒頭に描かれている、球体を背負っている人間の像はアトラスというティターン族の神を模したものであろう。かの神はティタノマキアで最後までゼウスに抗い敗れたが故に、天空を支えるという罰を担わされた。


 加えて、オンパロスについての話を聞いた時に獲得できるアチーブメントは以下の通りだ。

画像
アチーブメント「星へ続くレイル」より

 これは詩人ホメロスの作にして『イーリアス』の続編作品『オデュッセイア』の最初の語りにあたる。
 作品としては英雄・オデュッセウスが、トロイの木馬で有名なトロイア戦争の勝利後に凱旋する途中の10年の長い旅について語られたものである。
 ムーサとは歌や芸術を司る女神たちのことで、ある意味、太陽神アポロンの部下に当たる。

 ※オデュッセウス入門編

 さて、上述したように、オンパロスはアトラス・ムーサ(オデュッセイア)・タイタン・12星座に似た紋様などからギリシャ神話との関係性が見て取れる。このため、オンパロスはギリシャ神話がモチーフと見て間違いないだろう。
 となると必然、黄金紀もクロノスが神々を支配していた時代/黄金時代がモチーフだろう。

 そして、このオンパロスだが、同名の単語がギリシャ神話に存在する。
※英語版の綴りは「Amphoreus」で「omphalos」とは正確には表記が異なるのだが、今回は日本語表記ゆえに同一のものとして扱う。

 

オンパロス/翁法洛斯/omphalos

 ギリシア語でへそを意味する。当初は霊場、礼拝所に置かれていた謎の石像を指していたが、やがて礼拝所そのものを指すようになった。
 不思議なことにエチオピアの首都にもオンパロスと似た謎の石(卵の下半分だけのような形)が祀られている。歴史家によればエジプト→エチオピア→ギリシャに伝わったとも、あるいはキュレネ→シワ→エジプトにうつったとも言われている。
 
 デルポイの神託室に存在する、この太古の神石については謎が多いが、「神託 : 古代ギリシアをうごかしたもの」では以下のように記述されている。

 大昔の人々は、大地は大洋によってかこまれた円盤であり、オンパロス・へそが、この円盤の中心にあると信じていた。
 ゼウスは、この中心を求めるため、二羽の鷲を放った。そして、この御業を記念して、神託霊場内のデルポイのオンパロスに二羽の純金の鷲を配した。
 それは、罰あたりなポキス人が金に困ったあげく、この鳥を溶かして黄金を金銭にかえてしまった日まで、あったという。
 だが、悪銭には災いがつきもので、この金で軍備をととのえた戦いに負けてしまったポキス人は、新たに黄金の鷲をつくる代金を支払うことになった。
 大理石製のへそ石には結び目をつけた毛糸が巻きつけてあり、巫女は三脚台に坐るとき、片手でオンパロスの糸、もう一方の手で月桂樹の枝を持った。
 この毛系による不可思議な祭儀の背後には、ある素朴な象徴的意義がひそんでいた。
 大地の隠された力との結合。この太古の神石の存在自体が、ギリシア神話に光影をそえることになった。なにしろ巫女(ピュティア)と予言者以外だれも、この伝説的で神秘につつまれた石を面前にすることはなかったのだから。
 この石がデルポイで、どれほど重視されていたかは、参拝者にこの呪物の二つの複型が観覧に供されたことからもわかる。
 模型の一つ―これはパウサニアスが言及しているものだが―は今日、デルポイ博物館にあり、もう一つは神殿のテラスから落ちたもので、いまでは新たに再構築されたアテナイ人の宝物殿の前で見られる。

https://dl.ndl.go.jp/pid/12180598/1/117?keyword=古代ギリシアを%E3%80%80オンパロス

 またこの卵形の石の由来には不明なことが多かったため、ギリシャ人たちは一部の創作を行って説明づけた。
 さて、ギリシャ神話にて、時の神・クロノス神は将来我が子が自分を殺しにくると予言されたため、産まれた子供達を次々と丸呑みにしていた。
 しかし末っ子のゼウスを飲む時に、母レアーは代わりの石を用意して飲ませた。この石こそがオンパロスであると彼らは考えた。
 ※これより後の神話では、ディオニュソスの墓石であるもされている。

 上記の逸話を見て貰えば分かるように、オンパロスは「世界の中心にあたる神の石」の要素を含んだ言葉であり、そのためこの石が飾られた礼拝所があるデルポイ(太陽神アポロンがおさめた都市)は世界の中心とされた。
 そのため、スターレイル世界のオンパロスも「世界の中心」「太陽」に関係すると考えられる。
 実際、オンパロスのあらすじにはとある太陽の存在が示されている。 

画像

 この太陽の正体は不明だが、スタレ世界の特性として星神、ないし高エネルギー体が太陽に喩えられる、あるいは太陽を利用することが多い。

画像
模擬宇宙「宇宙の蝗害」など。

 太陽を付き従えたクリフォト、「太陽」とサンデーや信徒にたとえられたエナ、黒い太陽のⅨ、真紅の太陽を利用するウロボロス……4柱もの星神が太陽に喩えられる、または利用している以上、オンパロスPVにおける太陽も星神のことと考えられる。となれば今回出てくる太陽も星神の可能性が高い。
 なおこの目玉模様と十二人の英雄からあるキャラとの関連性が指摘されるが、それは後述にて説明する。

画像
「あなたのためにある物語」より
https://youtu.be/7y2Cb7Ap2dc?si=-3TD6RhP1lAaHe4g


【第一章】十二の英雄たち

 現在明かされているキャラ名は10人分だが、その幾人かにギリシャ神話をモチーフにしたであろうことが確認できる。では、順番に確認していく。

*金織のアグライア/Aglaea/阿格萊雅

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931250511036598?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 現在唯一運命が公開されているキャラクター。髪の毛に月桂樹の葉が確認できるほか、古代ギリシャ風の衣装が目立つ。
 アグライアの名はギリシャ神話に登場する、三美神・カリスの一柱「アグライアー(輝く女)」由来と考えられる。この女神は一説にはアフロディーテと別れた後のヘパイストスの妻であったとも。
 なおカリスたちは美しい若い女神であり、神々の宴でアポロンやムーサたちの音楽に合わせて舞いを披露した

画像

 カリスたるこの女神に金糸、月桂冠に関係する逸話は見当たらないため、キャラ作成にあたって、アポロンの予言を代わりに行う巫女・ピュティアたちの影響を受けていると考えられる。

 なお彼女の説明文にあるラプティスはギリシャ語で「仕立て屋(ράπτης)」を意味する。
 所属都市国家のオクヘイマ( Okhema )は、【新プラトン主義者が提唱した概念で、精神(不死で光り輝くもの)と、肉体(完全に滅びる者)の中間にある物体で、その二つの間を行き来できる光の乗り物】のこと。
 モネータはローマの女神ユーノーの名前の一つ。忠告するものという意味を有し、Moneyの語源にも当たる。
 おそらく今回の扱いは金織にかかっている。
 さて冒頭で述べられた「運命を紡ぐ三柱」、糸の発言が正しければこの女神には運命の三女神(モイライ)が組み込まれている可能性があるが……? 現時点では不明なことが多い。


*トリビー/Tribbie/緹寶(トリウィア)

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931250511036598?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 三相の使者・女神と名前が三叉路(Trivia)に酷似していることから、ローマ神話の女神トリウィア……あるいは彼女と同一視されるギリシャ神話の月の女神ヘカテー、ないしローマ神話のディアーナだろう。

画像

ヘカテはもとは単にアポロン・ヘカトスの妹アルテミス・ヘカテー――「遠くから矢を射る」すなわち出産の苦痛を与える女神――にすぎない。両女神とも(略) すなわち「三つの道の合う所」で四つ辻のこと、また(略)「三つの顔を持てる」という肩書を与えられている。四つ辻の祭式は月に對してなされるものであったから、三つの道は月の三つの變相を変わすものと考えられた。
ボリュフィリウスは言う、「月はヘカテである、そして彼女は月の變相とそれにもとづく諸力を象徴している。だからこそ彼女の影響力は三つの形態で表示されるのである」と。
ボリュフィリウスは紀元三世紀のシュリアのネオプラトニストであった、しかしこれより千年以上も早くヘシオドスはすでに、へカテが「大地と空と海の分け前」を与えられていることを語っていたのである。三重のヘカテという考えはネオオプラトニズムよりもはるかに古いものであった。
オルフェウス数の文献では、月の變相はいろいろに解釋されている。或る典據によれば、「最初の三日は月はセレネと呼ばれる、六日目にはアルテミスになり、十五日目にはヘカテになる」
また、ある典據によれば、「月は地上にのぼっている時はセレネ、地中にある時はアルテミス、地下にある時はペルセフォネである」。これらの典據は後期のものである、しかしこれは古い伝承を再現しているのである。

https://dl.ndl.go.jp/pid/3004301/1/127?keyword=三相%E3%80%80女神

 ペルセポネとは豊穣神デメテルと天空神ゼウスの娘であったが、後に冥府の神ハデスの妻にめとられ、最終的に冥府の女王になった女神である。新月神ヘカテーは冥府の神であるため、混同されたのだろう。
 なお上述したようにヘカテーの名は「遠くへ矢を射る者」と考えられているが、これは太陽神アポロンの別名「ヘカトス」の女性形ではないかと考えられている。※アポロンは弓矢の神である。

 さて、三相の女神という名の通り、三日月神アルテミス、満月神セレーネー、新月神ヘカテーの三つの顔を持つ月の女神たちだが……今回のトリビーのメインモチーフはやはりヘカテーであろう。
 実は古代ギリシャにおいて、十字路や三叉路といった交差点は不可思議な存在と出会う場所と考えられていた。また、江戸時代の日本でもこれと似たような考えをされており、辻占いという「道行くものの言葉を神の託宣と捉える」占がされている。
 この二つを踏まえるに、道を渡り歩き神託を~のトリビーの説明文は「ヘカテー」に関連して生まれたと推察できる。
 ただし奇妙な点として【百界】が挙げられる。この言葉はいわゆる仏教用語であり、ギリシャ神話的な用語ではない。百の世界と言いたくて被ったのか、それとも仏教用語を使いたくて使ったのか。…現時点ではどちらかは不明。ただもし仏教用語なら、三相や三面六臂に通じるかもしれない。今後注意してみていきたい点である。


*アナイクス/Anaxa/那刻夏(アナクサゴラス)

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931250511036598?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 愚者アナクサゴラス( Anaxagorās )の説明から、哲学者アナクサゴラスを参考にしていることが確定と思われる。彼はイオニア人の哲学者で、「太陽は神ではなく燃える石である」と提唱したことで神に対する不敬罪に問われた。「神を冒涜した」は、この点をモチーフにしていると思われている。

画像


 また彼はヌースに対する独自の解釈を持っていた。(後述参照)
 おそらくだが、オンパロスに関係してくる三つの運命が一つ、知恵に関係してくると思われる。

b 精神(ヌース)
このように意味の統一性、全体性、実体に方向をとる思考は、アナクサゴラスの第二の基本的思想、すなわち精神と、それが存在およびその諸形態に対してもつ課題についての理論のなかにうかがわれる
(略)
アナクサゴラスは、思考と同時に意志の力である精神を原理と考える。
彼のヌースは万物における運動の始源であり(断片12.13)また秩序の原理でもある。それは無限なもの、自主的なもの、それ自身で存在し、全知、全能で、万物を支配する。アナクサゴラスが自分の新しい方法をあまり充分に活用しなかったことは、アリストテレスが非難するとおりである。
しかし、(一)新しい因果性、すなわち全体性をにない、秩序づける意味原因と目的原因を発見したこと、(二)存在の新しい様式、すなわち精神を明らかにしたこと、(三)運動の真の始源を指摘したことは、彼の功績である。
アナクサゴラスににとって、精神がやはりまだ「最も精妙で純粋な質料」であった点で、精神を完全に物質的なものから切りはなすことに成功しなかったとしても、彼は最初の二元論者である。

https://dl.ndl.go.jp/pid/2970584/1/46?keyword=アナクサゴラス%E3%80%80ヌース%E3%80%80太陽

 ところで、彼の説明文に”預言”という言葉があるが、オンパロスはデルポイの神殿にあった。そしてそこでは太陽神であるアポロンの予言・託宣が行われていたという。このため、彼が問いただす預言とは太陽神アポロン……すなわち星神が紡いだものの可能性が高い。

 ……ちなみに現時点で確証のない要素であるが、星核ハンターの所属エリオの英語表記【elio】は【helio/太陽】のもじりの可能性が浮上している。もしこれがあたっているなら、オンパロスに出てくる三つ目の運命は「預言・太陽」として終焉のテルミヌスなのかもしれない。
 実際テルミヌスはギリシャ神話の神の名であり、オンパロスにからんでいてもなにもおかしくないが……。


*ヒアンシー/Hyacine/風菫 (ヒヤシンス/Hyacinthus)

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931250511036598?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 ギリシャ神話において、ヒヤシンス(風信子)は、アポロンの恋人であったが、彼の投げた円盤によって死亡した美青年ヒュアキントスの血潮から生まれた花である。
 この伝承にはいくつかバージョンがあり、ヒュアキントスに横恋慕していた西風ゼピュロスが意地悪したところ脳天に直撃した…というものもある。

画像

  なお本国版でも「晨昏的祭司」であるため分かりにくいが、英語版だと「Go seek the priest who severs dawn from dusk, and let the sky become the slumbering cot from which she wakes」なので、ヒアンシーの重要要素は、【夕暮れと夜明けを分ける司祭】だと思われる。
 となれば、アポロン神がつかさどる祭りのうち一つのヒュアキントス祭と何か関係があるのだろうか。
 しかしヒュアキントス祭自体に癒し要素は薄く、現在確認できるイラストを見る限りではヒヤシンスをことさら掘り下げたような要素も確認できない。
 似たような名前で、医術の祖・アポロンの孫、医学の神・アスクレピオスの娘にして健康や衛生を司るヒュギエイア( Hygieia )がいるが…。
 上記PVで見える、牛?っぽいアクセサリーだがもし白い牡牛ならエウロペ、あるいは漢字の【菫】と合わせてイーオーが元ネタなのかもしれない。 

スミレはギリシアの国花である。すみれの花にまつわるギリシア神話は数多い。
スミレは紀元前より人々に親しまれた花の一つであり、ギリシアの科学者で『植物誌』を著したテオフラトス(前三七二〜二八八年)や、オウィディウス(前四三〜後一七年)の書物に引用されている。
オウィディウスの『メタモルフォセス(変身物語)』にはスミレの名(ギリシア語でイオン)がイナコスの娘、イオにちなんでいるという話がのっている。
イオはゼウスに愛されたが、ゼウスの三人目の妻へーラーの追跡を逃れるために雌牛に変えられた。彼女のまわりの牧草地には、他の動物の牧草と区別できるようにスミレと思われる花が咲き、そのためにヘーラーに遭わされたウシバエに追い立てられ、とうとうナイルの岸辺までたどりついた。そしてここでもとの姿に戻った。
イオはエジプトではイシスと呼ばれ、崇拝されていた。
 スミレは古代ローマ時代の詩人、ホラティウス(前六五〜八年)や博物学者のプリニウス(二三〜七九年)によっても語られている。
プリニウスは白のスミレを「春を告げる使者」と呼び、その匂いをバラやユリに次ぐものとして尊んでいる。当時紫色のスミレはギリシア語にちなみ、「イオン」と呼ばれ、スミレ色の布地はionthine cloth と呼ばれた。プリニウスはこの花の持つ一七の薬効について語っている。

https://dl.ndl.go.jp/pid/12654997/1/9?keyword=オウィディウス%E3%80%80スミレ

 ただし一角なのでユニコーンの可能性も高い。
 その場合、ユニコーンはギリシャ神話にでてこないため、司祭と一緒にキリスト教関係のモチーフが仕込まれていると考えられる。実際にユニコーンの角は解毒作用のある秘薬として有名であった。
 現在、「夕暮れと夜明けを分ける」については不明点が多いためよくわかっていない。考えられるとすれば夜の女神ニュクスの娘であり、昼をつかさどる女神ヘーメラー(Hēmerā)、あるいは暁の女神エーオースどちらかの要素が統合されているのか。


*モーディス/Mydei/萬敵(メデイモス)

 候補は二つ。
 まずひとつめだが、PVではメデイモス( Mydeimos )の表記であるため、ギリシャ神話の恐怖の神・Deimosの可能性が高い。軍神アレスとアフロディーテの息子。なお火星の第二衛星はこの神の名前に肖って付けられている。

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931268131250180?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 しかし、この神は恐怖を冠する以外に特に情報はないうえ、ギリシャ神話の神は全て不死である。でありながら、わざわざ不死を強調されたあたり、ヘラクレスのような元人間の英雄のエピソードが盛り込まれている可能性も高い。

画像

 となれば、Myiodes(ミイオデス)、またはミュイアグロスの可能性が高い。
 この神は土着信仰で生まれた「蠅を追い払う神」である。

 プリニウス(Plinius)の『博物志』(Historia Natralis)を繙くものはミイアコレス(Myiacores)と呼ばるる神があつて、群蠅を死滅せしむることを掌つてゐたのを見出すであらう。プリニウスは云ふ。
Elei Myiaccten deum (innocant), muscarum multitudine pestilentiam adferente, quae protinus intereunt qua litatum est ei deo. 
と。即ち「エリス人は蠅群が悪疫を生むの故を以てミイアコレスに祈請し、そして犠牲がこの神にささげられるや否や、蠅は立ろに死滅する」と云ふのである。
 更にまたプリニウスのほかの記述に寄れば、オリムピアにミイオデス(Myideos)と呼ばるる神があって、祭祀に際して雄牛の供儀を享ける。さうすればこの地方の蠅群が儘く去ったと云はれる。
 吾人はこれ等の事實から推して、オリムピアの地に蠅群の驅逐者としてのゼウス・アボミュイオス獨立した二個の驅蠅神の存在したことを知る。然るにMyiaonnes がMuiagrosと同一神であることはその名稱から容易に推定し得る。つぎにMyiodesはいかにと云ふに、チュムベル氏(Timpe)は、この神を目して当面の問題であるMyiagrosと同一の存在であるとなしている。
(略)
然らば輸入せられたミュイアグロスと、ゼウスアボミュイオスとの関係はどうなるであらうか。パウサニアスやアレキサンドリアのクレメントの云ふところによると、エリス人がゼウスアボミュイオスに犠牲をささげると、蠅群はアルフェウス河を越えて、アルカディアなるアリフェラに退くと。
もしゼウスアボミュイオスが、本来エリスの神であるとするならば、蠅群は何も特にアリフェラに退かねばならぬといふ理由はない。いづれの地に退散してももよいわけである。
之に反して若しゼウスアボミュイオスにしてアリフェラの驅蠅神ミュイアグロスから生れた―ミュイアグロスを吸收して發生したゼウスの一形相であるとすれば、その理由は直ちに明白となる。
いなプリニウスの如きは、ヘラクレスが供犠して蠅群を追うた神を、ゼウスアボミュイオスと呼ばないで、明かにミイオデスと呼んでゐる。そして前に指摘したやうに、ミイアグロスは實にミュイアグロスと同一存在である。
かうして吾人の考察は本論考の冒頭にかげたバウサニアスの記述に還つて来た。この大旅行家の記するところに従へば、ヘラクレスが蠅群を逐うために犠性をささげたのはゼウスアポミュイオスといふのであるが、吾人の考察によって、そのゼウス・アポミュイオスの原體はアリフェラのミュイアグロスであることが、略々明白になつた。
もしさうだとすれば、ベラクレスが蠅群を新請した神が既にゼウスではなくてミュイアグロスであったかも知れぬ。この疑ひには相当の根拠がある。
何故なら先に挙げたやうに、ソリヌスの記述によれば、離馬の Forum Boariumのヘラクレスの神殿には、蠅が入って来ないといふのであるが、そのヘラクレスが驅蠅のために肉をささげたのは、ユピテルアポミュイオスではなくて、實にミュイアグロスであつたからである

https://dl.ndl.go.jp/pid/1174637/1/188?keyword=MYIODES

 上記の通り、この神は最終的にヘラクレスに通ずる。このため、ギリシャ神話でありながら不死の英雄性が強調されていると考えられる。
 ところでスタレ世界で虫と言えば某やべー繁殖神様だが…?


*サフェル/cipher/賽飛兒 (セファリア/Cifera/賽法利婭)

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931268131250180?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 立ち絵姿は公開されているのだが、元ネタになったであろう神の名前、ないしモチーフ元が完全に不明。例えば賽法利の三つの組み合わせはパリサイ人(法利賽人)を彷彿とさせるが、本Noteで主要要素と考えられているギリシャ神話には全く噛み合わない。

画像
画像

 同名に古代ギリシャの都市Cifera(Κύφαιρα)があるが、おそらく優先されているのは、ラテン語のCipher(暗号・ゼロ)だと思われる。
 実はギリシャ神話で猫にまつわる伝承があるのはアルテミスだけである。彼女と同一視がされた猫の女神…エジプト神話のバステトの影響もあるかもしれない。
 ただ暗号という思わせぶりな名前、時の嘘という言葉などから、本名は別にある・モチーフが特定されないようにあえてしているかもしれない。現状は全てが謎である。

 それでもセファリアについて考えるとするならば、時間・駿足のワードが気になる。
 ギリシャ神話における時間の神としてはクロノスが有名だが、もとは時を司る原初神クロノス(Chronos)が後世になるにつれて、ゼウスの父である農耕神クロノス(Cronus)と混同されるようになった。その結果、過ぎ去った時を刈り取るという時の神のイメージが出来た。
 彼女がこのクロノスと関連している可能性は0ではないが、駿速の言葉から、凍っていた時をも動き出す風をイメージの方が強いだろう。候補としてはアキレウス、アタランテ、ヘルメス、アウラあたりか。 中でもアタランテは某Fateでも可愛い獣耳を見せており、サフェルの猫耳に通ずるものがあるが……もしサフェルが「運が良くて、お金が好きで商売人の凡人」をモチーフとしている場合はヘルメス( Hermes )神の影響が強いと考えられる。


*キャストリス/Castrice/遐蝶(ステュクス)

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931268131250180?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 名前の綴りで【Castr(ふたご座α星のカストル)+Ice】とうかがえるのだが、PVの説明を見るに、ティターン族でありながらクロノスたちを裏切った神・ステュクス神の方がモチーフとして強いと考えられる。

画像

ヘシオドスによれば、ステュクスはオケアノスとテテュスのもっとも古い娘たちのなかでもいちばんの権力をもっていたといわれる。さらに、ステュクスはパラスとのあいだにゼロス(「競争心=栄光」とニケケ(「勝利」)のほかに、クラトス(「強さ」)とビア(「暴力」)をも生んだ、と物語られている。
この二人(クラトスとビア)は、家にいるときも外に出たときも、ゼウスの傍らから決して離れなかった。それゆえステュクスは、オリュンポスの神ゼウスがすべての神々を呼ぶ日に、ティタン神族との戦いにゼウスを助けようと考えた。
それというのも、そうすれば、以後、報酬と名誉にはこと欠かないし、すでに地位をもっているものは、もち続けることができるし、クロノスのもとで地位をもたなかったものも、相応な地位を得ることができるであろう、と思ったからである。
そう考えてステュクュクスは、いのいちばんに彼女の子供たちを引き連れてオリュンボス山にやって来た。
こういった知恵は父オケアノスから享けついだものであった。そのためゼウスは彼女を心から敬い、気前よく贈物を与えた。つまり彼女は、(神々が誓うときには彼女にかけて誓う)神々の大いなる誓いの対象になったのである。そのため、神々ですらステュクスにかけて偽証することはなかった。
彼女は冥界とむすびついており、オリュンボスの女神になったことはない。ステュクスの河水にかけて誓われたようなことが、あとでイリスの物語でも語られることになる。

https://dl.ndl.go.jp/pid/12267378/1/22?keyword=%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A5%E3%82%AF%E3%82%B9

 ところでふたご座のカストルはギリシャ神話のカストルをもとにして名付けられたのだが、つづりがcatorとkastorとかわっており、キャストリスは前者なのでふたご座のみと関連があると考えられる。
 実際ふたご座のように見えなくもない紋章がPVで確認されている。

 そして、彼女の本国版の名前にある【蝶】はギリシャ神話の世界において、プシュケという女神のことを指す。彼女に関する逸話は以下のとおりである。

画像
参考:ギリシア・ローマ神話 第1 (みすず・ぶっくす ; 第13)https://dl.ndl.go.jp/pid/2990910/1/67?keyword=%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%BC 

 プシュケには魂という意味もあり、ステュクスは冥府につながるため、その縁で配置されたと考えられる。

画像
蝶々の飾りが各種に仕込まれているが…?
画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1867781561459839388?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 なお、同様に魂・蝶に関するモチーフ持ちとしては、ゼ一レ(seele)があげられる。たとえば、彼女の異名はロシア語で蝶を意味する【バーブチカ】であり、イベント跳躍の名前は「切先の蝶」。

 名前の英語綴りはドイツ語で「魂」を意味する”Seele” と一致。そして崩壊3rdのゼーレのネタバレになってしまうが、彼女は特殊な「黄泉帰り」を果たしている。ギリシャ神話のプシュケもまた特殊な黄泉がえりをしているため、ゼーレのモチーフには蝶・魂のプシュケがあると考えられる。
 ただ、彼女とキャストリスに何か関係があるかは不明。双子座であること、3rdのゼーレには自分の分身がいることから、彼女も双子である・二重人格であるのか?
 はたまたモチーフと疑われている13英傑の一人、アポニアさんとの組み合わせを強調しているのか?

 ※アポニアは「火を追う蛾」に所属しており、彼女の名前/Aponiaと同じ名の蛾が存在するため、もしかすると蝶ではなく蛾なのかもしれない? この辺りも不明点が多い

 この謎の生き物の正体と合わせて気になるところである。

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1867781561459839388?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

 また、蝶のモチーフというのはスクリューガムにも仕込まれているため、天才クラブも絡んでくるなら彼と何か化学反応が起こるのか…?


*セイレンス/Hysilens/海瑟音

画像

 立ち絵が公開されなかった二柱のひとり。
 名前を見るに、ギリシャ神話のセイレーン(Seiren)がモチーフ元と考えられる。ハーピーのような半鳥半人、あるいは人魚のような半魚半人の姿の女性。
 その歌声はとても美しく、彼女の声を聞いた船乗りたちは声の主を見るべく海に飛び込み、溺れ死んでしまうという。
 「ムーサよ、かの男の物語を」で語られる男・オデュッセウスが主人公の「オデュッセイア」でもその歌声を如何なく披露しており、その声を聞くように言われたオデュッセウスは縄で柱にぐるぐる巻きにされる描写がある。

キルケーは、まず神のごとき歌い手のセイレーンたちの声と花乱れ咲く野を避けよと命じた。おれだけがその声を聞けというのだ。だから、身動きが出来ぬように、おれを立ったまま帆柱受けにしっかりと縛り付け、縄の端を帆柱にゆえるのだ

https://dl.ndl.go.jp/pid/1335771/1/48?keyword=オデュッセイア%E3%80%80セイレーン

 ちなみにこのセイレーン、「アルゴナウティカ」によると実は元ムーサでペルセポネに仕えていたらしい。

澄んだ声のセイレンたちがいて、船を泊めるものがあると、甘い歌声で魅惑して滅ぼした。
彼女らは、ムーサの一人、みめ美わしいテルブシコレがアケロオスと共寝をして生んだもので、その昔デメテルのまだ嫁入り前の尊い娘に仕え、一緒に歌舞を舞った。だがこの時、見たところ半ば鳥の、半ば乙女の姿だった。

https://dl.ndl.go.jp/pid/12445130/1/291?keyword=%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%86%E3%83%AB

 


*ケリュドラ/Cerydra/刻律德菈

画像

 立ち絵が公開されなかった二柱のひとり。暗号めいたサフェルをのぞけば、現在一番名前元がはっきりしていない。夜の帷・異邦者という組み合わせから思いつく神もいない。夜の神ニュクスの子供たちの多くは冥府にいるため、そちらの関係だろうか?
 ただこれまでの法則性的に、冥府の番犬ケルベロスと、不死の多頭の蛇ヒュドラ( Creberus + Hydra )を組み合わせたのではないか?と考えられる。
 どちらもテュポーンとエキドナの子で化け物であり、どちらもヘラクレスに倒されている。そのためモーディスと何らかの因縁があるかもしれない。

ただこれに関してはこじつけ気味なところもあり、現在情報不足であるため、これ以上の考察は控えておく。


*ファイノン/Phainon/白厄

 古代ギリシャ語で輝くを意味する「φαίνω(phaínō)」が名前の元ネタと推定。ギリシャ神話としての候補は二柱存在する

画像
https://x.com/houkaistarrail/status/1859931268131250180?s=46&t=BIBTq5BP5a5SZmywgTfbHg

①Phaethon(パエトーン)…太陽神アポローンの息子
②Phaenon(ファエノン)…プロメテウスが最初に作った人類

 このうち②の方が可能性が高い。

画像

 このファイノンについて記された伝承は以下の通りである。

さて神々はすでに存在していたが、人間はまだあらわれなかった時代があった、と言われている。いよいよ人間が存在すべき運命の時がやって来たとき、神々は人間を大地の下で、大地と火から創り出し、またそれらの要素と混り合っているすべてのものから創り出した。
さて、神々が人間を光のもとへ引き揚げようとしたとき、神々はプロメーテウスとエビメーテウスを、それらのもので飾ってやり、それぞれにふさわしい能力を分けてやるように命令した。
エビメーテウスはプロメーテウスに頼んで、その分割をひとりでおこなことを許してもらった。ところが、この不注意者は、すべてのものを動物のあいだだけで分けてしまったので、人間はまったく身を蔽りものもなく、裸でいることになってしまった。
そこで「前もって考える」プロメーテウスは、ヘーバイストスや女神アテーナーの火と技術を、彼らの共同の神殿から盛み出して、人類に与えなければならなくなってしまった。こうして、人間は生きることができたが、しかしプロメーテウスは―犯人はエビメーケウスであったにもかかわらずーそのために罰をこうむることになった。
この物語はある賢人によるものである。つまりソフィストのプロタゴラースのものと称せられているが、彼は古い物語を自分流に作り変えたのである。
別人の語っているところによると、プロメーテウスは一人のすばらしく美しい最初の人間を創ったが、それを隠しておいたのだ、という。
エロースがゼウスに忠告し、ゼウスはへルメースを遭わして、その美しいものを連れて来させた。このものは不死の飲物をももらい、それ以来空にパイノーン(光る者)として輝くことになったが、それはわがギリシアにおいて木星と言われている遊星のことである。

https://dl.ndl.go.jp/pid/12266525/1/122?keyword=%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%B3

 さて英語版を確認すると、このフェイノンは興味深い表記もされている。

Hyginus, citing Eratosthenes, says is an alternative name of the Sun, who was his father.(キュレネのエラトステネス曰く、彼の父である太陽の別名でもある)

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Phaenon

※キュレネのエラトステネス作とされている「Catasterismi(カタステリスモイ)」の一文を参考にしているという。
 どうにもこの文献が日本で広まっていないため、詳細がつかみにくいのだが……もとは土星のことをファイノンと呼んでいたが、プロメテウスがはじめてつくった人間の名にもなり、アポロンの息子のパエトーンとも混同視されたらしい。
 このため彼も太陽神関係者であるといえよう。


【まとめ】 火を追う12の英雄たち

画像

以上10+1のキャラを振り返って貰えばわかるように
①アポロンと共に演舞するカリスとアポロンの巫女の素養を備えたアグライア
②ヘカトスの女性形・ヘカテーと同じ三相の持ち主・トリビー
③太陽を神から燃える石と認識したアナクサゴラスの名を引き継いだアナイクス
④アポロンが愛した青年の死で生まれた花・ヒヤシンスを思わせ、夕暮れと夜明けを分ける=太陽の司祭のヒアンシー
⑩太陽の子という別名も有するファイノン
⑬アポロンが愛した「キュレネ」を名乗る少女
以上5+1人のキャラがアポロンに関係しており、サフェルもバステト関係だとするとアポロンに関係していることになる。

 そして
②冥府の神・ヘカテーに通ずるトリビー
⑤ギリシャ神話の英雄の代表例ヘラクレスに関連するモーディス
⑦ステュクスの使い手と説明されているキャストリス
⑧ぺルセポネに仕えていて、海のムーサとも言うセイレーンに名前が似ているセイレンス
⑨ケルベロス+ヒュドラというどちらも冥府に属する化け物二匹の名前を融合した疑惑があるケリュドラ
 ……いずれも共通しているのはペルセポネ・冥府である。

 このことを考えると、完全に名前もキャラ性も不明の11・12もどちらかに偏るのではないかと考えられる。
 ただオンパロスは三つの運命に合わせてキャラクターたちも登場すると考えられるので、キャラたちの派閥は
 ①アポロン側 ②ペルセポネ側 ③?側 と、モチーフごとに分かれているのではと推察する。
 となると最後の③に当たるのは「火を追うもの」の名前的に、人間に火を与えた結果神々から処罰されたプロメテウス関係なのではないかとおもうが…これ以上の手持ち情報では真偽がつかないため、一旦ここで打ち止めする。
 兎にも角にも、オンパロスでアポロンが重要なことは間違いないだろう。
 …だからこそもう一人の存在も非常に重要になってくる。英雄たちとは別枠で紹介された少女のことだ。


【第二章】「キュレネ」と名乗る少女

 現在正体が一番判明しているがゆえに一番不穏な少女がこれに当たる。
 彼女の説明文にあるキュレネとは都市の名前であり、ある学派の名前であり、――これまでなんどもあげてきた太陽神アポロンが、珍しくハッピーエンドを迎えた恋人である。

(出典:https://dl.ndl.go.jp/pid/12266040/1/73?keyword=%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%83%8D%E3%80%80%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%80%80%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3

 自分に襲い掛かってきたライオンを素手で返り討ちにした、武勇にも優れたこの女性はアポロンとの間に、養蜂神をも産み落とした。
 太陽の巫女としての匂わせがあるアグライア・ヒアンシーのように、太陽に好かれた彼女の声とその姿は、あるキャラクターに似ている。

画像

 さて崩壊スターレイルにはスターシステム、あるいは並行同位体というシステムが採用されていて、生き方や世界が違えど魂や本質が全く同じであるキャラが幾人か存在する。
 姫子、ゼーレ、ブローニャ、銀狼、黄泉がその例であり、この「キュレネ」もエリシアというキャラの同位体なのでは? と噂されている。声優も一緒の点からその可能性は著しく高い。

 この彼女といろいろあって最後に相対した敵がいる。ネタバレになるうえ私自身3rdに関しての知識がないため、そのあたりは専門の方に任せるが……。
 この敵は、彼女を「綺麗」と思っていた。アポロンがキュレネを一目見て、美しさを愛したように。かの敵もエリシアの美しさに「綺麗」という感想を抱いたのだ。
 ……そして、最後の敵であった某目玉が、オンパロスの太陽に酷似しているのはもはや言うまでもないだろう。
 しかしこれまでスターレイルでは様々な目玉が出ている。そのため、某目玉とこれらが似ていても同じであるかどうかについては議論の余地がある。

画像

 ただギリシャ神話におけるオンパロスは、世界の中心・デルポイの神殿というエピソードのほかに「ある神を封じた場所」でもある。

「いざ、聞け、地よ、頭上の広い天よ、地下大なるタルタロスの畔に住み、而して人間も神々もその裔であるティタンの神々よ。いざ、皆私の言葉に聴き、ゼウスより力劣らざる子をば私に与へよ」
(略)
然し、再び歳めぐり四季訪れ、仲んの月が充されたとき、彼女は神にも人にも似つかない、人間の禍の因である恐しい兇悪なるテュファオンを生んだのである。そこで直ちに牛の眼せるヘラはこれを携へて行き、この悪しき者を、他の悪しきもの、牝龍に与へた。牝龍はこれを受取つた。かくて、彼は誉聞ゆる人間の間に数々の禍を与へた。此の牝龍に出遇ふ者を、必ず滅落の日がとらへたのである。
ところが、遂に王、遠矢を放つアポロンが剛い矢を放つた。牝龍は恐しい苦痛によって引裂かれ、太い息で喘ぎつゝ、地面をのたうちまはつた。名狀し難い恐しい響が起つた。そして、續けさまに右に左にのたうつた揚句、紅に命を吐いてこと切れた。そこで、フォイボス・アボロンは誇らかに言った。

「今は朽ちよ、此の場に、人を養ふ地の上に。もはや汝は、多くの者を育む地の穰りを食しつゝ完全な大贄を齎すところの生ける人間にとり、実悪となり得ぬぞ。汝の為酷い死を、テュフォエウスも忌はしいキマイラも禦ぎ得ぬぞ。此の場に、汝を黒い地と灼熱の日輪(ヒュペリオン)とが朽ちさせるであらうぞ」

かう誇らかに言った。牝龍の眼を闇が蔽つた。そして、其の場に彼女を日輪の聖なる力が朽ちしめた。
故に此處は今、ピュト(朽ち)と呼名されるのである、彼處で鋭い日輪の力が怪物を朽ちしめたのに因んで。
さて、此の時フォイボス・アポロンは流清き泉が彼を欺いたことをその胸に悟り、怒ってテルフセを指して行き、間もなく着いた。そして、そば近く立ちかう言つた。

「テルフセよ、所詮貴方は私の心を欺いて此の地を占め、美はしい水を湧き出させることは出来ない。此處には私の譽もあるであらう、獨り貴方の譽のみでなく。」

 かう言ふや、王、遠矢を放つアボロンが岩を押落すと、岩石の飛雨が起って流を覆った。そこで、アポロンは樹木茂れる社の中に祭壇を築いた、流清き泉のすぐ側に。此處で人々は皆、テルフセの神なる呼名で王を呼んで祈るのである、テルフセの聖い流を汚した故に。

 その時フォイボス・アポロンは心の中に考へた、何人達を岩多きビュトに於て己れに仕ふべき祭司として連れて来たらよからうかと。このことを思ひめぐらせてゐる時、葡萄酒色の海上に一艘のはやき船を認めた。船には多くの善い人々が乗つてゐた。これはミノスの町クノソスから来たクレタ人等であり、彼等はアポロンに贄を供へ、黄金造りの太刀を佩けるフォイボス・アポロンがパルソナスの下なる峽の月桂樹の中から告げる神託を布れる人々である。(略)

https://dl.ndl.go.jp/pid/1696700/1/50

 テッフォン……またの名をピュトーン、蛇の神にして地母たるこの神だが……実はスターレイルのある星神のモチーフになっている可能性がある。
 その名はウロボロス……かつて宇宙の蝗害で大暴れした貪慾のアイオーンである。


オンパロスとウロボロス

 冒頭のあらすじにて、タイタンたちを狂気に陥らせたのは【暗黒の潮】であるという解説があったが……実はこの単語はオンパロスが初出ではない。記憶の浮黎の開発日誌に――とある神の名と一緒に登場している。
 その神の名こそウロボロスである。

画像
模擬宇宙 開発日誌「記憶」3

 見ての通り、繁殖「ウロボロス」を育んだものとして、オンパロスPVにもあった【暗黒の潮】の文字が確認できるのである。
 くわえて「宇宙の蝗害において、記憶①・②の回想どちらにもウロボロスは存在し、ウロボロスと浮黎には実は関連性があることは印象付けられている。

画像
宇宙の蝗害・記憶1
画像
宇宙の蝗害・記憶2

 そして先程述べたように、オンパロス――正しくはデルポイは、太陽神アポロンがそこに住まう巨大な蛇・ピュトーンを倒し、その亡骸を埋めた場所である。そしてウロボロスは宇宙の蝗害で姿を消したが、ただ行方不明になっただけでその死は確認されていない。
 そのため、オンパロスにウロボロスがいる、またはかの星神の影響が残っている可能性は著しく高い。

 そしてこのウロボロスだが、オンパロスに封じられているピュトーンだけではない、某目玉こと■■■■■ともどことなく設定が似ているのである。
 ギリシャ神話の巨大な蛇の化け物ピュトーンが埋められたデルポイでは、巫女たちがトランス状態になりやすかった。これは単にデルポイにガスが吹き溜まっていて、巫女たちはその影響を受けていたようなのだが……そんなこと知らない古代人は、ピュートーンの特殊な息吹によるものと考えていた。
 また、すでに3rdをクリアの方ならご存知の通り、■■■■■はパンドラの箱に封じられていた者たちと同じ側面……増殖性を有する。
 そしてウロボロスは永遠にくらい続け、幻覚を見せる特殊な力を宿し、その姿形を好きに変えることができる。

 そして彼らはいずれも貪欲に「自分の中にすべてを取り込もうとする」。

 また古の楽園における■■■■■の目的は、今回の永遠の地オンパロスの性質や、尾を噛む蛇のウロボロス性質と大いに一致する。
 この共通性は偶然ではないように感じる。
 となれば、やはりオンパロスのラスボスは「ギリシャ神話のピュトーンと、古の楽園の■■■■■の役割を当てられた、スターレイルのウロボロス」なのではないだろうか?

画像

 そしてこれから開拓者たちが行うのは、この無限にとどめを刺す……つまり幻覚を見せ続けているウロボロスにトドメを刺し、永遠の夢/楽園を終わらせることであり、だからこそかつて永遠の楽園を夢見ていたサンデーが同行者になるのかもしれない。


 もっとももしこの考察が当たっていた場合、崩壊3rd・古の楽園編に出てくるメビウス博士というある種【無限の象徴】【蛇】どちらの性質も合わせもったこの女性がオンパロスでは特異な働き…具体的には黒幕となんらかのコンタクト役になる可能性が出てくるのだが……(おりしも、彼女は本編中で貪欲だと評価される場面まであるようである)

 そのあたりは3rdに詳しい人に任せたいと思う。
 …ところで天才クラブ7・8・9のラブコメ三人衆に彼女の助手と同名のクラインというキャラがいて、そのクラインとつるんでいる柏環の【環】はメビウスの輪に通じるのだが…?

  案外オンパロスでは天才クラブの話と同時並行でこの謎も明かされるかもしれない。その辺りも期待して待っていきたい。


【番外編】Dr.レイシオとオンパロスの謎

 さてひとつ前のnoteで、私はDr.レイシオには太陽神アポロンモチーフがあるのではと考えた。

 ①アポロンはギリシャ神話において理性の神にして、医学・哲学・数学の神であった。
 ②レイシオの衣装には月桂冠・アカンサスとアポロンに関係する植物のモチーフがある
 ③アベンチュリンのアチーブメント「シビル、何が欲しい?」より。アベンチュリン=シビルであるなら、処方箋の存在から彼に生きてほしいと望むレイシオ=アポロンと構図が似ている。

 以上の3点から、レイシオのモチーフにアポロンがいるのでは?と考えた。
 そしてこれまで述べたように、オンパロスにはアポロン神を関係とする神々の名前が多く見受けられる。このため、オンパロスとDr.レイシオにはなんらかの関係性があってもおかしくない。
 実際、オンパロスの初出の「開拓伝説~星間旅行スゴロク~」の盤上マス/出会い(花火)は、なぜかDr.レイシオを思わせる説明文をしていて、彼をなぞらえた行動をとる。

画像
盤上の出会い/花火

奇妙な石膏頭を被った女性が待っている。

目の合計(10~12):完璧なアドリブを披露した。(彼女はご褒美として「相互保障破滅」ボタンをくれた。

目の合計(5~9):あなたは筋書き通りに脚本を演じきった。(謎の女性は貴方の演技が堅苦しいと感じた。「0点、次!」)

目の合計(2~4):あなたには芝居の才能がない。(謎の女性は貴方に石膏頭を投げつけた。「マイナスよ、失せなさい!」)

開拓伝説~星間旅行スゴロク~ 盤上マス/出会い(花火)

※ちなみに、出会いマスは放置し続けると別の選択肢が出る仕組みとなっているが、このnote作者は残念ながらそちらを見ていないため、今回は関係ないものとして割愛する。

 花火が何故メモキーパーしか知らないはずのオンパロスを知っているかという疑問もあるが……、彼女は崩壊3rdという開拓すら未踏の領域に踏み込んだことのある規格外の実力者だ。このくらいは容易なのかもしれない。
 ……そんな彼女がわざわざDr.レイシオの真似をしている。そして彼はこれまでの考察から、アポロンモチーフがある。
 このため、レイシオも何らかの形でオンパロスに絡んでくる可能性は十二分にある。ただし、レイシオがオンパロス出身者という可能性は薄いだろう。
 と言うのも、オンパロスはすでに滅んだ惑星である可能性が高いからである。

画像
依頼画面、エーテル、パム新聞

 さて上記の画像はメモキーパーに関係する情報を集めたものだが、みてのとおり記憶の運命を歩むものは「滅んだものを再現する」ために記憶を集めている。
 そしてオンパロスはPVで「喪失の道」と銘打たれており、彼らのモチーフ元になったであろう古の楽園は「過去に存在した楽園」のことであるため、オンパロス世界はもとうに滅んでいるのを、ガーデンの力と、ウロボロスの幻覚で再現・維持しているだけの可能性が高い。
 となれば、レイシオのモチーフがアグライアに酷似しているのもオンパロス出身者というより同じような星系出身者、あるいは滅ぶ前のオンパロスから外に出た子孫の可能性が高い。

画像

 なお姫子の衣装も似ているので、月桂冠系、あるいはヌース・知恵の運命のものはこういう衣装になりやすいのかもしれない。

画像

 いずれにしても滅んだオンパロスに対するカウンターとして、「しかし続いた者はあったのだ」というアンサーが来る可能性は高く、現代人の姫子やレイシオ、天才クラブ・月桂冠系はそのアンサーに相応しい人物と考えられる。そのため、上記に挙げた彼らを今後の展開でぜひ注目してみていきたい。


【終わりに】

 こんな長文にお付き合頂いてありがとうございました。
 3.0の情報が何も出てないうちにラスボスまで考察すると言う無理を推している遊覧です。
 この考察が当たっているかどうかは定かではありませんが(というか外れている可能性が高い)、読者であるあなたがこれからもスターレイルを楽しむ一助になれば幸いです。それではまた、縁があれば。

 ※とあるミスがあったので再投稿しました。せっかくいいねしていただいたのに、申し訳ございません。ありがとうございました…!





いいなと思ったら応援しよう!

ギリシャ神話から見るオンパロス 〜太陽神と13の英雄〜|遊覧
word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word word

mmMwWLliI0fiflO&1
mmMwWLliI0fiflO&1
mmMwWLliI0fiflO&1
mmMwWLliI0fiflO&1
mmMwWLliI0fiflO&1
mmMwWLliI0fiflO&1
mmMwWLliI0fiflO&1